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■続・夏の日の想い出(12)

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なお今回のシングルとアルバムの制作にあたっては、基本に返ろうということで原則としてローズクォーツの4人だけで演奏することにしてサポートミュージシャンは入れないことにした。その分、けっこうな多重録音もした。タイトル曲の「一歩一歩」は重厚なブラスバンドのようなサウンドを出したが、これは私とサトが各々4回ほどキーボードを弾いてブラス楽器の音を重ねたもので、(キーボードでは同時に5〜6本の指でキーを押しているので)40〜50人編成の大型ブラスバンドで演奏しているかのような凄いサウンドに仕上がった。
 
アルバムの方は、上島先生が4曲書いてくれて、その中の「夢見るクリスタル」
という曲をタイトル曲に使用することを決めた。マキが8曲、私が10曲、各々書きためていた曲を出したが、マキの曲が4曲、私の曲が6曲採用となった。
「まだ足りないなあ。20曲くらいにしたいのよね。全員明後日の水曜日までに最低1曲作ってきて」
「俺達もですか?」とサト。
「うん。タカちゃんもね」
「作曲なんて、したことねー」
 
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「曲から先に作る場合は、適当にぱらぱらと楽器を弾いていて、何かいい感じのモチーフが浮かんだらそこから発展させる。歌詞から先に作る場合は、何か詩を書いて、それにコード進行を付けていけばいい。メロディは自然に定まる。コード進行は何と言っても1度・4度・5度・1度が基本。曲の構成は唱歌形式といって、AABAと4小節ずつ4回重ねるのが基本で、これにサビを入れるのが日本のポップスの普通の形。ま、あまり1度に言っても頭に入らないだろうし、不完全だったら、きっとケイちゃんとマキちゃんが直してくれるよ」
 
翌日、月曜日。私は大学の講義が終わった後、政子と、最近わりと親しくしている南野博美の3人でファミレスに行き、夕食を食べていた。私はチキン・ステーキ・セットを頼んだ。
「最近、やたらとお腹が空くのよね。4月にあまり食べられなかった反動かも」
「冬子は体重制限とかは無いの?太りすぎたら契約解除!みたいな」
「アイドルじゃないからね。一応常識的な範囲でとは言われてる」
「常識的ってどのくらいの範囲なんだろ?」
「今45kgだけどね。50kgまでは許容範囲かなあ。60kgになったらさすがにダイエットしろと言われると思う。逆に40kgは切るなと言われてる。体力持たないからって」
「ああ。でも女の子になって、そのあたりの体質って変わった?」
「うん。やはり脂肪が付きやすい気がするよ。意識してカロリーコントロールはしておかないと」
 
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「もう手術跡とかは痛まないの?」
「気にすると痛くなるから、気にしないことにしてる」
「やっぱ、大変なのね」
「自分で選んだ道だし。最近ようやくおっぱいの方はあまり気にならなくなった」
「ああ、豊胸も痛いんだ」
「むしろ、胸のほうが下の方より痛かった」
「きゃー」
「当時、けっこう苦しんでたよね」と政子。
「私も貧乳だからなあ、いっそ豊胸しちゃおうかとも思うけど、そういう話を聞くとためらっちゃう」
「私みたいに、よほどの必要性がない限り、手術はしないほうがいいと思うよ」
 
「冬子は顔はいじってないんでしょ?」
「うん」
「じゃ、元々女顔なんだね」
「それはマーサからよく言われてた」
「顔のパーツの配置が女性的みたいね。高校時代にクラスメイトで占いのできる子がいたんだけど、その子からも冬の顔は女性的だっていわれてた」
「顔か・・・・」
「ん?何かひらめいた?」
「マーサ、五線紙ちょうだい」
「うん」といって、政子がバッグの中から五線用紙を出してボールペンと一緒に渡す。
私は突然思いついたモチーフと歌詞を急いでその用紙に書き留めた。少し考えてその展開形まで書いていく。私はかなり歌詞を書いてから、タイトルの所に『Every Face』と書いた。
 
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「だけどさ、冬」
「ん?」
「あんた、なんで自分で五線用紙を持ち歩かないのよ?」
「あはは、いいじゃん。マーサが持ってるから」
「私と一緒じゃない時はどうしてるの?」
「バンドのメンバーと一緒の時は誰かからもらう」
「誰もいなかったら?」
「その時は仕方ないからコードとか階名とかで記録しておくよ」
「でも政子はいつも五線用紙を持ち歩いてるの?」と博美。
「うん。私は作曲はしないんだけどさ、冬がこうやって五線紙ちょうだいというから、私が持ち歩いてる」
「えー、冬子専用なんだ!」
「感謝してますよ」と私は曲の主メロディーの部分を書きながら笑顔で言った。最初に思いついたモチーフは、サビの部分に使う。
 
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この場で書いた曲「みんなの顔」は美智子も気に入って、サブタイトル曲として使うことになった。私のが更にもう1曲、マキのが1曲採用となったほか、サトとタカが書いた曲も1曲ずつ採用された。ただし私とマキの手でかなりの修正をさせてもらったのだが。ともかくもこれで19曲となった。
 
「20曲にしたかったけど、この19曲で行こうかな」
「アルバムには、民謡とか有名曲とかは入れないんですか?」
「うん。アルバムはオリジナル曲だけで行く」
「いろいろ、こだわりがあるんですね」
「まあね」
こんな時の美智子はほんとに楽しそうである。
「カバー曲のアルバム、民謡のアルバムもそのうち出すつもり」
「なるほど」
 
「一応発売日の予定は、シングルが7月1日、ローズ+リリーのメモリアルアルバムが7月8日、ローズクォーツのファーストアルバムが7月15日の予定」
「ああ、とうとうあの録音が世に出るんですね」
「うん。ローズ+リリーの作品としては2年ぶりになるね」
「メモリアルって追悼版?」
「そう。ローズ+リリーはもう復活しないから、追悼版」と私は笑って言う。
「ローズ+リリーの追悼版を出してからローズクォーツのファーストを出す。それで世間へのメッセージは充分だと思うのよね」と私は続けて言った。
 
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美智子も頷いていた。これは私としてもこの3人の前で言っておきたかったことだ。そもそもこのアルバムを出すのを録音してから1年近く待ったのはローズクォーツのアルバムが(美智子が満足する品質で)出せるようになるのを待つためであった。
 
「あと、冬ちゃんの写真集を2冊。昨年撮った18歳の写真集と、これから撮影する19歳の写真集。発売は同時にする予定。6月末に店頭に出そうと思ってる」
「今年はどこで撮影するんですか?」
「松島。宮城県ね。敢えて被災地でやる」
「えーっと、水着ありですよね」
「水着写真の無い、女の子の写真集なんてあり得ない」
「あはは」
「で、今回政子ちゃんにも1枚だけ入ってもらうことにした」
「契約事項には触れないんですか?」
政子の芸能活動契約は、楽曲の録音とそれに伴う最低限の活動のみと限定になっていたはずである。
 
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「政子ちゃん、来月20歳になるからね。契約事項を見直すことで昨日電話でだけどお父さんと話して合意した」
「ああ」
「基本線は変わらないんだけど、少しだけゆるくしようという方針かな。ローズクォーツの4人で映る写真も1枚入れるつもりだったんだけど、ある筋からのお達しでダメといわれたのよ」
「いや、女の子の写真集に野郎を写してはいかんです」とサト。
 

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そういう訳で私達は5月はシングルとアルバムのレコーディングに没頭した。更にその合間を縫って、私は宮城県の松島に行き、写真集の撮影をした。政子も一緒だったので、楽しい撮影旅行になった。私と政子のツーショットは10通りのパターンで撮影したのだが、その中のどれか1枚を収録することになる。これは水着ではなく、ふたりともワンピースを着た写真である。
 
「ミニスカにしようかとも思ったんだけどねえ」
と美智子は言っていた。
「でもローズ+リリーの復活みたいな感じにはしたくないのよ。これはあくまで同窓会みたいな雰囲気。だからワンピースがいいかなと思ったんだ」
このふたりで映った写真は、写真集の最後のページに掲載され、その縮小版が写真集の裏表紙にも印刷されることになった。
 
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5月末の土曜日、私達はいつもの事務所ではなく、大手○○プロダクションのビルに呼び出された。部長の浦中さんが出てきたので、私は
「お世話になっております。ご無沙汰しておりました」と挨拶した。
部長さんと聞いて他の3人が驚いている。ちなみに肩書きは部長にすぎないが実質的には、このプロを切り盛りしている人である。
 
「うん。ご無沙汰。ローズクォーツに僕が絡んでいたことは知ってた?」
「聞いてはいませんでしたが、たぶんそうだろうと思っていました」
実は上島先生がうっかり漏らしたのを聞いていた訳だがそれは聞かなかったことにしておく。
「まあ、そういうわけで、ローズクォーツのプロモーションに関しては、今後うちも表に出て本格的にやっていくから」
「ありがとうございます」
 
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「それで本格的なプロモーションを7月から始める前にね、6月一杯は、被災地めぐりをしたいということで須藤君からいわれたのでね。こちらの営業網で、それをフルサポートすることにした」
「そういうわけで、みんなを○○プロさんに引き合わせたの。これまでも色々陰でサポートしてもらっていたのだけど、今回は陰でという形では難しいから」
「これって3月にする予定で中止になっていた、東日本のドサ回りの代りですね」
「そう。但し、福島・宮城・岩手の避難所をひたすら巡る」
「なるほど」
 
「で、今回はちょっといくつか須藤君と話し合ったことがあってね・・・」
「うん。第一にバンド名を名乗らない、第二に持ち歌を歌わない、第三にCDなどの物販をしない」
「え?それって全然プロモーションにならないのでは?」
「そう。宣伝行為とみなされることをしない」
「ああ」
 
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「実はこないだ★★レコードの町添君とも話したんだけどね。被災地を応援しますなどといいつつ、商売や自己宣伝の手段としてやっている連中も一部いるよね、などという話になってね」
「それは確かに・・・・」
「で、いっさい商売にならないことを誰かにさせてみようという話になって。それなら、ちょうどいい素材がいるということで、ローズクォーツを推薦したんだよ。これって演奏能力の高いアーティストでないと務まらないから」
「ありがとうございます」
 
「だから、一切プロモーション行為はしない代わりに、その分のバックアップをする。移動に掛かるガソリン代・ホテル代などの費用や食費なども全部こちらで負担するし、現地でCDを売らない代わりに、来月からの君たちの新曲やアルバムの発売に関しては大きな広告打ったりしてサポートする」
「それはむしろありがたいです」
と私とマキがほとんど同時に言った。
 
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「君たちは過去の有名ヒット曲とかたくさん歌っているから、今はやりの曲やそういう曲を中心にステージを構成して欲しいんだ。それが避難所にいる人たちには楽しめるだろうしね。リクエスト受けて即興で演奏するというのもよくやっているらしいから、そういう形式も採り入れて」
「はい」
「もちろん、君たちの持ち歌をリクエストされた場合は、歌っていいけどね」
「分かりました」
 

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