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■夏の日の想い出・モラトリウム(6)
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続いて『天使の歌声』を演奏する。この曲はフルートを2本入れることにしたので、青葉に吹いてもらった。青葉が使えない場合は風花に頼むつもりだった。
この曲ではエレクトーンを弾いている山森さんが合間に鳴らすスターチャイムの音も美しかった。
世梨奈・青葉・美津穂が下がり『言葉は要らない』を演奏する。それから『ガラスの階段』を演奏するが、『ガラスの階段』に使用する“女子高生のフルートソロ”は本当にセーラー服(衣装)を着た葉月に吹いてもらった。
「わあ、葉月(はづき)ちゃん、今度は性転換してセーラー服にしたのね。やはりこちらが可愛いよ」
と言って、マリは異様に喜んでいた。
観客は全員葉月を女子と思っているので、マリの発言に首を傾げる人もあった。
電気楽器に持ち帰る。
『H教授』を演奏する。
この曲は基本の5人(Gt.近藤 B.鷹野 KB.月丘 Dr.酒向 ASax.七星)だけで演奏する。
アコスティックな世界で30分ほど楽しんでもらったので、この後は電気楽器の音で盛り上がってもらうのだが、最初はこの演奏時間8:20の長いバラードである。手拍子無しでみんな静かに聴いてくれているようだ。
サマフェスは、聴いているのがファンだけではないので、この曲を知らない人も多いようで、興味深そうに歌詞に集中しながら聴いているふうの人も多かった。最後まで行くと安堵したような拍手があった。
KB.詩津紅,山森 Tp.香月 Tb.宮本 Fl.世梨奈 Cla.美津穂 といったメンツが加わり『青い豚の伝説』を演奏する。宮本さんのトロンボーン初披露である。
座って聴いていた人たちも立ち上がり、手拍子が始まる。会場が大きく盛り上がる。
更に『コーンフレークの花』を演奏する。
この曲は演奏者が多い。ヴァイオリンを葉月(セーラー服のまま)に弾いてもらい、アルトサックス三重奏を七星・青葉・桜野レイアに弾いてもらう。サンバホイッスルを風花に吹いてもらい、ダンサーとして小風・美空に出てもらった。
そして『苗場行進曲』に行く。
葉月とレイアが下がり、風帆叔母が出てくる。小風と美空は退場予定だったのだがそのままステージに残り行進するような仕草をしている。そこに多数の中学生女子が入って来て行進する。信濃町ガールズの子たちである。観客の中には彼女たちの個別の名前をコールしている人もあり、名前を呼ばれた子は嬉しそうな顔で声のした方へ手を振っていた。
演奏が終わった所に葉月(まだセーラー服のまま)が出てきて、私とマリにお玉を渡してくれた。
客席から「ピンザンティン!」と声が掛かる。
それでローズ+リリー・ライブのクライマックス定番となっているこの曲を演奏する。葉月は小風に「おいでおいで」と呼ばれて、美空とともに3人でダンスしている。するとレイアがお玉を4つ持ってステージに上がってきて(風花の指示だろう)結局4人でお玉を持ったまま踊ってくれた。
興奮のまま終局し、伴奏者が全員下がる。
私とマリの2人だけになり、私は電子ピアノの前に座り、マリと2人だけで『あの夏の日』を歌った。
手拍子がターンタタンというゆっくりしたリズムに変わる。
そして演奏終了とともに、大きな拍手があり、私たちは歓声に応えて大きくお辞儀をしてからステージを降りた。終了時刻は18:56くらい、ちょうど日没時間くらいであった。
その日は夜遅くまで(朝まで?)打ち上げがあったが、私も政子も早々に休ませてもらった。
翌7月29日(月)は政子とあやめは政子のお母さんにお任せして、私は秋風コスモスと一緒に小浜に移動した。
越後湯沢6:07-6:36高崎7:19-9:35金沢9:48-11:09敦賀
敦賀には千里(どの千里かは不明!)がランドクルーザー・プラドで迎えにきてくれた。この車は彼氏の細川さんの車のはずだが、借り出してきたのだろう。現地には既に若葉と若葉の顧問弁護士・樋森さんも来ている。
そしてこの日、Muse Theater, Muse Arena が、播磨工務店から若葉の会社・ムーラン・ホールディングに引き渡された。
工事は一週間前の7月20日までに終了しており、その後、消防署などの検査を経て引き渡しとなったものである。
なお、ここの土地はAI-Museが所有しているので、ムーランはAI-Museに借地料を払うことになっていたが、後述の理由により不要となった。電気はAI-Muse側の施設と一体で使用することにしていたのだが、そのあたりの事情も後述する。
なおここは普段は、小浜市内および近郊のスポーツ少年団、中学・高校などの運動部の練習場として無料!で使用できるようにすることが小浜市側との話し合いで決まっている。条件は各クラブの責任者が引率すること、スポーツ保険に入っていること、使用後ちゃんと床掃除などすることと、ゴミを持ち帰ることだけである。
「別に儲けるつもりも無いから無料でいいですよ」
と若葉は言ったのだが、市側は感謝して、色々お土産をくれたようである。私たちも若狭牛のステーキ肉をお裾分けしてもらって、マリが喜んで食べていた。
そういう訳でここにはバスの常設路線が出来てしまった!
なおトイレは7万人の観客を入れた時のために便器数2000の巨大なトイレ群が4階建て(*1)の“サイドストリート”部分に設置されているが、通常は100個分だけ開けておいて他は施錠しておくことにしている(集中制御室で出来る)。
(*1)体育館本体がバレーボールのために高さ14mで作ったので、それに合わせるとサイドストリートは4階建てになってしまった。バレーの公式戦をするにはこの高さ(本当は13mが基準だが若葉は余裕を持つべきと言って14mにした)が必要である。「コミュニティ体育館」という、地域の住民の軽運動のための体育館という趣旨の、緩い基準で作る場合は高さ7mでも構わない。しかしその高さでは、強いアタックを滑り込んでレシーブした時など、ボールが容易に天井にぶつかるだろう。
( 60km/hで真上に打上げられたボールが14mに到達する. 1/2 mv
2= mgh ∴ v=√(2gh))
このサイドストリートにはイベントの時に出店が出せるスペースもたくさん用意している。まあスペースが余ったので、ついでに電気・水道の配線・配管をしただけである!(余分に2〜3億円掛かったと思うが)
そういう訳で、アリーナの天井は高さ14mあり、バレーボールの試合にも使用出来る。面積としてはサッカーのピッチが2面(無理すれば4面)取れる広さだが、床はフローリングなのでサッカーには適さない。また14mの天井は野球をするには低すぎるので、野球にも不適である(多くのドーム球場の屋根は50m以上である。軟式野球で使用されている小松市のこまつドームでも高さ40m)。むろん野球でもキャッチボール・投球練習、防御ネットを張っての打撃練習くらいには使えるし、サッカーでもシュートやパス練習くらいはできる(実際梅雨時や冬季に野球部やサッカー部の子たちが随分練習に来るようになったようである)。
ここのアリーナはおよそ200m×160mあるのだが、下記のように34個のコートに分けられている。
コートは、濃い色の福井県産栗(チェストナット)のフローリングのコートと淡い色のカナダ産楓(メープル)のフローリングのコートをコート単位で千鳥状になるように設定している。ハンドボール用のコートには福井県産の樺(バーチ)も使っている。どれも後のメンテナンスを考えて無垢材である(集成材では「表面をグラインダーで削って整える」ということができない)。
シアター側45m×23mの4コートはハンドボール・フットサル(40mx20m)のライン、
中央40m×23mの15コートはバスケット用(32m×19m)のライン、
駐車場側40m×23mの15コートはバレー用(34m×19m)のラインを引いている。
バレー用の1列は各々を4分割(20×11.5)してバドミントンのコート18m×10mの線も引いている。
つまり通常状態でハンドボール兼フットサル4面、バスケット15面、バレー15面取られていて、バレーの5個はバドミントン20個に転用出来る。
ただしタラフレックスを敷くと、全面をバスケット32個、またはバレー32個として使用することができる(各コートは40m×25m)。テニス用のカーペットを敷くと、テニスコートが全体で24面取ることもできる(取り敢えず8面分だけ用意した)。冬季は実際テニス部の予約も多かった。若狭では冬季はテニス部も練習ができず困っていたようである。
また卓球台は計算上416セット並べられるはずである(卓球は6m×8mの広さが必要)が、取り敢えず33セットだけ用意した(テニス用のカーペットも卓球台も希望があれば追加する)。
なお、タラフレックスやテニス用カーペットを敷いていない状態の場合、各コートをアクリル性の透明な壁(外枠はスティール製:防護ゴム付き)で仕切ることもできる。この壁はボールが他のコートまで転がっていくのを停めるバリアという目的が大きいのだが、ある程度の防音効果もある。ドアが付いているので出入りは自由である。壁を固定するレールは各コート区切り線の50cm内側にあるので、結果的に隣のコートとの間に幅1mの通路ができ、内側のコートにいる人も、その通路を通って外に行くことができる。
壁を透明にしたのは、不透明だと迷子になる人!が出たり、戻る時に自分のコートに辿り着けない人が出ることが予測されたからである。アクリルボードは充分丈夫ではあるが、ボールの勢いの強いスポーツをする場合は、ボードの前にネットを張ることも可能である。なお壁は2m×2mサイズのアクリルボードをつないで構成しているので破損しても修理代はそんなに高くない。
またライブをする時は余分な反響を防ぐため吸音性のカーペットを敷くことにしている。壁には最初から吸音効果もあるクッション材が貼られている。
なお、この体育館は遮音性は良いのだが、窓が結構あるし、グラスファイバーのチューブを使って外光を取り入れる仕組みもあるため、実は照明をつけなくても昼間は結構明るい。
アリーナに設定された34個のコートは実は15個の昇降ブロックに分けられていて、次のような仕様で上下させることができる。数字は低い方から打ったものである。
スロープ型はミューズ・シアターと連結して、あるいは1番の中央に仮設ステージを設置してライブをやる時の設定で、シアター側が低く、駐車場側が高くなっている。センターコート仕様は中央が低く、周囲が高くなる。
収容人員は、スロープ型の場合で5.6万席、センターコートの場合は(斜めに設置する所が出る関係で)4.2万席である。
なお床を昇降させた時に合わせた出入り口も、サイドストリートには設置されていて、各階から出入りすることになる。
なおセンサーにより、周囲に人がいることが検知されると昇降装置も移動観客席も自動停止して警報ブザーが鳴る。また床の高さが合っていない出入口は自動的にロックされて転落事故を防止する仕組みになっている。そんなの手動で施錠すればいいという意見もあったが、若葉は
「施錠し忘れる可能性があったら、絶対誰かが忘れる」
とマーフィー大尉のようなことを言って、お金は掛かるものの自動ロックするシステムにした。このあたりのプログラムは播磨工務店の青池さんが書いている。彼女(?)はLinuxのシステムの一部の開発にも貢献している天才プログラマらしい。
(青池さんの性別はよく分からない。女装していることが多いが男装していることもある。声は男女どちらの声にも聞こえる)
青池さんはBSD(LinuxのルーツであるUNIXのカリフォルニア大学バークレイ校版:Unixの産みの親であるKen Thompsonを中心に開発された)の初期開発にも参加したと言っていたが、さすがにジョークだろう。本当なら最低でも60歳前後のはずである。彼女(彼?)は30歳前後に見える。
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