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■春備(3)
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1月4日(土)、伏木の青葉邸でミュージシャンアルバムの取材が行われた。この日最初に迎えたのはハイライトセブンスターズである。
「ハイライトセブンスターズのみなさんでーす」
「こんにちはー」
「このバンドの名前は、みなさんがハイライトやセブンスターが好きだったからではないですよね」
「はい。ぼくらはマネージャーやサポートメンバーも含めて喫煙者はいません」
「ぼくらの出身地の近くにたばこ工場があってハイライトやセブンスターを作ってたんですよ」
「結成した当時ぼくらは高校生でたばこ吸ってたら一発退学だから、そういう禁断の名前を敢えて使ったんですよね」
「ロックバンドにはそういうネガティブな名前を敢えて使うところってよくあるよね」
「レッドツェッペリン(鉛の飛行船:飛べない)とか、スリーピースリーパーズ(*8) とか」
「バインディング・スクリュー(つぎはぎのスクリュー)なんかもそういう系統だね」
(*8) フィンランドのバンド、スリーピースリーパーズは映画『レニングラードカウボーイズ、アメリカに行く』で、レニングラード・カウボーイズという奇妙なバンドを演じたことから、その後ほんとにレニングラードカウボーイズの名前で活動するようになった。
「シガレットチョコを売っておられるとか」
「ジョークグッズですけどね」
「たばこのパッケージに似た箱にシガレットチョコ10本入れて400円です」
「製造費を除いた粗利を癌対策の基金に寄付しています」
「ああ、いいことですね」
「雑誌パンパンで実施した読者アンケートで今いちばん調子のいいバンドに7年連続で選ばれてますね」
「ありがたいです」
「あと7年くらいは王者に君臨したいね」
「7年くらいならいいよね。70年やったら、ただの老害だ」
「なんか大御所と呼ばれていて貢ぎ物持ってこないとデビューさせないぞとか」
「貢ぎ物って何持っていかないといけないんですか」
「そりゃ美少年でしょ」
「ああ美女はよくいるけど美少年は貴重だよね」
「アクアちゃんクラスならデビュー確実かな」
「あの子は女の子である疑いが濃厚」
「どうなんでしょうね」
「ヒロシさん自身かなりの美少年だと思いますが」
「俺貢ぎ物にされたりして」
「しかし、70年後に今のパワー保てる自信無い」
「ぼくらの前はどこだったんだっけ」
「スカイヤーズです」
「ああ。大先輩だ」
「ぼくらもその内大先輩と呼ばれるかもね」
「たばこの名前を連想させるようなアルバムもだいぶ出しましたね」
「メビウスの輪とか、マイルドな虹とか、若葉の頃とか黄金鳥とか」
「うん。でもさすがにネタが尽きた」
「あれ商標権の侵害にならないようにするのが難しいのよ」
「俺たちたばこメーカーからはあまり好意的には思われてないし」
「『宇宙旅行』が分からんという声がありましたが」
「あれ昔宇宙の“宙”と書いて“おおぞら”と読むたばこがあったのよ」
「読めません」
「うん。それで読めないと言われて短期間で消えちゃったのよ」
「宝塚には宙組(そらぐみ)ってありますけどね」
「そちらは定着したね」
「『ぼろぼろブラザース・インザ・タウン』大好きでした」
「あれ楽しかったけど、『投げ銭もらえなかったらどうしよう』って緊張感がいつもあったよね」
コロナの影響でもう終了したが、“ぼろぼろブラザース”と名乗るハイライトセブンスターズが色々な街に行き、バーなどで演奏してギターケースなどに投げ銭を入れてもらうという番組であった。もらった投げ銭でその日の宿を確保しなければならないので、実入りが少なく野宿するはめになったこともあった。リクエストされれば軍歌でも演歌でも何でも演奏した。わらべとかうしろゆびさされ組とかの歌をヒロシが女声で可愛く?歌ったのとかは凄い量の投げ銭が飛んできた。ついでにヒロシは女の子と誤解されてナンパされかけた!
“ぼろぼろ”は“マールボロ”に引っかけたネーミングであった。
この日のピアノ室での演奏は朱美が好きだと言った『虹の四時』を演奏した。
2組目はレッドブロッサムを迎えた。
「レッドブロッサムのみなさんでーす」
「こんにちはー」
「本番前に色々挨拶が交わされていましたが」
「鮎川ゆまさんは私のサックスの先生なんです」
と青葉。
「私とゆまちゃんは、ドリームボーイズの元バックダンサーなんです」
とケイ。
「醍醐先生との絡みは?」
「それは説明するのがとても難しい」
千里が説明した。
「私が高校時代DRKってバンドをしていて、これが後のゴールデンシックスの母体になったんですが、東京のプロダクションの人にDRKがスカウトされたことがあったんですよ。でも私たちは勉強もあるしデビューの意思は無かったんで、私が占いをして○月○日にどこどこに行けば、私たちよりいいバンドに出会えますよと言ったんです。それでその人が見たのがラッキートリッパーというバンドとレッドブロッサムだった」
「それでラッキートリッパーとレッドブロッサムを合体させてラッキーブロッサムというバンドとしてデビューしたのよね」
「千里ちゃんはラッキーブロッサムにたくさん楽曲を提供してくれたし、ツアーにもかなり参加している」
「まあ学費稼ぎですね」
ケイが補足する。
「千里は高校進学直前にお父さんが失業して大変だったんだよね」
「それで演奏とか作曲で稼いでいた」
「担当楽器は何だったんですか」
「フルートまたはヴァイオリン。雨宮先生に両方同時にやってくれと言われたことあるけど、無理ですと言って断りました」
「物理的に不可能ですね」
「ケイは1人でバスクラリネットとチェレスタを同時演奏したことある」
「それも無理な気がする」
「あれはバスクラとチェレスタが一緒に鳴る所が無かったから何とかなったんだよ」
「まそれでラッキーブロッサムが解散したあと、ラッキートリッパーのメンバーはそれぞれの道を進んだんだけど、レッドブロッサムのメンツは食い詰めて、しばしばゆまちゃんに御飯食べさせてもらってた」
「それで南藤由梨奈ちゃんのバックバンド作るという時に、ゆまちゃんがぼくらを招集してレッドブロッサムを再結成したんだよね」
「その後由梨奈ちゃんが引退してもレッドブロッサムだけで続いているね」
「ゲストボーカルは2〜3年おきに交替しているけどね」
「美味しいもの食べさせてもらえるから楽しんで歌ってます」
と現在のゲストボーカルの静花ちゃんが言っている。
「ちなみに静花ちゃんはツアーとかでは咲子と同室にする」
「ゆまと同室はありえないからな」
「ゆまは100人の女をはらませたという伝説がある」
「100人もはさすがにやってない」
このやりとりはさすがに放送には流さなかった!はるこは意味が分からず首をかしげていた。あとで朱美に「鮎川さんってちんちんあるの?」と訊いたらしい!
ピアノ室での演奏では最近の曲から『水無川の岸辺』を演奏したが、みんな「ここ音響いい!」と言っていた。
ところで
「金沢に家を建てたら富山に転勤させられるのでは」
などと言っていた邦生だが、本当に転勤になった。4月から転勤かもと思っていたのだが、富山本店の渉外課の課長が急に退職したということで、向こうには後任に適当な年齢の人が居ないというので、金沢店係長の邦生が“課長代理”として1月から赴任することになったのである。
「私も課長をするのにはまだ若い気がしますけど」
「だから課長代理ということで。君は支店長代理もこなしたし」
ということで、金沢の自宅から毎日富山市の本店へ通勤することになった。
「でも通勤可能な場所で良かったじゃん」
「うん。七つ島支店に行ってくれとか言われたら大変だったけど」
「七つ島(輪島市の離島。人口はゼロ)には支店無いと思うけど」
「うん。舳倉島(へぐらじま)(*9)にも無い」
(*9) 七ツ島は輪島港の北方20kmほどの沖合にあり、その更に20kmほど北に舳倉島がある。舳倉島には数十人の定住者があるが、金融機関・商店などは無い。
七ツ島は火山島で水面に出ている7つの島はその山の7つの峰である。七ツ島の島の数は能登半島北岸から肉眼で数えることができる。
朝は真珠が四輪(電気自動車のリーフ)でウィングライナーの金沢駅まで送っていき邦生は富山駅からはバスで本店まで行く。帰りは真珠が金沢駅まで迎えに行く。四輪を使うのは未来をチャイルドシートに乗せておくためである。しかもリーフは自宅の太陽光パネルで造られる電気で充電できるし。
邦生は挨拶回りで顧客を訪問して回ったが
「ああ、やはり後任は女性の方になりましたか」
と言っていたお客さんが数人居たので、どうも前任者は男性固有の問題で解任されたっぽいなと思った。それで外見的には女に見える自分が起用されたのだろう。“課長代理”でいいのなら、本店内にも27-28歳の男性行員は居る。女性だとこのくらいの年齢は結婚出産などで残っている人が少ない。自分より適任では?と思ったさくらは4月からどこかの支店長になることが内定しているらしい。それに彼女は男に見えるし!
1月5日(日)は、真珠と邦生の子供、未来の誕生日であった。一升餅を作ってもらい、未来に踏ませた。“スマッシュケーキ”は
「単にケーキがもったいない」
と言って、お誕生祝いにショートケーキを買ってきて普通に食べてお祝いとした。
ところで、この日は“次の子供を真珠と邦生のどちらが産むか”じゃんけんで決めることにしていた。
邦生は真珠に訊いた。
「ぼくが子供を産んだ場合、その子の法的な両親はどうなるんだろう?」
「産んだ人が母だよ」
と真珠は答えた。
「ぼく法的には男なのに?」
「男だろうと産んだ人が母。判例もあったはず。父親欄は空欄になるね。ぼくは認知が出来ないから可哀想だけど仕方無い。法的には認定されないけどその場合はDNA鑑定書作ろうよ」
「そうだね。ってぼくホントに子供産むの?」
「だからじゃんけん」
その結果は見えてる!邦生はじゃんけんで真珠に勝ったことが無い。
「だけど、くーにん、妊娠してるのに毎日富山まで通勤するのたいへんだよね。仕方無いから、次の子供はぼくが産んであげるよ」
「ほんと?ありがとう!」
「転勤になったからしょうがないね」
それで2人目も真珠が産むことにしたのである。
「3人目はよろしくー」
「あはは」
1月11日(土)。伏木の菓子神社・津幡の辺来の里神社では鏡開きがおこなわれたが、邦生・真珠・明恵・希望などもぜんざい作りに動員され、たくさん造った。配るのは中高生巫女さんたちが主としてやってくれた。しかしどちらも凄いお客さんだった。
「このあんこ美味しい」
「ムーランのあんこだからね。丹波大納言だもん」
「すごっ」
千里達はロビン・夜詩子・アイリーンが姫路立花K神社で、ロージーが女狐島K神社で、ロゼが留萌三泊P神社で、ブレンダが越谷F神社でそれぞれ鏡開きに参加した。
ゆいは朱雀林業能登支店で、ブルームは浦和の千里家で鏡開きをした。何かこどもがたくさん居た。彪志は南砺営業所での鏡開きに参加した。多数の研修生たちがぜんざいを食べていた。
東京のあけぼのテレビでは五反野分室で鏡開きをして、信濃町ガールズたちがたくさん食べていた。麻生ルミナをはじめとする10人のガールズで、小豆を煮る所から作り、早送りで中継した。鏡家トマトたち10人がひたすら餅を焼いていた。青い傘、赤いトマト、ジョイアの子たちが食べる係に来訪してくれた。フラワーサンシャインの子たちと楽しく交款していた。
1月11日(土)、富山県高校バスケット新人戦が再開される。
今回の新人戦では“きちんとルールを理解している”晃の指揮でみんな本来のプレイをすることができた。
1月11日(土)の3回戦は30点差で圧勝、12日(日)の準々決勝も20点差で勝ち、続いて行われた準決勝で先日負けた高岡C高校に6点差で競り勝ちリベンジ。13日(祝)の決勝では富山B高校に1点差で敗れたものの、H南高校やはり強し、というのを印象付けた。
この大会の3位以内は2月に長野でおこなわれる北信越大会に出場できる。3位:高岡C高校、4位:富山S高校だった。(実際には大雪のため中止になった)
人は噂していた。
「やはりH南高校は強い」
「ウィンターカップ予選は奥村先生の解任で混乱していただけだろうな」
「今年のインターハイ予選は、高岡C高校、富山B高校、H南高校、高岡P高校の4強の争いかも」
「もしH南と高岡Pがぶつかれば、先生と弟子の闘いになるな」
H南高校では、今回3回戦の後は晃が「姉ちゃんのおごり。今日は鏡開きだから」と言ってみんなにぜんざいを食べさせた。お代わり自由にしたので5〜6杯食べてる子もいた。準々決勝の後は控室でハンバーガー、準決勝の後はチキチキボーンを食べた(3箱消費)。決勝は負けたので残念会で“お好み焼き”を作って食べたが、谷町先生が
「これほんとにお好み焼きなの?」
などと言っていた!
小麦粉と同量の豚肉を使ってるからね。
「でもホットプレート8個も点けてよくブレーカー落ちないね」
「この銀色のシールに数字が書かれたコンセントは各々別系統なんです。そのひとつずつにホットプレートをひとつずつつなぎます」
「へー」
その各系統が別の太陽光パネル/バッテリーにつながっている。ここは打ち上げをするためにこういう電気仕様になっている。千里が学生時代、京都南邸で剣道部の打ち上げをした経験が活かされている!
年末から留萌に来ていた和弥とまゆりは13日のお昼、ヘリコプターとジェット機で姫路に戻った。和弥たちが留萌に来ている間、姫路の留守は主として夜詩子が守っていたが、高校生の星月もたくさんご祈祷をしていた。
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春備(3)