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■夏の日の想い出・若葉の頃(8)

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そんな感じでふたりがしばらく脱衣場で会話をしていたら、そこに男性客が入って来た。
 
しかしアイとアクアを見ると
「ごめんなさい!間違った」
 
と言って慌てて飛び出して行く。
 
「今の客、絶対女湯に行ったよね」
「女湯はさっきまでコスモス社長が入っていたんですよ。でももうさすがにあがっていると思う」
「だったら、今は空か」
 
「ということは・・・・」
 
ふたりはその後の展開を考えて顔を見合わせた。
 
「逃げようか?」
「そうしましょう」
 
それでふたりで男湯の脱衣場を出て廊下に出る。
 
「でもアイさんって結局女の身体なんですか? 女性ホルモン飲んでるんでしょ?」
「女性ホルモンを飲んでるのは確か。実は僕の声の維持のためなんだよ」
「わぁ」
「アクアもその声を維持するために女性ホルモン飲んでるでしょ?」
「え、えっと・・・」
 
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「でも僕の身体の状態は内緒。まあ《活動している睾丸》が存在しないことくらいは認めてもいいよ」
「へー!」
 
まあ睾丸が付いてて、この体型・この色気は無いよなあと龍虎は思ったが、自分もみんなからそう思われていることは認識していない。
 
「でも僕、性転換手術の前後に、男の子とも女の子ともセックス経験してるよ」
とアイは言った。
 
セックスなんて言葉を聞くとドキッとする。さすがにセックスの意味くらいは(何となく)分かっている。
 
「それ手術の前にどちらとして、手術の後にどちらとしたんですか」
「内緒」
 

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ローズ+リリーは那覇公演の翌日、4月30日に福岡公演をした。
 
そして・・・この日、大阪では政子の元恋人・松山君が露子さんと結婚式を挙げた。正望は司法修習の最中なので出席できなかったものの、式には佐野君、菊池君など、高校時代以来の友人が何人か参列したようである。私と政子は佐野君に託してご祝儀を渡している(どちらも父親の名義を借りた)。
 
その件に付いて、私は当日できるだけ触れないようにしていたのだが、福岡公演が終わって博多駅近くのホテルに入り、シャワーを浴びてからベッドに腰掛けて涼んでいたら、政子はぽつりと言った。
 
「寂しいよぉ」
 
「一緒に寝よう」
と私は答えた。
 
「うん」
と政子は言い、私は政子をしっかりと抱きしめた。
 
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翌日も広島で公演があるので、本当は早く休まないといけないのだが、この日は私たちは3時頃まで睦み合っていた。
 
「腹いせにアクアを去勢しちゃおうかなあ」
「どうやって去勢するのさ。本人は去勢するつもりは無いよ」
「たとえばさ、オナニー用の小型の箱に偽装しておちんちん切断機を渡すってのはどうかな」
 
「何そのオナニー用の箱って?」
「そういうのあるんでしょ?こないだ亮平から聞いたけど。たばこくらいのサイズで中におちんちんを入れるとバイブレーション機能が付いていて、気持ちよく逝けるんだって」
 
「聞いたことない。ジョークでは? 男の子はバイブレーション程度の刺激では逝けない気がする。多分生殺しになる。それにそもそもたばこサイズではおちんちんが入りきれない」
 
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「おちんちんってそんなに大きかったっけ?」
「まるでバージンみたいな発言、今更しないで」
 
などと言った会話をしつつ、そんなネタまで話すって、大林亮平と政子はどのくらい進行しているのだろうと私は訝る。
 
「そっかー。男の子のオナニーの実態も分からないなあ」
「そもそもアクアはオナニーしないと思うよ」
「嘘!?」
 
「あの子、人前では月に1回くらいオナニーしてますと言っているみたいだけど実際には全然してないと思う」
 
「しなくても平気なの?」
「男性的な発達がしないように我慢してるんだよ」
「だったら女性ホルモン飲めばいいのに」
「それは飲みたくないんだよねー」
「アクアの性的な傾向もよく分からないなあ」
 
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「普通の男の子だと思うけど」
「それだけは絶対違う」
 

4月29日から5月5日まで、7日間に6公演というハードスケジュールの公演をこなした後は、2日間休んだ後で8日の幕張である。
 
私とマリは5日の金沢公演が終わった後、6日に東京に戻ると、★★レコードの北川さんのお見舞いに出かけることにした。
 
私たちは直接北川さんに担当してもらったことはないのだが、私とマリがこの業界で食べていけるようになったのは、北川さんから多数のアイドル歌手の曲作りを依頼されたことが大きい。
 
ローズ+リリーは初期の頃は、話題にはされていても、そんなに大きなセールスがあった訳ではなかった。しかも歌唱印税というのは1%しかない。それに対して作曲印税は8%なので、私たちは初期の頃、自分たちが歌うのより、他の子に楽曲を提供することで利益を得ていたのである。
 
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6日、金沢で朝ご飯を食べてから新幹線に乗り東京に戻るとお昼である。そのまま東京駅界隈でお昼を食べて恵比寿のマンションに戻る。荷物などを置いてから着替えて出かけようとしていたら、珍しい来客があった。
 
「ご無沙汰しております、滝口さん」
 
それはKARIONの元担当で、現在は4月に発足したばかりの製品開発室長である滝口史苑さんであった。正直な所、彼女はKARIONのメンバーとうまく行ってなかったこともあり、彼女がKARIONの担当を外れた後は、ほぼ交流は無くなっていた。
 
「ちょっと相談事がありまして」
と滝口さんは言うが
 
「今出かける所なんですよ。道すがらでもよければお話を聞きますが」
と私が言うと
 
「ではご同行させてください」
 
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ということで、結局、マンションから20分ほどの所にある中央区の病院まで、滝口さんをリーフの後部座席に乗せて走ることになる。
 

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「ローズ+リリーは絶好調だね」
と滝口さんが言う。
 
「おかげさまで。でも滝口さんも今は例のオーディションの仕事で忙しいでしょ。良さそうな子いますか?」
と私が訊くと
 
「このゴールデンウィークに合宿をやったんだけどね。合宿の主たる目的は、本人のセンスの確認、この芸能界で生きていけるタフさと、空気を読む力を持っているかなんだけどね」
 
「空気読めないと、無用な攻撃を受けちゃいますからね」
 
「そうそう。タフさ以上にそれが重要。この業界じゃ売れてない先輩にいじめられるくらいは日常茶飯事だから、それに耐える精神力も必要だけど、そもそもいじめのターゲットにならないように振る舞う狡猾さも必要なんだよ。全ての攻撃をまともに受けていたら、どんなに強い人でも心が折れる」
 
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このあたりはマリはぽかーんとしているようだが、私は頷いていた。マリや美空などは、風に逆らわない柳のように、そもそも攻撃されにくいタイプである。小風とかAYAのゆみとかは危ない。
 
「まあそれで、来週合格者を発表しないといけないんだけど、実は誰を選ぶかで意見が3つに別れちゃって」
 
「うーん・・・」
 
3つにも別れるというのは、つまり絶対的に優秀な人が居なかったことを意味する。
 
「それでちょっと何人かのアーティストさんに聴いてもらえないかと思って。謝礼は払いますから」
 
「そうですねぇ」
「取り敢えず、彼女たちの歌を聴いてもらえません?」
 
「まあ聴くだけならいいですよ」
 
それでMP3プレイヤーに入っている歌唱を車内で鳴らしてもらう。
 
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3人の演奏を一応聴いたところで、目的の病院に着いたので
 
「じゃ意見はお見舞いが終わったあとでいいですか?」
と言う。
 
「あら。病院?」
「制作部の北川さんが入院なさっているんですよ」
「ホント?知らなかった」
「何でしたら一緒にお見舞いに行きます?」
「あ、いや。私は待ってるよ」
 
滝口さんはPCレコードの出身で、今回大騒動になったMMレコード系ではないのだが、村上専務に拾ってもらって★★レコードに入った経緯があるので社内では「村上派」直系とみなされており、町添さんに心酔している感じの北川さんや南さんたちとは、どうしても心理的な溝があった。おそらく北川さんもお見舞いに来られると、どういう顔をしていいか分からないだろう。
 
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「じゃロビーで待っておられませんか。車内は結構暑くなりますから」
「あ、そうしようかな」
 
滝口さんは『アイドリングして空調入れといたらダメなの?』という感じの顔をしていたが、むろん私はアイドリングはしない。
 
それで一緒に車を降りて病院内に入る。
 

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受付の所で私が「北川奏絵さんのお見舞いに来たので病室を教えて下さい」と言い、調べてもらっていたら、ちょうどそこに白衣を着た60代くらいの男性が通りかかる。この病院のお医者さんだろうか。
 
その男性は私たちのそばで「ん?」と言って突然立ち止まると、滝口さんに向かって言った。
 
「君は誰の所の患者?」
 
「いえ。私は見舞いです」
と滝口さんが答える。
 
「君、健康診断受けてる?」
「あっと、しばらくサボってますが・・・」
 
北川さんなども忙しいのを理由に実は3年くらいサボっていたのを新課長の森元さんに強く言われて健診に行き、癌が見つかったのである。制作部の多忙な人には、健康診断をサボっている人が随分いる。
 
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「君は胃癌だ」
とその医師(?)は言った。
 
「なんでそんなのが分かるんですか?」
「癌の患者は特有の臭いがするんだよ。この臭いは胃癌の臭いだ」
「臭いで分かるんですか〜〜〜!?」
 
「肝臓癌、胃癌は特に明確なんだよ。僕は子宮癌・大腸癌・乳癌の患者の臭いも分かる。君、今すぐ診察を受けなさい」
 
「でも、私、仕事が忙しいので」
「1年後に死んでもいいの?」
「1年後〜〜〜!?」
「これ放置していたら1年持つかどうかだと思う。すぐ来て。CTを取ろう」
 
医師は滝口さんの手を引っ張って連れて行こうとする。
 
「ちょっと待って〜〜!」
 
医師が私に尋ねる。
 
「君たちはこの人の娘さん?」
「知人ですが」
 
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「取り敢えず立ち会って」
「はぁ」
 

結局医師は強引に滝口さんをCT室に連行!していった。それで私たちも立ち会いのもとで、CTスキャンを取った所、本当に胃の粘膜に進行癌が見つかったのである。
 
すぐにご主人に連絡を取ると、ご主人は会社を早引きして駆けつけてきた。そして即刻入院、来週手術!という日程が決まってしまった。
 
「でも仕事が・・・」
 
と情けない声で訴えるが、村上専務に電話した所、村上専務も驚いて病院に駆けつけてくる。それでとにかく治療のめどが立つまで休暇を与えるということを決めたのであった。
 
 
 
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■夏の日の想い出・若葉の頃(8)

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