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■夏の日の想い出・あの衝撃の日(4)

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「政子とも話し合ったのですが、私たちが8月から12月までの間に頂いた報酬を全部返上しますので、それで損害の発生するイベンターさんや放送局さん、などに、補償してあげられないでしょうか?」
 
「それはありがたい申し出だけど、それはやはり君たちの親御さんの了承がないとできないことだよ。でもそもそもこの業界のしきたりは知ってるでしょ?そういうのに補償とかしたことはないし、今回補償することで前例ができるのも困る。主催者もイベンターもこういう時の中止のリスクまで負って、その分の利益も出しているのだからね」
と津田さんは言う。
 
結局、ボクと政子はそれぞれの父にこの問題を相談し、結局今回のことで様々な交渉をお願いしている弁護士さんに交渉をしてもらった。
 
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その結果、ボクたちが(アーティスト契約した)9月から12月までの間に得た報酬(ふたり合わせて約2000万円)から、税金等として払わなければならない金額を除いた額の半額を、△△社、○○プロ、★★レコードの三者に等分して払うことで合意が成立した(1社あたり約250万円)。
 
△△社・○○プロは受け取ったお金で各地のイベンターや使う予定だった音響や照明の会社、放送局などに「マリちゃんとケイちゃんの強い要請で行う特例」
と言って補償を行い、これは本当に感謝されて、後にボクたちが活動再開した時、全国各地で暖かく迎えてもらうことになったひとつの要素ともなった。
 
しかしその三者のうち★★レコードはこの「迷惑料」の受け取りを辞退した。イベンターなどには代わりにアメニティグッズなどの配布で補償する。そして★★レコードは、迷惑料の受け取りの代わりに、12月24日に発売予定だったものの、発売中止になったローズ+リリーのシングル『甘い蜜/涙の影』を今からでも発売させて欲しいと申し入れてきた。
 
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ボクの父と政子の父は話し合いの結果、
 
・新たにボクと政子が何かの労務(サイン会や放送局に出演しての宣伝など)を負うことがないこと
 
・PVやTVCMなどは流さないこと
 
というのを条件に、この発売を認めた。そこでこのシングルはあらためて2009年1月23日(金)に発売されることになった。
 

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町添さんは双方の父に、発売するために、あらためてボクと政子とのメジャーアーティスト契約を結びたいと言った。これまでの4ヶ月間に契約をきちんと結んでいなかったからこそ今回のトラブルが起きたことから、双方の父ともそれを受け入れ、契約書類を弁護士さんにチェックしてもらった上で、署名捺印をした。
 
それでボクと政子は初めて、正式にメジャー歌手になった!
 
契約は2009年1月から12月までの1年間で、更改については文面には盛り込まなかった。これは更改を望まない双方の父と、むしろ曖昧なままにしておきたい町添さんの意図がかみあったものである。
 
また、この契約の際、町添さんはこんなことを言った。
 
「マリさん・ケイさんのおふたりに新たに歌を歌ってもらったりはしない形で、既存の音源を使った、編集版のCDを作ってみたいと思っているのです。それをこれから半年以内に限って出すことを容認していただけないでしょうか?」
 
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「うーん、まあ娘に負担が掛からないのならいいですよ」
と政子の父は言ったし、
「ええ。新たにスタジオで歌ったりとかでないならいいです」
とボクの父も言った。
 

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そんな感じで2008年の暮れは過ぎて行き、2009年のお正月がやってきた。
 
ボクと政子はこの時期、外に出ることが困難な状態にあった。ボクの家の近くにも、政子の家の近くにも、記者っぽい人がいつも数人いて、何か動きがあれば、取材できないかと待ち構えていた。姉や母も随分インタビューを試みられて閉口していたようである。私や政子がつかまらないので、私たちはどこか地方の親戚の所にいるのでは?などと勝手に憶測するメディアもあった。
 
しかしボクたちはずっと家にいたし、特にボクはその記者たちが張っている中を実はこっそり外出していたのである!
 

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2008年12月22日(月)。つまりローズ+リリーの活動が停止してから週明けた月曜日の午前10時頃。KARION の新しい音源制作が木曜まで4日間の予定で始まっていた。
 
普段は学校優先で放課後に作業をするのだが、今回は年末でイベントが目白押しであり、土日もライブやテレビ出演などで埋まっていて時間が取れないということでメンバーはこの4日間、学校を休むことにしていた。
 
前回まで制作をしていたスタジオが倒産し、ずっとこれまでエンジニアをしていた麻布さんもニューヨークに行ってしまったので、今回はその麻布さんが推薦した友人の技師、菊水さんという人が勤めているスタジオでレコーディングは行われることになっていた。
 
今回収録する曲は、前回打ち出した新路線に沿ったものとなる。
 
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タイトル曲は森之和泉作詞・水沢歌月作曲編曲の『優視線』。カップリング曲は、福留彰作詞・TAKAO作曲編曲の『広すぎる教室』および和泉・歌月ペアのもうひとつの曲『恋のクッキーハート』である。
 
和泉・歌月ペアの曲は、いづれも11月に書いた曲で、この時、ローズ+リリーも KARION も全国ツアーの真っ最中だった。更にボクはこの全国ツアーの間に九州への修学旅行が入っていた! 和泉の方はそこまで無茶では無かったが、KARIONにはローズ+リリーがやってない那覇公演が入っており、どちらの移動距離も凄まじかった。
 
そんな中で『優視線』は11月9日に書いたもので、ボクは札幌、和泉は神戸にいた。いづれもリハーサルが終わって公演までの待ち時間に書いている。『恋のクッキーハート』は11月16日に書いたもので、ボクは大阪、和泉は那覇にいた(実際には和泉が飛行機の中で書いた歌詞にボクが新幹線の中で曲を付けた)。距離と関係無いメールという通信手段のありがたさを感じた。
 
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「ああ、今回は蘭子は参加できないのね」と小風が言ったらしい。
 
蘭子というのはKARIONにおけるボクの名前である。
 
「あの記者会見、お母ちゃんがビデオに録っててくれたの見たけど、凄いしっかり受け答えしてたね。同い年と思えん」
と美空も言ったらしいが、和泉は
 
「開き直ってるだけだよ」
と一蹴したということだった。
 
それでも「いないと寂しいね〜」などと言いながら、作業を始めようとしていた時、和泉は自分の学校の制服を着た女の子が入ってくるのを見かける。
 
「あれ?若葉? よくここ分かったね。何か用?」
と和泉は声を掛けた。
「だって、私、キーボード弾かなくちゃ」
「へ?」
と言った和泉は、テーブルに置いていたメガネを掛けてから、マジマジと今入ってきた女の子の顔をながめる。
 
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「あんた冬〜!?」
「えへへ」
とボクは笑った。
 

「どうしたの?その髪」
「染めてパーマ掛けた」
とボクは答える。
「若葉に見える〜!」
「ふふふ。あの子のトレードマークだもんね、これ」
 
若葉は美しい栗色の髪に軽い天パーが入っている。ボクは姉に頼んで若葉と似た髪の色になるよう染めてもらい、更に軽くパーマも掛けたのである(これを両方同時にするのは、とっても髪を傷める)。そして少し髪を切って、ほんとに若葉そっくりの感じにしてもらった。
 
「若葉にうちに来てもらったんだよ。土日は何人か友だちが来てくれたんだけどね。だからボクの家のまわりで張ってる記者さんたちも、その友だちの出入りを見てる。で今日も朝から奈緒と若葉が来てくれたんだけど、出る時に若葉の代わりにボクが出てきたわけ」
「なんつー・・・・」
 
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「だから若葉はこの4日間、学校を休んでボクの身代わりに家にいてくれるんだ」
「いい友だち持ってるね〜」
 
「お父さんには内緒だから、夕方までには戻らないといけないけど、日中だけ参加させて」
「もちろん!」
 

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ボクは KARION に関わって活動する時はメンバーから「蘭子」と呼ばれている。蘭子がローズ+リリーのケイと同一人物であることを知っているのは KARION の3人と畠山さんくらいなのだが、畠山さんはボクの変貌に、あっけに取られていたし、バックバンドのリーダーの TAKAO さんなども最初、ボクを認識できずにいた。(TAKAOさんは蘭子=ケイを知らない)
 
「でもいつも着てた制服と違うね。転校したの?」
などとTAKAOさんから聞かれたが
「ああ。ちょっと事情があって友人のを借りてきたんですよ」
とだけ答えておいた。
 
しかしこうしてボクはこの KARION の新曲録音に、いつものようにキーボード奏者兼コーラス隊として参加した。
 
「蘭子ちゃん、なんか凄い力(りき)入ってるじゃん。絶好調じゃん」
とTAKAOさんからまで言われる。
 
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「ええ。ちょっとストレスの大きなことがあったもので、そのストレスを解消させてもらいます」
 
「へー。そういうふうに持って行けるって、元気だね、君」
「落ち込んでたって仕方無いし」
 
ただボクはこのようなストレス解消方法を持たない政子のことを心配していた。
 

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「でもさ、今回の君の参加は僕としては大歓迎なんだけど、契約上の問題は大丈夫だろうか?」
と畠山さんは心配する。
 
「例の契約書を父が拒否しましたので、あの契約書は無効が決定しました。一応年明けから、両者が合意できる形での契約について再度話し合うことにはなってますが、取り敢えず今私はフリーなので、新しい契約ができるまでは何をしても構いません」
 
「何か開き直ってるね」
「あの1日で私、変わりましたから」
「変わりもするだろうね!」
「自分のプライバシーがいきなり全国に暴露されたら、変わりますって」
と言って私が笑うと、畠山さんも釣られて笑顔になった。
 
「学校の方はしばらく休み?」
「ほとぼり冷めるまでは休ませてくださいと学校には言いました」
「まあ、それがいいだろうね」
 
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しかし結局、父と△△社の再度の契約に関する話し合いというのは設定されないままに終わった。
 
ローズ+リリーの活動再開の時期を問われた△△社は、ローズ+リリーの契約が白紙に戻ったことを明かさざるを得なかった。
 
「マリさん・ケイさん側が契約を破棄したんですか?」
と記者たちに聞かれた津田さんは
「いえ、実はこの契約はそもそも保護者の承諾を得ていなかったのです」
と最大の問題について語る。
「じゃ、そもそも契約が成立していないまま活動していたんですか?」
と記者たちは追求し、津田さんは頭を下げて陳謝した。
 
テレビ局のワイドショーなどでは、きちんとした契約もしないまま高校生を無理矢理働かせていた、などという言い方をする所もあり、また設営バイトのスタッフに唐突に歌手の代わりをさせたというそもそもの発端についてもそれをさせた須藤さんの倫理問題がかなり叩かれていた。
 
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年明けの音楽制作者の連盟の会議でも、この問題が取りあげられ、かなりきつい非難をする会社もあった。△△社を除名せよとか、莫大な課徴金を課せといった意見もあったようだが、この業界の重鎮の人が弁護してくれたりしたこともあり、結局、次のようなことが決まったことをボクは畠山さんから聞くことになる。
 
・ローズ+リリーは今までどこの事務所とも契約していなかった。
 
・ローズ+リリーは従ってフリーのアーティストである。
 
・どこの事務所も自由にローズ+リリーと交渉して、契約を目指すことができる。
 
「たぶん、凄い数の事務所が君たちを獲得しようと押し寄せてくるよ」
「ひぇー!!」
 
週刊誌の報道ではあんまりショックすぎて開き直ってしまった僕もこの話には焦ってしまった。
 
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「でも、そしたらどこかとさっさと契約しちゃった方がいいですかね?」
と言ってから
「ダメだ。うちはいいとしても、マリの父ちゃんは絶対どことも交渉しない」
とボクはその問題に気付く。
 
「だろうね」
 
「マリの父が交渉する可能性があるとしたら、津田さんだけかも」
「僕もそう思う。でも、僕も頑張って君とマリちゃんまるごとの獲得目指すから」
「あはは」
 
その年、ボクたちを勧誘した数え切れないくらい多数のプロダクションの中で最後まで残ったのが、△△社、##プロ(長谷川さんの所)、そして畠山さんの∴∴ミュージックの3社であった。
 
「近い内に君の家に行っていい?」
「畠山さんなら歓迎です。でもマリが同意できる所としか契約はできません。申し訳ないですけど」
 
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「うん。でも何か理由付けて君の親御さんには挨拶しておきたかったしね」
「分かりました」
 

「それとね」と畠山さんは厳しい顔をした。
「はい」
「これマリちゃん・ケイちゃんには言ってはいけないことになっているから口外しないで。津田さんとこが今の体制のまま、君たちとの交渉を目指したら、あまりにも有利すぎるということで、△△社は窓口の交替を要求された」
「へ?」
 
「君たち★★レコードと正式契約したよね」
「ええ」
「★★レコードは今後半年間の間にローズ+リリーのCDを何枚か出すと言ってる」
「はい。そのための契約です」
「その最後のCDが出てから1年後までの期間、須藤君は君たちやその家族・親戚・友人・教師などとの接触を禁止される」
「う・・・・・」
 
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「更にそもそもアーティストのすげ替えをした責任を問われて須藤さん自身、半年間のマネージメント活動禁止」
「あぁ・・・・」
「普通なら永久追放だよ。これまで数々の実績のあるマネージャーだからこそ半年間の活動禁止で勘弁してもらったんだと思う」
 
ボクは溜息を付いた。
 
その翌日、ボクは津田さんからの電話で須藤さんが辞職したことを聞かされた。須藤さんの携帯に電話したが「この番号は現在使われておりません」というアナウンスが流れた。密かに自宅にも行ってみたが、既に空き家になっていた。
 
 
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■夏の日の想い出・あの衝撃の日(4)

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