広告:メイプル戦記 (第1巻) (白泉社文庫)
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■夏の日の想い出・男の子女の子(3)

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「へー。小学6年生なんだ?」
と、ゆみが楽しそうに彼に言った。
 
5分後、4人は羽田空港内のレストランに入っていた。好きな物頼んでいいよ。おごってあげるからと言うと「トンカツ定食いいですか?」などというので、コスモスも微笑んでそれを頼んであげた。アクアもハンバーグ定食を頼み、コスモスとゆみはコーヒーのほか、みんなでシェアできるようにピザを頼んだ。
 
「はい。でも小さい頃から、よく女の子と間違えられていたんですよ」
と彼は言う。
 
「お名前聞いてもいい? 私は伊藤宏美、こちらは水森優美香、こちらは田代龍虎」
とコスモスはこちらの3人を一気に紹介した。
 
「はい。アマギセイコと言います」
と彼は答える。
 
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「セイコちゃんって、女の子みたいな名前ね」
 
「西の湖って書くんです。なんか中国にそういう名前の湖があるらしいんですよ」
「ああ、あの西湖か!」
 
「僕の両親が西湖に旅行に行った時に、僕を妊娠したらしくて」
「なるほどー。発生場所なんだ!」
 
「でも、そちらのリュウコちゃん?も男子トイレから出てきましたよね?」
 
「僕も女の子によく間違えられるけど、男の子だから。僕のリュウコは空を飛ぶ龍に、吼える虎なんだよ」
とアクアが答える。
 
「わぁっ格好良い!」
 

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「でもひとりで飛行機に乗ってきたの?今から乗るんじゃないよね?」
 
「はい。ひとりで福岡のおばあちゃんの所に行って来ました。新幹線より安いし速いから、いつも飛行機使うんですよ。4年生の時までは親と一緒だったんですが、去年からは『もう5年生ならひとりで行けるよね?』と言われて、ひとりで行ってます」
 
「えらーい!」
「しっかりしてるね」
「なんかうちの両親も忙しいみたいだし」
「お父さんは何してるの?」
 
「舞台俳優なんです。母も。実は舞台に穴を開けられないから、僕もひとりでおばあちゃんちくらいは行ってくるんですよ。今回は曾祖父さんの三回忌に両親の代理で出席してきたんですが、夏休みにもひとりで行ってきました」
 
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「へー、舞台俳優か。知っている人かな。芸名は?」
「たぶん、ご存じ無いと思います。うちの劇団、あまりお客さん入ってないみたいだし。父は高牧寛晴、母は柳原恋子というのですが」
 
「あら、黒部座なんだ?」
とコスモスが言うと
 
「ご存じなんですか!?」
と西湖は本当に驚いたように言った。
 
「柳原恋子さんって、上野陸奥子さんのお姉さんでしょ? でも柳原恋子さんにこんな可愛い息子さんが居たって知らなかった」
とコスモスが笑顔で言う。
 
「え〜〜!?叔母のことまでご存じなんですか?」
「だって、私、上野陸奥子さんの後輩だもん」
 
「後輩・・・って?」
と西湖は首を傾げながら尋ねる。
 
「私、上野陸奥子さんが所属なさっていたのと同じ事務所に現在所属している歌手で、芸名は秋風コスモスというの」
とコスモスが言うと
 
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「うっそー!?」
と言って、西湖は本当に仰天したような顔で立ち上がった。
 
それを見て、ゆみが吹き出した。
 

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西湖は秋風コスモスも、AYAも認識していなかったので、こちらはAYAだと紹介すると、またまた仰天していた。
 
「あのぉ、そちらもタレントさんですか?」
と恐る恐るアクアを見ながら尋ねる。
 
「僕は今月末にテレビデビューする予定なんですよ」
とアクアは説明した。
 
「ところで、君、うちのアクアと背丈といい、体格といい、似てるよね。ちょっと並んで立ってみて」
とコスモスが言うと、ふたりは席を立って並んでみる。
 
「ちょっとだけ、西湖ちゃんのほうが低いかな」
とゆみ。
「でもほとんど同じだね」
とコスモス。
「体格もほとんど同じ感じ」
「これなら同じ服が着られるよね」
 
「同じ服って何か?」
「ねえ、君、この子のボディダブルやる気無い?」
「え〜〜〜!?」
「ボディダブルってどういうのか知ってる?」
「はい、それは分かります」
 
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「取り敢えずボディダブルをしてもらって、将来的には君も俳優デビューという線とかはどうかな?」
 
「やりたいです!」
と西湖は笑顔で言った。
 
「じゃ、ご両親とも話したいから、都合のつく日時とかを訊ける?これ私の名刺あげておくね」
と言って、コスモスは『ミュージックプロデューサー・秋風コスモス』の名刺を出した。実はアクアのプロデューサーをすることになったので、紅川社長が作ってくれた名刺を渡した第一号であった。
 
「あっ。ただ・・・」
と言ってコスモスは少し考えるようにする。
 
「何か条件とかあるんですか?頭を丸刈りとかくらいは構いませんよ」
と彼は積極的である。
 
「むしろ髪は長いままにしてほしい。それ君が進学する中学校と交渉できるかな?実はアクアは、男の子役と女の子役の1人二役をするんで、西湖君にはアクアが女の子役をする時には男の子の衣装を着て、アクアが男の子役をする時には女の子の衣装を着て、一緒に画面に映って欲しいのよ」
 
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「わあ、女の子の服も着るんですか?」
「うん。それをしてもらえるかどうかなんだけど」
 
「僕、女の子の服って着てみたかったんです」
と西湖は笑顔で言った。
 

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ローズ+リリーは12月12日の沖縄公演の後は、13日が熊本市、14日は福岡県宗像市(福岡市と北九州市の中間付近)と公演を続けたのだが、この14日に驚くべき報せが飛び込んで来た。
 
&&エージェンシーで悠木朝道社長が解任され、奥さんで副社長だった悠木栄美さんが新しい社長に就任したというのである。
 
XANFUSの件では、11月30日に光帆が&&エージェンシーに対して専属契約の解除申入書を提出したのに対して、悠木朝道社長は逆に光帆が新しいCD制作に非協力的であったとして契約違反を主張し、契約破棄を宣言、違約金1億円の支払いを求めた。これに対して光帆は私からお金を借りて12月3日、その違約金を支払い、光帆は自由の身になった。
 
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一方、音羽は12月1日付で@@エンタテイメントと契約。光帆も12月5日付けでそこと契約し、2人は新しいユニットΦωνοτον(フォノトン)を結成。神崎美恩・浜名麻梨奈もここに合流した。
 
それで音羽たちは新たなユニットで活動を再開しようとしていたところでこの《クーデター》が起きたのである。
 
後で聞いてみると、麻生杏華さんが密かに他の株主に根回しをしていた時、悠木栄美さんが★★レコードの松前社長に接触してきて
 
「夫の経営はどう考えてもおかしい」
 
と言い、何か対策を取れないかと相談したらしい。そこで松前社長が町添部長を通して、麻生杏華さんに連絡し、麻生杏華−悠木栄美という秘密会談が都内の料亭で行われた。そこでクーデターの計画がまとまったらしい。
 
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栄美新社長は音羽たちと接触し、XANFUSに関する権利譲渡について話し合った。結果、光帆の「契約違反」は&&エージェンシーの誤認であって光帆は違反をしていないことが広告される(光帆の名誉回復)とともに、音羽と光帆が共同で&&エージェンシーに3億円を払ってXANFUSの名前および諸権利(主として過去に発表した曲に関するプロダクション側の権利)を買い取ることになった。この際、先に光帆が違約金として支払った1億円はこれに振り替えることにし、実際2人が新たに支払ったのは2億円である。
 
基本的にアーティストはレコード会社と契約する時、自分たちがリリースした曲を、一定期間は他のアーティストにはリリースさせないという契約条項を入れている。これは自分たちを守るためなのだが、その条項のため、音羽たちのΦωνοτονは過去のXANFUSの曲をカバーすることも許されないのである。自分たちが歌った曲なのに。
 
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栄美社長はこの権利を音羽たちに買ってもらったのである。
 
これによって栄美社長は3億円の現金収入を得て、短期間に巨額な赤字を出して倒産の危機もあった同社の経営を立て直すことに成功した。
 
実は同社では10-11月の給料が遅配になり例年なら12月上旬に出ていた賞与も渡されなかったため、社員の間に不安が広がっていたし、一部のアーティストに11月分の報酬が振り込まれなかったことから「どうなっているんですか?」という問い合わせが入る事態になっていた。
 
しかし栄美新社長はこの件について従業員と所属アーティストに陳謝するとともに、遅れていた支払いを実行し、賞与もきちんと払った。むろんこれは光帆たちが2億円を現金で即払ってくれたお陰である。
 
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一方で音羽たちは2015年1月以降、再びXANFUSの名前を使うことができるようになるとともに、過去にXANFUSの名前で出した楽曲も今後ベストアルバムなどに収録したり、また新アレンジを発表することも可能となった。
 
結果的にΦωνοτονの名前は1ヶ月弱で消えることになる。
 
なお11月下旬に「XANFUSに追加」された震来と離花は1月以降、新ユニットHanacleとして活動することになった。彼女らのプロデュースは新たに栄美社長が進藤歩さんに依頼して担当してもらえることになった。
 

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12月14日(日)の福岡県公演が終わった後、19日(金)の松山公演まで間があるので、私や政子に伴奏者・スタッフなどはいったん東京に戻る。
 
15日(月)の午前中、昨日のクーデターで新社長になった栄美社長から音羽たちにXANFUSの権利買い取りに関する打診があり、それについて私に音羽から(お金を貸してという)相談があったので、私はそれは出していいという返事と、金額について★★レコードあたりに頼んで交渉してもらった方がいいと言った。それでその件に付いては町添さんが、音羽たちと栄美社長の間に入って交渉してくれたようである。
 
ただしその買取資金を私が出すという件に付いては町添さんにも栄美社長にも言うなと音羽たちには言っておいた。自分たちの貯金で払えるように装っておいた方が面倒が無い。音羽たちに実は資金が無いことを町添さんが知ったら、それを★★レコードが買い取りたいと町添さんは言うだろう。
 
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音羽たちはこの機会に自分たちの楽曲に関する権利を自分たちで持ちたいのである。
 

この日の午後、政子がせっかく免許を取ったから車を買いたいと言うので日産の販売店まで一緒に出かけて行った。政子はノートに目を付けていたのだが、実際にはそれと似たサイズで、電気自動車のリーフを気に入り、それを買うことにした。そしてついでに、私までエルグランドを買うことになった!(そしてフィールダーは売却することにした)
 
16日は先日千里の尾行をしてくれた佐野君たちに沖縄のお土産を持って行くのとフィールダーを売却することにしたので、どこか高く買ってくれる所を知らないかというのを聞きに行った。
 
すると佐野君たちの車がインプレッサではなく、インテグラになっているので驚く。なんでもインプレッサを「階段にぶつけたら」動かなくなって買い換えたということであった。それでインテグラを買ったのだが、手続きが終わって自分たちで取りに行き、運転して帰る途中で異様に急な盛り上がりになっている踏切の所で、その盛り上がりの乗り越えに失敗し底をぶつけてしまった。その時は気付かなかったものの、あとで調べたらアンダーカバーのボルトが取れていたということで、麻央がその修理をしていた。
 
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(車の修理に関しては、腕力を必要とする作業以外は、ガソリンスタンドにも勤めている麻央の方が佐野君より得意である)
 
佐野君は、その手の車を売るなら、あそこがいいはずと具体的なお店の名前を言い、その時はお店での交渉もしてあげるよと言ったので、じゃエルグランドが来た時点で頼むと私は言った。
 
「もしよかったらETCの移し替えとかも頼める?」
「OKOK」
 

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その日の午後はまたΦωνοτονの音源製作現場に立ち寄っていたのだが、その最中に作曲家の本坂伸輔さんが急死したという報せが入って来たので、政子を呼び出して一緒に通夜に行くことにした。音羽・光帆も同行した。私はこの時、なぜかふと、先日のテレビ番組で不酸卑惨のメンバーが2008年組をこき下ろすと同時に本坂さんのことも批判していたなというのを思い起こした。後で考えるになぜそのことを思ったのかは私も分からない。
 
ところがこの通夜の席に不酸卑惨の5人が乱入。本坂伸輔はニセ作曲家だなどと言った上で、祭壇に向かって消火器を射出してめちゃくちゃにし、警備員に連れ出される騒ぎがあった。
 

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■夏の日の想い出・男の子女の子(3)

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