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■夏の日の想い出・仮面男子伝説(6)

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小野寺イルザの演奏が終わった所でスターキッズがステージに戻る。そして次の曲の伴奏が始まると、私とマリが後半の衣装を着て出ていく。
 
前半は雪の妖精のような衣装だったのだが、後半は色鮮やかなかりゆし系の衣装である。これは沖縄公演のみでなく、今回のツアーのライブ全てで使用する。デザインしてくれたのは、前半の衣装ともども、沖縄のデザイナー・宮里花奈さん。私たちは2013年の夏以来、彼女がデザインしたコスチュームを使用している。
 
後半の曲は、過去のローズ+リリーの人気曲で構成した。
 
まずはヴァイオリン六重奏をフィーチャーした『花園の君』から始めた。この譜面を最初見たロッテさんは「何これ〜!?」と悲鳴をあげたが、アスカや凜藤更紗が初見で弾きこなしたと聞くと、負けるものかと張り切って弾いてくれた。
 
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更にこのストリングセクションをフィーチャーして『花の女王』『あの夏の日』と演奏する。そこまで終わった所で、演奏者をひとりひとり紹介して、彼女たちは舞台袖に下がる。
 
一転してダンスナンバーとなり、ローズ+リリー復活のきっかけとなった曲『影たちの夜』、休業中の人気曲『Spell on You』『恋座流星群』と続ける。
 
一息いれて少し長めのMCをする。みんな立って躍っていたのが着席する。
 
「今歌った曲は2010年から2012年初めに掛けて発表したものですが、もう3年近く経ったんですね。何だかあっという間の3年でした」
と私。
 
「沖縄でシークレット・ライブしたのがその年の春だっけ?」
とマリが訊く。
 
「そうだよ。あの年は札幌突発ライブもしたしね」
「ああ。札幌ラーメン美味しかった」
「ゴーヤチャンプルーも美味しい美味しいと食べてたよ」
「うん。歌手になっていちばん良かったと思うのが、あちこちの美味しいもの食べられることだよ」
とマリが言うと客席が沸く。
 
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3〜4分ふたりで会話してから私は言う。
 
「では躍りたくなるような曲が続いたので、次は私たちが高校生だった頃に書いた曲や、その路線上の曲を歌います」
 
「ケイがかぁいい女子高生だった頃だよね」
とマリが茶々を入れるので
「マリも可愛かったし、マリは今でも可愛いよ」
と私が返すと、何だか照れてる!
 
会場から「ケイちゃんもマリちゃんも可愛いよ!」という声が掛かる。全くお客さんは律儀である。
 
「それでは、まずは『あの街角で』」
 
これからの数曲は、近藤さんと鷹野さんのアコスティックギター重奏を伴奏に歌う。酒向さん・月丘さん・七星さんはお休みである(いったん下がって休憩する)。ローズ+リリーは初期の頃フォークデュオとみなす人もいた。このあたりは確かにフォークっぽい曲調である。
 
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更にふたりのギターのみの伴奏で『あなたがいない部屋』『言葉は要らない』、『君待つ朝』と演奏する。お客さんはみんな座ったまま手拍子を打ってくれている。
 

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『君待つ朝』の最後のギターの音が減衰して消えていった次の瞬間、七星さんが袖から出てきてサックスを吹き始める。酒向さんと月丘さんも戻る。そして七星さんの吹くメロディーに観客がざわめいた。酒向さんのドラムスが鳴り響き、近藤さん・鷹野さんがエレキギター・エレキベースに持ち替えてそれぞれ弾き始める。月丘さんのキーボードもフルー管系の和音を奏でる。
 
客席が更にざわめく。
 
これはAYAのデビュー曲『スーパースター』なのである。
 
「休業中の私たちの友だち、AYAのゆみへの応援歌です」
と私は言ってマリとふたりで歌い始める。
 
ここで私たちが歌っているのは、初公開となる「3人バージョン」のスコアのボーカルパートである。ゆみのパートを私が、あすか・あおいのパートをマリが歌っている(モー娘。方式のリレー歌唱なので複数のパートをひとりで歌うことができる)。
 
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またこの曲を歌っている最中に流した映像は、AYAが2007年に結成された直後のものである。ただし、あすか・あおいの顔が映らないように注意深く編集している。当時はあすかがメインだったので、あすか中心に撮影されており、うまくゆみの映像でまとめるのに、編集作業をしたAYAの新しいマネージャー井深さんはかなり苦労したようである。
 
観客は熱心に手拍子を打ってくれる。
 
そしてこれはかなり登場を予測していた人もあったようだが、1コーラス歌い終えたところで舞台左手の雪の積もった民家のセットのドアを開けて、ゆみ本人が現れる。(このドアが開くようにしたのはAYAのためである)
 
「きゃー!」
という声があがり
「AYA〜!」「ゆみちゃ〜ん!!」といった掛け声も沸き起こる。
 
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そして2コーラス目は、メインボーカルをゆみが歌った。私があすかのパート、マリがあおいのパートを歌う。この曲を3人で歌うのは実にインディーズ時代以来、約6年半ぶりであった。
 
ゆみはこの1曲の後半部分のみ歌って、そのまま観客に手を振って舞台袖に消えた。
 

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「2009年11月、私たちは沖縄の女子高生から手紙を頂きました。それは原因も治療法も分からない難病と闘っている友人が、ローズ+リリーのファンで一度でいいから私たちと会いたいと言っているというお手紙でした。私たちは受験勉強もあって休業中だったのですが、彼女を励ますため沖縄に飛びました。そして彼女のお見舞いをしたのですが、その時活動再開が全然見えずにいた私とマリ自身も力づけられました」
 
と私は語って少し言葉を切る。
 
「その1年後2010年12月。その難病と闘っていた彼女が危篤状態に陥ったという連絡を受けました。私たちは再び沖縄に飛んだのですが、その時、彼女の回復を祈って、羽田空港でマリが書いた曲が『神様お願い』でした」
 
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この曲はその直後の東日本大震災を機に大きな反響があったのだが、本来はそういう曲であったことが、沖縄では比較的知られている感じである。
 
「でも幸いなことに彼女は死の淵から生還しました。彼女が死神の誘惑と戦っていた時、私たちの歌が聞こえる方角に行ってみたら、目が覚めて生きてた、と語ったことで、私たちは自分たちの歌にそんなに力があるのかと驚き、復帰に向けての決意を固めていくことにもなりました」
 
「そして今年の夏、とうとう彼女は退院できるところまで回復しました」
 
客席から「わぁ」といった声があがる。このことはまだほとんど知られていなかったようである。
 
「まだまだ通院はしなければならないのですが、この病気になって退院できるところまで回復したのは彼女が世界で初めてだそうです。私たちはこのような奇蹟を生み出してくれた神様に感謝して『神様ありがとう』という曲を書きました。この曲を、彼女と同じ病気、そして他の病気と闘っている全ての人に捧げたいと思います。2曲続けて聴いてください」
 
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山森さんが出てきてエレクトーンの前に座る。ヴァイオリンを持った松村さん、トランペットを持った香月さん、そしてフルートを持った風花が出てきてスタンバイする。
 
酒向さんのドラムスが鳴り響き、伴奏が始まる。私たちは本当に天に願いが届くように、この2曲を歌った。お客さんも静かに聴いてくれる。歌いながら客席の麻美さん・陽奈さんと目が合う。念のため車椅子に座って聴いている麻美さんは涙を浮かべながら聴いているようであった。
 
やがて終曲。そして大きな拍手がある。私たちは丁寧に客席に向かってお辞儀をした。
 

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「それでは最後の曲になります」
 
「えー!?」という声。全くお客さんは律儀である。
 
「最後は元気に締めましょう。お玉の用意のある人は準備してね」
と私が言うと、さっそく会場全体でお玉を取り出して振ってくれる。
 
「それでは最後の曲『ピンザンティン』!」
 
窓香が袖から走り寄って私たちにお玉を渡す。
 
この日はヴァイオリンの重奏を入れてくれた、ロッテさんに、伊藤ソナタ・桂城由佳菜さん、鈴木真知子ちゃんも出てきてくれて松村さんと一緒にヴァイオリン五重奏で「ドファソラーシ・レドシラ・ソミラ、レレレミ・ファファミレド」というこの曲のサビを弾いてくれる。それで客席のみんながお玉を振る。
 
それに続けて私たちはお玉を振りながらAメロを歌い始めた。
 
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「太陽の力だよ、アスパラ、トマト」
「土の中から、ニンジン・タマネギ」
「葉物も素敵ね、キャベツにレタス」
「ドレッシングはフレンチ?シーザーズ?」
 
軽く野菜の名前を並べたAメロに続き物語的に展開するBメロを経て、曲はサビに到達する。
 
「サラダを〜作ろう、ピンザンティン、素敵なサラダを」
「サラダを〜食べよう、ピンザンティン、美味しいサラダを」
 
私たちはサビ部分ではマイクを客席に向けて歌う。お客さんもお玉を振りながら大きな声で歌ってくれる。
 
間奏でヴァイオリンが、トランペットが、フルートが、オルガンが、そして七星さんのサックスが競い合うように自己主張する。そして2番を歌い、サビを歌い、Cメロ、Aメロ、サビ、サビで終了する。
 
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私たちはお玉を客席に振りながら大きな歓声と拍手に答える。そしてゆっくりと幕が下りた。
 

拍手がアンコールの拍手に変わる。束の間の休憩で私は水を飲む。マリはシークヮーサーのジュースを飲んでいる。
 
アンコールの拍手が続く。私は伸びをし、屈伸運動をする。私たちが頷くのを見て、スタッフさんが幕を上げるスイッチを押す。
 
割れるような歓声。スターキッズが『夏の日の想い出』の前奏の分散和音を弾き始める。歓声と拍手が納まってきたところで私たちは歌い出した。
 
「白いスカート、浜辺の砂、熱い日差し、君の瞳」
 
スローな曲なので客席からはパーンパパンというリズムの手拍子が聞こえてくる。私たちはその手拍子に応える気持ちで熱唱した。
 
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やがて終曲とともに大きな拍手がある。
 
「アンコールありがとうございました。実をいうと、ライブやる度に、もしアンコールの拍手もらえなかったらどうしよう?と結構思っているんですよ」
 
と私が言うと
 
「ちゃんとアンコールするよ!」
という声が掛かる。
 
「ありがとうございます。そうしてもらえるように頑張って歌いますね」
と私。
 
「そうだね、アンコールとかもらえなくなったら、あまりツアーできなくなるかも知れないし。そうしたらあちこちの美味しいもの食べられない」
とマリが言うと笑いが起きる。
 
「マリちゃん、沖縄で何食べた?」
という声が掛かる。
 
「昨日の夜はゴーヤチャンプルーとタコライス食べて、夜食に沖縄そば食べて、今朝はジューシーにチキアギ、お昼はアグー豚のトンカツ食べたかな」
 
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「ラフテー食べた?」
という声。
 
「まだ食べてない。今夜食べなくちゃ」
 
私たちがMCをしている間にスターキッズは退場する。そして私とマリがふたりだけ残ったステージで私は言う。
 
「それでは本当に最後の曲です。私とマリが初めて一緒に歌って録音した曲、『雪の恋人たち』」
 
拍手の中私はピアノの前に座る。マリはいつものように私の左側に立つ。そして私のビアノ前奏に引き続きふたりで歌い始める。ミラーボールが回る。それがまるで雪が降るかのようである。お客さんは手拍子も打たずに静かに聴いてくれている。
 
この曲をふたりで吹き込んだのは2008年の6月だ。あれから6年半。私たちは少しは進歩したろうか。マリはぐっと上手くなった。でも自分はそんなに上達していないということはないか? 唐突にそんな疑問が浮かび上がってきた。
 
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どうなんだろう? みんな正直には答えてくれなさそうだ。遠慮無く言ってくれそうなのは・・・・氷川さん、千里、あたりか。一度真剣に訊いてみたい気がするな。
 
そんな不安が心によぎったものの、マリは私の左側で気持ち良さそうに歌っている。マリって、歌っている時と詩を書いている時がいちばん幸せそうだ。そうだよね。マリに幸せを提供できたら、それで自分の役割ってけっこう果たしているのかも知れない。
 

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そんなことを考えながらも、やがて曲は終曲にたどり着く。最後のピアノの音の余韻が消えたところで割れるような拍手がある.私は立ち上がり、マリと一緒にステージ前面に立つ。大きな拍手と歓声に応えるように手を高く上げる。そして静かに幕は下りていった。
 
「これにて本日の演奏は全て終了しました」
という締めのアナウンスは、夏のライブと同様AYAのゆみがしてくれた。
 

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■夏の日の想い出・仮面男子伝説(6)

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