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■夏の日の想い出・モラトリウム(10)

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お昼はスタッフパスでMDC3内に入り、スタッフ用の食堂でランチを食べたが、政子は三田原さんをつかまえて
 
「葉月(はづき)ちゃんに可愛い曲を用意しますから、あの子、ぜひデビューさせましょうよ」などと言っていた。
 
「でもあの子がアクアの代役をしないと、他の人では務まらないからね。身長も体重も、そして雰囲気までアクアによく似ているから、最高の代役なんですよ」
と三田原さんは言う。
 
「超多忙なアクアの代役をしているから、実はアクア本人より彼の方が忙しいんだよね。アクアは絶対に学校を休まないけど、葉月(ようげつ)ちゃんは頻繁に学校休んでいるから」
と私も言った。
 
「そっかー。その状態で自身もデビューって無理か」
「過労でダウンしちゃうよ」
 
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14時エレメントガードが登場して前奏を始める。7万人の物凄い歓声の中、王子様のような衣装を着けたアクアが下からせりあがってきて登場すると多数の黄色い悲鳴のような歓声がこだました。
 
アクアの歌が始まったのに合わせて信濃町ガールズA班が入って来て後方でダンスをする。彼女たちはヘッドセットも付けていて、部分的にはコーラスも入れるようになっている。
 
客席の最後部はステージから260mある。直接見えるステージ上のアクア(156cm)は比例計算すれば2.6mの距離にある1.56cmの豆人形のサイズである。そこに居るようだというのが分かる程度だが、それでも本当にアクアと同じ空間を共有しているという一体感がライブの醍醐味である。
 
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一応彼の姿は場内数カ所に設置した大型スクリーンでも見ることができるので、アクアの表情などもそれで確認できるものの、多くの観客は豆粒のようなアクアの方を見て歓声を送っていた。
 
なお室温は空調を入れていても30℃あり、音速は v = 331.5 + 0.6×気温で計算すると 349.5m/sとなるので260mを伝わるのに必要な時間は0.74sである。それでその付近に設置した補助スピーカーは0.8秒ほど遅れて鳴る。メインスピーカーから来る音より早く補助スピーカーが鳴ってしまうと臨場感が失われるのである。このあたりはアクアの音響を初期の頃から担当している白金さん(麻布先生の弟子の1人で、実は私や有咲の後輩になる)がしっかり設計している。
 
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「でもこの会場は床・天井・壁が全部吸音材料で出来ているから、音響が設計しやすいよ」
と白金さんは言っていた。壁や天井の吸音素材貼り付けだけで70-80億は掛かったと思うが、若葉のこだわりのおかげで、良い音響が得られている。
 

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今日のアクアのステージは休憩時間も入れて2時間40分くらいの予定(内最後の10分はアンコール)で、1:10歌って10分休憩し、1:10歌ってアンコールとなる。アクアの負担を考えて川崎ゆりこが司会をして、歌と歌の間はアクアが少し休めるようにしている。
 
バックダンサーを務める信濃町ガールズは前半をA班、後半をB班が務める。今回小浜に来ているのはピックアップメンバーで各15人、合計30人である。基本的に中学生以下のメンバーなので、第1部に出演した佐藤ゆかたち、また音響テストに協力した木下宏紀たちは入っていない。高校生のメンバーたちはこの日は主として桜木ワルツたちと一緒に裏方のお仕事をしている。
 
なお今回“アクアたち”は話し合って、前半はアクアF、後半はアクアM、アンコールはアクアNが歌うようにしたようである。それで例によって
 
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「アクア様は前半の方が女の子っぽくて良かった」という感想がたくさん出ていた!
 
なお、前半と後半の間のゲストが誰になるかは公表されていなかったのだが、今井葉月と山下ルンバが出てきて、2人で北里ナナの『招き猫の歌』を歌うと物凄い歓声があがっていた。ちなみに2人はルンバが黒猫(♂)の衣装、葉月が白猫(♀)の衣装である。私は「それ性別が逆では?」と言ったのだが、コスモスは「ナナのPVで葉月が白猫だったから、それを蹈襲してルンバには男装してもらいました」と言っていた。
 
2人は『招き猫の歌』の後は『愁末日記』『レジンの首飾り』と歌った。最後の曲は10月発売予定の北里ナナ5thシングルに収録予定であることを葉月が言うと歓声があがっていた。
 
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それでアクアに引き継ぐが、後半のアクアの衣装は(男物の)和服風の衣装だった。例によって観客の感想としては「せっかく和服を着るなら振袖着ればいいのに」というものが多かった!
 

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ライブが終了したのは予定を少し遅れて16:50くらいである。
 
身代わり役の山下ルンバがアクアと同じ衣装を着けて、ライブ終了の5分後にMDC3の横に付けていた水色のAUDI A4に乗り込むと、山村マネージャーの運転でMuse Parkを出る。これを追っかけるために早めに会場の外に出ていたと思われるファン数人が追いかけようとしたものの、AUDIはそのまま坂を登り、Muse Townの中に入ってしまった。
 
そしてファンがフェンス越しにAUDIの行方を見ていると、アクアの衣装を着けたルンバ(ファンたちはアクアと思い込んでいる)と山村マネージャーはタウン内のヘリポートにいつの間にか駐まっていた AS355 Ecureuil 2 (*1) に乗り込む。そして山村の操縦でヘリは飛び立ってしまった。遙か南東方面に飛び去るヘリコプターを、追っかけファンたちは呆然と見送った。
 
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しかし「アクア様、ヘリコプターで会場を去る」としてヘリの写真付きのツイートがあったことから、やはり年末の“立体映像”という建前のアクアは本物だったのでは?という意見がネットでは大勢となった。
 
(*1)Ecureuil(エキュレイユ)はフランスのアエロスパシアル (Aeroespacial) が開発し、エアバス・ヘリコプターズ (Airbus Helicopters 旧ユーロコプター Eurocopter) が販売している軽量ヘリである。単発の AS350 Ecureuil と双発の AS355 Ecureuil 2 (Twin Star) がある。定員は操縦士1名+乗客5名。巡航速度はどちらも200km/h. 航続距離はAS350=600km, AS355=700km.
 
山村は12月31日にこのヘリを米原駅近くの空地からここまで飛ばしている。このヘリは冬子が2014年5月にKARION・ローズクォーツ・ローズ+リリーのライブを掛け持ちするため南相馬から仙台まで飛んだ時に使用したヘリと同型機である。もし買うなら価格は3億円くらいと思われる。
 
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もっとも実際のアクアはMDC3内のアクア専用控室でシャワーを浴びた後、第1部に出演した歌手たちと一緒に、18時からMDC3の大会議室で夕食を兼ねた打ち上げに出た。観客は現在規制退場をしている所で、それが19時くらいまで掛かるはずであるが、こちらは中学生も多くいることから、先に打ち上げをさせてもらった。これに出席していないのは、アクアの代役でどこか(?)に飛んで行った山下ルンバと山村マネージャーだけである。
 
アクア本人を含む§§ミュージックの歌手(ここに来ていない高崎ひろか・品川ありさを除く)、研修生、信濃町ガールズ、スタッフの一部、エレメントガード、この施設のオーナーである若葉、小浜市長の代理で来た小浜市議の山崎さん(女性)、TKRの三田原・鮫川、それに部外者?の私・政子・千里・青葉・丸山アイといったメンツが出席した。★★クリエイティブのスタッフ、地元イベンターのスタッフは現在規制退場の制御で忙しくてここには顔を出していない。
 
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小浜市議さんに乾杯の音頭を取ってもらい、全員ジュースで乾杯する。出席者のほとんどが女性で(男性は信濃町ガールズの男子メンバー2人のみ)、未成年が多いことから、この打ち上げはノンアルコールである。
 
食事は若い子たちが喜ぶように焼肉である。それでどんどんお肉が消費されていた。なおこの大会議室は焼肉ができるように排煙システムがしっかりしている。これは丸山アイの趣味で装備されたものである。
 

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政子はアクアとたくさん話したがっていたものの、市議さんがくっついていて、コスモスも傍にいるので、政子はなかなかアクアを確保出来ない。結局三田原さんが相手をしてくれていた。青葉は丸山アイと話していたが、チラッと聞こえてくる会話の内容がよく分からなかった。
 
「青葉ちゃん、こちらの本拠地を見せたんだから、そちらの本拠地も見せてよ」
「こちらは性転換済みのメンバーと性転換希望のメンバーが多いんでけど、アイさんも性転換します?」
「ボク性転換は5〜6回したよ」
「ああ。性科学研究所で手術を受けられたんでしたっけ?」
「古い話を知っているなあ。でもあそこでは看護婦してただけだよ」
「師匠が私に宛てた手紙の中で書き残していたんですよ。阿比留文字で書かれていたから、解読に時間が掛かって」
「まあお茶目な子だったね。あの子の小さい頃のこと色々暴露しようか?」
「そのあたりはいづれゆっくりと」
「ところで本拠地探訪は?」
「いつでも来て下さい。歓迎されると思いますよ」
「歓迎ってパイが飛んでくるとか」
「食べ物無駄にするのはいけませんね」
「あ、それ同感」
 
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葉月と千里はやや深刻な顔をして話し込んでいたので、私は心配して見ていたのだが、やがてふたりとも笑顔になったので、結果的には何か解決したのだろう。少し聞こえてきた会話はこんな感じだった。
 
「意外とバレないもんでしょ?」
「・・・と思っている人は当然何も疑問を感じないし、***と思っている人もうまく偽装してると思っているし」
 
言葉が完全には聞き取れない。偽装って何だろうか?
 
「だったら、あと1年半モラトリウムにするのね?」
「すみません。お手数ですけど、よろしくお願いします」
 
1年半?もしかして彼が高校を卒業するまで、何かを保留にしておくということだろうか?葉月は千里に何を頼んだのだろう?
 
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私は話が落ち着いたふうの所で、ふたりの傍に寄った。
 
「葉月(ようげつ)ちゃん、映画の撮影は終わったの?」
「29日で一通り終わりました」
「それは良かった」
「あとは撮影済みのビデオを編集していく過程で、こういうシーンを入れよう、などということになったら、出演者を集めて追加撮影するかもということです」
「去年もそんなことは言いつつほとんど無かったね」
 
「それで今年もアクアさんミニアルバム作ろうかという話が出ていて。たぶんすぐケイ先生にも話が行くと思うのですが」
「まあ山村さんが今どこか空中を飛んでいるしね」
「あの人も凄いエネルギッシュですね。女性であそこまでパワフルな人も珍しいなと思って見てますよ」
 
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ん?まさか葉月は山村が女装者だというのに気付いていない??
 

「でも郷愁村って面白いですね。お芝居のセットでしか見たことのなかったブラウン管テレビとか、トースターとか、黒電話とかが、各自の部屋に置いてあって、全部本当に使えるからびっくりです。トースターでパンを焼くと飛び出してくるのって面白いですね」
 
などと言っている。
 
そうか、西湖の世代はブラウン管テレビを見たことがないのか!?と、つい世代間ギャップを感じてしまった。
 
「監督さんがオーナーさんに、ぜひこのトースターとかブラウン管テレビとかを旅館《昭和》の部屋にも置きましょうよと言っていました」
 
「ああ、そういうのを若葉は面白がってやるかも知れない」
 
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郷愁村は、2017年末に試掘で温泉が湧出。若葉が人脈を駆使して温泉開発の許可を得(この許可を取るのは本当に難しくできている)、2018年夏に温泉旅館がオープンしている。
 
若葉は結果的には郷愁村の開発が落ち着いた所で、今度は小浜での開発を始めたことになる。実は藍小浜の仲居頭は、若葉が《昭和》から連れてきた人である。
 

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この日の夕食兼打上げは、中学生もいるので、20時でお開きになった。この時点では規制退場も完了し、★★クリエイティブのメンバーも打ち上げの席にやってきていた。
 
「お疲れ様でした」
と言って、三田原さんやコスモスがジュースをワイングラスに注いであげていた。
 
中締めの挨拶はコスモスがしてくれたので、私は今日はずっと座っているだけで済んだ。おかげで私が§§ミュージックのオーナーになっていることは政子にバレずに済んでいる・・・はず!
 

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私たちはMDC3内で1泊して9月1日に東京に戻ったのだが、東京駅に着くと、その足で、都内の病院にお見舞いに行った。
 
昨日、8月31日に大学時代の友人・北川博美(旧姓南野)が2人目の赤ちゃんを出産したのである。彼女はローズ+リリーが休養中だった頃、影武者ライブに協力してくれていた。南野博美・丸山小春が街頭ライブをしているかのように装い、実は私と政子が観客に紛れて本当に歌っているという方法で政子のリハビリをやっていた。博美がカホン、小春がギターを弾いて演奏していた。
 
博美は2016年10月に結婚し、2017年に1人目を出産。今回2人目ができた。
 

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夏の日の想い出・モラトリウム(10)

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