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■夏の日の想い出・種を蒔く人(9)

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(C)Eriko Kawaguchi 2016-04-03
 
3月19-21日、私がKARIONのツアーで沖縄・福岡・金沢と移動していた連休中、愛媛県の今治市で全日本クラブバスケットボール選手権大会が行われた。これに、私がオーナーを務める千葉ローキューツ、千里がオーナーの東京40 minutes, 上島先生がオーナーをしてくださっている江戸娘の3チームが参加した。3日間にわたる激戦の結果、千里の40 minutesが優勝、私のローキューツは3位となった。私はツアー中なので顔を出せなかったがキャプテンの薫と電話連絡をずっとしていた。
 
その薫が相談したいことがあるというので、彼女たちが戻って来てから22日の夕方、薫および副主将の揚羽と千葉市内の飲食店で会うことにした。私が出かける間は琴絵に来て政子のお守りをしてもらう。
 
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「全日本クラブ選手権銅メダルおめでとう」
と私は彼女たちをまずは祝福する。
 
「これ金一封。中身は5000円のQUOカードとピカピカの5円玉。一応登録されている人数分用意したけど、足りなかったら言って」
と私は紙袋を渡す。
 
「ありがとうございます。多分余ると思うので、その分は返しますね。でもなかなか表彰台の真ん中は遠かったです。決勝戦は客席で見ることになりましたけど、どちらも凄かった」
 
「でも去年より成績上げたね」
「去年は準々決勝で負けましたからね〜」
「でも一昨年は優勝したんだけど」
 
「まあまた頑張ればいいよ」
 

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「それで単刀直入に。以前から言っていたのですが、私、ここを辞めようかと思って」
と薫が言う。
 
「やはり仕事が忙しいの?」
「いや、仕事は大したことしてないんで、いいんですけどね。正直、私って敵を作りやすい性格だから、私と合わないで辞めていく子が結構いる気がして。もっと温厚な人にキャプテンになってもらった方がいいかなと思っているんですよ」
 
「うーん。そのあたりっていろんなキャプテンが居ていいと思うけどね。薫ちゃんは確かにややぶっきらぼうな言い方とかしてしまいがちだけど、それで傷ついたりしても、結構揚羽ちゃんとか育代ちゃんがうまくフォローしているみたいだし」
と私は言う。
 
「よく見てますね!」
 
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「それで薫から、自分は辞めるからキャプテンを代わってくれないかと言われたんですけど、正直薫さんは戦力としても失うと大きいんですよ」
と揚羽が言う。
 
「うーん。だったら、薫ちゃん、キャプテン辞めて1選手になるというのでもいいんじゃない?」
 
「そんなのもありですかね?」
「ありあり。音楽ユニットでも、リーダーが脱退せずにリーダーだけを交代して1メンバーになるケースはある。UNICORNが再結成の時に川西さんから阿部さんにリーダー交代したよね。ももクロとかも、最初はれにちゃんがリーダーだったけど夏菜子ちゃんに交代して、よけいまとまった感じもある」
 
「ああ。れにちゃんは最年長ではあってもリーダー向きじゃ無かったかも」
 
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その時、ふと私は疑問を持った。
 
「薫ちゃんが最年長だっけ?」
 
ふたりは顔を見合わせる。
 
「半ば幽霊部員化していた愛沢国香が最近割と出てきています。私より1つ上」
と薫。
「あの人は考えてみると、旭川A商業の元キャプテン」
と揚羽。
 
「その人が割と出てきていて、しかも高校時代にキャプテンを経験しているなら、その人にキャプテンを押しつけちゃうとか」
 
「なるほどー!」
「薫ちゃんより年齢が上の子がキャプテンになると、薫ちゃんは1選手に戻りやすくなる」
「それいいかも!」
 
この件は、この直後にアシスタントコーチの谷地さんが地元に戻るということで辞意を表明し、結局薫は選手兼アシスタントコーチ(実際にはみんなの練習にはあまり口を出さず戦力分析担当と言っていたので事実上の主務)になって、国香が新キャプテン、揚羽は副キャプテンのままという形に移行することで落ち着くことになった。練習の指導は今後は温厚な揚羽が中心になってすることになる。
 
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なお千里の40 minutesの方は初年度から数人プロ契約者が出たようであるが、ローキューツの方では取り敢えずはプロ契約を希望する人は出ておらず、当面は今まで通り、全員が他で仕事やバイトあるいは学生をしながら、主として夕方や休日にバスケの練習をするという方式で行くことになった。
 
ただ選手がいつでも時間を気にせず練習をできる場所を確保したいですねというのを新会社の社長になる高倉さんと私は話し合い、高倉さんもどこか貸し切りにできるような施設がないか探してみると言っていた。
 

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ローズ+リリーの次期CDの音源制作は、私たちがKARIONの金沢公演が終わって東京に戻った3月23日から開始した。
 
いつもはスターキッズに先に伴奏を作ってもらってから歌を乗せるのだが、今回はスターキッズが3月いっぱいニューヨークなので私があらかた作り、風花が調整してくれたMIDI音源に合わせて私と政子が歌い、スターキッズが戻って来てから、その歌に合わせて伴奏を収録するという、逆順で進めることになった。
 
今回収録する曲はいつものように5曲である。
 
最初の段階で予定したのは、先日の奥八川温泉からの脱出の時に発想して書いた『雪原を行く』、八川集落の神社で見たお祭りの屋台から発想した『かけ声』、昨年のワールドツアーの時に書いた『ビリニュスの夜』『ロールイン・ロールアウト』。そして上島先生から頂いた『エーデルワイス』という美しい曲であった。
 
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しかし高岡で政子が「東西境界線ちゃんぽん」を見て『ちゃらんぽらんな恋』を書いたので『ロールイン・ロールアウト』を外してそれを入れた。
 
この5曲の歌唱は3月23-25日、28-31日,4月1日の合計8日間掛けて一応収録し、スターキッズが帰ってくるのを待つことにした。
 
(26-27日は名古屋と千葉、4月2-3日は札幌・仙台でKARION公演をしている)
 

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3月は卒業のシーズンである。
 
私や政子と△△△大学で同じ学年であったものの理学部で、修士まで行っていた和実や、彼女と高校の時の同級生であった梓などが3月24日に修士課程を修了した。私は和実には御祝儀を、また梓にも多少とも関わったので彼女には花束を贈っておいた。梓は教員採用試験に合格し、4月からは岩手県内で高校の数学の先生になるということであった。梓は学部時代は若葉と同じクラスであった。
 
和実も実は高校の理科教諭の免許を持っている。彼女は性別を変更しているが、そういう彼女の教育実習を受け入れてくれた母校の先生も懐が広いなと私は思っていた。しかし「さすがに教員に採用まではしてくれないよ」と言っていた。
 
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「で、和実は結局このあとどうするのさ?」
「まあこの2年間は修士課程で研究をしながら、モラトリアムをむさぼっていたようなものだからね。子供も7月に生まれる予定だし、取り敢えず石巻の姉ちゃんのところに行って、仙台にメイド喫茶を作る方向で動き出すつもり」
 
「おっ、凄い」
「だからエヴォン銀座店は3月いっぱいで退職」
「うん。頑張ってね」
 
「東京に居たまま開店準備を進める手もあるけど、やはり現地に行かないと良い場所とか分からないと思うんだよね。だから仙台の町をたくさん歩いて、ここに喫茶店があって欲しいなと思う所を見つけるよ。蒔絵に金粉を蒔くようにひたすら色々な所を歩いてみるつもり」
 
「和実は結構な霊感持っているから見つかると思うよ」
「その方面の感覚については、ここは絶対作ってはならないという場所なら分かるけどね。ここが良いという場所が分かるかどうかは微妙」
「まあそのあたりは青葉を引っ張り出して」
「うん。青葉に風水的なもの、霊的なものはチェックしてもらうつもり」
 
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「じゃ淳ちゃんと一緒に引越?」
「淳はまだ仕事のキリがつかないみたいなんだよ」
「ああ」
 
「現実問題として収入のこともあってね。私は姉貴の美容室でシャンプーとか着付けとか担当させてもらって若干のバイト代をもらう約束にしているけど、現地調査費にもなるかどうか怪しい程度だと思うんだよね。だから淳には普通に勤めてもらって収入を確保しておいてもらいたい。今年1年は単身赴任かな」
 
「大変だね!」
「今、淳のプリウスを乗り回しているけど、東京と石巻に別れて暮らすなら、私も車を1台持っておいた方がいいかなと思って中古の安いのを1台買おうかなと思ってる。1人で乗ることが多ければ軽でもいいし。軽って燃費が実はハイブリッドカーよりいいし」
 
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「それ向こうで街乗りに使うの?」
「うん。基本的には石巻と仙台の間の移動だと思うけど、週に1度は淳の所に行くのに東京まで走ると思う」
 
「高速とか走ったら軽は極端に燃費が悪化すると思うけど」
「そんなに悪化するかな?」
「試してみるといいと思うよ。それに赤ちゃん産まれるんでしょ?軽だとベビーシートをセットするの大変かもよ」
「う・・・・盲点だった」
 
それで和実は実際に千里のミラと、メイド仲間の子が持っているヴィッツで実際に仙台まで往復してみたようである。それで彼女の結論・・・・
 
「ミラもヴィッツも高速じゃダメだね。ミラは100で悲鳴あげるし、ヴィッツも160くらいが限界でさ」
「和実、日本には160km/h出していい道は無いはず」
「でも追い越す時はそのくらい出さない?」
「法的には追越し車線でも法定速度を超えることは許されない」
 
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「それ無茶な規定だと思うけど。でも、パワーが無さ過ぎてイライラするから、1500-1800ccくらいのを買うよ」
 
「それがいいかもね」
 
などと言っていたのだが、結局和実は淳のプリウス(2010年モデル)を持っていくことにし、淳が新しくハイエース!の中古を100万円で購入したらしい。
 
「庇を借りて母屋をぶんどるという奴だよね。実際プリウスはこれまでも私の方が淳よりよほど多く乗っていたし」
などと本人は言っていた。
 
その言葉で私はふと千里のことを連想した。千里も細川さんの前の車Audi A4を細川さん本人の倍以上運転していたなどと言っていた。新しいランクルも細川さん本人がまだ400kmしか走っていないのに先日の秋田行きでいきなり1600km走っている。
 
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そして・・・彼女自身の立場もそうだ。彼女は最初は細川さんの後輩という立場で阿倍子さんの前に現れ、友だち→愛人→もうひとりの妻という立場に変化してきているように思われる。そしてやがては3年前に失った正妻の地位を取り戻すつもりなのだろう。
 
その時私は更に考えた。
 
ひょっとして政子もその内松山君を今度結婚する相手から奪い返したりして。
 
私は唐突に曲が書きたくなった。
「ちょっとごめん」
と言って紙を取り出して歌詞とABC譜のメロディーを同時進行で書き始める。和実はしばらく私の作業を見守ってくれた。それは10分くらいで大体まとまった。後は自宅で推敲しよう。
 
「でもハイエースって、やはりお荷物を運ぶのね」
と私は尋ねる。
 
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「いまだに『エヴォン友達会』に募金が来るんだよ。それでそれを原資として被害にあった地域の人たち、特に他県に避難したままの人たちに色々配ったりもしているし、あと、風評被害でなかなか買ってもらえない向こうの農産物とかを首都圏や甲信越で理解してくれている販売店や飲食店などに運賃無料で運んだりしている。むろん放射能検査はしっかりやっているよ。それで、しばしば友だちのハイエースとかキャンターとか借りていたんだよ」
 
「和実、もう自腹は切ってないよね?」
「うん。今はお弁当とか買ってあげないといけないような人とか居ない。ごく内輪でやってるから」
 
2011年当時は、多数のボランティアさんがこの『エヴォン友達会』に参加していたものの、物資の運搬をしてくれるドライバーさんなどのお弁当代や買出しを担当してくれる友人たちのコーヒー代とかを和実が自腹で出していた。それであの年彼女はそれまであった200万円ほどの貯金(元々性転換手術を受けるために貯めていたもの)を全部そういうので使ってしまったのである。エヴォンの店長さんもボランティアの人たちに無料で食事を提供したりして和実以上に私財を注ぎ込んでくれている。
 
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「まあそれで何とか私と淳でふたり合わせてハイエースを買ったお金を除いても700万貯めたから、あとは銀行から1000万円くらい借りて開業資金にする」
 
「頑張ったね。でもそしたら淳さんは、SEのお仕事で出かける時もハイエース?」
 
「うん。会社の車を使う場合もあるけど結構自分の車を使うこともあるみたい。でもハイエース程度まではあまり駐車場に困らないし」
 
「ハイエース乗り付けて打ち合わせにやってくる女性SEというのも何だか格好良いかもよ」
「パソコンとか機器とか運ぶのに、エスティマやノアくらいならよく使っていたからね。ハイエースはそれよりちょっと大きい程度ということで」
 
私はその時また唐突に思いつき、今書いた曲に『段階的侵略』というタイトルを付けた。
 
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■夏の日の想い出・種を蒔く人(9)

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