広告:まりあ†ほりっく 第4巻 [DVD]
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■春心(7)

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「でも何しに行ったんだろうね?」
「ホルモン注射?」
「それは不要なんだよね?」
と美由紀が青葉に尋ねる。
 
「うん。ヒロミの体内で女性ホルモンが生産されているから、注射とかで補う必要は無い」
 
「じゃなんだろう?」
「妊娠したとか」
「まさか」
「生理不順かも」
「うーん。。。。」
 

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5月28日(火)。夕方、田中鈴厨子さんが青葉の家に2度目の訪問をした。夕食を一緒に食べてからお風呂に入ってもらい、その後、下着姿になってベッドに横になってもらってヒーリングをする。
 
その時、唐突に青葉は美鳳の声が聞こえた気がした。
 
あっそうか!こういうのにこそ、あれだよね。
 
そこでまずは「鏡」を起動して左耳の患部をよくよく観察して頭に叩き込んだ上で噴水のお姉様にもらった「珠」を「鏡」の前に置き、珠から出る波動が、田中さんの内耳にだけ当たるようにした。この波動は健康な耳に当たると逆に障害を引き起こしかねないので注意が必要だ。
 
うとうととしていた田中さんが飛び起きる。
 
「今何か?」
と言ったものの、唐突に何か探す感じ。青葉はさっとティッシュの箱を渡した。
「ありがとう」
と言って、田中さんは何度も鼻をかんでいる。
 
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「何か耳の感覚が全然違う!?」
「田中さん、音域チェックしてみましょう」
 
そう言って、青葉は自分の部屋からポータブルキーボードを持って来た。低い音をまず順番に聴かせて聞こえるかどうかを答えてもらい上下端を確認した上でその後ランダムに聴かせて、何の音に聞こえたかを書いてもらう。田中さんはひとつも音を間違えなかった。さすが絶対音感持ちである。
 
「B0からE3まで正確に分かるみたいですね。18度」
「凄い!2オクターブ半も聞こえるなんて」
 
田中さんは4月に最初のヒーリングをした直後に可聴(というより可感に近い)音域チェックしたらC1-F2の11度であった。ちなみにそのヒーリングをする前はE1-C2の6度だった。
 
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「1度だけF3も分かりましたが2度目・3度目は聞こえなかったみたい」
「多分不安定なんだろうね、その付近」
「でも今のが結構効いたみたい」
 
「感激!青葉先生凄い!」
「その先生はやめてください」
 

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6月8-9日の土日。青葉は東京に出て鮎川さんから4回目のサックスのレッスンを受けた。
 
「青葉ちゃん、物覚えがいいね。1ヶ月前とは見違えたよ」
「丁寧に教えて頂いたおかげです」
 
「青葉ちゃん、冬子ちゃんのお友だちなんでしょ?」
「ええ。2年半ほど前に知り合いました。あれ?鮎川先生、冬子さんとも知り合いですか?」
「うん。古い知り合いだよ。8年くらい前に、一緒にお仕事してたから」
「へー! じゃLucky Blossom の結成前ですか?」
 
「そうそう。ダンサー仲間だよ。当時、冬子ちゃん凄く目立ってたからね。わあ、この子はすぐソロデビューして人気歌手か何かになるだろうなと思ってたのに、私の方が先にメジャーに行っちゃったからね」
「あぁ」
 
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「いや、冬子ちゃんと青葉ちゃんって、何か似た空気というかオーラというか持っているなという気がして」
「そうですか?」
 
「物を覚えるのが物凄く速い。冬子ちゃんって、クラリネット1週間で吹けるようになったとか、ヴァイオリン1週間で弾けるようになったとか、フルート1日で吹けるようになったとか、笙を30分で吹きこなしたとか、色々伝説があるんだよね」
「それは凄いですね」
 
と答えながらも最後の方のはちょっと怪しい話だと思う。しかし冬子さん、笙が吹けたんだっけ??
 
「私と一緒にバックダンサーやってた時も、振り付け師の人が踊ったのを1発で覚えて踊れてたもん」
「それはまた凄いです」
 
「冬子ちゃんって、人が楽器を演奏したり、歌を歌ったり踊ったりすると、それをそのままコピーして演奏したり歌ったり踊ったりできるんだよね。青葉ちゃんも私の演奏を見て結構コピーするなと思ってた」
 
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「まずは真似る所から始めて、そのうち自分のものにしていけばいいかなと」
「そうそう。『まねる』は『まなぶ』の第一歩だよね。でも出来る人は少ないんだよ」
 
「でも冬子さんと私のオーラが似てるのは、同じMTFだからかも」
「MTFって何だっけ?」
「えっと・・・・生まれた時は男の子だったけど、女の子になっちゃった人かな」
 
「・・・・青葉ちゃんって男の子なの?」
「えっと。去年の夏までは。でも手術して女の子になっちゃいました」
「うっそー!!」
 

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鮎川さんにはまた夏休みに少し指導してもらうことにした。
 
富山に戻った翌々日。6月11日。この日は、また田中鈴厨子さんが耳のヒーリングに夕方来訪することになっていた。
 
この日、青葉は軽音部の楽器のクリーニング用の紙を買いに、学校を出て商店街に行った。本来は楽器店で売っているクリーニングペーパーを使うべきなのだが、100均で売っている、あぶらとり紙で充分と吹奏楽部の人たちが言っていたので、それを大量に買うためである。但し、青葉は自分のサックス用にはやはり楽器店でクリーニングペーパーを自費で買った。さすがに3万円のサックスと140万円のサックスでは、心の持ちようが違ってくる。
 
楽器店の後ダイソーに寄り、あぶらとり紙を大量に買っていた時、青葉はふと近くにあった、色紙に目を留めた。
 
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私何でこの色紙に目を留めたんだろう?
 
疑問を感じたが、目を留めたということは、きっと必要になるんだ。そう思うと、青葉はその色紙(2枚で100円)と、一緒にサインペンを取り、あぶら取り紙とは別会計で自費で払った。そして高校に戻るのに、バス停の方に行こうとしていた時。
 
青葉は凄まじく強烈なオーラを携えた若い女性を見てギョッとする。
 
青葉はその人の顔に見覚えがあった。駆け寄る。
 
「済みません。KARIONのいづみさんですか?」
「うん」
 
と言って相手は営業用スマイルになる。そうか!この人に会うから私は色紙を買ったのか。
 
「ファンなんです。サイン頂けませんか?」
「いいよ。何か書くもの持ってる?」
 
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「それではこれに」
と言って、青葉はさきほど買った色紙とサインペンを取り出す。向こうがびっくりしている。
 
「これ、いつも持ち歩いてるの?」
「いえ。何となく必要な気がしたんで、さきほど買ったんです。私、勘が強いから」
「へー! 凄いね。あ、君、名前は?」
「川上青葉です。3本川に、うえ、青い葉っぱ」
 
いづみは頷きながら今日の日付と宛名を書き、KARIONのサインを書いてくれた。KARIONのサインはサイン会などでは3人で書くが、このように1人でいる時にファンに会った場合は1人で全部書く。
 
「わあ!ありがとうございます!」
「君、高校生?」
 
「はい。そうです。あ、それで私コーラス部なんですけど、先日『海を渡りて君の元へ』の使用許可を頂いたので一所懸命練習してるんですよ」
 
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「へー! あの曲大変でしょう?」
「でも格好いいんですよね〜。そうだ。もしお時間ありましたら、歌っている所を見ていただけませんか?」
「ああ、いいよ」
 
いづみは笑顔で言った。
 

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青葉は通りかかったタクシーを停めて、いずみを高校に連れて行った。タクシーの中で青葉はいづみに話しかける。
 
「こちらはお仕事ですか?」
「プライベートな旅行なんだけどね。でもここ数日かなり歩き回ったから足が痛くて痛くて」
「ああ、大変でしたね。足が痛いようでしたら、少しヒーリングしてもいいですか?」
「ん? よく分からないけどいいよ」
 
青葉はいづみの足の様子を見てみた。右膝のあたりの気の流れが悪い。
 
「ちょっと失礼します」
と言って青葉はいづみの右膝に手を当てると、直接炎症を起こしている所のほてりを冷ます。その上で血液の流れが滞っていた付近の緊張を緩和して血行を改善し、全体の気の流れの調整も行った。
 
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タクシーはすぐ学校に着いたが
「なんか痛みがやわらいだ気がする」
といづみは言う。
 
「良かったですね」
と言って青葉は微笑んだ。
 

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音楽室に青葉がいづみを連れて中に入ってくると
「え!?」
「うそ!?」
「きゃー!」
と大騒ぎになる。
 
青葉は「静かに静かに」と部員たちを鎮めて
 
「KARIONのいづみさんが来てくださったんで、みんな『海を渡りて君の元へ』
を披露しよう」
と言う。
 
「よし、しようしよう!」
という声が上がり、全員きれいに整列する。気の利く空帆がさっと椅子を持って行き、いづみに勧めた。
 
今日たまたま練習に顔を出してくれていた紡希が、ピアノの所に座り、伴奏を始める。青葉は今日は紡希が居てくれて良かったと思った。物事に動じない紡希だから、こういう場面でもきちんと演奏することができる。本来のピアニストである康江先輩は、わりとパニックになりやすい性格だ。
 
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青葉たちの歌唱に、いづみが「へ?」という感じの顔をしている。しかし時々頷くようにしている。青葉たちは、譜面通り4:30の曲を歌いきった。
 
いづみが立ち上がって、パチパチパチと笑顔で拍手をしてくれた。青葉はソプラノの列から出て、いづみの所に寄ると
 
「聴いてくださいましてありがとうございます。まだまだ練習不足なんですけど、本番までにはもっともっと上手くなりますので」
 
「うん。頑張ってね。でもこんなアレンジ初めて聴いた。君たちが編曲したの?」
 
「あ、それが編曲の御許可を頂こうと思いまして水沢歌月さんに連絡したら、高校の合唱で使えるように、ソプラノ、メゾ1、メゾ2、アルトの女声四部で4:30の版を作ってあげるよと言われまして、歌月さんご自身が編曲してくださったんです」
 
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「・・・・君、水沢歌月を知ってるの?」
「はい。以前からの知り合いなので」
「ほんとに?」
 
「あ、その時のメールのやりとりをお見せします」
 
と言って青葉は自分の携帯を開き、電源を入れると受信メール・フォルダの中に《冬子さん》と書いてあるフォルダを開く。いづみが、そのフォルダ名に驚いている感じがした。
 
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