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■夏の日の想い出・瑞々しい季節(3)

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玉串を捧げ、長い祈祷が終わった。
 
「ありがとうございました」
と私は言った。
 
「いえ、こちらこそ遠いところからお疲れ様でした」
と女性神職さんは言った。
 
「あの」
「はい?」
 
「私は音楽に関わる仕事をしているのですが、あなたの龍笛はおそらく国内でもトップクラスの音に聞こえました。お名前を教えていただけませんか?」
 
「いいですよ。あ、名刺をあげますね」
と言って彼女は私に名刺をくれた。
 
慌てて私と政子も名刺を出す。
 
彼女の名刺には
《医学博士 西川まどか》
と書かれていた。
 
「お医者さんですか!?」
「ええ。東京の方で17年ほど医者をしていたんですけど、今は田舎に戻ってきてこちらの神社に時々顔を出しているんですよ」
 
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「へー!」
 

その時、西川さんはふと気づいたように私に言った。
 
「あんた、癌ができてる」
「え!?」
「子宮癌だ」
「あのぉ、私、子宮は無いんですけど」
と私は焦ったように言う。
 
「無くてもこれは子宮癌だ」
「そんな無茶な」
「治してあげるよ」
 
と言って彼女は私のおへその下付近に手を当て、目をつぶって何かぶつぶつと唱えていた。その付近が暖かくなってくるのを感じる。何だろう?この感覚は。青葉にヒーリングされている時の感覚と似ているが、やや違う感じである。
 
「治ったよ」
と言って西川さんは笑顔で手を離した。
 
「癌細胞は全部焼き尽くした」
「ありがとうございます!」
 
どうも青葉がやっている霊的治療と似たようなもののようである。
 
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「あなたかなり仕事が忙しいでしょう?」
「あ、はい」
「もう少し身体をいたわらないと、早死にするよ」
「気をつけます」
 
すると政子が言い出す。
「私は異常は無いですか?」
「うーん」
と言って西川さんは政子の身体を眺めている。
 
「少し胃拡張の傾向があるなあ」
 
まあ、あれだけ食べてれば胃も拡張しちゃうだろうね!
 
「他は特に問題無いよ」
「ありがとうございます!」
 

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「あのお。治療のお礼はどのくらいお渡しすればいいでしょう?」
「ああ。私の気まぐれだから、そちらも気持ちでいいよ。適当な額を賽銭箱に入れておいて」
 
「じゃ10万お納めします」
と私が言うと
「神職が戻って来たらびっくりするかもね」
と言って西川さんは笑っていた。
 

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「でもここはすごく瑞々しい場所ですね」
と私はふと周囲の雰囲気に気づいて言った。
 
実は車を降りてから拝殿までは重たい桃の箱を抱えてきたし、そのあとここで祈祷をしてもらい、周囲のことまで気を配る余裕が無かったのである。
 
「水の中にいるような感覚でしょ?」
と西川さんが言う。
 
私はしばらくその場の空気を感じ取りながら考えてから言った。
 
「むしろ、龍神様の体内にでもいるような感覚です」
 
すると西川さんは笑って言った。
「あんたは、なかなか良いセンスをしている」
 
「だけど男の娘には会わなかったね」
と政子が言うと、西川さんが
 
「あ、私は男の娘だけど」
と言い出す。
 
「え〜〜〜!?」
「生まれた時は男だったんだけどね〜。男は面倒だなと思って、小学2年の時に女になっちゃった」
 
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「その話、とっても興味があります。詳しく聞きたいです」
と政子が言う。
 

それで私と政子は社務所の方に移動し、お茶を入れてもらって頂きながら、西川さんの長い長い身の上話を聞いたのであった。
 
その話は荒唐無稽なライトノベルのようにも思えたのだが、私には彼女が作り話をしているようには見えなかった。政子はワクワク・テカテカの目で熱心にその話を聞き
 
「やはり可愛い男の子はどんどん女の子に変えてあげたいですよね」
などと言っていた。
 
最後に西川さんは
「でも多分あんたたちが聞いた男の娘親子ってのは、あいつらのことじゃないかな」
などと言っていた。
 
「心あたりがあるんですか?」
「その子たちは今大阪の方に住んでいるんだよ。しばしばこの村にも来ているけどね」
「へー!」
「新しい桃の品種を開発中でね。そのうちこの村で土地を買って、村の名産にしたいと言っている」
「それ成功するといいですね」
 
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「でも男の娘親子って、お母さんと息子がどちらも男の娘なんですか?」
「あの母親の方は男だけど子供を産んだんだよ」
「やはり、そういう人いるんだ!」
 
「子供の方はまだ小さいけどね・・・・見た目で分かる。あの子はきっと可愛い男の娘に成長する」
「それは楽しみだ」
 
政子はこの社務所の一角を借りて『風の中の少女』という詩を書き、一方私はこのN神社の瑞々しい空気の中で『Vagari in Aqua』(水中散歩)という曲を書いた。
 

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さてAquaといえば、男の娘疑惑のあるアクアであるが、彼女、もとい彼が現在出演中の『ときめき病院物語II』は9月までの放映であり、その後については昨年の『ねらわれた学園』が好評だったこともあり、再びアクア主演でSFライトノベルを取り上げようという方針になったようであったが、素材として『時をかける少女』を取り上げようということになったと5月上旬に連絡があった。実はアクアの6枚目のCDには、その挿入歌(エンディングテーマになるかもと言われた)を入れる予定にしていたのである。
 
なお番組の主題歌は高崎ひろかが歌う予定だが、そちらの曲は今回は平原夢夏さんが書くらしい。
 
「まあそれで『時をかける少年』というイメージでお願いしたいんですよ」
と川崎ゆりこは言った。今回のプロジェクトに関しては、どうもゆりこが中心になって動いているようである。
 
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「アクアが芳山和子役じゃないの?」
と政子。
「そこを改変して男の子の芳山和夫にするんです」
「アクアの性別を改変して女の子役にすればいいのに」
 
「私はアクアが『時をかける少女』と聞いたから、ケン・ソゴル役かと思った」
「ケン・ソゴルはやはりハーフっぽい人がいいということで黒山明さんが予定されているそうです」
 
「黒山明ってハーフなんだっけ?」
と政子が訊く。
 
「クォーターらしいですよ。おばあさんがフランス人」
「へー。あまりハーフっぽくないね」
「でも背が高いよね」
「192cmだそうです。156cmのアクアとはかなり対照的になりますね」
 
「それだけ身長差があるなら、やはりアクアは女の子役で」
と政子。
「あまり女装させていると、そういうキャラなのかとファンが誤解するので」
とゆりこ。
「いや、そういうキャラだと思うけどなあ」
と政子。
 
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ともかくも、そういうことで私たちは『時をかける少年』のイメージで曲を書くべく、ラベンダーの香りをかぎに北海道まで来たのであった。
 

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「うーん。やはり『時をかける少年』では発想が浮かばない。いったん『時をかける少女』で書いて、最終的に歌詞を性転換させちゃおうかな」
 
などと政子はラベンダー畑を見ながら言っている。
 
「まあいいんじゃない?」
 
「あるいは歌詞にあわせてアクアを性転換させるかだ」
 
「それあまり言うと本人いやがるから」
「いや絶対言われて喜んでる」
 
「そうかなあ」
 

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のんびりと富良野ワインも飲みつつ食事もしつつ詩を3篇ほど書き、政子も「お腹空いたし帰ろうか」などと言っていた時に、カフェに男性1人女性2人のグループが入ってくる。私たちを見て会釈するので、こちらも会釈する。
 
「おはようございます。こちらはお仕事ですか?」
と彼女たちは声をかけてくる。
 
「おはようございます。ロケハンなんですよ。もうだいたい成果を得て帰ろうかと思っていたんですけどね。まあせっかくだし少しお話しましょう」
と私は言った。
 
「じゃ失礼して」
と言って3人は同じテーブルに座る。
 
「どなたでしたっけ?」
と政子が訊く。
 
「チェリーツインの少女Xこと桜川陽子さん、少女Yこと桜木八雲さん、それとそちらのお姉さんは私も初めて」
と私は言う。
 
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「初めまして。陽子の姉で功実(くみ)と申します」
と30歳くらいの女性は言った。
 
「でも私たちの名前をちゃんと知っている人は珍しい」
「うん。チェリーツインのファンサイトでも、名前が出ている所は皆無なのに」
「まあKARIONの先輩だから」
「そのことを知っている人も限られている」
 
「それってどうなってるんだっけ?」
と政子が訊くので私は教えてあげる。
 
「元々陽子ちゃんと八雲ちゃんに、小風・美空、それにもう1人の女の子と5人でメテオーナというグループでデビュー予定だったんだよ。ところが5人の内3人が離脱して、そこに当時は《千代紙》と呼ばれていた私と和泉が合体してKARIONができたんだ。それで離脱した陽子ちゃんと八雲ちゃんは星子ちゃん・虹子ちゃんたちと一緒にチェリーツインを作った」
 
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「ほほぉ」
 
「チェリーツインのツインというのは星子ちゃん・虹子ちゃんの双子のことなんだけど、チェリーというのは、陽子ちゃんと八雲ちゃんの名字が桜川と桜木でどちらも桜という字が入っているからだよ」
 
「知らなかった!」
 
「うん。そのこともほとんど知られていない」
と八雲。
 
「あれ?でもだったらKARIONって最初は男女混合ユニットだったんだ?」
と政子が訊く。
 
ああ・・・・。
 
「まあ僕はふつう男に見えるかもね」
と八雲が苦笑しながら言う。
 
「男の人じゃないの〜〜〜!?」
 
「戸籍上は女だよ」
と本人はあっさり言う。声は性別曖昧な感じの声である。喉の緊張を凄く弛めながら声を出しているので、かなり男っぽい響きを持っている。
 
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「FTMなんですか?」
「うーん。FTXかもね」
「なるほどー」
 

「でも陽子との間に恋愛関係とかは無いから。僕恋愛対象は男性だし」
「MTFでも恋愛対象が女性って人多いもんね」
「そうそう」
 
「私、八雲にまだ3000万円くらい借金してるから、私の体で払ってもいいよと言ったんだけど、女の子には興味無いと言うし」
と陽子。
 
「うん。僕はバイじゃないから。純粋なゲイだもん」
と八雲。
 
「私、最近ことばの意味が分からなくなって来た」
と政子。
 
「まあ当事者の間でもわからないことが日々増えている気はする」
と私。
 

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「でも私たち、一度チェリーツインと一緒にステージに出たよね」
「うん。2009年のアイドルクリスマスだよ」
「あ、そうか。あの時、一緒だったんだ」
と八雲もその時のことを思い出しているようである。
 
「あれはチェリーツインの演奏形態が大きく転換した日だったんだよね」
と私。
 
「そうなんです。私たちがバックコーラスから大道具に格下げされたんです」
と言って八雲は笑っている。
 
それまでのチェリーツインは、前面で気良姉妹が歌い、後ろの方で少女X・少女Yがバックコーラスする形式であった。もっとも気良姉妹は声を出さないので実際の歌唱は「コーラス」と称して少女X・Yがおこなう。
 
しかしこの日を境に、少女X・Yは、電信柱とか岩とか、背景の類に擬態させられるようになり、人間態(?)で歌唱することはほとんど無くなった(雨宮先生の提案である)。その切替えが行われた当日、私とマリが少女XYの代りにコーラスを務め、少女X・Yは樹木に擬態したのである。
 
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「お姉さんも陽子さんや八雲とさんと同じ牧場で働いておられるんですか?」
と政子は訊いた。
 
チェリーツインは美幌町の牧場で働いている7人で構成しているユニットである。
 
「私は造林会社で働いているんですよ」
「へー! 女性で造林って珍しいですね」
「最初、女は採らんと言われましたけどね。男並みに仕事しますから足手まといになったらクビにしてもらっていいですからと言って採用してもらいました」
 
「実際、お姉ちゃんが山道をさっさと歩くから年配の男性同僚が付いてこれなくて『ちょっと待って』と言われることあるって、こないだ社長さん言ってたたね」
 
「まあだいぶ身体鍛えたしね」
「へー、凄い」
 
「刑務所に入ってた頃は自由時間にすること無いから、許可取ってひたすら運動してましたし」
と功実。
 
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「刑務所って・・・刑務官か何かしてたんですか?」
「いえ受刑者ですよ」
「何なさったんですか〜〜〜?」
と政子が驚いて訊く。
 
「いやあ、深川・旭川界隈で数十件の放火を」
「え〜〜〜!?」
「まあそれで、今造林の仕事をしているのはそのせめてもの罪滅ぼしなんですよ。損害額は親と、陽子と、もうひとりの妹の広子が代わって弁済してくれたんで、本当はそれを親や妹たちに返さなきゃいけないんだけど、とても返しきれません」
と功実。
 

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「毎年30万くらい返してもらってるよ」
と陽子。
 
「うん。そのペースだと返済に600年かかる」
と功実。
 
「じゃ1億8千万円賠償したんですか?」
と政子。
 
瞬時に位取りを間違えずに掛け算する所はさすが政子である。
 
「広子ちゃんが宝くじで当てたのと、あとはチェリーツインの初期の売上で払ったんですよ。チェリーツインのメンバーがみんな、お姉さんの賠償金を優先して払ってあげてといって、売り上げを全部渡してくれたし。兼岩会長も凄い額のお金を個人的に貸してくださったし」
と陽子。
 
「うん。実際問題として損害賠償額の半分は兼岩さんに一時的に立て替えてもらったようなもんだよね」
と八雲。
 
「なるほどー」
 
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「兼岩会長にはもう全額返済しましたけど、私はまだチェリーツインのメンバーに借金を返しきっていない」
と陽子。
 
「まあ10年以内には返済完了するんじゃない?」
と八雲。
「それまでチェリーツインが続いていたらね」
と陽子。
 

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■夏の日の想い出・瑞々しい季節(3)

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