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■夏の日の想い出・仮面男子伝説(9)

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(C)Eriko Kawaguchi 2015-05-05  
ローズ+リリーのライブツアーは30日東京国際パティオ、31日ビッグパーク福島、1日札幌スポーツパークと続く。年末年始は全く休みがない。
 
31日は福島公演を終えた後、最終新幹線で仙台!に移動し、仙台市内のホテルに泊まる。ホテルにたどり着いたのは0時過ぎであったが、コンビニで天ぷらそばを買って来て、ふたりで食べて「年越しそば」とした。
 
翌朝、5時に起きて仙台空港に移動し、新千歳行きに乗った。札幌に着いてから市内のホテルで、雑煮を食べ、北海道の富良野産白ワインで乾杯して「おとそ」とした。全く慌ただしい年末年始であった。
 
しかし30日以降のライブでは鈴を割る役で出てきたアクアへの声援が凄まじかった。楽屋まで「アクアちゃんにお花を贈りたいのですが」というファンが多数来たが、大量すぎたので、金属探知機・盗聴器などのチェックをした上で一部だけ彼の自宅に届け、残りは写真だけ撮ってメッセージカードとともに本人に渡し、花自体は各地の児童養護施設・老人福祉施設などに送り届けた。
 
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「アクアちゃんですけど、本人が俳優志向なのでドラマでデビューという予定だったのですが、急遽CDデビューもさせようという方向になっているんですよ」
 
と1日の札幌で氷川さんは言っていた。
 
「まああれだけ騒ぎになったらそういう方向になるでしょうね」
と私は答える。
 
「でも本当にドラマでは院長の息子役なの?娘役をさせればいいのに」
と政子は言うが
 
「それやると、色物扱いになってしまうので」
と氷川さんは言う。
 
「でもアクアちゃん、歌うまいの?」
と政子が訊くので
 
「凄く上手い。とても中学生とは思えない歌を歌う」
と私は答える。
 
「なんかミュージシャンの息子って言ってたけど、誰の子供?」
と政子は尋ねるが
 
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「内緒」
と私。
 
「うーん・・・・でも私の知ってる人?」
「知らない人はいないと思うよ」
 
「へー。でもアクアちゃんの両親って学校の先生じゃないの?」
「そのあたりの事情も内緒」
「うむむ」
 

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その日の幕間のゲスト(ロッテさんのヴァイオリン演奏に続いて歌ってもらう)は昨年人気急上昇したステラジオであった。彼女たちの歌を楽屋で着替えながら聴いていて政子が
「この子たち上手いね」
と言う。
 
「うん。ちょっと脅威を感じるよね。私たちのファンがそちらに移動しちゃわないだろうかと不安になるくらい」
と私は言う。
 
「ホシちゃんが凄くうまくて、ナミちゃんはそれなりに上手い」
と政子。
 
「マリちゃんも、言葉が選べるようになったね」
と私は取り敢えず政子を褒めておいた。
 
「ステラジオって担当はどなたでしたっけ?」
と政子が氷川さんに尋ねる。
 
「八雲です」
「なるほど。ステラジオが売れたら、また八雲さんの伝説が増えますね」
と私は言う。
 
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「そうなんですよね。あの子が担当したアーティストはその後ブレイクすることが多いんです」
と氷川さん。
 

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私はその時、唐突にそのことを思いついた。
 
「★★レコードの八雲礼朗(のりあき)さんって、作詞家の八雲春朗(はるあき)さんともしかしてご兄弟か何かですか?」
 
「お母さんが一緒で、お父さんは双子の兄弟なんですよ」
と氷川さんが答える。
 
「ちょっと待って。今複雑な話を聞いた気がした」
と政子。
 
「色々事情があるみたいだけど、ということは全く同じ遺伝子を受け継いでいるんですね」
と私は驚いたように言った。
 
「ちょっと雰囲気が似てますよね」
と氷川さん。
「ですよね? なんかどちらも体型が細いし」
 
「ふたりとも紳士物の既製服が入らないと言って、レディスのズボンを穿いているみたいですね」
「ああ」
 
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「作詞家の八雲さんってちょっと女装させたくなる雰囲気だったって和泉ちゃんが言ってた」
と政子。
 
KARIONの曲を書いてもらったので和泉とふたりで会ってきたのだが、政子は彼とは会っていない。
 
「うん。でも私はむしろ★★レコードの八雲さんの方が女装が似合いそうな気がした」
と私が言うと
 
「ここだけの話だけど、彼、たぶんプライベートでは女装してる」
と氷川さんが言う。
 
氷川さんが他人の噂話をするのはひじょうに珍しい。彼女は本来とても口が硬い人である。一応この場に居るのは私と政子と氷川さんの3人だけである。
 
「そう言われると、そうかも」
 
「八雲って、だいたい女性アーティストしか担当させてないんですよ。入社初期の頃は男性アーティストを担当したこともあったみたいだけど男性の感覚が分からないから配慮が行き届かないみたいで。でも女性アーティストの感覚はよく分かるみたいなのよね」
 
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「実は女の人だったりして」
と言う政子の目が輝いている。こういう話は大好きなのである。
 
「私、ひょっとしてあの人、FTMなのではと思ったこともあるんですけどね」
と氷川さん。
 
「逆にMTFかもね」
と政子。
 
「実は私も確信が持てないんですよ。加藤はふつうの男性だと思っているみたいだけど。実は去年の秋に例の性別取り扱いの変更がありましたでしょ?」
と氷川さんはその話をする。
 
この秋に八重垣さんを中心とする当事者のグループが会社に、性別の取り扱いに関する要望書を提出し、会社側もそれを認め、弁護士も含めた作業グループで一定の指針を定めた。それで★★レコードでは「性別変更届」を提出することで戸籍上の性別ではなく自分が認識している性別で勤務してよいルールが確立したのである。
 
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「それで性別を変更した社員が担当していたアーティストについて各々の事務所に、引き続き担当してよいか、あるいは同性の担当者に変えてもらいたいか打診したんですが、森風夕子ちゃんの担当の大飯がFTMであることをカムアウトして、男性として勤務し始めたので、事務所の意向を聞いたら、やはり女性の担当者にしてほしいということになって」
 
「まあアイドルだとそうですよね」
 
「ところが担当者交代して新しく森風夕子ちゃんの担当になったのが八雲で」
 
「なぜ?」
「不思議ですよね」
「うーん」
 
「それで事務所から特に何も苦情が出ないし」
と氷川さん。
 
「いや、これまで多数の新人をブレイクさせている八雲さんだからこそ事務所は受け入れているのだと思う」
と私は言うが、
 
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「もしかして八雲さん、★★レコードの社員データベースには女性として登録されていたりして」
と政子が言う。
 
「本人も首をひねっていましたが、夕子ちゃんは八雲がいる場でも平気で着替えたりしているし、八雲は女性が着替えていても何も感じないと言ってましたね。一応アセクシュアルだからと言ってたけど、そうは見えないのよね」
と氷川さん。
 
「それで私が到達した結論は、あの人、ひょっしてMTFの仮面男子ではという線」
 
氷川さんが個人の噂話をここまで突っ込んでするのは珍しいなと私は思った。もしかして個人的に関心があるんだったりして? でも氷川さんの恋愛志向って何なんだろう??結構バイっぽい発言は何度か聞いたことがある気もする。
 
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「今度八雲さんに抱きついてみようかなあ。それでおっぱいがあるかどうか確かめる」
と政子。
 
「やめときなよー」
 
と私は言いながらも、もし八雲さんがMTFで、ひょっとして身体に手を入れていたりしたら、例の打ち上げの時の「5人の性転換者」の候補かも知れないと私は一瞬思った。
 

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この1月1日の札幌公演には千里が陣中見舞いに来てくれた。旭川で買ったというチョコレートの生菓子を持ってきてくれていたが
 
「美味しい、美味しい、カロリー補給、カロリー補給」
と言って、政子はたくさん食べていた。
 
「私の食欲を理解してくれている人は大歓迎だなあ」
などと本人は言っている。
 
「まあ、チョコ菓子の1個や2個でマリちゃんが足りる訳無い」
と千里。
 
「千里、里帰りしてたの?」
と私は訊いた。
 
「ううん。私は実家はお出入り禁止になってる」
「性転換したこと、まだお父さん怒ってるんだ?」
 
「まあ10年くらい放置してたら、その内ほとぼりが冷めるかもね。就職するのに保証人の書類書いてもらうのに来たんだよ。お母ちゃんとは旭川で会った。もう1枚は叔母ちゃんに書いてもらった」
 
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旭川には千里を可愛がってくれる叔母さんが居たはずである。千里は高校時代そこに下宿していたのだが、千里が入学した時は男子高校生だったはずが、いつの間にか女子高生に変身して行ったのは、実際問題としてその叔母さんに唆された部分もかなりあるようである。
 
しかし私は
「千里、就職するの!?」
と驚いて尋ねた。
 
「うん。就活50連敗(くらい)だったから、このまま作曲家の専業でもいいかなと思ってたんだけどね。先輩から勧められて行った会社の専務さんが気に入ってくれて、私は女にしか見えないから性別は気にしなくていいし、ぜひうちに来てくださいなんて言われて」
と千里。
 
「うっそー! でも何の会社?」
「ソフトハウスなんだけど」
「千里、そんな会社で何するの?」
「うーん。SEかな」
「千里、プログラム書けたんだっけ?」
 
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「私、自分が組んだプログラムがまともに動いたことない。高校の時の情報の授業も大学でのプログラミングの講義も赤点ギリギリだった。課題のプログラムもいつも友だちにデバッグしてもらって提出してた」
などと千里は言っている。
 
「それでSEになれる訳〜?」
 
そんなことを言っていたら、楽屋の隅で休んでいた★★レコードの雪豊さんが言った。
 
「今の時代、プログラムの組めないSEさんって時々いますよ」
 
「そうなんですか!?」
「建築会社でも、ビルの設計をする人が必ずしもノコギリが引けなくてもいいでしょ? それと同じで、システムの設計をする人が必ずしもプログラムまで書かなくてもいいという考え方なんです」
 
「なるほど!」
 
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「ある意味、昔帰りですけどね。1970年代までは、システム設計するSE、プログラム設計するプログラマー、実際のプログラムを書くコーダー、更にはそれを実際にマシンに入力するパンチャーと分業してたんです。それが1980年代にTSS(タイムシェアリングシステム)とラスタ型CRT端末が普及して、まずプログラムを紙カードや紙テープにパンチしていたパンチャーが消滅し、更にはパソコンが1人1台占有して使えるようになってコーダーも消滅し、1990年代に入る頃には高機能のプログラム・ワークベンチや自動プログラミング、豊富なライブラリなどの発達でプログラマーまで消滅。SEが直接自分でプログラムを作成するようになった。つまりプログラムは手書きで作ってから「入力」するものではなく、最初からパソコンを援用してパソコン内で「生成」するものになったんです。ちょうどダウンサイジングなんて言われた頃ですよ。ところが、その一方で、1990年前後から、一部のソフトメーカーではプログラミングはせずに純粋に設計作業だけに従事するSEを主として文系の学部出身者から採用し始めたんです」
 
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と雪豊さんはそのあたりの事情を説明する。
 
「へー」
 
「システムの設計をするには、プログラミングやコンピュータの電気的な仕様に詳しいことより、むしろ全体を見渡す力、俯瞰力が必要なんです。それとクライアントとの交渉力ですね」
 
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