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■夏の日の想い出・あの衝撃の日(2)

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ボクは自分が持っている合鍵で、玄関を開けて政子の家の中に入った。
「マーサ!」
と呼ぶが反応は無い。まだ寝てるなと思い寝室まで行き、ベッドの中ですやすやと寝ている政子を揺り起こす。
 
「マーサ、マーサ、起きて」
 
なかなか起きない!
 
「マーサ、朝ご飯だよ」
と言うと、パッと起きた。
 
「あ、冬、お早う〜。どうしたの?」
「朝ご飯作ってあげるから、着替えておいでよ」
「うん。私、すき焼きがいいなあ」
「朝からすき焼き食べるの?」
「だって美味しいじゃん」
「そうだけどね」
 

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政子のリクエストなので、ボクは冷凍室からストックしている牛肉のパックを3つ出して解凍し、ありあわせのシラタキと麩、解凍した冷凍うどんなども一緒に鍋に入れ、食卓にIHヒーターを持って来て、ぐつぐつと煮る。
 
「うー。美味しそう。天国、天国」
などと言って、早速食べ始めている。
 
「じゃ、今から天国から地獄に叩き落とすから」とボクは言った。
「ん?何するの?」
 
「バレちゃったんだよ」
と言って、ボクは週刊誌を政子に見せた。
 
「ん? 『ローズ+リリー、驚愕の正体』? なにこれ?」
「ひどいよね。プライバシーの侵害だよ」
 
「ケイの正体は都内の男子高校生・唐本冬彦(17)。なんとケイは男の子だったのであるだって。あはは、バレちゃったね」
と政子はこの時点では笑いながら記事を読んでいた。
 
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「マーサの名前も出てるけど」
「ん? マリは同じ高校の中田政子(17)。ちょっとー! 私の名前も出てるじゃん!」
 
「本人に断りもなく勝手に名前出すなんてね」
 
政子はボクの方を見て言った。
「ね、ね、この雑誌、売ってるの、日本だけ? タイでも売ってる?」
「タイで売ってるかどうかは知らないけど、マーサのお父さんの耳にも今日中には入るだろうね」
 
「どうしよう・・・・」
と政子はほんとに困っている様子。
 
「他人から聞くより、自分で言った方がいいと思うよ」
「えーん。冬、代わりに言ってよ。絶対叱られる」
 
「これは自分で言うしかないよ。ボクも今、親に言ってきたところ。パニックになってて、まだ叱られてないけど、帰ったら無茶苦茶叱られるだろうね」
「えーん。電話掛ける勇気無い。冬掛けて」
 
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「掛けてもいいけど、代わるから、マーサ、自分で言わなくちゃ」
「ぐすんぐすん。ね、すき焼き食べてからでもいい?」
「いいよ」
 

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政子はちょっと笑顔に戻り、すき焼きを美味しい美味しいと言いながら食べた。ごちそう様、と言ってから、ボクは政子の両親が住んでいるバンコクのアパートに政子の携帯から電話する。(時差が2時間なので、こちらは7時半だが向こうは5時半)
 
「おはようございます。早朝から大変申し訳ありません。私、政子さんの友人の唐本と申しますが」
「あら、いつもお世話になっています」
とお母さんの声。まだ両親が日本にいた1年生の時にお母さんとは何度か会っている。
 
「ちょっと政子さんが話したいことがあるというので代わります」
「はいはい」
 
そして電話を政子に渡す。政子は泣きそうな顔をしていたが、渋々携帯を取ると「お母さん、あのね」と言って、政子はこの数ヶ月のことを話し始めた。
 
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政子が話している間に父からボクの携帯に電話が掛かってきて、今日は学校を休みなさいと言われる。
 
「うん、そのつもり。それから、今政子がちょっと御両親と話しているから、それが終わったら、事務所の人と連絡を取る」
とボクは言う。
 
父は事務所の人とも話したいと言ったが、ボクはそれは待ってくれと言う。
 
「お父さんとしては息子が無断でこういうことをしていたということで怒っていると思う。でも、ボクはこういう報道があったことで、歌手という仕事をしている職業人として、この報道問題自体にまず対応する必要がある。この報道でいちばんショックを受けたのは全国にいるローズ+リリーのファンだと思うんだ。だから、ボクは記者会見を開いて、その問題を全国のファンにちゃんと説明しないといけない。それがこの社会で活動する職業人としての責務だと思う」
 
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「記者会見!?」
と父は絶句したが、ボクが言った職業人としての責務ということについては父は理解してくれたようだった。
 
「分かった。しかしそれが終わった後は覚悟しておきなさい」
とも父は言う。
「うん。その後はいくらでも叱って」
とボクは答えた。
 

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政子は既にかなり叱られている様子で涙をぼろぼろ流している。お父さんの怒声がこちらにまで聞こえる。両親は緊急に帰国するということを言っていた。その電話が終わった後でボクは津田社長の携帯に直接電話を入れた。
 
「ああ、良かった。今電話しようと思っていた」と社長。
「こちら、浦中さんと町添さんと話して、可能なら、君たちを出席させて記者会見を開いて説明した方がいいのではという話になっていたのだけど」
「私もそのつもりでいます。どこかで打ち合わせしませんか?」
 
津田社長は、都内の弁護士さんの事務所を指定した。ボクは政子を連れてタクシーでそちらに向かった。
 

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弁護士事務所には△△社の津田社長と須藤さん、○○プロの浦中部長と前田課長、★★レコードの町添部長と加藤課長、秋月さんが来ていた。
 
ボクは最初に自分の性別のことで一同に謝罪した。
 
「私の性別のことをきちんと説明していなくて、本当に申し訳ありませんでした」
とボクは女声で謝る。
 
「君・・・ほんとに男の子なの?」
「生徒手帳をお見せします」
と言って、ボクは生徒手帳の最後のページにある身分証明欄を見せる。
 
「服は女子制服を着てるんだ!?」
「氏名・唐本冬彦。うーん。。。。」
 
「じゃ、君ふだんは女子高生として生活してるの?」
「生徒手帳の写真は、実は手違いでその制服で写ってしまったのですが、学校では一応戸籍通り男子の制服を着ています」
「ああ」
 
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「でもけっこう女の子の格好で出歩いてるよね」
と政子は言う。
「そうだね。生活の半分は女子になってると思う」
「ってか、学校にいる時以外はほとんど女の子だよね」
「そうだね。特にローズ+リリーの活動でそういう感じになっちゃった」
 
「この中で、ケイちゃんが男の子と知っていたのは誰?」
と浦中さんが訊く。
 
津田さんと須藤さんが手をあげる。その後、秋月さんが手を挙げたのでボクはえ!?と思った。するとそれを見て町添さんまで手を挙げたのでボクはもっとびっくりした。加藤課長が左右を見て「え?え?」という顔をしている。
 
「浦中さん、申し訳無い。実は僕は10月末にマリちゃん、ケイちゃんと会った時に、本人たちの口からケイちゃんが男の子だということを聞いてた」
と町添さんが言う。
 
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あの時は町添さんはマリの冗談と思っていた感じだったのだが、あれをボクたちのカムアウトと今解釈してくれたのだろう。そして秋月さんが手を挙げてしまったので、部下をかばうために手を挙げてくれたのだろう。
 
「じゃ、知らなかったのはうちだけ? ちゃんとそういう話は通してもらいたいな」
と浦中さんが怒っている。
 
「ただ、僕はその時、性別問題より、マリちゃん・ケイちゃんの芸能契約書に保護者の署名捺印が無いことの方に困惑してね」
と町添さん。
 
「へ? どういうこと?」
と今度は浦中さんは津田社長の方に訊く。
 
「済みません。このふたりとはまだ公式の契約書を交わしてなかったんです」
と津田社長が申し訳なさそうに言う。
 
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「なんか問題がありすぎじゃん!」
と浦中さんは呆れるように言った。
 
「申し訳ありません」
と津田社長と須藤さんが詫びる。ボクも一緒に頭を下げた。
 
須藤さんは、ボクの方は性別問題があってすぐには両親の許諾が得られそうにないし、両親に知られたら当面の活動停止を申し入れられて、スケジュールに穴が空いてしまうことを恐れて、その交渉を保留していたことを説明する。更に政子についても、両親が海外に在住していて、政子は受験勉強のためという名目で日本にいたので、芸能活動するなどというのは、とうてい認めてもらえる余地が無かったため、そちらの交渉も保留していたと説明した。
 
「じゃ、そもそもマリちゃんもケイちゃんも芸能活動不能だったんじゃん!」
と浦中さんは本当に怒るように言う。強面の浦中さんが怒るとマジ怖い!
 
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「だけどさ、浦中さん。それでローズ+リリーを諦められる?」
と町添さんが言うと、浦中さんは1-2秒考えてからすぐに
 
「いや、この素材は絶対に逃したくない。並みのアイドル歌手なら諦めてもいい。でもこの子たちは20年に1度の逸材だよ」
と答えた。
 
「でしょ?」と町添さん。
「じゃ、どうするよ?」と浦中さん。
 

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その後、ボクたちは話し合い、こうなった以上、一時的なローズ+リリーの活動休止はやむを得ないという結論に至る。そして双方の両親にも謝罪してきちんとした形での契約交渉をあらためてしたいということになった。
 
「しかし週刊誌にチクったのは誰なんだ? 明日の日の目が見られないようにしてやる!」
などと浦中さんは言っていた。きゃー。怖いよぉ。
 
とにかくも、今日の午後、★★レコードで記者会見を開くことにし、それにはボクと政子、須藤さん、加藤課長、そして弁護士さんの5人が出ることにした。こういう場には最終責任者は出ない方が良い。
 
「私も出るの〜?」
と政子が情けない顔をする。
 
「何もしゃべらなくていいから」
とボクは言った。
「そうする! ケイ、全部私の分までしゃべってね」
「うん。いいよ」
と言ってボクは政子の頬にキスする。
「キスは唇だよ」
「了解」
と言って、ボクは政子の唇にキスした。
 
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コホン!、と津田さんが咳をして、話し合いは継続される。
 
ボクたちは何は言わなければならないか、何は言った方がいいか、何は言わない方がいいか、などといったことを、法的な問題と、営業政策的な問題の双方から検討した。それからボクたちは、数社、協力してくれそうな新聞社・雑誌社と連絡を取り、一部の情報を渡す代わりに、擁護的に行動してくれることを依頼した。記者会見もひとつのショーであるし、報道側としては情報さえもらえるのであれば、わざわざ★★レコードという大会社の気分を害するようなことはしたくない。特に芸能関係の記者は、★★レコードからたくさん情報をもらわなければならない立場にある。
 
この数社からはけっこう突っ込んだことも訊かれたが、きちんと説明すると、だったら、この点には触れないようにして、こちらに話を逸らしましょう、などと言ってくれた。この数社には契約書不備問題も話したが、その件は今日は問題にしないで済ませてもらえることになった。
 
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そうしてボクは記者会見などという初めての体験に挑んだ。この様子はちょうど午後のワイドショーの時間帯だったので、全ての民放で同時に放映された。
 
放送局以外にも、多数の新聞社、雑誌社の記者が来ていたが、当然のことながら例の報道をした雑誌の記者及び、同じ出版社の他の雑誌の記者も入場拒否した。
 
まずボクたちは今朝発売された週刊誌の記事の内容を大筋で認めた。ただし実名に関しては、未成年でもあり、そもそもプライバシー上、保護されるべきものであり、また写真も勝手に使用することは歌手のパブリシティ権を侵害するものであるとして、雑誌社に強い抗議と、謝罪が無ければ損害賠償を求めて訴える旨の警告をしたことを明らかにした。
 
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しかし報道内容を最初に全部認めてしまったので、その後の記者会見はどちらかというと、なごやかな雰囲気になった。
 
「じゃ、ケイさんは本当は男性なんですね?」
と記者さん。
「いいえ。ケイは女の子ですよ」とボクはにこやかに言う。
 
「私の中の人は男子高校生みたいなのですが、放課後になると、魔法の杖で変身して、女子高生アイドルになって、マリと一緒に歌を歌うんです。ですから、私の中の人は男の子でも、ケイはまごうことなき女の子です」
とボクはソプラノボイスで答える。
 
「ああ、なるほど!」
 
ボクは秋月さんとあれこれ話して、こういう言い方がいちばんファンの心を傷つけないのではという結論に達したのである。「設定年齢」が実年齢と違う歌手はけっこういるから「設定性別」という論理を持ち出したのである。
 
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「その魔法の杖をお見せいただけますか?」
「杖をくれた魔女との契約で他人に見せてはいけないことになっています」
「おやおや」
 
「女の子に変身する呪文を教えてください」
「レーナ・ニーセー・コシヨジ」
とボクが発音すると、慌てて記者さんたちが書き留めるが1度では書き留めきれないのでボクはリクエストに応じて、3回発音した。
 
「どういう系統の呪文ですか?」
「逆から読んでみてください」
とボクが言うと、少しして「なーんだ!」という声と笑い声が起きた。
 
しかし翌日おもちゃ会社からその「女の子に変身する魔法の杖」を商品化したいといって許諾を求められたのにはボクたちは爆笑した(その程度は別に構わないので許可した。うちの父も投げやりな感じで、好きにしたら?と言った)。
 
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■夏の日の想い出・あの衝撃の日(2)

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