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■春備(10)
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日和(入瀬コルネ)は3月3日に高校を卒業し、ゆりこ副社長に退団願いを提出すると、ウェディングドレスを着て、千里さんに連れられて兵庫県の山奥にある九重の家を訪問した。
「九重さん、ふつつかものですが、よろしくお願いします」
「こちらも不肖者だけどよろしくー」
千里は九重にタキシードを着せ、ふたりが並んでいるところをアイリスに写真に撮らせた。
九重は日和にダイヤの指輪を贈った。
「わあ、ありがとう」
「お前が生きている限りは浮気しないことを誓う」
「九重さんのことを一生愛することを誓います」
2人はサイダーで乾杯した。千里は、シレーヌに手伝わせて三三九度をさせた。母里酒造のノンアルコール清酒“お酒じゃないの〜?”を使用した。
(歌音の結婚式にもこれを使用した。清香の父(1960) が付けた名前だが、きっと天地真理『ひとりじゃないの』(森田公一作曲 1972)に掛けた名前)
九重は日和に指輪をはめてあげた。日和は九重にキスした。
指輪は少し大きめに作られていたが九重の腕力でフィットするようにした。
九重は日和を自分の上に乗せ、軽く飛行して宮古島まで行った。
「千里から一週間特別休暇をもらったからここで少しすごそう」
「はい」
九重はもじもじして言った。
「あのさ、ひよちゃん。結婚するってどういうことか知ってる?」
「もちろんです。九重さんの奧さんにしてください」
「うん」
それでふたりは愛の儀式をした。
(昭和40年代の『おさな妻』みたいなセリフだ)
なおハネムーン中1度、コルネは東京でドラマの撮影があったので、共演する妹のホルンからの電話で千里さんに転送してもらって東京に行き、撮影に参加した。
春奈は昨年12月に別れた元恋人・拓矢のマンションを訪れた。
「春奈、どうしたの?」
「ちょっとアルバムのロケハンで鹿児島行ってきたから、お土産に森伊蔵買って来た」
「あ、いいね」
と言って彼は春奈を入れてくれた。
「一緒に少し飲まない?おつまみに霧島高原ハムのウィンナーも買ってきた」
「まあ少し飲もうか」
それでウィンナーをボイルして(勝手知ったる元彼の家)、リビングでそれを食べながら春奈は彼と一緒に森伊蔵を飲んだ。1時間ほどおしゃべりしたところで春奈は言った。
「ウィンナー食べてたら、たっくんのフランクフルトも食べたくなっちゃった。そこに座ったままでいいからフェラさせてくんない?」
「え!?まあいいけど」
それで春奈は彼の前に跪くと、ズボンのファスナーを開け、ブリーフの中から彼のペニスを取り出す。ペニスはもう大きくなっている。
「あ、洗ってないけど」
「平気だよ」
と言って春奈は彼のペニスを舐め始めた。
「ひー」
「痛かったら言ってね。私ちんちん付いてたの遙か昔だからもう感覚忘れちゃったし」
この子にペニスか付いてたというのが信じられない。子供を産めないということを除けばすごくいい女だ。美人で優しいし料理もうまいし。セックスの好みや物の考え方も近いし。子供好きみたいだし。
また自分は美容師の息子、彼女は床屋さんの娘で育った家庭環境も似ている。
この子フェラも上手いし手でしてくれるのも上手い。セックスの感覚も普通の女の子と変わらない。本人が元男の娘だっただけあって、女装も理解してくれるし!
ネットで見掛けて知った“タック”も自分ではうまくできなかったけど、この子がきれいにしてくれて、お陰でハイレグを体験できた。
「たっくんも性転換する?そして私とレスビアンになる?」
なんて言われたけど、さすがに男を辞めるつもりは無い。スカートは好きだけど。スカートの中に顔を入れてフェラされるのとかも凄く気持ちいい。
彼はしばらく極上の快感をむさぼっていた。
「気持ちいい。理性が吹き飛びそうだ」
「何なら1発やる?より戻してなんて言わないから、後腐れ無しで」
「したい」
「ベッド行こうか」
「うん」
それで春奈は彼と一緒にベッドに移動したのである。
3月8日(土)、青葉邸ではミュージシャンアルバムの取材をおこなった。
この日最初に迎えたのは松原珠妃さんである。朱美が無茶苦茶緊張していたので
「別に取って食ったりしないから」
と言われていた。
「紅白歌合戦に20年連続21回出場、松原珠妃さんでーす」
「こんにちはー」
「本番前にケイさんとたくさんお話なさっていましたね」
「珠妃さんは私の歌の先生ですから」
とケイが言う。
「私が小学2年生の時に歌の歌い方をていねいに指導してくださったんです」
「ケイは私がデビューした時バックバンドの初代ヴァイオリニストを務めてくれた」
と珠妃が言う。
正確にはケイは2代目である。初代の人が怪我した(*14)ので代わった。
千里が茶々を入れる。
「松原珠妃さんの初代ヴァイオリニストはステージ上で刺されそうになった松原さんをかばって自分が刺されて死亡した、なんて伝説がありましたが」
「あれはとっさに持っていたヴァイオリンで身を守ったんだよ。だからヴァイオリンは壊れちゃったけど、私は無傷だった」
「それでストラディヴァリウスがこわれちゃったんだっけ?」
「そんないいヴァイオリンを持ってるわけない。あれは70万円ほどの確かピグマリウス製」
朱美がコメントする。
「一般の方だと70万円の楽器ってかなり高価なものではと思われるかもしれませんが、ヴァイオリンの価格って相場が凄まじいですからね。ストラディバリウスだと数十億円、普通のプロの方が使う物でも数百万円で、百万未満の楽器は安物という感覚です」
千里も補足する。
「全然プロじゃない私が常用しているヴァイオリンもイタリアのクレモナで100万円くらいで買ってきたものだよ」
「そのくらいするよね」
と青葉も言う。
(*14) 前の出番のバンドがステージ上で花火を打ち上げ、それがヴァイオリニストの手を直撃した。ケイは偶然その場に居合わせてヴァイオリン演奏を代わった。
その演奏が素晴らしかったのでケイは珠妃の全国ツアーにも帯同し、武芸館ライブでの演奏も頼まれた。
この時事務所の先輩歌手が珠妃を刺そうとする事件が発生。ケイの行動で誰も怪我は無かったものの新聞一面で報道され、事務所の兼岩社長は引責辞任した。でもその後20年会長をしている。
ケイが言った。
「千里が使っている楽器の中では龍笛もかなり凄いけど価格としてはフルートが高い。あれ1000万以上したはず」
「うん。1300万かな」
「私が使ってるフルートなんて50万円なのに」
と朱美。
「50万円したのならかなりいい楽器」
と青葉。
「うん。私もそう思う」
と珠妃。恐らく総銀フルートであろう。千里の1300万円のフルートはプラチナ(白狐)。その姉妹楽器の金のフルート(金狐)は1200万円である。
「歌手生活22年ですね」
「最初に出した『黒潮』は大ヒットしたものの次の作品が全く売れなくてさ。私このまま消えるのかなあ。そのうちAVとかに出演してとか考えちゃったけどね。蔵田孝治先生に書いて頂いた『愛のドテ焼き』がまたヒットしてAV行きを免れました。それから20年ずっと蔵田先生の歌を歌ってきています(*15)」
(*15)正確には“ヨーコージ”作詞作曲である。これは柊洋子(ケイ)と蔵田孝治の共同ペンネーム。蔵田が独特の記号でメモしたメロディラインを“清書係”のケイが五線譜に記し、伴奏とかも完成させるものである。
元々、珠妃がいい曲をもらえないと悩んでいたので、ケイが蔵田のところに楽曲提供をお願いに行き、だったら手伝え、と言われて助手を務めたものである。
ケイがコメントする。
「蔵田さんが“先生”はやめてくれ。“蔵田さん”でいい、って言ってますけど」
「だって大恩ある先生だもん。蔵田先生だよ」
「『愛のドテ焼き』はラピスラズリもカバーしたね」
「あれラピスが歌ったのはアレンジが固まる前の『ドテ焼きロック』の状態だったんだけどね」
とケイ。
「うん。あれ聴いて懐かしーいと思っちゃった」
と珠妃。
「当時の譜面は残ってなかったらしいんだけど、偶然にも私の知り合いが当時のライブの録画を所有していたんだよ」
と千里が言う。
「うん。そこから私が譜面を起こした」
とケイ。
このあと放送ではこの貴重な、17歳の松原珠妃が『ドテ焼きロック』を歌う映像(2004.12.22留萌) が流れた。よくこんな映像が残ってたなあ、と話題になった。インタビューの場でも鑑賞したのだが、珠妃が懐かしそうにしていた。
「あの歌で私、おもろい姉ちゃんと思ってもらえたからね」
「『黒潮』の純愛少女のイメージから大きく転換したね」
「うちは大坂で生まれた女やさかい」
「松原珠妃さんって楽しい曲が多いですもんね」
「うん。だからお笑い番組にもだいぶ出たね」
「子供やお年寄りにも人気だね」
「うん。幼稚園の訪問や老人ホームの訪問もだいぶやった。子供たちと一緒に『手をつなご』とかやってたよ」
「最近の『パン・ザ・ワールド』も楽しかったです」
「世界中のパンの名前を出したからね。子供たちがたくさん歌ってるし、youtubeにもたくさんカバーがあがってる」
「最近よくパン屋さんで流れているよ」
ピアノ室の歌唱では、その『パン・ザ・ワールド』を歌った。ケイが珠妃から指名されて伴奏を務めた。
この日2人目は松浦紗雪を迎えた。
「松浦紗雪さんでーす」
「こんにちはー」
「来年でデビュー30周年ですね」
「何かいつの間にか30年やってきたね」
「紅白歌合戦にも合計23回出場していらっしゃる」
「たくさん呼んでもらったね。一応毎年大晦日は予定を空けているんだけどね」
「これまで色んな先生のお歌を歌ってこられましたね」
「うん。鍋島康平先生、東堂千一夜先生、東郷誠一先生、上島雷太先生、最近は松本花子先生」
「そのまま平成令和歌謡史ですね」
「私は量産型の先生が多いのよね。東郷誠一先生は年間100曲、上島雷太先生は年間1000曲、松本花子先生は年間3000曲くらい書いておられる」
「うちの事務所の歌手も松本花子先生にはたくさんお世話になってます」
「だってあんたんとこの歌手は150人くらい居るんじゃないの?並みの先生にはとても間に合わないよ」
「先日全員参加のイベントに参加したのが108人だったんです」
「108人なら煩悩ガールズ並みだね」
「そういうグループありましたね」
「でも早朝の録画だったので私起きれなくて参加できなかったんです」
と東雲はるこが言う。
「コスモス社長から無茶苦茶叱られました」
「あんたたちみたいに売れてる子でもちゃんと叱るのが偉いね。伊達に大集団を統率してないよね」
「コスモス社長って個人的なことでは寛容ですけど仕事のことではむっちゃ厳しいです」
「いやあの人は凄いよ。お馬鹿を装ってたアイドル時代しか知らないとコスモスなんてただのお飾りで実際は鈴木一朗さんか玉雪梓紗さんがコントロールしてるんじゃないかと言う人もあるけどそれは誤解だよ。アイドル時代のお馬鹿はあくまで演技」
「“孤独・怠け・敗北”とか言ってましたね」
とケイが言う。
(某雑誌の“友情・努力・勝利”をパロったもの)
「アクアを大スターにしただけでも大成功。その後更にラピスラズリ、常滑真音、薬王みなみ、立山きらら、と続々とスターを生み出している」
と松浦。
「松浦さんはアクアのファンクラブ会長でもいらっしゃいますね」
「うん。会員番号は私が1番でマリちゃんが2番」
と言って会員証を見せる。会員番号1が表示されている。これは1000番までの会員番号の人に特別に贈った特別会員証である。
「昨年CD Fileを出されましたね」
「うん。昔の音源が入手できないという声があったんで昔の音源そのままで全てのシングルを収録しました。よく今歌い直してCD出されるかたあるけど私20歳の時のほうが明らかに今より上手かったもん。だから上手かった当時の歌声のままで」
ピアノ室の歌唱では大ヒット曲『丸いピアス』を歌った。伴奏に松浦さんのご要望でアクアが出て来てピアノを弾いたのは視聴者を驚かせた。もっとも本人は
「ぼく忙しいのに」
と文句を言っていた!
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