広告:ここはグリーン・ウッド (第3巻) (白泉社文庫)
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■夏の日の想い出・南へ北へ(7)

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「そうだ。サービスでその金玉取ってやろうか?」
「え〜〜!?」
「だってその金玉、ほぼ死んでるぞ。そのままだといつまでもこれ以上大きくならないし、結果的にお前いつまでも男らしい身体にはならないぞ」
 
「取っちゃったらどうなるんですか?」
「その先は男性ホルモン摂るか、女性ホルモン摂るか次第だな。どっちみちその金玉は男性ホルモンを生産する力は無い。恐らくは放置しておいたら、お前が中学卒業する頃までには腐ってしまって、結局手術して摘出することになると思う」
 
「ボク、子供は作れない? 自分には無理かなという気はしてたけど」
「今男性ホルモンを摂れば父親にもなれる」
「はぁ・・・」
「今女性ホルモンを摂れば母親にもなれる」
「え〜!?だってボク子宮とか無いのに」
「そのくらい何とかなるさ」
「そういうもんですか?」
 
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《こうちゃん》はいきなり、龍虎の袋の中央の縫い目に沿って鋭い刃物のようなものを当てた。
 

「きゃっ」
 
「ふーん。大きくならないな」
「え?」
「普通の男の子だったら、ここに刃物突きつけられると、大きくなる」
「そうなんですか?」
「そもそもこれ、大きくなる?」
「なりますよー」
「オナニーしてる?」
「何度かしたことあります」
「ああ、普段はあまりしないんだ?」
 
「オナニーって気持ちいいらしいけど、よく分からなかった」
「それが性的に未発達ってことさ」
 
というと、《こうちゃん》はそこをスッと縦に切ってしまった。
 
「え〜?」
「痛くないだろ?」
「痛くないです。切られて血も出てるのに」
「これは夢だからさ」
「本当に夢なんですか〜?」
「そうだよ。ほら、これがお前の金玉」
と言って、《こうちゃん》はそれを袋から引き出してしまう。
 
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龍虎はそれを見てドキドキした。
 
「それどうするんですか?」
「よければこのまま取っちゃうけど」
「取ったら元に戻せませんよね?」
「普通は無理」
「だったら、まだ取りたくないです」
 
「『まだ』取りたくないねぇ」
と言って《こうちゃん》は笑うと、それを2個とも切り離してしまった!
 

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「ちょっとぉ、まだ嫌だって言ったのに!」
 
と言いつつ、龍虎は玉が無くなってしまった以上、ボクやはり女の子になるのかな?などと思った。しかし《こうちゃん》は
 
「この金玉、さっきも言ったように、このままだと腐ってしまうと思う。もうほとんど死んでる。だから俺が治療してやるから」
と言った。
 
「あ、はい」
 
「これ治療に数年かかると思う。20歳になった時に、まだお前が男になりたいと思っていたら、その治療が終わった金玉を返してやるよ」
 
「はい」
「それまではお前はほぼ中性だから、男にも女にもなれる状態のまま。そんな感じがいいんだろ?」
「そうかも」
 
「女の子になりたいなら、今すぐ、チンコも切ってやるけど」
と言って、《こうちゃん》は龍虎のおちんちんの根本に刃物を当てた。
 
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「切られると困ります!」
と慌てて言う。
 
「そうか。困るか」
と言うと、彼はそれを切り落としてしまう。
 

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「いやー!」
 
と言って龍虎は突起物が無くなってしまった股間を見て、ドキドキしていた。袋はあるものの、中身が無いのでピタリと身体に吸い付いているような状態である。タマタマもおちんちん無くなっちゃったら、もうボク女の子かな?でも女の子だと本当は割れ目ちゃんがあるよね?
 
「じゃこのチンコも20歳になった時、お前が男になりたいと思っていたら返してやるよ。金玉と一緒に治療するから、多分14-15cmくらいまで成長する」
 
「14-15cm?」
「このくらいだな」
と言って、《こうちゃん》は龍虎のバッグの中から勝手に生徒手帳を取り出した。
 
「この生徒手帳の縦が8cmくらいだよ。だからこの倍くらい」
 
「おちんちんって、そんなに大きくなるの?邪魔じゃないですか?」
「あくまでそれは立った時だから。普段は6-7cm。この生徒手帳の横幅程度だよ」
 
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「それでも結構大きそう」
「ああ。お前のこのチンコ、今は4cmくらいしか無いもんな」
 
と言って《こうちゃん》は切り離してしまった龍虎のおちんちんを弄んでいる。
 

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「でも、20歳になるまで、ボク、おちんちん無しですか?」
 
「チンコ無い方が女の子パンティ穿くのには楽だぞ」
「おちんちん無いと男湯に入れないです」
「女湯に入ればいいじゃん。お前、小学校の修学旅行の時は女湯に入ってたじゃん」
「あれはうまく友達に乗せられちゃって」
 
「あ、そうそう。どっちみちお前、人工的にホルモンのコントロールした方がいい。そうしないと骨粗鬆症とかになるんだよ」
 
「あ、はい」
 
「それ、千里の妹が得意だから、頼んでみな」
「妹って玲羅さんですか?」
「あ、そうか。玲羅じゃなくて、もうひとり青葉ってのがいるんだよ」
「へー」
 
「俺のことは言うなよ」
「誰にも言いませんよ。言ったって誰も信じないだろうし」
 
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「千里よりむしろケイから紹介してもらうといい。千里はお前があまり女性化するのは好まないと思うし」
「千里さんだけなんですよ!ボクを普通の男の子として扱ってくれるのは!みんなボクに女の子になりたいんだろ?とか言うんです」
 
「だから千里から頼まれたらきっと青葉はお前を男らしくしてくれる」
「いやだあ」
「ああ、やはり男になりたくないんだ?女になりたいんだ?」
「そういう訳じゃないんですけど」
「何なら割れ目ちゃんも作ってやろうか?」
「え〜?どうしよう」
 
「まあいいや。あまり親切にしすぎると千里から俺が叱られそうだし。青葉はケイから頼まれたら、お前をちゃんと女らしい体つきになるようにしてくれるよ」
 
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「それもちょっと困ります」
「ちゃんと、おっぱい大きくしてもらえるぞ」
「おっぱい・・・・」
 
「じゃまた7年後に。可愛い女の子アイドルになれよ」
「男の子アイドルですぅ!」
 
「女の子の方が売れるのに」
「でも男の俳優になりたいんです。だから、おちんちんが無いのは困るんですけど」
「そんなの、人に見せるもんでもないし、無くたってバレないって」
「付いてないと困ります」
 
「じゃ、しょうがないな。だったら・・・」
 

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龍虎はハッとして目が覚めた。ベッドの中で寝ている。
 
あれ〜?まさか今のって夢?
 
そっとあそこに手をやる。
 
おちんちんある!
 
良かったぁ!!
 
でもなんか小さくなってない?
 
でもおちんちんあるってことは、やはりあれ夢だったんだ。
 
タマタマは。。。無い!こちらは無くなっちゃった?
 
と思ったが、体内に入り込んでいることに気づく。これは時々、寝ている間にこうなってしまうことがある。放置しておいても起きて動いている間に自然に下に降りてくる。指でそっと押し出すようにする。感触を確かめる。あれれ?こちらは少し大きくなった気がする。何でだろ?
 
パジャマの入った紙袋がベッドのそばにあった。
 

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龍虎は今のは夢と現実が混じっているのかも知れない気がした。でも久しぶりに会った(?)のに、ちゃんとこうちゃんさんの名前を思い出せたな、というのが不思議な気持ちだった。
 
カッターを出してきてパジャマや下着のタグを切るが、その時、自分のアレとかアレとかを切る所を一瞬想像してしまった。女の子パンティのタグを切る時も、何だか物凄くドキドキした。
 
女の子パンティは小さい頃から川南さんに乗せられて結構穿いていたから今更なのに今日はこのタグを切るのに何だか凄く変な気分がする。
 
さっきの夢?の中で、おちんちんもタマタマも無くなった状態のお股を見たのを思い出す。ああいうお股なら、このパンティが無理なく穿けるよなあ。あれいいなあ、と一瞬思ってから、でもまだおちんちん無くしたくはないと思い直す。
 
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おちんちん付けたまま女の子になるってのは無理だよなあ。
 
龍虎は自分が普通の男の子ではないみたいという気はしていたので、そのあたりのことも結構自分で調べていた。女になりたい男の人は自分の性器をとても醜悪な奇形と思っているとか書かれていたけど、そこまで嫌悪はしてない。むしろおちんちんは良いものだと思っている。いじると気持ちいいし。
 

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龍虎は気分転換するのも兼ねてシャワーを浴びてきた。シャワーであの付近も洗っている時、これ女の子の形だったら、どういうふうに洗うのかな、などと想像したりした。
 
でも・・・このおちんちん、何だか自分のじゃないみたい!?
 
やはり少し小さいし、何より途中1ヶ所ほくろみたいな黒い部分があったのに、これにはその黒いのが無い。自分のちんちんの代わりに別の人のおちんちんをくっつけられたんだったりして!?
 
身体を拭いて、部屋に戻る。パンティを穿き、ブラをつけてキャミを着る。
 
その時、もしおちんちんが無くて、おっぱいがあったら、こういう下着にもっと合うのかな、などと思った。
 
でも、おちんちん無くすのは嫌だ!
 
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だから多分自分は女の子になりたい訳ではないのだと思う。結婚するなら、相手は女の子の方がいいと思うし。男の人と結婚するなんて想像ができない。
 
このあたりが龍虎が心の中に抱える矛盾である。
 
パジャマを広げてみる。
 
可愛い!さすがマリさんが選んだだけある。値段のタグは切ってあったけど、これ結構するよね?
 
こういうの着れるのが、女の子のいい所だよなあ。男の子の服って詰まらないんだもん。龍虎は小学生の頃は、スカートこそ(彩佳とか少数の親友以外の)人前では穿かないものの、結構左前袷の上着とか女の子用のズボンとかで学校に出て行ったりもしていた。中学になると学生服になったので、ちょっと詰まらない思いである。セーラー服とか着てみたい気もしないではないが、そんなこととてもお母さんには言えないと思う。
 
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誰かセーラー服買ってくれたりしないかなあ。。。
 
そんなことを考えながらベッドに入ったが、東京から大移動してきたので疲れていたのだろう。すぐ眠ってしまった。
 
夢の中で龍虎はウェディングドレスを着て、なぜかタキシードを着た彩佳にお姫様だっこされていた。
 

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江藤さんは札幌に3〜4日滞在してから東京に戻るらしかった。蔵田さんから耳にしたのでは、どうも札幌で会社のお得意様をキャッチして、東京までのビジネスジェットの旅を楽しんでもらう予定を入れているようである。
 
その蔵田さんたちは夜中過ぎに「もう酔いは覚めたから出発するね」と私の携帯にメールしてきて、スカイラインに乗って、美幌町のマウンテンフット牧場に向かった。
 
チェリーツインが拠点としている牧場である。マウンテンフットというのはオーナーの山本さんの苗字を英語に直訳したものである。
 

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チェリーツインの“ツイン”こと気良星子・気良虹子の姉妹は言語障碍だが、あそこの牧場には、発達障碍や自閉症などの人が50人ほど泊まり込みあるいは通所で勤めている。積極的にそういう人たちを雇用しており、障害者自立支援施設としての指定も受けているのだが、その人たちのお世話係として介護士や臨床心理士・言語聴覚士、作業療法士、看護師など、またPECS, ポーテージなどの社会復帰訓練の指導者の資格を持った人などが常勤や非常勤で詰めていて、訓練をしてあげている。この部門は福祉法人として別運営になっている。
 
チェリーツインの“チェリー”こと、桜川陽子(少女X)・桜木八雲(少女Y)は各々の事情により高校を中退した。しかし彼女らはここで勤めながら通信制の高校に入り、時間は掛かったものの、最終的に高校卒業の資格を取得した。この牧場には一般の社会の「コース」から外れてしまった人も多数勤めている。
 
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なお、八雲は実はこのバンドの事実上のマネージャーで、スケジュール管理やお金の分配、備品の管理、対外交渉などを行なっている。陽子や桃川さんはむしろ彼女を「影のリーダー」と呼んでいる。実際プロダクションやレコード会社との交渉・打ち合わせで頻繁に東京と美幌を往復している。
 
チェリーツインの伴奏者?兼ソングライトペアの紅ゆたか(秋月義高.Gt)・紅さやか(大宅夏音.B)は《自称ニート》である。彼らは札幌市内の私立大学を出た後、一度も会社勤めをしたことがないらしい。親の金で遊んでいる状態で、この牧場にも勤めている訳ではなく、いつもはあちこちの山登りなどをしつつ、たまにふらりと牧場に来ては、滞在中は配達とか草刈りとかの作業をして日銭をもらっていたという。
 
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しかしチェリーツインを始めてからは、CDの売上やライブの出演料などで結構な収入が得られており、初めて親に仕送りをして、親が泣いたという話も桃川さんから聞いた。ふたりはいつも一緒にいるので「ホモのカップル?」と思われることもあるが、実際には恋愛関係は無いし、ふたりとも女の子が好きですと本人たちは言っていた。
 
もっともその手の話が好きな政子などは
「あの2人どちらが女役かなあ。やはり《さやか》という女っぽい芸名の大宅さん?」
などと、テカテカした目で言っていた。
 
大宅さんの名前は「夏音」と書いて「なつお」と読むのだが、時々「なつねさんですか?」「かのんさんですか?」と言われることもあり、名前だけ見られると女性と誤認されることもある(選挙の投票所でトラブったこともあるらしい)。しかし女装などの趣味も無いと、少なくとも本人は言っていた。
 
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もっとも私は実は美空から大宅さんの女装写真を見せてもらったことがある(陽子経由の流出だと思う)。宴会の余興の罰ゲームでやらされたということだったが、充分女に見える、きれいな女装だった。
 
チェリーツインの事実上のサウンド・プロデューサーでピアニスト(ライブではサポートの人にキーボードを弾いてもらい自分はドラムスを打つ場合もある)桃川さんは、音楽系の大学を出ていて歌も楽器もうまいし、音楽理論に物凄く強い。チェリーツインのスコアは最終的には桃川さんが監修している。
 
彼女は自殺未遂者で、偶然通りかかった秋月・大宅に助けられ、しばらく牧場で過ごすといいと言って連れてこられたまま、居座ってしまった。
 
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桃川さんはMTFで高校の時からずっと女性として過ごしてきたという。高校時代に去勢して、その後陰茎も切除したらしいが、少なくとも2014年夏の段階ではまだ造膣はしていないと(本人は)言っていた。
 
ただ彼女は小学校高学年の女の子を連れていて、自分の娘だと言っていた。この子は実はチェリーツインのPVに何度か出演したこともあり、いつも顔は隠していることから、チェリーツインのファンの間では『少女Z』とも呼ばれている。私は一度彼女に
 
「それ桃川さんが誰か他の女性との間に作った子供ですか?」
と訊いたことがあるのだが
 
「私が産んだのよ。この子の父親も一応生きてるよ。まあたまにこの子の顔を見に来るけどね」
と彼女は笑顔で言っていた。実際その娘さんも桃川さんのことを「ママ」と呼んでいた。
 
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そのあたりの経緯については、私もよく分からない。チェリーツインに初期の頃から関わっていた千里は知っているようだが「ひ・み・つ」と言っていた。
 
「まああれは実際問題として簡単には説明できない複雑な話なんだよ。でも、しずかちゃんは本当に春美さんの遺伝子上の娘だよ」
とも千里は言っていた。
 

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夏の日の想い出・南へ北へ(7)

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