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■夏の日の想い出・瑞々しい季節(10)

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「男の娘かぁ」
と言ったまま、中村さんは少し考えているふう。
 
「千里ちゃんは自分は男の娘だって言っているけどさ」
「はい?」
 
「あれ、嘘ってことは?」
「へ?」
 
「だってあの子、完璧に女の子だよ。さっきマリちゃんからも訊かれたけど、あの子が小さい頃に法事で見かけた時もふつうに女の子してたし、女児用の喪服を着て、故人に花束捧げたりとかしてるし」
 
「千里姉がそんなことしてたんですか?」
「うちの母ちゃんが、女湯で千里ちゃんと遭遇したみたいだし」
「うーん。。。それは物凄く完璧な人はうまく誤魔化して女湯に入っちゃう人あるんですよ」
 
「それに気のせいかなあ。私、千里ちゃんがオリンピックに出るというからさ。身体の調子の悪い所とかあったらサービスでヒーリングしといてあげようと思ったんだけど、その時、子宮や卵巣の波動も感じたんだよ。だからあの子、実は子宮と卵巣があるのでは?あれって性転換手術で移植したりするんだっけ?」
 
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「卵巣や子宮の移植というのは聞いたことありません」
 

「中村さん、うちのケイも子宮の波動とか無いですか?」
と政子が訊く。
 
「ん?」
と言って中村さんは私を見ている。つい緊張してしまう。
 
「あんた、子宮があるよね?」
「え〜〜〜!?」
「最近、何かの治療をした跡がある。子宮筋腫か何かになった?」
と中村さんは訊いてくる。
 
「あの、こないだ奈良県でちょっと変わった巫女さんに、というか本職はお医者さんらしいんですけど、会いまして。その人が私は子宮癌だと言って『治療してあげるよ』と言われて、なんか治療されている感じがありました。青葉がよくしている霊的な治療に似ていましたが、やや違う雰囲気で」
 
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政子は物凄くわくわくした目をしている。
 
「もしかしてケイって妊娠可能ですか?」
 
「うーん・・・。子宮だけあっても卵巣が無ければ妊娠は難しいな。ケイちゃんに卵巣の波動は感じないよ。これだけだと、病気か何かで卵巣を取った女性に近い波動なんだよね」
と中村さんは言っている。
 
「青葉は感じる?」
と政子は青葉にも尋ねるが
 
「改めて見てみましたが、私にはケイさんに子宮は見えません」
と言っている。
 
「まあ私のセンサーと青葉のセンサーはタイプが違うからなあ」
と中村さん。
 
「ちょっとお腹をメスで切ってみればハッキリするよね?」
「勘弁して〜」
 

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青葉は手がけている案件の処理のため、東京付近に一週間くらいいるということであった。その間は、さいたま市内に住む婚約者・彪志君の所に泊まるということだった。
 
「ゴールデンウィークの頃に手がけていた案件?」
と私が訊くと
「あれは解決しました。本当に大変な案件で、千里姉の手も煩わせましたが」
と青葉は答える。
 
「まあそのあたりはお互いに助け合って行けば良い」
と中村さんも言っていた。
 

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その千里は6月30日までヨーロッパで合宿を続け、7月1日に帰国するが翌日2日から都内のトレーニングセンターでそのまま国内合宿に入る。そして国内3ヶ所で、来日したセネガル代表との壮行試合が7月5,8,9日に行われることになっていた。
 
その千里から7月2日の夜、私の携帯に連絡がある。
 
「お疲れ〜。今日は昼間、青葉と中村晃湖さんが来てたんだよ」
「それはまた珍しい遭遇だ」
 
「千里と青葉と中村さんが実は3人とも親戚なのではという話で盛り上がった」
「ああ、早速その話をしたのか」
 
「青葉と千里が親戚かもというのは、千里いつ気づいたの?」
「最初から気づいていたけど」
 
うーん。。。。千里ってこういう奴なんだ!
 
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「だからこそ保護したんだよ。まあ親戚なら保護する責任の一端はあるかなと思ったし」
 
「でも大船渡の避難所で会った時は、青葉から祖先の話とか聞いてないよね?」
「だって青葉が持っている固有の波動は、私の波動とも中村晃湖さんの波動とも似ている。これは師弟か親族でないとあり得ないんだよ」
 
うむむむ。
 

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「だから、朋子さんが青葉の後見人になるという申請を出した時も、遠縁の親戚なのでというのを書き添えている。それですんなり認可されたんだと思うね。まあ当時はどういうつながりかと聞かれたら答えに窮していた。私は方便で親戚と書くといいと朋子さんを唆したんだけど、結果的には正しかった」
 
「ちょっと待って。千里と青葉が親戚というのは聞いたけど、千里と朋子さん、結果的には桃香も親戚なの?」
 
「そうだよ。あ、それは晃子さんから聞かなかった?」
「聞いてない」
 
「それも一緒にこないだ晃子さんと検討したんだよ。結論から言うと、青葉のお父さんのお母さん(梅子)のお母さんで、巫女をしていた麻杜鹿(まどか)さんという人がいるんだけどね」
 
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「うん」
 
「その人のお姉さんに安紗呼(あきこ)さんという人がいて、この人の娘の敬子さんが、朋子さんのお母さん」
 
「待って」
 
と言って私は千里から聞いた内容を紙に書いてみた。
 
「じゃ青葉のお父さんと桃香のお母さんが又従姉弟になるんだ?」
「そうなる」
「ということは青葉と桃香は、えっと、またいとこの子供同士って何て言うんだっけ?」
「みいとこ(三従姉妹)だと思う」
 
「凄いね。そういう関わりがあったなんて。あれ?とすると千里と桃香もつながっているんだっけ?」
 
「青葉を介してつながっているだけだよ。青葉の父系統が桃香の母系統とつながっていて、青葉の母系統が私の父系統とつながっている」
 
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「なるほどー」
 
「だから青葉はクロスロードなんだよ」
 
「確かにあの子は色々な意味で交差点だよね」
 

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「あ、それで冬に頼みがあるんだけど」
「何だろう?」
 
「私も詳しいことは聞いてないんだけどね。近日デビュー予定の山森水絵なんだけど」
「あ、うん」
 
彼女は『鴨乃清見の曲を歌う歌手募集』オーディションの優勝者である。
 
「楽曲に緊急に調整の必要ができたらしいんだよ。でも私はさすがに作業する時間無いし。超忙しい冬に頼んで悪いんだけど、見てやってもらえないかと思って」
 
「いいよ。今の時期は時間の融通が利くし。誰に連絡すればいい?」
「毛利五郎さんに」
 
あの人か!
 
「分かった。連絡して対応するよ」
「助かる。どこかで埋め合わせするからね」
 
「いや、私と千里はお互いにいろいろ助け合っているし。あまり気にしないで」
「そうだね。こちらはとにかくオリンピックが終わるまではほとんど時間が無いから」
 
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「だよねー」
 

それで私は毛利さんに連絡した所、向こうは都内のスタジオで半ばパニックになっていたようである。
 
彼は今、テレビ番組の企画で選ばれた女の子3人組のユニットのお世話をしているし、一方でアクアの新しいアルバムの企画も進めている。更に山森水絵のデビューにも関わっているらしい。
 
「いや、助かったよ。おかげで僕、しばらくアパートに帰ってなくてさ」
「大変ですね」
「ずっと都内のホテルで過ごしてるけど、来月のクレカの請求額が怖い」
「そんなの雨宮先生か誰かにでも一時的に肩代わりしてもらえば?」
 
「俺、雨宮先生には2000万円くらい借金があるから、なかなか言えなくて」
 
うーん。この人、お金の管理がまるで出来ないみたいだしなあ。
 
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毛利さんと私が話している時に、スタジオに入って来た女性を見て私は驚いた。
 
「執行さん!」
「ケイちゃん、久しぶり」
 
それはローズ+リリーの★★レコード側の初代担当秋月花謡子さんであった。2010年3月で★★レコードを退職した後、福岡市在住のイベンター関係の男性と結婚して、執行(しぎょう)という苗字になっていた。
 
「執行さんは山森水絵と何か関わっているんですか?」
「うん。%%レコードの山森担当が私」
「%%レコードに入られたんですか!?」
 
「旦那のいたイベンターが去年倒産してね」
「あらあ」
「それでツテをたどって、東京のイベンターに移ってきた」
「知らなかった」
「その時、私のことを知っていた%%レコードの矢作部長が私にA&Rしないかと言ってきて」
「わあ。スカウトされたんだ!」
 
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「山森水絵、じゃんじゃん売るからね。ローズ+リリーを吹き飛ばすかもしれないけど、よろしく」
 
「こちらも望む所です」
と言って私たちは執行さんと握手をした。
 

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千里から連絡のあった修正箇所というのは、タイアップを組んでいる企業からの注文で、楽曲の歌詞を少し修正し、結果的にメロディーや伴奏などもいじる必要が出てくるという話であった。千里の相棒の作詞担当・蓮菜も今多忙で手が回らないらしい。
 
それで私は政子を呼んだ。政子は佐良さんの運転する車でスタジオにやってきた。政子も執行さんを見てびっくりしていた。
 
「このあたりの物語の展開が、タイアップしている企業の販売してる商品との兼ね合いでまずいんで、手直しして欲しいいんですよ。醍醐春海さんも葵照子さんも自由に修正していいと言ってますから」
と執行さん。
 
「ええ、私もそう聞きました」
と私。
 
「面倒くさいなあ」
と政子は言っているが
 
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「まあ、そう言わずに。できるだけ葵照子っぽい歌詞で書き直して欲しいんだけど。しゃぶしゃぶにつれてってあげるからさ」
と私が言うと
「了解〜。やる」
と言って張り切った。
 
「ケイちゃん、僕もしゃぶしゃぶ食べたい」
などと毛利さんが言っているので
「じゃ後でサービス券でも買ってきて差し上げますよ」
「サンキュー!」
 

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それで政子が歌詞を修正、というより1コーラス完全に書き直す形になるのだが、それを修正して、私もそれにあわせて楽曲の構成を一部修正する。特に歌詞に合わせて鳴らしている効果音的なサウンドや、歌詞の歌う情景に合わせて伴奏をチューニングしている部分の手直しが必要だった。歌詞が変わったからといって、ここまで伴奏をいじるというのは珍しい。プロダクション側がこの山森水絵という歌手に物凄い期待を掛けて、予算もふんだんに取られているのだろう。
 
結局明け方くらいまで掛けて作業した。単純作業で済むような所は執行さんも随分手伝ってくれた。
 
早朝ではあったが、だいたいできた所で千里に電話して聞いてもらい了承を得る。それで明日スポンサーの人に聞いてもらってOKが出ればすぐにも伴奏者と山森水絵を呼び、録り直すということにする。
 
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「でもこれいつプレスするんですか?」
と私が執行さんに尋ねると
 
「昨夜からプレスする予定だったんですよ」
と聞いて驚く。
 
「じゃ最初からスケジュール違いですか」
「まあデビューなんて、いつもこんなものだよ」
と毛利さんが言っていた。
 

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夏の日の想い出・瑞々しい季節(10)

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