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■夏の日の想い出・仮面男子伝説(12)

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古屋さんが言う。
 
「桜さん、視聴者の方がたぶん混乱していると思うので、ご自身から正直に言ってもらえませんか」
 
すると桜は病院用寝間着を羽織って裸体は隠した上で、今までずっと男声でしゃべっていたのを、美しい女声に切り替えて衝撃の告白をした。
 
「みなさん、ごめんなさい。実は私、物心ついたころからずっと女の子になりたいと思っていたんです。それで高校を出てすぐに、お金持ちの友人からお金借りてタイに渡って性転換手術しちゃったんです。それが10年ほど前のことです」
 
ツイッター上で「嘘!?」という書き込みが多数ある。
 
「これが本当の私の性転換手術証明書です」
と言って、桜は英語の文書を見せる。カメラが映す。
 
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「実はその文書を日本語に訳したものがさきほどカメラで映した手術証明書です」
と鉄也が補足する。
 
「でも私、女になったけど、女として就職できるところが全然無くて。特に私ってあまり女に見えないし、当時はこういう女の声も出せなかったから、女の格好で面接に行っても『あんた男だろ?』と言われちゃって、バッくれて就職というのもできなかったんですよね」
 
「それで私、子供の頃から、お前のしゃべり面白いと友だちから言われていたから、いっそ芸人になれないかなと思って、芸人学校に入って。でも当時はまだ特例法が施行されてなくて戸籍を女に直せなくて、男の戸籍で入学したから、男の格好しなきゃダメと言われて。それで結局男の芸人として訓練を受けて、卒業した後、鉄也と出会って、コンビ組んで。なかなか売れなかったけど、相性がいいからずっと鉄也とは組んでいていいと思いました」
 
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「鉄也さんは桜さんが性転換していたことは知ってたの?」
と古屋さんが尋ねる。
 
「それは最初から聞いてたよ。だからプライベートでは俺、桜は素敵な女性だと思っているよ」
「恋愛関係は?」
「酒の勢いでやっちゃったことはあるね」
 
「鉄也は私の最初の男です。でもお互い恋愛にするつもりはないと言い合ってます」
 
鉄也も頷いている。
 
「だけどやっちゃった時、気持ち良かったよ。普通の女だと思った」
と鉄也。
 
こんな発言も深夜番組ならではだ。
 
「それで男同士のコンビとして8年ほどやってきたけど、私、やはり本来の自分に戻るべきじゃないかと思ったんです」
と桜は言う。
 
「まあ仮面男子を8年もやったら充分だよな。もうお前、女でいいよ」
と鉄也。
 
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「それで事務所の社長に相談したら、どうせなら盛大なカムアウトやろうよということで、今回の企画を頂いたんです」
と桜。
 
「じゃ今後は男女ペアの芸人としてあんたらやってくの?」
「はい。それで昨日のお正月番組にも男女ペアで出して頂きました」
 
「ちなみにこいつもう戸籍上も女になってるから」
と鉄也が言う。
 
「これが私の戸籍です」
と言って戸籍謄本を見せるが「続柄:長女」と印刷されている。
 
「あんた妹さんがいたよね。あんたが女になって長女になったら、妹さんは長女から次女に変更になるの?」
 
「性別変更する時に強制的に分籍されるんですよ。もっとも私はそれ以前に分籍しておいたのですが。ですから、私も妹もどちらも長女です」
 
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「ああ、長女がふたりできるのか」
「再婚したような場合にも長女がふたりできますね」
「なるほどねー。でも戸籍上女になってるのなら、あんたら結婚できるじゃん」
 
「うーん。特に恋愛感情は無いですけど、万一鉄也にプロポーズされたらその時考えてみます」
「そうだなあ。40歳まで結婚できなかったらこいつと結婚してもいいかな。こいつ料理とか結構うまいんですよ」
「まあよく一緒に泊まってるからね。布団は別だしHもしてないけど」
 

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それで場面が変わり、桜がちゃんと女の服を着て、(むろん男の服を着た)鉄也と並んでいる図になる。桜はOL風のスカートスーツで、お化粧もしている。
 
「そういう訳で、私が性転換して、今後はハルラノの鉄也と桜ということでやっていきますので、よろしくお願いします」
 
と桜は挨拶した。
 
古屋が言う。
「あんた、そんな格好してたら一応何とか女に見えないこともないな」
 
「その点については私もけっこう迷ったんですよ。私、性転換しても不細工だからなあと。高校の同級生に美少年がいて、その子は女装すると可愛い女の子になってたんですよ。でも私はネタで女装させると変態にしか見えなかったんですよね。だから私って最初からオチに使われてたんです。でも、私みたいな不細工な女にしかならない人でも自分の心が女なら、女性として活きる道を選択していいと思うんです。似たようなことで悩んでいる人って居ると思うので、頑張ってください」
 
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と桜は締めくくった。
 

1月3日の早朝5時少し前。中央高速の某SAに4台の車が停まった。
 
ひとつは私のカローラフィールダー。エルグランドに買い換えることにしているので、これがあるいは最後の遠出になるかも知れない。ひとつは雨宮先生のフェラーリ・FF (Ferrari Four)、ひとつは★★レコードの加藤課長のブルーバード・シルフィ、もうひとつは千里のインプレッサ・スポーツワゴンである。
 
私の車に乗っていたのが、上島先生・下川先生・水上先生。雨宮先生の車に乗っていたのは海原先生・三宅先生・山根先生。加藤課長の車に乗っていたのが、60歳前後に見える女性と30代の夫婦。そして千里の車に乗っていたのは、千里の高校時代の友人の川南・夏恋と今話題沸騰中のアクアに、彼女?彼?を優しくガードする長野支香であった。
 
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「現場で停まることができないから、ここでお祈りを捧げよう」
 
と加藤課長が言い、サービスエリアの入口方向、2003年12月27日の午前5時頃、アクアこと長野龍虎の父・高岡猛獅と母・長野夕香が事故死した方角にアクアが花束を献じた。ふたりが事故死した時、龍虎はまだ2歳だった。加藤課長が乗せてきたのは、長野姉妹の母(龍虎の祖母:仙台在住)、および龍虎の里親である田代夫妻である。
 
ほんとうは12月27日に来たかったのだが、みんな年末年始が忙しいので何とか調整を付けてこの日になったのであった。
 
海原先生が般若心経を暗誦する。龍虎の祖母および、うろ覚えっぽい上島先生と水上先生もそれに唱和した。その間、全員、黙祷を捧げる。
 
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「今年の12月には十三回忌か」
と上島先生が感慨深げに言う。
 
事故現場近くにはこれまでもみんな各々バラバラに来て追悼していたのだが、実はこれだけの人数が一度に集まったのは初めてである。アクアの芸能界へのデビューが決まったことから、上島先生と雨宮先生が呼びかけて関係者が集まることになったものだ。
 
「千里さん、あの曲を吹いてよ」
と龍虎がせがむ。
 
「うん」
 
千里が龍笛を取り出して『アクア・ウィタエ』を演奏した。
 
みんな静かに聴いている。途中で落雷があるので、その時サービスエリアに居た人がビクッとしたようである。
 
「事故現場に稲妻を落としてくれたみたい」
と演奏を終えた千里が言った。
 

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「だけど龍虎、やはりそういう格好が可愛いよ」
としばしば彼にスカートや女の子用の下着、サンリオグッズなどを送りつけている川南がからかうように言う。
 
「なんかこの格好の方がお父さんとお母さんが喜ぶよとか、支香おばちゃんに乗せられちゃったんだけど」
と龍虎。
 
彼はとても可愛いティアードスカートを穿き、髪にもカチューシャをしている。誰が見ても女子中学生にしか見えない。
 
「まあ子供が可愛く育つのは、高岡も夕香ちゃんも喜ぶよ」
と上島先生も笑って言った。
 
「龍虎、あんたマジで女の子になりたいのなら応援してあげるけど」
と田代(妻)が言う。
 
「女性下着のクーポン100万円分とかもらったのどうすんの?」
と夏恋が訊く。
 
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「さすがに100万円は使い切れないから、90万円分は支香おばちゃんに譲りました」
と龍虎。
 
「もらったから、約束のブラとか買っちゃう」
と支香。
 
「10万円分は自分で使うんだ?」
「友だちがプリリとかいいよというから付けてみる」
 
「龍虎、女の子の友だちが多いよね?」
「なぜか僕の友だち女の子ばかりなんだよ、昔から。下着選びに付き合ったりもするよ。さすがに僕は買わないけど」
「それで後からひとりでこっそり買いに行くんだ?」
「そんなことしないよ!」
「ほんとに?」
「まあ、したことがないこともないけど」
 
田代夫妻が笑っている。
 
龍虎は小学1年生の3学期から、ずっと普段「お父さん」「お母さん」と呼んでいる田代夫婦の里子として埼玉県内某市で暮らしている。学校には田代龍虎で登録しているのだが、戸籍上は長野龍虎のままである。このことは学校の友人などは全く知らない。田代夫婦は医学的に子供が作れないらしく、それもあってか龍虎のことをほんとによく愛し、しっかりと躾けもしながら育てている。
 
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「まあ、あんたの洋服ダンスって女の子の服が3割くらいあるもんね」
とお母さん。
 
「川南さんが色々送りつけてくるんだもん。別に着てないよ、たまにしか」
「まあ確かに時々家の中でスカートとか穿いてるよね」
「うーん・・・たまにかな」
 
「龍虎、やはり女装にハマってない? 仮面男子してるんなら、カムアウトして女の子になっちゃえよ。それで女子制服着て学校に行ったら?名前も龍虎から龍子に変えちゃいなよ」
と川南が唆す。
 
「女装は楽しいけど、はまりすぎると怖いから。あくまで趣味で。仮面男子してるつもりはないよ。僕は男の子だよ」
と本人。
 
「でも龍虎、男の子の服が合わないんでしょ?」
と夏恋も訊く。
 
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「そうなんですよ。僕、ガールズのズボンばかり穿いてるんです。でもガールズのって、おちんちんをファスナーから出すこと想定してないから、ズボンを下げないとおしっこできないものが多いんですよね。だから結構個室でしてるんです」
 
龍虎は川南だけにはため口で話し、夏恋や千里には敬語で話すようだ。
 
「だったらそもそもファスナーの無いものでもいいのでは?」
「結構持ってるよね。ファスナー無しとか横ファスナーとか。ズボンじゃなくてキュロットを友だちと遊びに行くときに穿いてることもあるし」
とお母さん。
 
「まあね」
と照れくさそうに龍虎は言う。
 
「一応、学生服のズボンは男物を買って私がウェストを補正してあげたんですけどね」
とお母さんは言う。
 
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「制服はスカート穿けばいいのに」
と川南。
 
「それで人前には出たくないよ」
と龍虎。
 
「テレビであれだけ女の子姿を曝したら今更だろ?」
と川南。
「キュロット姿を友だちに曝してるのならスカートも問題無い気がする」
と夏恋。
 
「学校にまでスカートで出て行ったらみんなに馬鹿にされるよ」
「それってやはり仮面男子じゃん」
「そうかなあ」
 
「龍虎、君の学校の女子制服を私がプレゼントしてあげるよ」
と夏恋。
「えー!?」
 
「いいですか?」
と夏恋がお母さんに訊くと
「持っている分にはいいのでは。じゃ、サイズ測ってそちらにメールしますね」
とお母さん。
 
「今度から女性ホルモン剤を送りつけようかな」
と川南。
 
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「さすがに男を辞めるつもりはない」
「照れなくたっていいのに。あの時、やはり手術でちんちん取ってもらえば良かったのにね」
「それは絶対嫌」
 
そんな龍虎と川南たちのジャブのような会話を聞きながら、ワンティスの面々は微笑んでいた。
 
 
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■夏の日の想い出・仮面男子伝説(12)

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