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■夏の日の想い出・南へ北へ(6)

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タクシーでアパートに戻った玲羅は階段を上っていった所で自分の部屋の前に女性が立っているのを見てビクッとした。その女性が手を振る。
 
「お姉ちゃん!?」
「部屋があそこまで酷いとは思わなかったよ」
と千里が言う。
 
「ごめーん」
「朝までに私が少し片付けるから鍵貸して」
「あ、うん。えっと鍵って・・・私は?」
「近くのCホテル予約だけしたから、今晩はそこで泊まって」
と言って玲羅に1万円札を渡す。
 
「分かった!でも着替えとかだけ持ってく」
 
それで玲羅は鍵を開け、その鍵を姉に渡した後、部屋の中から荷物の中に埋もれている!パンティとブラジャー、キャミソールとトレーナーを引っ張り出してその付近に埋もれていたコンビニの袋に詰めると、後を姉に任せてCホテルに向かった。
 
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玲羅が立ち去るのを見送ってから、千里は階段の下で待機していた《せいちゃん》たちに声を掛けた。
 
「じゃ持って来て」
「OK」
 
先ほど玲羅のアパートに寄った時、想像を絶する!散らかりように呆れ、すぐに数人の眷属をホームセンターに行かせて、収納用品その他を買ってこさせていたのである。本棚、新書用本棚(コミックスも収納可能)、エレクターのスティールラック、4段のプラスチック製衣装ケース6個、整理ダンス2つ、衣装ロッカー2つ、モスボックス10個、食器棚2つ、中型冷蔵庫!ファンヒーター2個と灯油、電気カーペット、配線用の電気コード、そして段ボール箱30枚!と運び込む。
 
そして眷属総出で片付け始めた。
 
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最初に寒いからと思ってエアコンのスイッチを入れたら凄まじいほこりを含んだ空気が吹き出してくる。
 
「これは酷い」
と言って停める。
 
「フィルター掃除してくるよ」
「よろしく」
 
「ファンヒーター入れよう」
 
買ってきたファンヒーターのひとつを台所に部屋側に向けて置き、灯油を入れてスイッチを入れる。
 
「これで何とかなるな」
 

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4畳半の内容物、そして押し入れの中の物を、男の眷属たちが「えいや」と取り敢えずまるごと6畳の方に移動させ、床を掃除した上で、衣装ケースを4個は押し入れの中、2個は部屋に重ねて置く。整理ダンスや本棚を置き、まずは荷物の中の本を取り出しては本棚に立てていく。電気の配線がたこ足になっていて危険な感じだったのを、整理する。もうひとつのファンヒーターを4畳半側に置き、こちらも灯油を入れて点火する。
 
「服はコインランドリーに持って行く」
「よろしく」
 
とてもそのままタンスに入れられないので洗濯乾燥させてから収納するのである。
 
ゴミ袋も大量に買ってきたので、明らかなゴミは分別してそこに入れていく。
 
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「千里、割れたティーカップとかは要らないよな?」
「うん。ゴミだね」
「千里、破れたキャミソールは要らないよね?」
「うん。捨てていいと思う」
「散らばってる未使用っぽい生理用品どうする?」
「捨てよう!」
「漫画雑誌とかどうする?」
「取り敢えず紐で縛っておいて。必要なのがあったらそこから取り出すだろうし」
 
「生ゴミ関係は明日朝回収のある地区のゴミステーションにこっそり出してくるよ」
「ああ、いけないことだけど、今回は仕方ない。これ酷すぎるもん」
 
「千里は寝てろよ。明日があるだろ?」
「じゃそっちで毛布かぶって寝てるから、何かあったら起こして」
「OK」
 

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龍虎は、友人の彩佳としばしLINEのやりとりをした後、そろそろ寝ようかと思ったが、マリが買ってくれたパジャマが手元にないことに気づいた。
 
あれ〜?と思って考えてみると、さっき渡された時、量が多かったので、千里さんがいったん持ってくれたような気がする。もしかして、千里さんうっかりそのまま自分の部屋に持ってっちゃった?
 
龍虎は千里がとっても「うっかり」の多い人であることに、ここ数年の付き合いで気づいている。
 
千里さんに電話する。
「どうしたの?龍ちゃん」
「すみません。ボクのパジャマそちらに行ってませんよね?」
「ちょっと待って」
と言って調べて?いるようだ。しかし背景に何だかたくさんの人が動いているかのような音が聞こえる。テレビでも見てるのかな?
 
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「あったよ。こちらの部屋まで取りに来て」
「はい。すみません」
 

それで、龍虎は自分の部屋の鍵を持って廊下に出て、千里さんの部屋のドアをノックする。ドアが開けられる。
 
「え!?」
「まあ入りなよ」
「あ、はい!」
 
龍虎を招き入れた人物は千里ではなかった。しかし見覚えのある人物だった。
 
「久しぶりだな」
とその人物は言った。
 
「こうちゃんおじさんでしたっけ?」
「そこで『おにいさん』と言っておけば、褒美に何か望みをひとつ叶えてやっていたのに」
と《こうちゃん》は言った。
 
「望み?」
「女の子にしてあげてもいいぞ」
「それはまだいいです」
「ふむふむ」
 
「やはり、あれって夢じゃ無かったのね?」
「夢と思っていた方がいいよ。人には説明できないだろ?」
「そうですよねー」
 
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「でも可愛くなったな」
「そうですかぁ?」
 
龍虎は彼と話していて凄くリラックスする気分になった。今日は蔵田先生とかケイ先生とかとずっと一緒でかなり緊張していたのである。このリラックス感は・・・そうだ、川南さんとおしゃべりする時みたいな気楽さだ。
 

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「今、中学生?」
「はい、そうです」
「じゃセーラー服の女子中学生か」
「学生服の男子中学生ですよ!」
 
「なんだ。女の子になったんじゃなかったの?」
「なってません。ボク男ですよ」
「でも女の子になりたいんだろ?」
「なりたくないです!」
「だって女物の服着てるじゃん」
「これ、アルトお姉さんに着せられちゃったんですよ」
「なんで?」
 
「朝は学生服着て、上島のおじさんの家に行ったんですよ。でもアルトお姉さんが、その服は可愛くない。それにケイ先生のマンションは男子禁制だから学生服では入れないよとか言われて、この服を着せられちゃったんですよ。ついでに下着も女の子パンティとキャミソール着せられて。ブラジャーは拒否しましたけど」
 
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「ブラジャーくらいつければいいのに。俺もブラジャー好きでよくつけるぞ」
「それは変態なのでは?」
 
《こうちゃん》は龍虎の至近距離まで顔を近づけた。
 
「でもお前、顔の作りが女顔だよ」
「あ、それは言われたことあります」
「ほんとにチンコ付いてるんだっけ?」
「付いてますよー」
「じゃ見せてみー」
「なんでですかぁ?」
「男同士だし見られても構わんだろ?俺のも見せてやるぞ」
「見せてもらわなくてもいいです!」
 
ともかくもそれで龍虎はスリムジーンズとパンティを脱いでその付近を《こうちゃん》に見せた。
 
「まだ毛が生えてないのか」
「ボク発達遅いみたい」
「金玉小さいな」
 
「ちょっとぉ、触るのやめてください」
「これまだ幼稚園生並みの金玉だ。チンコもやはり小学校低学年並みだ」
 
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龍虎はドキっとした。確かに自分のは凄く小さいような気がしていたのである。
 
「医者に診せたことある?」
「こんなの見せません」
「男になりたいのなら、男性ホルモンとか処方してもらえばいい。俺が調達してきて渡してもいいけど」
 
「男性ホルモンは・・・・打ちたくない気分なんです」
「んじゃ女性ホルモン打つ?」
「え〜〜!?」
 
「まだお前の骨格とか、脂肪の付き方は、性的に未分化だよ。今ならまだ女性ホルモン打ってれば、完璧に女らしい身体になれるぞ」
 
「それ、どうなるんですか?」
「女性ホルモン打って女性的に身体を発達させて、18歳くらいになったら、ちゃんと手術して女になればいい」
 
「手術かぁ・・・」
「やはり女になる手術受けたい?」
 
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龍虎は少し悩むようにして言った。
 
「ボクまだ自分がよく分からないんです」
「ふーん」
 
「自分が男か女かと言われたら、男だと言えます。別に女の子になりたい気持ちは無いつもりです」
「でも女の子になっちゃってもいい気もするのか」
「うーん。そうかも知れない気もするんですよね。積極的に女の子になりたい訳じゃ無いけど、何かの間違いで女の子になってしまったら、それでも何とかなるような気がして」
 
「お前、友達とか、男の友達が多い?女の友達が多い?」
「女の子の友達ばかりです。ボク身体があまり強くないし、体育もいつも1ばかりで、男の子はあまり相手にしてくれない感じ。でも女の子とおしゃべりしてるのは楽しいんですよね」
 
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「恋人作るなら、男?女?」
「女の子です」
「女の子への友情と恋愛感情って区別つく?」
 
「実は・・・」
と言って龍虎は悩むように言った。
 
「ボク本当は恋愛って分からないんです」
「だろうな。お前、性的に未発達だから、恋愛感情もまだ出てこないんだよ」
「もう少し発達したら出てきますか?」
 
「男性ホルモン投与してたら、女の子が好きになると思う。女性ホルモン投与してたら、男の子が好きになると思う。あれって結構ホルモンの影響が強いみたいだぞ」
 
「そっかー」
と言ってから龍虎は少し考える。
 
「千里さんは最初から男の人が好きだったんですか?」
「あいつは小さい頃から女性ホルモンに曝されてるからな」
「へー!」
「あいつは本当は6歳で死んでしまう運命だったんだよ。でも色々な偶然と神様の気まぐれのお陰で、生きながらえてきた。但し女としてな。男の千里は12歳で死んでしまったんだよ。でも女の千里は多分100歳まで生きる」
 
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「思うんですけど、ボクももしかしたらあの時死ぬはずだったということは?」
「うん。お前は本当はあの手術の最中に死ぬはずだったんだよ。だから死ぬ前にお前が空を飛びたいと言っていたからというので、空を飛ばせてやったんだよ。でも偶然の作用でお前の寿命は延びた」
 
「ボクいつ死ぬんですか?ボク20歳まで生きられないような気がしていて」
「少なくとも20歳や30歳で死ぬことはないから安心して生きな」
「こうちゃんおじさん。ボクの寿命を知っているんですか?」
「知っているが言ってはいけないことになってる。でも寿命なんて気にすることないよ。死んでみれば分かるしさ」
 
「そうですよね!でも取り敢えず20歳までは生きられるんだったら、少し頑張ってみようなかあ」
 
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「ああ、日々自分ができるベストのことをしていくことが、良い人生につながるんだよ。日々後悔ばかりしてたらダメだぞ」
 
「はい!」
と龍虎は明るく答えた。
 

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夏の日の想い出・南へ北へ(6)

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