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■夏の日の想い出・神は来ませり(6)

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「でも千里とか冬は、幼い内に性転換しているから、わりと女性体型作るのにも苦労しなかった部類では?」
などと政子が言う。
 
「他の人よりは恵まれていたというのには同意する」
「右に同じ」
と私と千里は言う。
 
「千里はやはり高校生時代から女性ホルモン飲んでたんでしょ?」
と私は訊くが千里はそれには答えず
 
「冬子は私より早い時期から女性ホルモンに曝されていたという気がする」
と言っている。
 
「私は大学生になってから女性ホルモン飲み始めたんだけどね。正確には大学に合格してから」
と私が言うと
 
「そういう無意味な嘘をつくのは理解できない」
と3人から言われてしまった。
 

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おそばを食べた後はそば湯を飲んでから、ぜんざいを頂く。そば粉で作った白玉が入っている。
 
「ぜんざいは出雲発祥という説があるんだよね」
と政子が言い出す。
 
「ほほお」
 
「神在月(かみありづき)にお餅を食べるという習慣が出雲にはあって、それを神在餅(じんざいもち)と言った。その『じんざい』が訛って『ぜんざい』になった、と」
 
「やや微妙な気もする」
 
「もうひとつは、とんちの一休さんが、お餅を食べた時に美味しかったから『善哉(よきかな)』と叫んだという説がある。それを音読みして『ぜんざい』になったと」
 
「それも微妙な気がする」
 
「私は個人的には華厳経の善財童子(ぜんざいどうじ)が絡んでいるのではと思っているんだけどね」
と政子は言う。
 
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「政子にしては難しいものを知っている」
と千里が感心するように言う。
 
「いやぁ、大学で華厳経の授業を取った時に、食べ物の名前だ!と思ったのよ」
「なるほどー」
 
「善財童子があちこちの賢者を訪ね歩いている時、訪問した先でいろいろ美味しいものをごちそうになって、その中にあんこ餅もあったのではないかと」
 
「ふむふむ」
 

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そばも善哉もとても美味しかった。お店を出てから、ご縁広場まで戻るが千里は私たちをこの道の駅の中にある吉兆館に連れて行った。
 
「これ以前は勢溜の鳥居のすぐそばの展示館で展示されてたんだけどね。これが昔の高層建築版・出雲大社本殿の復元模型なんだよ」
と千里が言う。
 
「おお、こういう形だったのか!」
「まあ半分は想像だけどね。これは松江工業高校で制作されたもの」
「いや48mとかの建築ってあり得ないと思ってたけど、こういう構造ならあり得る気がしてきた」
 

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「ところで神迎祭って何時からだっけ?」
「19時からだから、17時くらいには出発した方がいいと思う。それまでは休んでる?」
 
今13時半である。3時間ちょっとくらいは休んだ方がいいかも知れない。
 
「あれ?出雲大社でやるんじゃないの?」
とゆまが訊く。
 
「出雲大社から1.3kmほど離れている稲佐浜というところで前半をやって、そこで迎え入れた神様を出雲大社の神楽殿までお連れして後半の儀式をやるんだよ」
 
「神楽殿(かぐらでん)?」
「ああ、そういえばさっきはそちらまで行かなかったね。日本一の大しめ縄が掛かっているんだけどね」
 
「本当に日本一?」
「神社の建物に掛けられているしめ縄のサイズとしては出雲大社神楽殿のものが日本一。神社の拝殿に掛けられたしめ縄の日本一は福岡県の宮地嶽神社」
 
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「みやじだけ神社って去年行ったところだっけ?」
と政子が私に訊く。
 
「あれはお隣の宗像(むなかた)大社」
「お隣だったのか!」
 
「山一つ越えた隣だね。合わせてお参りする人も多いよ。あのあたりでお正月の三社参りというと、宮地嶽神社・宗像大社・香椎宮と回ったりする」
「へー」
 
「でもその日本一の大しめ縄見てみたい」
と政子が言い出す。
 
「一休みしてからにしようよ。さすがに往復で疲れたよ」
と私は言う。
 
「ああ。だったら車で移動しようか?」
とゆま。
 
「それでもいいね。神楽殿は神社の駐車場のすぐそばだし」
「それは好都合だ」
 

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それで前来たことがあるという千里が運転して、私たちはご縁広場から神社の駐車場に移動した。
 
「車ならすぐだ」
「歩くと30分くらい掛かるもんね」
 
「なんかもう駐車枠がほとんど無い」
「ご縁広場でさえ、かなり車が埋まっていたからね〜」
「まあ混むだろうね。これもう少し後から来た人は結構遠くの駐車場に駐めることになりそう」
 
それで端の方に1つだけ空いていた枠に駐め、歩いて行くと、確かに駐車場のすぐそばにその巨大なしめ縄のある神楽殿があった。
 
「確かにこれはでかい」
とゆまも感心している。
 
「これ材質は何?」
と政子が訊く。
 
「藁(わら)」
と他の3人が答える。
 
「まあこの神楽殿で、全国から集まってきた神様をおもてなしする行事をするんだよ」
 
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「やはりごちそうでもてなすのかなあ」
「まあ食事とお酒だろうね」
 

政子が他に見逃したものはないか?というと千里は
「彰古館とか神古殿とか見る?」
と訊く。
 
「それは?」
「資料館だね。宝物殿といった方がいいかな」
「一応見ておこうかな」
 
それでまずは拝殿の横にある神古殿に行き、その後、本殿後ろにある彰古館に行った。この彰古館に大量の大黒様の像があり、政子がはしゃいでいた。それで14時半すぎ、駐車場の所に戻ったのだが・・・
 

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「出られないね?」
「無理だね」
 
インプレッサの前の枠外に大きなクラウンが駐まっているため、出ようにも出られないのである。
 
「仕方ない。出られるようになるまで放置で」
「たぶんこれ神迎祭が終わるまで出られないよ」
「それも好都合だけどね」
 

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結局トイレに行った後、少し車内で休んでようということになる。政子はおやつ食べたいというので、結局千里が付き合っていた。私とゆまは車内で仮眠していた。
 
政子が戻って来たのは16時半頃であった。
 
「じゃ、そろそろ稲佐浜に行こうか?」
と千里が言う。
 
「千里休まなくて平気?」
「向こうで待ちながら寝てるよ」
「その手もあるか」
 
「寒いからみんなしっかり防寒服を着てね」
「了解〜」
 
全員でいったんトイレに行って来てからしっかりとフリースを着た上にダウンコートを着る。ホッカイロも入れた。
 
「でも晴れてよかったね」
「うん。雨とか降っても人が密集しているから傘はさせないし」
 
この日は朝は雪が降っていたし、昼過ぎまで曇っていたのだが、夕方近くになってからきれいに晴れたのである。
 
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「ただ晴れたからには冷え込みも強いから」
「だよね〜」
 

それで若干の非常食をリュックに入れて体力のあるゆまと千里が持ち、稲佐浜方面に歩いて行く。道分かるかな?と少し心配したものの、そちらに歩いていく人たちがたくさんいるので迷う心配は無かった。
 
人の波に合わせて歩いたので30分近く掛かり、17:10頃、稲佐浜に到着した。
 
この日の日の入りは17:05, 日暮れは17:39, 天文薄明の終了は18:33である。
 
日は歩いている途中で落ちたものの、まだ空は明るい。しかし急速に暗くなっていきつつあった。
 
やや遠い場所に祭壇のようなものが作られていて、神職さんたちがたくさんいる。私たちは大勢の人たちと一緒にその時を待った。千里は本当に寝ているように見えた。政子はゆまと冗談を言い合っている。
 
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「こういう暗い中なら女装したい人にもいいよね」
「まあこれだけ人がいたら男の娘も10人か20人はいるだろうね」
 
そんなことを言っていたら、千里の向こう側にいる赤いコートの背の高い女性が何だかギクッとした感じであった(私たちは左から、ゆま・政子・私・千里と並んでいる)。
 
どうしたのかな?知り合いに男の娘でもいるんだろうか?と私は何気なく思った。
 
「そういえば、ゆまさん、ちんちん付いてた?」
と政子は訊いている。
「トイレの中で確認したけど、付いてないようだった」
とゆま。
「どこかに落としたということは?」
「落としたら、誰か適当な男の娘からぶんどろうかな」
 
どうも2人とも雑念の塊のようである。
 
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空はどんどん暗くなっていく。やがて天文薄明が終了してあたりは真っ暗になる。祭壇が見えない。
 
少しして松明に火が灯された。
 
それと同時にパッと千里が目を覚ましたので「すごっ」と思う。本当にこの子勘がいい!と思う。
 
真っ暗な中に煌煌と松明が燃えている。
 
美しいなと私が思っていたら、やがて海から強い風が吹いてくる。
 
「来た」
とゆまが言った。
 
私も何かが大量にやってきたのを感じた。
 
神の到着だ!
 
見るからに勘の悪そうなゆまでさえ何か感じたのだろうから、やはりこれは物凄いことが起きているのだろう。
 
写真を撮っている人たちも多い(無論フラッシュは使わない)。しかし私も政子もゆまも千里も、カメラなどは使わず、自分の目と耳と感覚でその神々の到着の空気を味わっていた。
 
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時計も見ていなかったので良く分からないが、多分松明に火を点けられて1時間くらいが経ったろうか。この稲佐浜での神事は終了して、神楽殿に移動すると告げられる。「何とか様」の先導でと神職さんが言っていたが、私は聞き取れなかった。誰かに訊こうかと思ったら千里が
 
「龍蛇(りゅうじゃ)様だよ。漢字では龍王の龍に、蛇(へび)と書く。後で間近で見られると思う」
と言った。
 
「へー」
「まあウミヘビを神格化したものと言うか」
「あぁ」
「神迎の儀式は、この界隈の神様である龍蛇様が先導を務める」
「応対係というところかな」
「そうそう」
 

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