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■夏の日の想い出・新入生の秋(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2011-12-03  
9月の8〜10日は関西行きであった。8日は講義が終わってから新幹線で京都に行き、夕方の生番組2つに出演した。9日・10日は大阪・兵庫・和歌山などのFM局に出て来た。10日は金曜日なので、そのまま土日羽を伸ばしたい気分であったが、翌11日からローズ+リリーのアルバム制作が始まることになっていたので、私は10日の最終新幹線で東京に戻った。
 
その帰りの新幹線を新大阪駅のホームで待っていた時、声を掛けてくる人があった。
「こんにちは〜、ケイちゃんだよね?ローズ+リリーの」
「わあ、こんにちは。スリーピーマイスのレイシーさんですよね?」
「おお。私のこと分かるのね?」
 
「はい。まずはそのお声で。それにお三方の顔は闇情報で」
「ふふふ。ケイちゃんの顔もインディーズ版の『明るい水』のジャケ写以外は今年になるまでほぼ非公開だったからね」
「ああ、謎の歌手というのでは、もしかして私たち共通点があったんですね」
「そうそう」
 
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スリーピーマイスは女性3人組の歌手だが、素性を明かしていないことでは、高校時代のローズ+リリー以上である。CDのジャケ写にも3人の顔は写っていないし、ポスターなどでも顔が写らないように撮影されている。CDショップなど開放空間でのライブはやらないし、テレビにも出ない。プロモーションビデオでは、しばしぱフェンシングの面のようなものを付けて出演している。彼女たちの顔を見ているのはコンサートに来た人だけなのである。
 
私が3人の顔を知っているのは、ネット上にほんの一瞬だけアップロードされた顔写真を偶然ダウンロードに成功したからで(投稿者自身が掲載の5分後に消去した)、たまにそのようなゲリラ的に誰かがアップロードすることはあるものの、ふつうにネットを検索したりしても、絶対に彼女たちの顔は拝めない。
 
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★★レコードの歌手の中では上位10位以内に入るようなセールスを上げているし、年齢は全員が22歳と公開されているから、★★レコードの2011年カレンダーのピーチに出てくれないかと町添さんは交渉したのだろうが、たぶん拒否だろうと思っていたら、案の定だった。
 
レイシーは大阪での私用を片付けて東京に帰る所ということだった。私たちは隣り合う席に座った。
 
「明日のライブ行けたら良かったんですが、明日からレコーディングなんですよ」
と私は残念そうに言う。
「ああ、ライブのことは知ってたんだ」
「ええ。1年ぶりのライブツアーでしょ?去年は受検勉強中、一昨年はローズ+リリーが忙しすぎて行けなかったから。私、SLM(スリーピーマイスの略称)のCDはインディーズ時代の4枚も含めて全部持ってますよ」
「おお、ケイちゃんがSLMのファンだったとは知らなかった」
 
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「SLMの曲って、絶対私には書けないだろうな、と思うような曲ばかりなんです。だから、凄く刺激になります」
「刺激はいいけど、刺激されすぎてケイちゃんの音楽が変になったら困るな。ケイちゃんの曲って素直に作られてるのが良いのよね」
「発想が単純なんです」
「歌いやすくていいと思う。私たちはひねくれてるから歌いにくい曲を作ってるし」
「でも不思議な調和感がありますよね」
 
「でもローズ+リリーが出て来た時は、何か私たちと似たようなことしている子たちがいるなと思ってね」
「すみません。真似するつもりは無かったんですが」
「真似も何も、メジャーデビューしたのは、そちらが先だしね。でもケイちゃんの性別を隠すために情報を出してなかったというのは思いもよらなかったな。ケイちゃんが男の子なんてのも思いもよらなかったし・・・・まだ男の子なの?」
「7割くらい女の子になりました」
「おお」
「たぶん1〜2年のうちには完全に女の子になります」
「おおお」
 
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「でもSLMは情報を出さないのはポリシーなんですか?」
 
「インディーズ時代はお金も無かったし、写真の加工したりできるパソコンに強いメンバーもいなかったから、単純な幾何学模様とか花の写真とかでジャケ写作ってたのよね。でも、なんかそんな感じのCD出してるうちに、ファンの間で、私たちは顔を秘密にしている、という話ができあがっちゃってて」
 
「なりゆきだったんですか!」
 
「そそ。でもそういう話ができあがっちゃってたら、それをポリシーという事にして、顔を徹底的に隠すのも面白いかも、なんてことになって。メジャーデビュー曲では仮面を付けたPVを作ってみたのよ」
「『仮面武闘会』は凄いヒットになりましたね」
「いやあ、あれは本気でびっくりした。まさかあんなに売れるとはね。当時はなんか凄まじい忙しさだったよ」
 
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「私たちはヒットしたのが休養中で良かったなあ・・・それ以前でも殺人的な忙しさだったのに」
「高校生だと大変だろうね」
「親に隠して活動してたから、授業は絶対休めないし。遅くとも9時くらいまでには帰宅しないといけないし。その中で学校終わってから放送局3つとCDショップ2つなんてことしてました」
「恐ろしい・・・・そういうのやりたくなーい」
 
「SLMはCDショップとかの店頭ライブしませんもんね」
「私もだけど、特にエルシーがスロースターターだからね。短時間のライブが苦手なのよ。調子が出る前に終わっちゃう」
「あぁあ」
「だからコンサートの時は開場時刻ぎりぎりまでリハやってる」
「なるほど」
「そして、開場時刻の30分後に開演する。それ以上間があいたら調子落ちちゃう」
「生ものなんですね」
「そそ。フレッシュ・ミュージック」
 
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「ところで町添さんからカレンダーに写らないかって話来ませんでした?」
「来たけど断った」
「やっぱり」
「仮面付けてでもいいよと言われたけど、仮面付けるのはPVだけのお遊びだから」
「ですよね。それで、私たちが横滑りで10月のカレンダーに納まりました」
「おお。魔女の衣装で?」
「ええ。こういうの嫌いな筈のマリが結構楽しんでたから、まあよかったかなと」
「私たちが出てたら、ちょっとヤバすぎるよね。仮面付けて魔女の衣装は少し怖すぎるよ」
「確かに!」
 
私たちはそのうち一度一緒に何かしたいね、などという話をして別れた。携帯のアドレスと番号を交換した。
 

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翌日は朝からローズ+リリーの初のオリジナルアルバムの制作を開始した。伴奏をしてくれるミュージッシャンさんは6人と聞かされていた。須藤さんは最初、クォーツの3人に多少のスタジオ・ミュージシャンを加えた編成を考えていたようだったが、クォーツのメンバーが全員昼間の仕事で多忙で、どうにも都合が付かず、結局全員スタジオ・ミュージシャンでの編成になった。
 
朝1番、予定より1時間も早く来てくれたのが、以前『甘い蜜』の録音に参加してくれたギターの近藤さんだった。当時まだ歌唱技術の未熟な私たちにいろいろ親身にアドバイスしてくれて、そのおかげで当時、自分達の実力以上の歌が歌えたので、私も政子も近藤さんには、ほんとに感謝していた。甘い蜜が80万枚も売れた要因のひとつは近藤さんの指導だと思っている。
 
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スタジオにはまだ私と政子しか来ておらず、須藤さんもまだであった。近藤さんとは久々の再会になったので、まずは「お久しぶりです」などと言いながら握手を交わした。
 
「1年ちょっと休養してたけど、春から少しずつ活動再開してきた感じだね。新曲もとりあえず公開だけしてるし。しかしCDを出さずに、有線とかカラオケだけに流すというのは不思議な商法だ」
「いえ、いろいろ事情があって、苦肉の策なんです。あ、これ近藤さんにはお渡ししてと言われたので」
と言って、超限定版・幻のシングル『恋座流星群』を渡す。
 
『恋座流星群』・『私にもいつか』・『ふわふわ気分』の新曲3つと『明るい水』・『ふたりの愛ランド』の新録音版が収録されたCDである。これを私たちから渡したのは、クォーツの3人、スイート・ヴァニラズのEliseに続いて5人目である。
 
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「おお!これヤフオクで売ったら10万行くかもね」
「そんなことはしないだろうと思う方にだけお渡ししてます」
と私は笑って言う。
 
「でも、アルバム録音ということで、いよいよローズ+リリー本格復活?」
と近藤さん。
「いえ、復活はしません」と私と政子。
「むしろメモリアル・アルバム、追悼版ですね」
と私は笑って言った。
 
「えー?ローズ+リリー、もうやめちゃうの?もしかしてこれがラストアルバム?」
「いえ、毎年作っていきます。ですから、メモリアル2, メモリアル3, メモリアル4,と、私たちが死ぬか、あるいは喧嘩別れするまで」
「悪趣味なネーミングだな」と近藤さんは笑った。
「あるいは、ここだけの話ですが、何年か先にマリがライブ活動に復帰する気になったら、メモリアルシリーズは終了します」
と私が説明すると政子は笑っている。
 
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「なるほど。それでメモリアルな訳か。じゃ、ローズクォーツの方はマリちゃんが復帰するまでのユニットになるのかな?」
 
「いえ、ローズクォーツも20〜30年はやるつもりです。他のメンバーと喧嘩したりしなかったら。ローズクォーツではロックシンガーのケイ、ローズ+リリーではフォークシンガーのケイなんです」
 
「両方とも売れたら、恐ろしく忙しいことになるよ」と笑いながら近藤さん。
「頑張ります!」
 
近藤さんの次に来てくれたのが管楽器の宝珠さんであった。この人はローズ+リリーで高校時代コンサートツアーをした時、バックバンドでサックスやフルートを吹いてくれていた。当時は女性のサックス奏者って珍しいなと思ったものの男性奏者顔負けのパワフルでダイナミックな演奏に度肝を抜かれたものである。宝珠さんとも久々の再会だったので「ご無沙汰してました」などといって握手を交わし、女同士の気安さでハグしあった。近藤さんが羨ましそうな顔をしていた。
 
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他のミュージシャンさんたちは10時以降の到着になったので(須藤さんも10時半に来た)、私たちは近藤さん・宝珠さんと4人でしばらく話していた。その間にこれから約半月で録音する曲の、私たちの仮歌に、打ち込みで作った伴奏を重ねたものを流して、聴いてもらっていた。
 
「しかし、マリちゃん、かなりうまくなったね」
と近藤さんも宝珠さんも言った。
 
「マリは去年の春に自宅にパソコン用のカラオケシステム入れて、毎日歌ってたんです。先月からは週3回、歌のレッスンに通ってるし」
「凄い。やる気満々だ」
「いえ、やる気60%くらいです」と政子。
 
なお、近藤さんと宝珠さんは、この録音での出会いがきっかけでいろいろ話をするようになり、意気投合してふたりを中心に翌月新バンド「スターキッズ」
を結成するに至った。スターキッズという名前は近藤さんの下の名前・嶺児と宝珠さんの下の名前・七星(ななせ)の、星と児に由来する。この5年後くらいにローズ+リリーのバックバンドとして定着していく、アコスティック演奏を得意とするバンド、スターキッズは実は、元々ローズ+リリー絡みで生まれたバンドなのである。
 
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やがて10時をすぎると、先日の『天使に逢えたら』などの録音にも参加してくれたヴァイオリンの松村さん、直接会ったことはなかったものの、昨年のベストアルバムの録音に参加してくれていたベースの坂下さん、そしてドラムスの青竹さん、キーボードの太田さんという方が来てくださった。今日は須藤さんがいちばん遅くなり、始める予定の時刻、10時半ジャストに飛び込んで来て「ごめーん。遅くなった」と言っていた。
 
今回収録する曲は、上島先生の『白い手紙』と『再会』の他、私と政子で書いた曲が14曲である。一部は既に公開されている。
 
『あの街角で』、『私にもいつか』、『恋座流星群』、『ふわふわ気分』、『彼の家なう』、『秘密のプリ』、『剥がした写真』、『紅茶とマシュマロと便箋と』、『用具室の秘密』、『積み木の城』、『Spell on You』、『USB Love』、『After 2 years』、『8GB Memory of you』
 
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構成的には、『白い手紙』を先頭に、そのあと『恋座流星群』『私にもいつか』
と続け、最後に『8GB Memory of you』、『After 2 years』、『あの街角で』、そしてラストに『再会』という並べ方にしていた。
 
『ふわふわ気分』は先日の録音をそのままアルバムに収録することになっていた。『恋座流星群』も若干の楽器の音を付加してリミックスの方針である。
 
『あの街角で』は8月にリリースしたローズクォーツのシングルにも収録されていた。また『私にもいつか』は翌年春にリリースしたローズクォーツのシングルにも収録された。どちらも須藤さんが編曲したアコスティックなバージョンを今回は収録する。(ローズクォーツ版の方は電気を使用する楽器をバリパリ使った編曲で下川先生に編曲してもらったものである)
 
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須藤さんにダメ出しをされて、最初書いていた曲を捨てて新たに書き直したのが『Spell On You』だった。私が最初書いていたのは、怪しげな雰囲気の不協和音をわざと多用したものであったが、これじゃ売れんなどと言われて、一度アラビア風のメロディーを付けてみた。須藤さんは面白がっていたが、自分でどうにも納得がいかなかったので、あと1日ください、もう一度書き直したいと言って最終的に書き上げたのは、一部アラビア風のメロディーを採り入れてはいるものの、全体的には小気味の良いダンスナンバーという雰囲気にした。
 
今回は下川先生の編曲が2つ、私と須藤さんの編曲が各々6つずつであった。『白い手紙』『再会』『恋座流星群』『Spell On You』以外はだいたい静かな感じの曲が多く、アコスティックなアレンジをしたので、元々アコスティックギターが得意な近藤さんと、ヴァイオリンの松村さんが張り切っていた。特に『あの街角で』などはドラムスも入れず、ほとんどの部分を近藤さんと松村さんだけで演奏し(信号音も使わず自由なテンポで弾いてもらった)、一部に宝珠さんのフラウト・トラヴェルソ(バロック・フルート)が入るという珍しい編曲で、結果的には発売後の個別ダウンロードでは、これがいちばん多くダウンロードされていた。(2位『白い手紙』、3位『恋座流星群』、4位『Spell On You』)
 
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フラウト・トラヴェルソなどという珍しい楽器が入ることになったのは、彼女がこれを持ってきていたのを近藤さんが見て「何?これ」などと騒いだので、使ってみようということになったためで、この曲は基本的には須藤さんのアレンジだったのだが、そのパートだけは私が書かせてもらった。私はこの楽器の演奏を7月に風花に誘われて見に行ったバロック音楽のコンサートで聴いていたので、結構イメージが湧いたのであった。私がすらすらとそのパートの音符を書き込んでいたら、宝珠さんが「この楽器の音域をちゃんと知ってるんだね」などと感心したふうに言っていた。
 

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■夏の日の想い出・新入生の秋(5)

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