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■夏の日の想い出・南へ北へ(4)

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調布から丘珠への所要時間はビジネスジェットとしては高速のM0.925が出るG650では1時間半ほどである。
 
「もう少ししたら降下し始めますので、席に戻って下さい」
と森村さんが言うので、全員元の席に戻る。ラウンジでみんなと「女だけのおしゃべり」で盛り上がり、かなり気分が良くなったふうの織絵もコーパイ席に座る。
 
ここで座席配置は、コーパイ席の真後ろの席に千里、その後ろに私と龍虎、その後ろに政子と樹梨菜、最後尾に江藤さんと蔵田さんとなった。織絵がこちらに戻って来たので、千里がコーパイ席を立ち、龍虎がその千里に譲るように私の隣に移ったので、千里はその席に座った。そしてパイロットの森村さんと何やら航空用語を交えた会話をしていた。
 
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やがて飛行機は高度を下げ始める。
 
「あと20分ほどで丘珠空港です」
と森村さんが言ったすぐ後のことであった。
 
「あ!」
と森村さんが声を揚げ、飛行機が突然進路を変えた。ゴツッという感じの大きな音もした。
 
床が大きく傾き、突然加速度が掛かって「きゃっ!」という悲鳴もあがる。しかし機はすぐに水平を回復し、安定飛行に戻る。
 
「どうしたの?」
と江藤さんが声を掛ける。
 
「何かが飛んできたんです。とっさに進路を変えましたが、機体のどこかに当たりました」
と森村さん。
 
「確かに何か大きな音がした」
「バードストライク?」
 
「かも知れませんが高度が高いので、ひょっとしたら隕石かも。国際便で727飛ばしていた頃にアラスカで一度似たようなことありましたから」
 
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「みんな怪我無い?」
と江藤さんが立ち上がってみんなを見回している。
 
「大丈夫です」
と全員返事したのだが・・・・
 
「森村さん、どうかした?」
「今とっさに操縦桿動かした時に右手を打ってしまって・・・・」
 
「血が出てるじゃん!」
「このくらい大丈夫です」
と森村さんは言ったのだが、血の出方が強い。恐らく機内にあった何か、ひょっとしたら先ほどラウンジで飲んでいた時のグラス(一応片付けたはず)でも飛んできて当たったのかも知れない。
 
「それ動脈切ってる」
と席を立ってきた千里が言う。
 
「織絵さん、どいて。私がそこに座る」
と千里。
「うん」
と言って織絵が右側にあるコーパイ席を立ち、千里がそこに座った。千里は操縦桿を左手で握って計器を見回している。操縦桿は握っているだけで力は入れていないようだ。織絵は千里が座っていた席に移った。
 
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「機長、私がしばらく操縦桿を握ってますから、どうか治療してください」
と千里。
 
千里の自信に満ちた様子を見て森村さんは
 
「うん。じゃお願いする」
と言い、操縦桿から右手を離す。
 
「江藤さん、脱脂綿とかありますか?」
と千里が訊く。
「ある」
と言って救急箱を取ってきてくれる。
 
「冬、その出血場所に脱脂綿を置いて圧迫止血5分してくれない?」
「OK」
 
それで私が脱脂綿を取り出すと
 
「あ、だったらこのビニール手袋使って」
 
と言って江藤さんが渡してくれるので、私はそれをはめててから、森村さんの制服の腕をまくり、出血箇所に脱脂綿を当てて、そのまま右手の指で強く押さえつける。江藤さんもビニール手袋を付けて、アルコール綿で血の付いた腕を拭いてあげていた。機器や床に付いた血もティッシュで拭いている。拭いた脱脂綿やアルコール綿、ティッシュなどはまとめてビニール袋に入れる。
 
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「機長、着陸はリテイクした方がいいですか?」
と千里が森村さんに訊く。
 
「大丈夫です。機体にトラブルは起きていないようですから、このままやりましょう」
と森村さんは計器を確認しながら言う。
 
「だったら私がしばらく機体制御してますから、着陸の直前からお願いします」
「分かりました。それで行きましょう」
 
千里がコーパイ席で操縦桿を計器の指示通りに操作している間に私たちは森村さんの治療をした。その間に森村さんは空港の管制官に連絡し、降下中にバードストライクのようなものが起きたが、機器が正常に動作しているので、このまま着陸したいと伝え了承を得た。
 
やがて5分たったところで指を離して見てみると出血は止まっている。それで私は脱脂綿を交換して、その上に絆創膏を貼った。
 
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「不手際でご迷惑掛けました。村山さん、ありがとうございます。後は私がやります」
と森村さんが言う。
 
「お願いします、機長」
と言って千里は操縦桿から手を離した。
 
それから10分後、G650は美しく丘珠空港に着陸した。
 
機体が指定された駐機場所で安全に停止した所で思わず機内で拍手が起きた。森村さんが立って全員に頭を下げた。
 
空港側にはバードストライクか何かがあったことを着陸前に報告していたので、駐機してすぐに、空港に詰めている整備士さんが来て一緒に機体を見てくれた。するとエンジンその他には異常は無かったものの、右操縦席(コーパイ席)そばに小さな傷が付いていることが分かった。
 
左操縦席に座る森村さんがとっさに飛行物を避けようとしたので、結果的に反対側の右側にぶつかったのであろう。反応が間に合わなければ正面にぶつかっていた可能性もある。
 
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「凹んでもいないし、これは塗装直す程度で大丈夫でしょ」
「大したことなくて良かった」
 

「奥様、大変申し訳ありませんでした。コックピットはあらためてきちんと掃除しておきますので」
と森村さんが江藤さんに謝る。
 
「いや、あなただから良かったと思う。経験の浅いパイロットだったら大事に至ってたかも知れないし」
と江藤さん。
 
「村山さん、唐本さんにもお手数お掛けしました」
「私は止血しただけだし」
「私は操縦桿握ってただけだし」
 
「でもビジネスジェットの操縦のご経験があったんですね?」
と森村さんが千里に訊く。
 
「すみませーん。フライトシミュレータで遊んでいたことがあっただけで、実機を操縦したのは初めてです」
 
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と千里は頭を掻きながら言う。
 
「なんと!」
 
「G450,550はシミュレータで操縦したことがあったので、たぶん同じ会社のだから行けるだろうと思って、やってみました。実際計器もほとんどG550と同じもののようだったし」
 
後で江藤さんに聞いた所によるとG650は昨年発売されたばかりの新型らしい。江藤さんの夫はその15機目を買うのに成功したということだった。江藤さんより先に買ったのはアラブの富豪とかハリウッドのスターとかのようである。現時点で日本国内に登録されているのはこれ1機、G650の免許を持っているパイロットも国内ではたぶん森村さん1人だけということだった(ガルフストリーム機は1機1機免許が違っている。但しG650の免許があれば550,450などの下位機も操縦できる)。
 
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「いや、フライトシミュレータって結構リアルをきちんと再現してますよ。実は私も日々それで練習してますから」
と森村さん。
 
「でもまるで本物の操縦経験があるかのようだった」
と江藤さん。
 
「すみません。ハッタリです」
と千里。
 
「でも実際風で機体が進行方向からずれるのを、村山さんはきちんと制御して正しいルートに戻してました。今日みたいに横風の強い日は、あれけっこう大変なんですよ」
と森村さん。
 
「計器に指示が出ていた通り動かしただけですよ」
と千里。
 
「それをちゃんと読み取れて、ちゃんと操作できたのは偉い。あれはもう素人の腕ではないです」
と森村さん。
 
しかし千里は江藤さんに言った。
「江藤さん、私のハッタリに騙されて、無資格者に操縦桿を預けてしまった森村さんをどうか責めないでください」
 
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「いや、あなたはちゃんと操縦できていたから全然問題ないよ」
と江藤さんは言ってから
 
「でも見事にそのハッタリに全員騙されたね」
と言って江藤さんは笑う。
 
「未経験の人が操縦していたなんて、俺たちは、知らぬが仏だったかもね」
と蔵田さんも笑っていた。
 
千里がG550のシミュレーターは持っているがG650のはまだ入手していないと言うと森村さんは、そちらに送ってあげますよと言ってメールアドレスを交換していた。
 
それで飛行機の整備をする森村さんを残して、私たちは歩いて空港のビルまで行き、そのまま外に出た。飛行機から離れる時に千里が小さな声で
 
「こうちゃん、ありがとね」
と言ったのを私は耳にした。
 
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こうちゃん?蔵田さんは樹梨菜から「コー」と呼ばれているけど・・・・しかし千里がそれをつぶやくように言った時、蔵田さんはずっと前の方を歩いていた。私は、何だろう?と訝った。
 

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日産レンタカーでスカイライン・ハイブリッドを2台予約していたので、1台は樹梨菜さんが運転して、蔵田さんと江藤さん、そして政子が乗り、もう1台は千里が運転して、私・織絵・龍虎が乗る。ここで席は助手席に龍虎を乗せて、後部座席に、私と織絵である。こうするのは、龍虎が男の子であるためというより、むしろ龍虎が織絵のおもちゃにされないためである!実際織絵はかなり龍虎のことが気になる雰囲気だ。
 
この段階で龍虎が男の子であることを知っているのは私と千里だけだったのだが、これは明かした方が平和のためだと思ったので、私は織絵に
 
「ちなみにこの龍虎ちゃんは男の子だからね」
と言った。
 
「うっそー!?」
と織絵はマジで驚いていた。
 
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「女の子になりたい男の子?」
「別になりたくないですー。普通の男の子です」
「いや、絶対普通じゃない。だいたい《りゅうこ》って女名前じゃない」
「ボクの名前は空を飛ぶ龍に、吼える虎なんですよー」
「そういう字か!」
と言ってから
 
「でも性転換したいんでしょ?」
とまだ訊いてる。
 
「性転換はしたくないです。ボク男ですよー」
「恥ずかしがらなくてもいいよ」
 
「でさ。織絵、この子が男の子だということを蔵田さんには話さないようにしてよ」
と私が言う。
「ああ、それ知られると、貞操が危ないね」
と織絵。
 
「え〜〜!?」
と龍虎が戸惑うような声をあげた。
 
「蔵田さんは女の子には全く興味無いけど、可愛い美少年とかいたら、奥さんがそばに居たって、浮気のために万難を排して夜這いしてくるから」
と私。
 
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「あははは」
と織絵は笑っているが、龍虎は嫌だぁという顔をしていた。
 
「でも男同士で、Hなこととかできるんですか?」
「男の子だって、ちゃんと穴があるじゃん」
「穴?」
と言って龍虎はしばし考えていたが
「まさか・・・」
と言う。
「まあ、あそこしかないよね」
「うっそー!?」
 
どうもそういう行為は龍虎の想像外だったようである。
 
「ちなみに、龍虎ちゃんって、まだちんちん付いてるんだっけ?」
「付いてます!取るつもりもないですー」
「ほんとかなあ」
 
 
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