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■春備(12)
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目次]
3月26日、月城たみよ(松崎典佳)の姉・松崎元紀は約1年間の司法修習を終え、“二回試験”(*17)にも合格して法曹資格を取得した。自分と同じ九州大出身で、東京で弁護士を開業している人の事務所で当面“イソ弁”(*18)をさせてもらうことにしている。
(法曹資格とは裁判官・検察官・弁護士になれる資格。この3つの仕事に就くには法曹資格が必要。但し資格が無くても検察事務官を長年務めると検事補(副検事)にはなれる)
(*17) “二回試験”とは、司法修習の最後に受ける試験でこれに合格しないと法曹資格をもらえない。万一落とすともう一度司法修習をやり直す必要がある。
(*18) 他弁護士の事務所に居候して仕事の手伝いなどをする弁護士をイソ弁という。これに似ているが、他弁護士事務所の軒先を借りて小さな事務所を構える弁護士をノキ弁という。イソ弁は給料をもらえるので、最初はこれになると仕事も覚えられて生活費も稼げる。ノキ弁は給料は無く逆に家賃を払う必要があるが、おこぼれの仕事にありつける場合がある。イソ弁からノキ弁を経て独立する人もよくある。しかし最近はイソ弁のクチはかなり少ない。
近年はイソ弁にもノキ弁にもなれず↓のような形態で営業する人もある。
タク弁:事務所を用意できず自宅を事務所代わりにしている弁護士。ただし生活空間と営業空間を分離する必要があるので、ある程度の広さの家が必要。出入口も2つ欲しい。
ケイ弁(スマ弁):携帯電話(スマホ)だけで営業している弁護士。
3月27日(木)、晃は両親および姉に手伝ってもらい、G大学の女子寮に引っ越した。きゃー、ぼく男に戻るのに女子寮に入っちゃったよ、と思う。
もっともその後“姫様”からは音沙汰が無く、晃は女の子の身体のままであった。
この寮には美奈子も入ったはずである。
引越が終わったあと、サイゼリアで御飯を食べた。そのあと姉が
「あんた少し服を買ってあげるよ」
と言った。
「高校時代は制服しか着てないから普段着が無くなってるよね」
と母も言う。
それで姉が連れて行ったのが、名鉄デパート・・・の裏手にある古着屋さん!だった。
「これ500円均一って凄いね」
「安いでしょ」
それで晃はTシャツとかを籠に入れる。姉がスカートとかを入れる!
「ぼくスカートは穿かないけど」
「女子大生はスカート穿かなきゃ」
「男に戻るんだけど」
「無理無理。だいたい男物ではそのバストも入らない」
「うっ」
姫様、おっぱいも小さくしてくれるかなあ。2年半前に約束したのは、卒業したらちんちんを返してくれるということだけだった。
お勘定は姉が払おうとしたが、結局母が払ってくれた。古着屋さんのあと母は
「入学式に着る服が必要だよ」
と言って青山に連れて行った。
「この子に合うスーツが欲しいんですけど」
「はいはい」
店員さんが見立ててくれたのは、もちろんスカートスーツである!
ぼく本当に男に戻れるかなあ、とかなり不安になった。
姉たちと別れてから、晃はとりあえずズボンを1本くらい買おうと思い、自分のウエストをメジャーで測って64cmと確認してからユニクロに行った。紳士用パンツのコーナーで64cmのズボンを探すが、そんなサイズは無い!?
いちばん小さな73cmを持って試着室に行ってみたが、入らない!?
なんで〜?自分のサイズより9cmも大きいのに。
晃が悩んでいたら店員さんが寄ってきた。
「私自分でウエスト測ってみたら64cmだったのに73cmのでも入らなかったんですが何故でしょうね」
「お客様、ここはメンズのコーナーでございます。レディスはあちらでございます」
と言って連れていかれ、結局レディスの63cmのパンツを買ってしまった!
メンズとレディィスって何か造りが違うの〜?
(やはり晃が男に戻るのは無理っぽい気がする)
高岡P高校で二次募集の入試がおこなわれ、翌日合格発表がおこなわれた。ほとんどの受験生が合格していた。受験したのは多くが、公立高校に行くつもりが体調不良などで失敗した子でレベルは結構高かった。(自信の無い子は最初からどこか滑り止めを受けている)
高岡P高校はこれで入学者が確定するが、定員をわずかに割り込む人数だった。(大きく割り込むと注意される。交付金がもらえないこともある)
晃は美容室に連れて行かれ髪を可愛くカットされた。
その後、舞花に連れられて“霊界探訪”の編集部に来た。メンバーを紹介され挨拶を交わす。
「こちら桂ちゃん、君と同じで4月から大学1年生」
「よろしくお願いします」
「晃ちゃんパンツが好きなの?」
「ええまあ」
「バイクに乗る時はバイクスーツだけど普段はスカート穿いててよ。そのほうが視聴者受けがいいんだよ。あと高校出たばかりではまだ不慣れだろうけど、メイクも練習してね」
「あ、はい」
「男の子の桂ちゃんでもスカート穿いてメイクしてるんだから」
「え?あなた男の子なんですか〜?」
「うん。私男だよ」
うっそー。美人なのに。
メイクの道具は姉が買ってくれたので練習することにした、ぼく男に戻るのに!(無理無理)
取材のために免許が必要だから四輪とバイクの免許取ってと言われて、自動車学校に行くことにした。費用は編集部から出るらしい(本当は青葉が出している)
入校するのに証明写真が必要ということだったので、街にあった証明写真のボックスに入った。
写真を撮影したあと、編集部にちょっと来てと言われていたことを思いだした。それでボックスの中でスカートに穿き換えて、フルメイクはまだ自信が無いので、口紅だけしてからテレビ局に向かった。
お弁当のアイゼン、バイトさんたちの会話
「金沢市内に不思議な証明写真ボックスがあるらしい。そこに男の子が入って証明写真撮って出てくると女の子になっているらしい」
「性転換スポットっていろいろあるんだな」
3月28日(金)の霊界探訪では、煌と行った筑波山、青葉邸に飾られた段飾りのお雛様とそこでやったひな祭り会、定点観測、青葉(6ヶ月)と真珠(3ヶ月)の妊娠レポート、などをレポートした。
編集部に桂と晃が加わったのも紹介された。ふたりともスカート姿である。
また筑波山の“天狗まんじゅう”の視聴者プレゼントをした。
「この番組プレゼントが多いですね」
「スポンサーさんに感謝です」
日和の妹・萌花(入瀬ホルン)から日和が結婚したと聞いた両親と兄の空海はびっくりして東京に駆け付けた。
「お父ちゃんやお母ちゃんに何も言ってなかったの?日和らしいなあ。あの子お膳出てとか準備とか何もできない性格だから」
と萌花は言っている。
(萌花は日和のことを“お姉ちゃん”とかは呼ばない。いつも呼び捨てである。日和も萌花を頼っており、たいてい萌花のほうが姉扱い。みんな日和が妹と思っている)
「それでバスケ部のマネージャーもクビになったのよね」
「日和がマネージャーやったらバスケゴールが逆立ちするかも」
などと空海は言っている。
多忙な花ちゃんがわざわざ時間を取ってベンツGLCに両親・空海・萌花を乗せて松戸市の日和たちの新居まで行った。
「広い敷地ですね!」
と両親は驚いた。九重は出掛けていて日和だけが家に居た。
「あんた結婚するならちゃんと親に言いなさい」
「ごめーん」
マロンが一同にコーヒーとケーキを出す。コーヒーはトアルコトラジャに似たセレベスである。
花ちゃんが
「これトアルコトラジャとは少し違う気がする」
と言った。マロンが説明した。
「うちの関連会社で輸入しているセレベスというコーヒーです。トアルコトラジャはセレベス島の1000m以上の高地にある農園でトラジャ族の人たちが育てているのですが、このコーヒーは800mほどの場所でトラジャ族ではない人たちが育てているんですよ。だから味は1ランク落ちますが価格は3割安いです」
「お得ね」
とお母さん。
広い敷地の家、そして使用人がいてというので、両親は感心している。
「お金持ちなのね」
と言っている。
日和は九重にもらったダイヤの指輪を見せた。また結婚の記念写真も見せた。指輪を見て母は
「大きな石だね」
と感心していた。
九重は日和の両親が来たと聞いて駆け付けようとしたが、千里に召喚された。
「あんたさすがに作業服はやめろ」
と言って紋付き袴を着せた。そしてヘリコプターに乗せて松戸の家に着陸させた。両親は庭にヘリコプターが着陸したので驚いた。
九重が降りてきて家の中にはいり、両親に挨拶する。
「ご挨拶に行かずに大変申し訳ありません。こういう者です」
と言って九重は
《株式会社播磨牧場・代表取締役・徳都縦久》
という名刺を出した。
「ああ、社長さんですか?」
「兵庫県の会社なのですが、日和さんは東京で仕事があるということだったので、こちらに家を建てました」
「なるほどですね」
「しばらくは千葉と兵庫の往復生活ですね」
「大変ですね」
「いえちょっとした運動ですよ」
“しばらく”というのは九重の感覚では70-80年である。
「徳部さんは播磨牧場のほかに播磨工務店や播磨磁器の仕事もしてるんだよ。1級建築士の資格も持ってるよ」
「凄いですね」
九重は
《株式会社播磨工務店・取締役・一級建築士・徳都縦久》
の名刺も出した。
それでしばらく話をしたが、九重は播磨工務店でたくさん営業の仕事もしているので、そつない。彼と話していて両親もかなり安心したようであった。やがてマロンとウォールが食事を運び込んでくる。
「使用人が2人いるんですか」
「小さな家だから2人くらいで間に合うだろうと思って」
と九重。
「私料理とか掃除とか全然できないから」
と日和。
「あんた目玉焼きも作れないもんね」
と母が言った。
「日和が掃除すると前よりきたなくなる」
と萌花。
「私ハネムーン中も『お前は料理しなくていい』『お前は掃除しようとするな』と言われた」
と日和。
「それでも奧さんにしてくれるってありがたい人じゃん」
と母。
花ちゃんが笑っている。
「今日はこちらで泊まっていかれますか?」
「そうですね」
と母が言ったら九重は子分達を呼び、ユニットハウスを持ってこさせた。家の裏手に設置させる。
「簡単なもんですね」
「住宅需要の8割はユニットハウスで間に合います。残りもほとんどユニット工法で作れます。播磨工務店はユニット工法の専門店なんですよ。この家は軽量鉄骨工法ですけどね」
「へー」
花ちゃんと萌花は夕方五反野に戻った。九重は翌朝ヘリコプターで出勤?して行った。両親と兄は昼頃富山に帰った。マロンが主人に頼まれましたと言って信濃町ガールズ人形焼き、桜製菓の乙女心、母里酒造のミニボトルセットを渡した。
高岡P高校の野球場工事だが、3月中に壁は半分くらいまで設置された。これだと5月どころか、4月にも工事が終わりそう!
理事長は、状況によつては、旧市立Z高校の校庭でしばらく野球部には練習してもらうことも考え、そちらのバックネットを更新してもらっていたのだが、そちらは使わなくても済むかも?
一応播磨工務店に確認すると、工事中も内部で練習するのは全然構わないということであった。鉄骨に関しては社内検査も終わっているので、ボールがぶつかったりしても鉄骨や天井が落ちることはないということである。また横は、壁のまだできてない所にもカーテン状の物がある(壁板はこのカーテンに取り付けられている)ので一応雨もしのげる。また外光が光ファイバーで導かれているので昼間はライトを点けなくても充分明るい。また4〜5月は窓を開けておけば空調無しでも充分行ける。
拓矢は電話を受けた。
「あ、たっくん?」
という声は12月に別れたものの先日一晩だけセックスした春奈である。***からの一方的な“別離通告”をされたばかりで、春奈が愛おしく感じる。
「私妊娠しちゃってさ」
「は?何の冗談?」
「ひとりで産んでひとりで育てるから、そちらに一切迷惑は掛けないけど、一応報せとかないといけないと思って。じゃね。***さんとお幸せに。あまり浮気しないようにね。一応妊娠診断書FAXしとくね」
それで電話は切れた。
拓矢がFAXの送られてくるのを待っていたら玄関でピンポンが鳴る。先週注文したモバイルバッテリーが届いたのかな?などと思い「はーい」と言って出て行く。
「あ、母ちゃん」
「あんた結婚するかもと言うから詳しい話聞こうと思って出て来た」
「えーっと」
その件はどう説明すればいいんだろう。
「これうなぎパイ」
「ありがとう」
母は中にはいってくるとFAXに気付いた。
「あら、ファックス来てるよ」
「あ、うん」
母はそのFAXの紙を取り上げた。
「妊娠診断書?あんた女の子を妊娠させたの?」
「それ何かの間違いだと思う」
「覚えが無いの?」
「いや生でしたのは事実だけど」
「生でしたら妊娠するに決まってる」
「いやこの子は医学的に子供が産めない身体のはずなんだよ」
「不妊症なの?きっとそれが治ったのよ」
治るはずないけどなあと思う。
そこに電話が掛かって来た。春奈である。バッドタイミングだなあと思いながら拓矢は取る。
「その診断書の通りなのよ。予定日は11月。私が妊娠するなんて奇跡で二度と無いと思うから産みたいのよ。セックスする時も後腐れ無しでと言ったしさ、私ひとりで産んでひとりで育てていくから。そちらに一切迷惑掛けないから。養育費とかも要らないし認知もしなくていいから。ただもし良かったら母子手帳受け取るのだけ付き合ってもらえないかなあ。ひとりで受け取りに行くと根掘り葉掘り聞かれそうで」
母がスマホを奪い取った。
「こんにちは。拓矢の母でございます。私が出産費用も診察代も出しますから安心して産んでください。薄情な息子は置いといて私と一緒に母子手帳受け取りにいきましょう」
「ほんとですか?助かります!」
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春備(12)