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■夏の日の想い出・種を蒔く人(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2016-04-01
 
2016年2月28日。福島市で東日本大震災・復興支援ライブの第1部と第2部が行われた。第1部がアクア、第2部がローズ+リリー(第3部と第4部は翌週)だったのだが、巷ではアクアがどういう衣装を着るのかが注目されていた。
 
どこからともなく「アクアはミニスカを穿く」という噂が流れたものの事前に別件で記者会見したアクアと事務所社長の秋風コスモスはこの件に付いて訊かれると曖昧な回答をした。それで「やはりミニスカでは?」と噂は更に加熱したのだが、実際のライブではアクアは前半はサラリーマン風?のビジネススーツ(ポールスミス)、後半はサファリルック(若手デザイナーJunichi Kikuchiの作品)を着て、ミニスカを期待したファンには肩すかしとなった。
 
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しかしファンの反応は好評で「格好いいアクア様もいいね!」「やはりアクア様は男の子だもんね」といった声もあがっていた。しかしこのライブ限定で販売された写真集(定価5000円)はその後、オークションで10万円を越える価格がつくほどの話題になる。
 
(ライブでは写真集は用意した1万冊が会場で売り切れその場で渡せなかった人には、宛名シールに記入してもらって後日増刷して郵送する対応をとったが、この後日郵送分が3万冊もあった。つまり入場者数の倍も売れた。この写真集の売上だけで2億円で、本来グッズの売上は今回のイベントの寄付対象外なのだが、事務所では原価と送料を除いた粗利部分を被災地への寄付金に加えた)
 
写真集は11月に与論島で撮影した写真が3分の1、8月のツアーの写真が3分の1、『ときめき病院物語』や『ねらわれた学園』のスナップ写真が3分の1であったが、このドラマのスナップ写真には当然セーラー服のアクアの姿が何枚もあって
 
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「可愛い!!」
という声が多数あった。しかし、それ以上に、この写真集の最後に4ページ付け加えられた絵が物凄く話題になったのである。
 
それが『明智ヒバリ画・アクアちゃんの可愛いお姿・想像図』で、そこにはミニスカを穿いてステージで歌うアクア、ナース姿のアクア、フライトアテンダント姿のアクア、そして最後にビキニの水着を付けたアクアの絵が描かれていた。
 
「明智ヒバリってこんなに絵が上手いのか!」「アクア様そっくり」と言った声もあったものの、やはり話題の中心はその絵の内容である。
 
ナース姿のアクアの絵に関しては「次期『ときめき病院物語II』ではぜひアクアちゃんにナース服を着せてください!」という声があがったし、ミニスカ姿のアクアについても「これリアルで見たい!!」という声もあがっていたが、ビキニのアクアについては「可愛い!結婚したい」という声が男女双方のファンからあがっていた。
 
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「アクアはもう俺の脳内嫁にする」
「アクア様、私の処女をもらって」
 
と最初から暴走ぎみである。
 
ちなみにこのビキニ姿の絵に関して本人は「ボクおっぱい無いから、さすがにビキニは無理です」と語っていた。
 
「しかしおっぱいの前に、ちんちんあったらビキニは無理なのでは?」
「いやきっとアクアには既にちんちんは無いはず」
「アクア様は天使だから、おちんちんも割れ目ちゃんも無いんだよ」
「アクアちゃん、おっぱいあっても構わないから私のお婿さんになってぇ」
 
などとネットの意見はまた暴走していた。
 

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「いや、絵の内容が凄かったから、目立たなかったけど、ヒバリちゃんの絵が凄く上手いという声も随分あったね」
 
私はその日マンションに来訪していた秋風コスモス社長・川崎ゆりこ副社長と話していた。
 
「沖縄に行った後、向こうの精神科の先生に勧められて毎日絵を描いていたみたい。結構いい絵を描いているから、1度東京か、東京の町が辛ければ福岡ででも個展を開こうよと言っているんですけどね」
 
「賛成賛成」
 
彼女は人混みが苦手なので、東京に出てくるのは辛いようである。
 
「でもあの子、図工・美術の成績はいつも1だったらしいです。人が周囲にたくさん居て騒いでいる所では絵を描けないんだって」
とコスモス。
 
「なるほどー」
「なんか他人が見たら『下手な絵だね』とか『こんな絵を描く奴って頭おかしいのでは』と言われそうで怖いと言うのよ」
 
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「それきっと小さい頃、誰かにそんなことを言われたんじゃない?」
 
「かもしれない。それと自分の頭の構造が他の人と違うのを小さい頃から意識していたみたい。人には見せないでノートとかにこっそり描いていた絵にはいつも、妖精とか妖怪とか、小人とか龍とか、そういう異形のものが入っていて、そういう造形を見られるのが怖かったみたい。だから図工の課題の絵はいつも白紙提出」
とコスモスは言う。
 
「ヒバリちゃんって『見える』子?」
 
「見えるより感じるタイプみたい」
「なるほどー」
「通り魔事件とかの起きる数分前に現場を通過したことあるらしい。あの子って多分危険なものを自動的に避けられるんですよ」
「内在型の霊感体質なんだな」
 
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「でもそういう人外のものを感じること自体を他人に知られたくないと思っていたみたい。まあ一昨年は自殺未遂を起こしたことから精神科に半年入院するハメになったんだけどね。でもあの子は普段は自分の病気を自分でコントロールできているんですよ」
 
「あ、それは私も感じた。芸術家にはそもそも壊れている人は結構いるから。自分で制御できていたら構わないんじゃないかなあ」
と私は言う。
 
「はい、私壊れてます」
と政子は手を挙げている。
 
「たまに暴走することはあるけどね」
「そのあたりは愛嬌で」
 
「でも凄くシャイな子みたいね」
と政子が言う。
 

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「そういえばコスモス社長は図工・美術いつも5だったって言ってましたね」
とゆりこ。
 
「うん。私は音楽・美術・体育はいつも5だった。その音楽が5というのが一番分からんとファンからも言われるけどね」
とコスモス本人も言っている。
 
「リコーダーとかが上手かったとか?」
と政子が訊く。
 
「あ、ハーモニカもリコーダーも私得意。ピアノもレッスンに通ってたからわりと弾くよ。ステージで見せられるほどじゃないけど」
 
「へー!」
 
「いや、コスモス社長のピアノは少なくとも私より上手いです」
とゆりこ。
 
「実は音楽の時間はよくピアノ係してた。歌わなくて済むしね。それで音楽の先生には気に入られていたから、歌が下手なのは大目に見て5をくれていたのかもね」
 
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とコスモス。
 
「なるほどー」
 
「私自分でいうのも何だけど音感が無いのよね。だから正しい音が取れないのよ。だけど楽器は正しい指で押さえればその音が出るから問題無い」
 
「確かに確かに」
 
「それ私がフルート好きになったのと同じ理由かも」
と政子は言っている。
 
「音痴の人には耳が悪いタイプと耳は良いけどその音でちゃんと声を出せないタイプがある。デビュー当初のマリちゃんも下手だったけど、マリちゃんは耳は良いタイプ。だから練習を重ねることで年々うまくなっていったね。私はそもそも耳が悪いタイプだからどうにもならない。ケイちゃんとか0.1Hzの違いが分かると言うじゃん。私は半音くるっていてもぜーんぜん分からないもん。さすがにソとラの違いは分かるけど、シとシ♭の違いは怪しい」
 
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とコスモス本人は解説している。
 
「いや、シとシ♭は割と難しい」
と私は言う。
 
「琴絵はドとシの違いが分からないと言ってた」
と政子。
「あ、お仲間、お仲間」
とコスモスは言うが
「琴絵の方が重症のような気はする」
と私は言う。
 

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「まあそれでアクアの5枚目のCDなんですけど」
とコスモスは2時間ほど私たちと様々な雑談をした上で本題に入る。
 
「1曲は東郷誠一さんが書いてくださるということで醍醐春海さんの了承を得ています」
「ああ、醍醐と話した方が話が早いよね」
「東郷先生の名前で出ている作品が実際には誰の作品かというのは、とっても分かりやすいですから。でも醍醐春海先生も香住零子先生も吉原揚巻先生も樋口花圃先生も安定した曲を書きますね」
 
「あれ?そういえば東郷先生の中の人って女性作曲家ばかりかな?」
と私。
 
「そういえばそうですね。歌っているのが圧倒的に女性歌手が多いから良いのではないかと。男性作曲家では田辺龍行先生が若干書いておられるはずですが」
「ああ、高井慎吾くんの曲が田辺先生ですね」
 
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などと私とコスモスが話していると
「そういう情報、どこで仕入れるんですか?」
とゆりこが訊く。
 
「曲を聴けば分かるよ」
とコスモス。
「うん。曲の傾向が本人名義で書いているのと同じだもん。ただ醍醐春海とか香住零子は元々の作曲傾向の幅が広いから、よくよく聴かないと分からない」
と私は言う。
「みなさん、東郷先生のゴーストライターを始めた頃はあまり売れていなくて、あれをやっている内に作曲技術を鍛えられていった感じみたいですね」
 
「うん。醍醐もそんなこと言ってた気がする。東郷誠一さんは種を蒔いているんだと醍醐は言っていた。若い有望な作曲家に課題を与えて作品を東郷の名前で出すことによって大きな収入を与えてあげる。そのことによってプロ作曲家として成長して行く。だから『東郷ブランド』で曲を出す作曲家には自分の名前でも書けと勧める。ゴーストのみというのは不可」
と私が言うと
 
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「それって昔の徒弟制度の現代的焼き直しかも」
とゆりこは言うが
 
「ただの開き直りでは?」
と政子は言っている。
 
「でも東郷先生は何かで忙しいの?」
と政子が訊くと
 
「今東郷先生は山本大左先生と囲碁に夢中なようで」
とコスモスが答える。
 
「ああ、あの2人の囲碁対決が始まると、ふたりとも全く仕事をしなくなる」
と私。
 
「一度見たけど酷い碁だね」
と政子は言っている。政子は囲碁は強くて二段の免状も持っている。佐良さんも免状は持っていないものの3級の級位認定を取っているらしく、ふたりはよく置き碁(下級者が置き石を置いてから打ち始める)をしているようである。ちなみに私は政子から「10級程度」と認定?されている。
 
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「棋力が同じくらいで楽しいみたいですよ」
とコスモス。
 
「取り上げられるはずの石を取らないので、そばで見ていた香奈桃子さん(◎◎レコード)が口を出したくなって我慢するのに苦労したと言っていました」
「なるほど」
 
東郷先生の棋力は政子によると「多分150級か200級程度」という話だ。
 
「それでもう1曲なんですけど、大宮万葉さん行けますかね?」
「もう受験は終わったから大丈夫だと思うよ。ちょっと落ち着いたくらいの所で頼んでみる。もし彼女がいけない場合は、私が書くよ」
 
「ではよろしく」
 
ということで本題は10分で終わってしまった!
(その内9分は東郷先生の話をしている)
 

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アクアとローズ+リリーのイベントをした翌週土日はKARIONを含む合計25組の歌手が登場する復興イベントの第3部・第4部が行われる。KARIONの和泉・美空・小風と、俳優の片原元祐さんは私と千里が奥八川温泉を脱出した2日後の2月29日になってやっと脱出できた。
 
「いや疲れた疲れた」
と和泉は言っていた。
「お疲れ様」
「それで孝郎さんが迷惑掛けたから3月6日は自分が福島まで行くと言ってる」
「それは助かる。海香さんのお披露目はツアーでやりたかったからね」
 

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それで私たちはKARIONの下旬のツアーの最終的な準備をしつつ、復興支援ライブの準備も進めていたのだが、3月5日の朝になって風花から電話が掛かってくる。
 
「冬ごめーん。私、インフルエンザにやられた」
「え〜〜!?」
 
彼女には翌日のKARIONのライブでフルートと篠笛を吹いてもらうことになっていた。
 
「昨夜急に熱が出て40度まで上がって。うちの母ちゃんがたまたま来てたんで病院に連れて行ってもらってインフルエンザと診断されてタミフル処方されたけど、まだ熱が下がらない。昨夜の内に連絡したかったんだけど、どうにも体力・気力が無くて」
 
「分かった。とにかく治るまでしっかり休んでて。演奏者は何とかするから」
「うん。ごめんねー」
 
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夏の日の想い出・種を蒔く人(1)

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