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■夏の日の想い出・あの衝撃の日(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2012-11-04  
ボクと政子は2008年8月から12月までローズ+リリーとして忙しい日々を送っていた。特に9月には突然メジャーデビューまでしてしまい、ボクたちの活動はあくまで放課後と土日祝日限定であったにも関わらず、10月には全国キャンペーンで飛び回り、11月には全国ツアーまでやってしまった。
 
しかしボクたちは大きな問題を抱えていた。
 
それぞれの親の承諾を受けていなかったことである。
 
ボクの場合、男の子なのに女の子の格好をして歌を歌っているということで、そんなことをバラしたら親が怒って承諾なんかしてくれる訳がないと須藤さんは考えて、ではどうするかというので悩んではみたものの、対策が思いつかず須藤さんとしても思考停止していた感じがあった。
 
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「冬の場合、こうしてると見た目、女の子にしか見えないというのが事情を複雑にしてるよね」と政子は言った。
 
「これが桜坂やっくんとか、慎吾ママみたいに、女の子の格好してても見てすぐ男と分かるようであったらさ、そういうキャラだとファンからも理解されただろうし、かえってお父さんにも理解を求めやすかったかも知れないけど、冬って完璧すぎるんだもん」
「うーん・・」
 
「だから冬のことがバレたら、ファンも『うっそー!男だったの?』と思うだろうし、お父さんは息子に何て変態的なことさせてんだ?って怒るだろうね」
 
「一見して男と分かる女装なら良くて、女にしか見えない女装だとまずいの?」
「これだけパーフェクトだと、ジョークと言い逃れできないもん」
「うむむむ」
 
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一方、政子の場合は、春にお父さんがタイに転勤になったものの、政子は難関私立大学の△△△大学に行きたいということを唐突に言いだし、受験勉強で頑張りたいから、日本に留まりたいと言って、ひとり日本に残った。それなのに歌手活動なんてしていたことが知られたら大目玉をくらって、すぐタイに来いとか言われそうということで、親には言えなかったのである。
 
「結局、マーサとしてはどうする?」
「道は2つだと思うんだよね。勉強を物凄く頑張って、本当に△△△大学に行けるくらいの成績にした上で、勉強も頑張ってるから歌手活動も認めて、と言う道。もうひとつは、やはり私は大学無理だし、性格的にOLとかもできそうにないし、歌手を本業にしたい、と言う道」
 
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「どちらもそれぞれ困難がある気がする」
「そうなんだよねー。さすがに今みたいなペースで歌手活動してたら勉強までする時間が無い」
「と言いつつ、一応成績は上がってるよね」
「うん。深夜、冬と電話つないだまま勉強してるので、けっこう英語とか国語も分かってきたから」
「偉い、偉い」
 
ただ、ボクたちにしても須藤さんにしても、最初は2008年8月いっぱいの限定的な活動のつもりだったし(ボクなんてそもそも契約こそしていなかったものの他の芸能事務所との関わりで実は音楽活動してたし)、その後期間延長ということにはなったものの、そんなに長く続く活動とは思っていなかった面もある。しかし、このローズ+リリーというユニットは人気が出て、簡単にはやめられなくなり、気がついたら、メジャーデビューして、CDも2枚発売、3枚目も制作して発売予定が決まり、全国ツアーもして・・・・という状態になっていた。
 
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しかしさすがにそこまでなると、ボクとしてもこのままではいけないと思うようになっていた。まずは自分が女の子としての生活も持っていることを父にカムアウトし、その上で女の子の歌手として活動したいということを数ヶ月掛けても父に言い、説得して承認をもらって、あらためてきちんとした契約を結ぶ方向に持っていきたいと思っていた。そのタイミングとしては2月に予定されているツアーの後だとボクは考えていた。
 
またボク自身が他の芸能事務所との関わりを持っていることについてもきちんと津田社長にも話した上で、向こう側の活動はこれまで通り、コーラスや伴奏など限定的なものにするという条件で、両立を認めて欲しいという話をせざるを得ないかとも思っていた。
 
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ローズ+リリーの全国ツアーは11月30日の東京公演で終了したのだが、12月になると、年末の様々なイベントに顔を出すことになる。ライブハウスには良く出演したし、いくつか賞などももらって、政子とふたりで表彰式に出て行ったりしていた。
 
11月9日にはBH音楽賞の新人賞というのをもらい、これはちょうどツアー中で札幌にいたので授賞式には出られなかった(甲斐さんが代理で出席した)ものの12月7日のYS大賞新人賞はふたりで授賞式に出て、写真なども撮られた。実はボクと政子の写真が表に出たのは、最初に作った『明るい水』のCD(の初期ロット)以来のことだった。
 
ボクたちは時間的な制約の問題でテレビには出ていなかった。ボクたちが主として出演していたメディアはラジオ、特にFM放送である。ボクたちのプロフィールにしても、高校2年生ということだけを公開し、住んでいる都道府県なども非公開だったので、ファンの中には実は地方在住なのであまりメディアに露出しないのではという推測をする人たちもいたようである。
 
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ボクと政子がラジオで話していた内容を細かに分析し、ケイは中部地方の出身、マリは九州の出身ではないかと推測していた人もネットで見かけ、すげー!と思ったものである。「ローズ+リリー学講座」の教授に任命したい気分だった。
 
またボクたちは来年になると、受験勉強に時間を取りたいので、ローズ+リリーの活動量を今より減らして欲しいということも申し入れていた。具体的には4月から夏までは平日は活動しないことにして休日限定とし、9月から来年の3月までは活動休止という線をボクと政子は事務所側に提案し、事務所側もそれに近い線での受諾の方向で話していた。ボクとしても親を説得する時間をその受験での休養期間にぶつけるつもりでいた。
 
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しかし
 
これらの話合いや計画は、たった1個の週刊誌報道で全て吹き飛んでしまったのである。
 

12月のある朝、朝ご飯を作ってからみんなが起きてくるのを待ちつつ何気なく朝刊を見ていたボクは、その日発売の写真週刊誌の記事タイトルを見て仰天した。
 
『ローズ+リリー、驚愕の正体』
 
何それ〜〜〜!?
 
ボクは自転車に飛び乗ると近くのコンビニまで走って行き、問題の週刊誌を2部買ってきた。そして中身を見て天を仰ぐ。そこには『ケイの正体は都内の男子高校生・唐本冬彦(17)』と実名が記されていた。盗撮されたっぽい写真も載っている。あはは。未成年の犯罪者の名前は隠すくせに、ボクの名前は実名表記かよ!
 
そこに姉が起きてきた。
「ん?何見てんの?」
 
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「ねえ、お姉ちゃん、今日は大嵐になると思う」
「へ?台風でも来てんの? こんな時期に」
「いや、これ」
 
と言ってボクは週刊誌を見せた。
 
姉は記事を見てキョトンとしている。
「唐本冬彦って、あんたと同じ名前だね」
「ボク本人だよ」
 
「えーーーーーー!?」
と姉は初めて仰天したような声を出す。
 
「あんた歌手してたの?」
「成り行きだったんだよ」
「まあ、あんたなら女の子のアイドル歌手になれるよ、なんて私言ったことあったけどさ。へー。ローズ+リリーのケイがあんただったとは知らなかったよ。ねえ、サイン頂戴」
 
「えっと・・・」
取り敢えずボクはいつも持っている色紙を1枚部屋のカバンから持って来て、サインペンで《Rose+Lily》のサインを書き「親愛なる萌依お姉ちゃんへ」と書き添えたが、こんなことしてていいのか?という疑問が強くなる。
 
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「よし、宝物にしよう」
と姉は何だか嬉しそうである。
 
「でもさすがだね。ローズ+リリーのケイちゃんが実は男の子だったなんて、全然気付かなかったよ。でもあんた、ケイちゃんみたいに髪長くないし」
 
当時、ボクはロングヘアのハーフウィッグを付けて、ケイとしての活動をしていた。当時のボクの実際の髪は肩には付かない程度の「女子高生基準」の髪である。
 
「それでさ、お父ちゃんたち起きてきたら、騒動になると思うんだよね」
「ああ、なるだろね。女の子してたことと歌手してたことの両方の問題だよね」
「そうなんだよ」
 
「でどうすんの?」
「取り敢えず言うしか無いと思う」
 

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ボクはわざと女の子っぽい服に着替えた。可愛いブラウスを選び、ピンクの花柄のスカートを穿く。髪型も女の子っぽくアレンジを変えて、パッチン留めで留める。
 
実際ここ数ヶ月、ボクはブラシで髪のアレンジをちょっと変えるだけで、一応男の子である「冬彦」と、女の子の「ケイ=冬子」を演じ分けていた。
 
そして両親を起こした。
 
母はボクが父の前で女の子の格好をしていることで、とうとう父にカムアウトするのかと分かったようで、ちょっと緊張した顔をした。父はボクの格好を見て最初ボクだということが分からず
 
「あ、いらっしゃい、冬彦のお友だちですか?」
などと言った。
 
「お父さん、私、冬彦だよ」
とボクは女声のまま言った。
 
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父はボクの顔をしばらく見つめてから
「お前、何ふざけてんの?」
と言う。
 
「私、実は女の子だったの。今まで隠していてごめん」
父はパニックになって、何を言っていいのか分からず、口をぱくぱくさせていた。
 
母が口を開く。
「この子、けっこう前からよく女の子の格好してたのよ。この子って女の子の服を着たら、こんな感じで、もうふつうに女の子にしか見えないのよね。それで友だちとかと一緒に遊んだり、友だちから借りて学校の女子制服とかを着てたりもしてたよね」
「うん。女子制服ではけっこう出歩いてる」
 
「中学3年生頃からは、どちらかというと女の子の格好している時間の方が長くなってるよね」
と姉が言った。
 
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「うん、私自身は自分は女の子だと思ってるから。高校出たらすぐに性転換手術もするつもり」
「性転換〜〜〜〜!?」
 
父にはショックすぎることだろうけど、実は更にショッキングなことが待っているから、まずはこのあたりを言ってしまわなければならない。
 
「診断書ももらってるんだよ」
と言って、ボクは昨年病院に通ってもらった、性同一性障害の診断書を見せる。
 
「あ、この診断書は初めて見た」
と母と姉が言う。
 
「ごめん。そのあたりはもっと後で、ゆっくりと話すつもりだったんだけど、ちょっと問題が起きちゃって」
 
「ん?」
 
「実はね、私、8月から歌手をしてたの」
「は?」
 
「あ・・・。あんた、イベント設営のバイトしてるって言ってたのが・・・・」
と母。
 
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「うん。最初は本当に設営の仕事だったんだよ。ところが、その仕事してた時に、本番に出演する歌手がトンヅラしちゃって」
「うん」
 
「それで、たまたま現場に居合わせた私と政子がその代役で、トンヅラした歌手の振りして歌っちゃったんだよね」
「いい加減だ」
 
「それで、そのトンヅラした歌手が8月中に8箇所でイベントすることになってたもんで、私と政子がそのまま結局8月中、その歌手の代役やることになっちゃって」
「なるほど」
と言いながらも母は呆れている。
 
「でも最初はほんとに8月いっぱいの限定のつもりだったんだよ。私たちにしても事務所にしても。ところが人気が出ちゃってさ」
「へー」
「気がついたら、いつの間にかメジャーデビューして全国ツアーまでしちゃってた」
 
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「あんた、先月何度かバイトの設営作業で泊まり込みになるって言ってたのは?」
「うん。遠方まで言ってて、さすがに東京に戻ってこれなかったんだよ。札幌から福岡までツアーやったから」
 
父は呆然として声を出ないようである。
 
「しかし、そんなことしてるなら、ちゃんと事前に親に言いなさい」
と母は厳しい顔で言った。
 
「ごめん。何かいろんな問題が重なってたから、どれから言えばいいかと私も悩んじゃって」
 
その時、母はハッとしたように言った。
 
「あんた、まさかその歌手って、女の子の格好してやってたの?」
「うん。だって私、女の子だもん」
 
「えーーー!?」と母。
「ちょっと待て。じゃ、お前、今してるみたいな感じの女装で歌手やってたのか?」
と父。
 
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「うん。私としてはこれは女装と思ってない。私、女の子だから、こういう服を着るのがふつうだと思ってる」
 
父はまた絶句している。
 
「それでさ、トラブルというのが、これなんだよね」
と言って、そこで初めてボクは週刊誌を見せた。
 
「なんじゃこりゃ」
と言って、父は雑誌を見てから「うっ」という小さな声をあげた。
 
「ごめん、お父さん。政子がまだこのことを知らずにいると思うから、学校に出かける前にキャッチしないと。私、すぐに政子のところに行ってくる。この件は今日、帰って来てから、またちゃんと話すから」
 
「分かった」
と父は言い、政子の所まで行くなら、まだ早朝で道が混んでないから車で行った方が速いといって、車で送ってくれた。買ってきた週刊誌のうち1つを家に置き1つは政子の所に持っていった。
 
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