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■春備(5)
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その日芳恵(芳雄)は女子制服を著て!夜道を自宅に向かって歩いていた。
(芳恵は一応女子高生なので普段は女子制服を著ている)
後ろから足音が聞こえる。ずっと聞こえるので、芳恵は一応オーリンに呼びかけた上で立ち止まり、振り返った。
20歳くらいの女の人だった。一瞬目が合う。会釈しあう。
「お先にどうぞ」
と芳恵が言うと女性は
「すみません」
と答えて、先に歩いて行った。でも彼女の声が男だったのでびっくりした!
きれいな人なのに。
オーリンが「少し後ろから男の人も来てる。面倒だから自宅に転送するよ」と言った。芳恵は気が付いたらマンションのドア前に居た。
「ただいまあ」
と言って中に入る。
「こんな遅くまで何してたの?」
と叱られる。
「ごめーん。問題集買おうと思って本屋さんに寄ったらなかなかいいのが無くて」
「電話かメールでもしなさい」
「はーい」
男は、少し先のほうに立っていた女子高生の姿がかき消すように消えたのを見て思わず目をこすった。
「飲み過ぎたかな」
男は表通りに戻るとタクシーを拾った。
2025年は2月2日(日)が節分で3日(月)が立春だった。
和弥は2日早朝から女狐島飛行場に行き、千里のジェット機で旭川空港に飛んだ。ヘリコプターで留萌の崎山に移動。迎えに来てくれた巫女長・善美の車で麓のP神社にはいった。祖父の常弥、および千里(ロゼ)・善美と今日の節分行事について打ち合わせた。
姫路では宮司のまゆりが、花絵・千里(夜詩子)・越智さんおよび息子たちと今日の行事について打ち合わせた。
姫路は本来夜梨子の担当なのだが、夜梨子はほぼ失明状態なので(でもバスケット選手として活動している:見えなくてもパスを受け取れるしシュートできる)、最近は夜詩子がだいたい代理している。
(夜梨子は自動車の運転や飛行機の操縦もできる−但しグレースは彼女にはプロペラ機しか操縦させないようにしている)
留萌三泊P神社では夕方17時から節分の豆まきがおこなわれ、地元の名士や巫女さんたちが和弥の音頭で豆をまいた。
姫路立花K神社(警察の指導で北町社のみで行う)・女狐島K神社では18時から豆まきをおこなった。どちらも凄いお客さんだった。女狐島と姫路港の間の連絡船は臨時便まで出してお客さんを運んだ。
東京のあけぼのテレビでは五反野分室を使い、19時から豆まきをおこなった。事前にルンバがお掃除している所から中継していた。
「今年は2日が節分なんですね」
「いつもの年より1日早いですね」
「ほんとは節分が早いのでは無く暦が遅れているんですけどね」
「次は2029年がこうなります」
都合の付いた信濃町ガールズたちのほか、青い傘・ジョイア・海岸線の子たちも来訪して豆を拾うのに参加してくれた。青い傘の瞳美が派手に転んで、拾った豆を入れていた籠をぶちまけてしまったのが、しっかり映されていた。
「青い傘は毎度美味しい」
「あれわざとやってできるもんじゃないよな」
「こいつらは天然だと思う」
礼音は2月1日(土)の朝、明美(久保孝昭)、宮下マネージャー、小木カメラマン、アリスさんと一緒に熊谷飛行場から黄色いホンダジェットで長崎空港に飛んだ。
「あ、煌さん、ぼくやっと精子の採取が4回完了しました」
「良かったね。これで4回は人工授精できる」
「そんなに子供作るとは思えないけど」
「禁欲も終了だね」
「でも禁欲は続けようかなと思って」
「いいんじゃない?男性的な発達があまり進まないようにオナニーしないようにしてる子は多いよ」
「煌さんもしてなかったんですか」
「ぼくは小学4年生の時以来してない。セレンさん・クロムさんも同じくらいしてなかったみたい」
「さすがですね」
「あの2人はもう睾丸取っちゃったけど」
「ぼくはどうしよう」
「たくさん迷うといいよ」
「はい」
明美は煌も当然睾丸は除去済みなのただろうと思っている!
空港では予約していたレンタカーを借りて長崎市内に入る。眼鏡橋のところで〒〒テレビ取材班と合流する。今回は希望さんともうひとり18歳くらいのカツラさんという女性(だと思う。スカート穿いてたし)の2人だった。
彼女は4月から大学1年生ということだったが、既に入試は完了し合格通知も受け取り入学手続きも済ませたということである。正式には4月から編集部に加わるが、今回は体力が無くてもできるから行っといでと言われて来たらい。彼女は
「きららさん好きです。仕事じゃなかったらサインくださいと言っちゃいそう」
などと言っていた。
金沢のテレビ局の取材班で煌の登山に毎回密着レポートしていると言うと
「わざわざ金沢から熱心ですね。登山番組ですか?」
と訊く。
「いえ。『北陸霊界探訪』と言って、お化けや幽霊などの霊現象を追いかける番組です」
「それがなぜ登山のレポートを」
「ネタが足りないので地元出身のタレントさんの活動を追いかけているんです」
「ぼくこの番組に出るようになってから急に全国的に人気が高まったんだよ。だからゲンのいい番組なんだよ」
「へー」
「最初は白山だったね。それから富士山、大雪山、出羽三山、阿蘇山、と色々行ったね」
「ぼくのファンの素人の人が登ろうとするかもしれないから、基本的に危険な山には行かない方針」
「危険というと谷川岳とか?」
「あそこは怖いね」
「死者の数が異常だよね」
眼鏡橋で記念写真を撮ってから、中華街まで歩き、新和楼で昼食を取った。皿うどんを食べたら、久保君は
「長崎ではこういうのを皿うどんと言うんですか!」
と感心していた。希望さんは“焼きそば”を取っていたが、またまた久保君が驚いていた。
「東京と大阪の“たぬき”の違いとかより凄いですね」
「皿うどんと焼きそばは麺が少し違うんですね」
「そそ。揚げた麺を使うのが焼きそば」
揚げてない硬麺にあんかけしたのが皿うどんで、揚げた硬麺にあんかけしたのが焼きそばである。
「明石の“玉子焼き”も独特だしね」
「なんか違うんですか?」
「ああ知らない?あれは一度は食べてみる価値がある」
「へー」
「まあ食は奥が深いよ」
食事の後は、平和祈念像を見てからグラバー園に行った。宮下さんが案内役を務めてくれた。
「グラバーは実はキリンビールの創立者でもあるんだよ。ここの狛犬が、キリンビールのラベルにある麒麟の絵のモデルと言われる」
「20歳未満なので分かりませーん」
「まあ大人になったら思い出して」
出島を見たあと夕方、ロープーウェイの駅に行き、稲佐山に登った。普通は山に登るのは眺望の良い昼間にするのだが、ここは夜景が名物(一千万ドルの夜景)なので、わざわざ夕方になってから来た。
「このロープーウェイの経営にはジャパネットたかたが参加してるんだけど、市とどうも揉めてるみたい。撤退するかも」
(この3月で撤退した)
「新たなスポンサーが見付かればいいですね」
この日は下山したあと長崎市内で一泊。翌日は、礼音・宮下・小木だけで、“きらら”モードの写真を撮った!
午後は郊外にある丸山アイの私邸を訪問し、私邸内の室内プールで水着写真の撮影もした。ワンピース水着ではあるが、凄く可愛いのを着せられた。
丸山邸は家のリビングに隣接して、20m×6レーンの温水プールがあった。屋根と壁もあり、室温は冬でも27-28度程度に維持されているという。実際暑いくらいだった。
「御自宅にプールがあるって凄いですね」
「千里ちゃんやアクアには負けるけどね」
とアイさんは言っていた。
千里さんは妹の大宮万葉さんが関東でおこなわれる水泳大会に出る時の練習用にプールを作ったとか言ってたなあ。アクアはプールくらい持ってそう。もっとも忙しくて泳ぐ暇が無いのではと心配してしまう。
プールから出た後は
「ビールでも飲む?」
と言われたが
「ぼく20歳未満です!」
と言うと、コーラをくれた。
「ビールには女性ホルモンに似た物質が含まれているから女性化にいいのに」
「別にぼく女の子になりたくはないです!」
「ちなみにそのコーラには女性ホルモン混ぜておいた」
「え〜!?」
オーリンの声が脳内に聞こえ「早紀ちゃんの言葉はほとんどデマカセとジョークと嘘だから気にしなくていいよ」
ということだったので、気にしないことにした。
丸山アイさんは九州内に20個くらいの温泉旅館を持っているらしい。以前はもっと多かったが、多すぎて面倒を見切れないので、一部千里さんに譲ったと言っていた。熊本の美女旅館とか雲仙の地蔵旅館とかがそれらしいが、どちらも千里さんの経営になってから収益が改善したらしく譲って良かったと言っていた。どちらも駐車場を拡大したことやネット予約ができるようにしたことが顧客獲得に効果があったと言っていた。
「観光バスでどーんと客が来る時代じゃないしね」
「それはかなり古い経営モデルでしょうね」
礼音が地蔵旅館で使ったような温泉付きの部屋も人気らしい。
「他人に裸を見られるのを嫌がる人も多いですからね」
「うん。銭湯文化の時代とは違うよ」
「経営センスに関してはあの子はいいものを持ってると思うよ」
「へー」
アイさんからはその後、ビーフストロガノフも頂いた。
牧元春奈は10代の頃スリファーズというアイドルユニットにいたが、解散後はタレント・女優として活動している。彼女は最初は男の娘だつたが、高校在学中にアメリカの病院で性転換手術を受け、女の子に生まれ変わった。一時期は多くの人に忘れかけられていたが、2022年の芸能界・スポーツ界の大量薬物逮捕事件の後“芸能人不足”を背景に再び使ってもらえるようになり、現在ドラマに1件とバラエティに2件出演している。彼女は女声が出せるので、普通の女優と同様に使えるのが魅力的である。
昨年は10歳ほど年上の男性俳優と一時交際し、彼は
「普通の女の子と変わらないね」
なんて言っていた。“普通の女の子”をたくさん抱いているんだろうなとは思ったが、気にしないことにしていた。一時はほぼ同棲状態だったので、もしかしたら結婚してくれるかもと期待したのだが、年末に別れてと
言われた。慰謝料も払うと言われたが辞退した。
さすがに落ち込んでいたら、昔からお世話になっているケイ先生が
「気分転換に秘湯にでも行っといでよ」
と言うので、行ってみることにした。
公共交通機関の無いところで、一般の人は月に1〜2回行われるツアーに参加する以外には行く方法が無いのだという。
ケイ先生が会長を務める§§ミュージック所有のビジネスジェットで旭川空港まで飛び、そこからヘリコプターでその島まで運ばれた。この島の人間の人口はゼロでキツネが400匹くらいとオロロン鳥が100匹くらい住んでいるだけだという話だった。それなのにwi-fiが使えるのでびっくりした。月に1〜2回来るツアー客のために使えるようにしているらしい。
食事はニシン、スケソウダラ、牡蛎など海の幸たっぷりで、クジラまで出て来た。冬場は月に2〜3頭穫れるらしい。昭和時代におこなわれていたような火薬で発射する銛(もり)ではなく、昔ながらの漁法で捕まえるのだと言っていた。旅館の女将さんが
「言うたらあかんちゃ、おらんくの池には、潮吹く魚が泳ぎよる」
と、よさこい節の一節を歌っていた。
お客さんは他にはアルバム制作で来ているという“ビキニの風”だけだった。彼らは
「春奈さん、好きです」
と言ってサイン色紙を交換した。
お風呂は加藤さん・横河姉妹と一緒にはいった。3人とも性転換者なので、気安くいろいろ話ができた。
「この島の山がおっぱいの形してるでしょ」
「あ、思いました」
「それでこの島、正式の名前はまたあるんだけど、通称・おっぱい島と言うんですよ」
「なるほどー」
「だからここの温泉は婦人科系に効くと評判で女性のツアー客多いんですよ。生理不順が治ったという話もよく聞きますよ」
「へー」
「俺も前回来た時から生理不順が治っちゃった」
などと加藤さんが言うので、一瞬ジョークがマジか判断が付かなかったが、横河姉妹が笑うので、やはりジョークだよなあと思い一緒に笑った。性転換者に生理がある訳無い。
しかし私も生理のある身体なら彼に振られなかったかもなぁと少し悲しくなった。
2月8-9日には、高校バスケットの北信越大会がおこなわれる予定だったが、大雪のため中止になった。中止の連絡を受けてから、H南高校で彩が百合に相談した。
「悪いけどキャプテンを代わってくれないかな」
「はあ?なんで」
「誰にも言わないでよ」
と言って彩は“恐るべき計画”を打ち明けた。
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