広告:まりあ†ほりっく5(MFコミックス)
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■春備(6)

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その日芳恵(芳雄)は女子制服を着て、夕方、自宅に向かって歩いていた。
 
後ろから足音が聞こえる。ずっと聞こえるので、芳恵はオーリンに呼びかけた上で立ち止まり、振り返った。
 
誰も居ない!?
 
「オーリン、誰も居ないよぉ」
「芳雄ちゃんの周囲50mには誰もいないよ」
「でも足音が聞こえたんだよ」
「気のせい!」
 
それで芳恵は再度歩き始める。でも足音が聞こえる!
 
「オーリン、足音がするよぉ。こわいよぉ」
「もうしょうがないなあ」
 
それでオーリンはそこにダイアナを転送してくれた。
「あ、こんばんは、そらさん」
「うん。一緒に帰ろうか」
「はい」
 
それでダイアナが自宅まで付き合ってくれた。でもマンション前で母と遭遇した。
「あ、お連れがあったのね」
「お母ちゃん、こちら朝のジョギングで時々一緒になる七瀬さん」
「それはお世話になっております」
「いえ、ジョギングで時々息子さんとたまたま一緒になるだけですから」
 
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息子ね・・・と友香は思った。女装趣味のある男の子と思われたかも?
 

2月8日(土)、伏木の青葉邸ではミュージシャンアルバムの取材をおこなった。
 
青葉のオリンピック出場の影響で、ここしばらく収録日から放送日までの期間が短い自転車操業状態が続いていたのでこの日は調整のため3組取材した。それで変則取材になったため、また身内を使った。
 
最初は朝7時から花咲ロンドを取材した。
「花咲ロンドさんでーす」
「こんにちはー」
 
「元々は第2代ロックギャルの権利者ですよね」
「はい。あの年は白鳥リズムちゃんが優勝したんですけど、年齢不足が判明して失格して私が繰り上げ優勝になったんです。でも私は1年間鍛え直して、すっきりした形で優勝してデビューしたいと言ってロックギャルは名乗らなかったんです。それで再挑戦のためにずっとレッスン受けていたんですけど、次の年にそろそろオーディションだなと思っていた時に事務所から呼び出されて『この映画の撮影に行って来て』と言われたんですよ」
 
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「当時は原則優勝者のみがデビューできたんですよね」
「そうなんですよ。今は低位からいきなりCMとかドラマに起用されることがありますけどね」
「それで麻生ルミナちゃんとか、ツイストクリーム(バニショコ)にピーチ&マロン(ももくり)はほぼデビュー済みに近い扱いになっている」
「鏡家トマト、氷川チャイム、清水姉妹とかも、かなり稼働率が高い」
 
「私オーディションに出たいんですけどと言ったら君の実力は充分分かっているから、今更オーディションを受ける必要は無いと言われて“§§ミュージック・花咲ロンド”という名刺を渡されて撮影現場に連れて行かれて台本渡されたんですよ」
「いきなり仕事に投入されたんですね」
「でも後から聞いた話では、映画に出る人が必要だということになって名刺は作ったものの、誰にやってもらうかは決まってなかったらしいんです。それであちこち電話してたまたまその日私が最初に捕まったから私が花咲ロンドになることになったらしくて」
「他の人が花咲ロンドになっていたかもしれないんですね」
「この手の話も芸能界にはよくあるよね」
「有名なところでは、リチャード・クレイダーマンとかも、リチャード・クレイダーマンという芸名とデビュー曲の『渚のアデリーヌ』が決まっていて、誰にリチャード・クレイダーマンになってもらうかを後から決めた」
とケイが言った。
 
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「§§ミュージックの音楽部次長で女子寮の寮長でもありますね」
「いつのまにか古株になっちゃったからね。みんなから“寮長”とは呼ばれるけど、私が次長であることはあまり知られていない」
「音楽部のNo.2は部長代理の愛心(あこ)ちゃんと思ってる子が多いですからね」
「そそ。愛心ちゃんは実際結構仕事をしている。私は次長なんて名前だけだから」
「おふたりとも“オリジナル10(テン)”ですけどね」
 
ここでケイが補足した。オリジナル10とは信濃町ガールズが発足した時のメンバーである。
 
川内峰花(1998)(花ちゃん)
花咲ロンド(1999)
仲原恵海(1999)(透明姉妹)
月嶋優羽(2000)(三つ葉)
米本愛心(2001)(ColdFly20)
佐藤ゆか(2001)(金風)
南田容子(2002)(金風・Δ△)
今井葉月(2002)
溝口ルカ(2002)(Bunbun)
白鳥リズム(2004)
 
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「ロンドちゃんはタレントやりながら大学を卒業しましたね」
「それが可能だということを実証した以上の意味は無いですけどね」
「いや大変な努力だったと思いますよ」
「週1〜2日程度の軽い仕事の人ならわりと何とかなると思うんですよ。バイト感覚。逆に朱美ちゃんたちみたいに忙しい人は両立が原理的に不可能と思うけど私は仕事が週3〜4回程度の、ほどほどの忙しさだったのよね。それで努力次第で何とかなった。とにかく時間が惜しいから移動の間に勉強したり台本読んだりしたかったので、専任のドライバー雇って寮から学校へ、学校から仕事場へ、仕事場から寮へと送迎してもらった。公共交通機関より時間は掛かるけど中で勉強できるから。最後の年はコロナ対策費ということで事務所から半額補助が出たけど、それまではドライバーに払う報酬が自分の月収を超えてましたね」
「それはたいへんだ」
「あとなかなか朝起きれなくて。毎朝父にメールで起こしてもらいました」
「それはお父さんもよく頑張りましたね」
 
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ピアノ室での歌唱では昨年出したアルバムから『記憶の霧』を歌った。
 

2人目は石川ポルカを迎えた。
 
「石川ポルカさんでーす」
「こんにちはー」
「お名前の由来ですが、“石川”って石川県じゃないですよね」
「はい、横浜の石川町駅が由来です」
「昔はうちの事務所のタレントって駅名+音楽用語というパターンが多かったんですよね」
「大宮どれみちゃんとか立川ピアノちゃんとか」
「まあ、どれみちゃんは本名ですけどね」
 
「ラピスの前くらいまではそうでしたが、ネタが尽きたんですよ」
とケイが言う。
 
「タレントの数が増えすぎましたからね」
「それで私たちの名前とかは枕草子から来てます」
 
“春はあけぼの”から朝に関する言葉を使おうと発案され、“あけぼの”“東雲”(しののめ)が選ばれた。しかし“あけぼの”では男の子みたいということで名前を性転換?して“あけみ”になった。ラピスラズリというのも、朝焼けが終わって青空に切り替わる僅かの時間、朝焼けの赤と青空の青が混じって紫色になる時間があることから、紫色のものとしてラピスラズリが選ばれた。また「紫だちたる雲の細くたなびきたる」も意識している。
 
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「最近では七尾ロマンちゃんと組んで“ロマン&ポルカ”としての活動が定着してますね」
「あれは偶然の産物なんですよ。私がテレビ局でドラマのプロデューサーさんと打合せしてたら、その近くを七尾ロマンちゃんが偶然通り掛かって、その時、プロデューサーさんが新しい登場人物として思い描いていたイメージが、ロマンちゃんとピッタリだったらしいんです。それで『君も出ない?』と誘われて共演することになって。ちょうどそれまで主題歌を歌っていたかたがコロナで声が出なくなったので、私たちが代わりに歌うことになったんですよ」
「ロマン&ポルカというデュオ名はあるものを連想させるとか」
「ええ。映画会社の日活が1970年代から1980年代に大量に低予算で製作した、女の人の裸が出てくる映画が『ロマンポルノ』というんですよ。それと字面が似てるというので話題になりました」
「ちなみにホルカちゃんの“ポルカ”というのはポルノグラフィとは無関係ですよね」
「はい。ポルカというのは19世紀にボヘミアで流行ったダンスの名前です。ヨハン・シュトラウス2世の『ピチカートポルカ』なんて作品がありますね」
 
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“ロマン&ポルカ”という名前にはコスモスが難色を示したのだが、プロデューサーの悪乗りでこのコンビ名が決められてしまった(最初は“ロマンポルカ”だったがコスモスの抗議で&が入った)。ドラマがずっと続いているので2人のデュオ曲も定期的に発表されて番組で使用されている。
 
「でもうちの事務所もタレントの数が増えて私はもうずっと忘れられてCDとか出してもらえなくなっていたのが、ロマンちゃんのおかげで、そういえば石川ポルカなんて歌手もいたなと思い出してもらえてロマンちゃんとのデュオで定期的にCD出してもらえるからロマンちゃんは幸運の青い鳥ですよ」
「だってよ」
と朱美は収録を見学している七尾ロマンに呼びかける。カメラがロマンを撮す。
「こちらこそポルカちゃんのおかげでクレジットに名前が出る役をもらえたので嬉しいです」
 
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ロマンはこのドラマの前は、舞音やビーナのリハーサル役をしていることが多かった。そもそも本番に映っていなかったし映っても通行人とか“居合わせた客”とかの役だった。
 
ピアノ室での歌唱ではロマン&ポルカで『ショコラトル』を歌った。
 

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3人目は原町カペラを迎えた。
 
花咲ロンド・石川ポルカ・原町カペラの3人は一時は“売れないシスターズ”を自称していたが、その件には触れない。
 
「原町カペラさんでーす」
「こんにちはー」
 
「時々カペラって何ですか?という質問があるようですが。お星様の名前ですよね」
「はい。ぎょしゃ座のアルファ星で、天狼星ことシリウス、南極老人星ことカノープス、太陽系にいちばん近い星・ケンタウルス座アルファ星、おりひめ星・ヴェガの次がカペラですね」
「かなり上位ですね(*12)」
 

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(*12) 明るい星のランキング
1. -1.46 Sirius
2. -0.4 Canopus
3. -0.1 αCen
4.-0.05 Arcturus
5. 0.03 Vega (織姫)
6. 0.08 Capella
7. 0.13 Rigel(βOri)
8. 0.37 Procyon
9. 0.42 Betelgeuse(αOri)
10.0.46 Achernar
11 0.6 βCen
12 0.667 Acrux(南十字星のα星)
13 0.76 Altair (牽牛)
14 0.86 Aldebaran (αTau)
15 0.91 Antares (αSco)
 
カペラはうっかりうしかい座のアルクトゥルスを飛ばしてしまった。この件は後でカペラが別録りのビデオで修正した。千里はその場で気付いたが、話の腰を折りたくなかったのでコメントしなかった。
 
altairは、理科の教科書ではアルタイルと読むが英語読みはアルテアで初期のベストセラーパソコン(正確にはマイコン)の名前にも使われた。ビル・ゲイツとポール・アレンはこのマシンで動くプログラムを作るコンテストで優勝した(実際には“動作した”のは彼らの作品のみだった)ことからマイクロソフトの礎を築いた。
 
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