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■夏の日の想い出・瑞々しい季節(2)

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「でもアルバムの構想練るのって、どういう所に行って練るんですか?」
と大波さんは話題を変えるように言った。
 
業界の裏話は訊いてもあまり話してくれないようだと判断したようである。
 
「12月に発売するアルバムは『The City』といって都会の風物を歌い込んだので、世界のあちこちの都市をロケハンしてきたんですけどね。その次のは『やまと』というタイトルで、日本の伝統美のようなものを歌えたらと思っているんですよ」
 
「ああ、それもいいですね。だったら京都とか奈良とか見るんですか?」
「ええ。今回もこの後、奈良方面に行って、東大寺とか法隆寺とか見てこようかと思っているんですよ」
 
すると大波さんは突然沈黙して何か考えているようだった。
 
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「私がですね。小さい頃、祖母に連れられて奈良県の田舎に行ったことがあるんですよ。凄くいい雰囲気だったんだけど、あそこどこかなあ。ちょっと不思議な体験をして」
 
「不思議な体験ですか?」
 
「まだ4−5歳頃の記憶だから、いろいろ記憶が編集されてしまっているんだろうと思うんですけどね」
 
「ええ」
 
「凄く大きな龍が居て、私はその龍を見つめてじっと立っていた。そんな記憶があるんですよ」
 
「へー!」
 
「私、その時、迷子になっちゃってたんですよ。それで泣いていた時にその龍が現れて。それでその龍が教えてくれた方角に行ったら、おばあちゃんに会えたような気がして」
 

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「優しい龍ですね」
と私が言うと、政子はピクッとした。
 
そしておもむろに《未開封の》手紙の封筒を取り出すと、その封筒の表の空いている所に詩を書き始めた。
 
松山君からの手紙である。
 
しかし政子はきっとこの手紙は開封しないつもりなのだろう。
 
松山君は前日、露子さんと結納をした。
 

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政子が詩を書いている間、会話は停まる。
 
しかし会話は停まっていても、政子の食事は進む!!
 
詩は20分ほど書けてできあがった。封筒の表は字で埋まっている。最後はかなり小さい字で書き込んである。もうフレーズの順番が判然としないくらいである。
 
「冬、これ何かの紙に清書して」
と言って、政子はその封筒を私に渡す。
 
「じゃ書き写してから返すね」
「ううん。書き写したらその封筒は捨てていい」
「分かった。じゃ捨てる」
 

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「でも、私たち、竹生島で1度、龍さんと逢ったよね」
と政子が親子丼を追加注文して!言う。
 
「うん。一瞬だけど、龍が天に昇っていく所を見たね」
「凄い」
 
「あの時は五大弁天を巡ったんですよ。宮城の金華山、神奈川の江ノ島、滋賀の竹生島、奈良の天河、広島の厳島」
と私は言う。
 
「ああ、天河にも行かれましたか?」
「ええ。いい所ですね」
 
「わたしが子供の頃行ったのも天河とちょっと似た雰囲気で。私はてっきり天河だと思っていたのですが、母に尋ねたらそれは天河じゃなくて何とかと難しい名前を言っていたんですよ」
と大波さん。
 
「ほほお」
 
「それちょっと興味あります。もし良かったら今度お母さんにどこだったか訊いてもらえません。ちょっと行ってみたいです」
と政子は言った。
 
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「じゃ、今度旭川に帰省した時にでも訊いてみますね」
 
そんな話をしたのが昨年の11月だったのである。
 

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「あ、龍に道案内してもらった場所ですか?」
私は夢舞メッセの控え室で、半年前のことを思い出して大波さんに尋ねた。
 
「ええ。E村のN神社という所だそうです」
 
「なんかそれ名前聞いたことある」
と政子が言う。
「N神社って、元々あった場所が忘れられてしまって、ここがそれではないかというところが5つあるんですよ」
と大波さん。
 
「5つもあるんですか!?」
「ケイさんたちが以前行かれたという天河神社の近くにもひとつありますよ」
「ほほお」
 
「天河神社の近くにあるのが下社、更に奥地のU村にあるのが奥社、K村のわりと町中にあるのが上社、Y町にあるのが本社、そしてE村にあるのが中社と言うんですけどね」
 
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「なんか本家と元祖と家元と宗家と真打みたいな話だ」
 
「私が行ったのはどうもE村のN神社中社らしいです」
「おぉ!」
 
それで私たちは今回のイベントが終わった後、E村に行ってみることにしたのであった。
 

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6月24日の夜は21時頃にゴールデンシックスのメンバーと分かれて部屋に入る。私は明日のライブのために寝ておきたかったのだが、政子が「遊んで、遊んで」と言って、なかなか寝せてもらえず、結局夜中の2時頃になってから「もういい加減寝ようよ」ということになる。
 
結局普段の寝る時刻である。
 
ちなみに明日のステージは21時からである。ゴールデンシックスは16:00からで、大波さんはそちらのステージが終わってからローズ+リリー側に合流してくれる。実際にはカノンとリノンにホッシー・カーナ(穂津美・香奈絵)姉妹も最後までステージを見ると言っていた。ノノ(橋川希美)さんは愛知県まで帰らなければならないということで、20時頃帰ると言っていた。
 
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それでベッドでうとうとと仕掛けた所で電話がある。着メロで千里と分かるので取る。
「ドーブリーデン」
と千里は第一声で言う。
「あ、えっとドーブリージーン」
 
私はロシア語の「こんにちは」かと思い、挨拶を返す。
 
「あ、ちょっと発音が惜しい。チェコだとジーンじゃなくてデーンという感じなんだよね」
「チェコ語なの!?」
「今チェコに来ているから」
「ああ。海外合宿だっけ?」
「うん。ブラハ・オープンという大会に参加していた。さっき日本は全試合が終わった。今最終戦のカナダとチェコの試合やってるけどね」
 
「大会に出てたんだ!どうだった?」
「うん。優勝したよ」
「すごーい!」
「カナダがBチームだったからなあ」
「へぇ」
 
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「あ。それでさ。冬に伝えた方がいいと思って」
「うん?」
「明日、もしかしてE村に行くんじゃないかと思って」
「よく知ってるね!大波さんから聞いたの?」
「ああ、大波布留子が関わっているんだ?」
「ゴールデンシックスで出るついでにローズ+リリーの演奏にも参加してもらう」
「なるほどー。それでだね。桃を持って行ってあげて」
 
「桃?」
「E村のN神社の神様は桃が大好き」
「へー!」
「2月に私たちが福島まで凄い時間で行くことができたのはそこの神様のおかげだから、よくよくお礼言っといて」
「そうなんだ!」
「私は3月にお礼参りに行ってきた」
「それだったら、もっと早く教えてくれてたら、私もお礼参りに行ったのに」
「冬は忙しいと思ったしね。それに神様のことは神様に奉仕している私みたいなのが動けばいいと思ったし」
 
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「なるほど」
 
千里は「もし変な男の娘親子に会ったらよろしく〜」などと行って電話を切ったが《変な男の娘親子》って何だ??
 

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それで私と政子はロックフェスタが終わった翌日の6月26日、大阪市内のレンタカー屋さんでアクアを借りてから、デパートで和歌山県産の桃を1箱調達する。それをアクアの後部座席に置いて、私たちは奈良県E村を目指した。
 
政子が運転したいというので、阪神高速から近畿道を抜けて南阪奈道路を東行するところまで運転させる。
 
取り敢えず政子が運転している間は、こちらはあれこれ「いたづら」されないのがいい所である!
 
一般道に降りた所で運転交代し、国道を1時間ほど走ってE村に到達した。そろそろじゃないかなと思うものの、なかなか目的の神社が見あたらない。道路沿いの民家の前で立ち話をしているおばあちゃん方を見かけたので車を停めて
 
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「すみません。このあたりにN神社ってありませんか?」
と尋ねてみた。
 
「ああ、ここからすぐ先だよ」
「ありがとうございます!」
 
それで実際車を走らせてみると、その先のカーブを曲がった所に神社の鳥居があった。
 

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その辺に駐めておいてよさそうなので、鳥居の前にスペースがある所に車を駐める。桃の箱を私が抱えて中に入っていく。
 
社務所を見たので、私は玄関を開けて呼び鈴を鳴らした。
 
40代くらいかなという感じの巫女装束の女性が出てきた。
 
「すみません。お参りに来たのですが、ちょっとこちらの神様にお世話になったので、お礼に桃を奉納したいのですが」
 
「あら、それはそれは。ここの神様は桃が大好物なんですよ」
「そうですか。良かった!」
 
「お参りは済まされました?」
「いえ。これが重いもので奉納してからと思いまして」
 
「じゃ昇殿してください。祝詞くらい奏上しますので」
「ありがとうございます」
 

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それで結局、私はその桃の箱を持ったまま!拝殿にあがる。あがる時に巫女さんは大幣を振ってお祓いをしてくれた。
 
「すみません。ここに置いてください」
と言われる場所に桃の箱を置く。
 
重たかった!!
 
「そうだ。お名前は?」
「東京から参りました、唐本冬子と中田政子と申します」
 
それで漢字を確認して名前を書き留めている。
 
巫女さん・・・・と思ったのだが、もしかしたら女性神職だったのかもしれない。彼女は私たちを座らせると、自分で太鼓を叩き、祝詞を奏上しはじめた。その祝詞が物凄く心地良い。
 
そして結構長い!!
 
ある程度祝詞が進んだ所で、彼女は龍笛を取り出して吹き始める。
 
その音色がこれまた美しいと思った。
 
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千里の龍笛とも青葉や天津子の龍笛ともまた趣きが違う。こういう龍笛の音色もあるんだと私は認識を新たにした。
 
そして聴きながら、私はある認識を深めて行った。
 
この人はおそらく国内でもトップレベルの龍笛の名手だ。物凄く深い、味のある演奏である。この人は40代に見えるが、この音だけ聴いたら70-80代の人間国宝級の人の演奏だと言われても信じてしまう。
 

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夏の日の想い出・瑞々しい季節(2)

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