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■夏の日の想い出・若葉の頃(3)

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そういう訳で4月27日に発売された『ちゃんぽん』だが、例によってPVの映像だけ流しながら、生演奏をバックに生歌唱する方式で記者会見は行われたし、全国のCDショップでもPVを流してもらった。
 
先頭曲の『雪原を行く』では私とマリが北海道のスキー場でスキーをしている映像を入れている。KARIONのツアーで札幌に行った時に近郊のスキー場で撮影したものである。2カットだけスノーモービルの映像を入れている。コーダの所に入れた映像(5秒)はこのスキー場で私とマリがタンデムで乗っているものだが、間奏の所に入れた映像(1秒)は私が奥八川温泉から脱出する時の映像を使用している。どちらも2人乗りなので、よく注意しないと分からないのだが。後でネットを見ると「もう開き直ってるな」と書かれていた。
 
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『ちゃらんぽらんな恋』では各地で撮影したちゃんぽんの映像を数秒単位で出している。ちゃっかり「沖縄のちゃんぽん」と「高岡のちゃんぽん」(*1)の映像も入っているが、これらを知らない人は「何だろう?」と首をひねったようである。マリが美味しそうにちゃんぽんを食べている映像が全体の3分の1ほど入っているが、これは長崎中華街の新和楼、佐世保の香蘭、玄海町のふくみ、福岡天神の新生飯店、と九州地区でマリが食べ歩いた上で、横浜中華街の長崎屋、宇都宮のながさき、にも行ってきて映像を補填している。
 
「要するにマリちゃんの食べ歩き日記か?」
という声が出ていた。
 
先頭と最後には美しく、ちゃんぽんを吹く女性(明奈の友人)が浴衣姿で映っている(顔は下半分しか出していない)。
 
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(*1)沖縄のちゃんぽんは野菜炒め丼という感じ。高岡のちゃんぽんは、うどんとそばをひとつの丼に半々に盛ったものである。
 

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『ビリニュスの夜』は実際に昨年のワールドツアーでビリニュスに行った時に撮影した映像を使用しており、ローズ+リリーのビリニュス公演での映像も少し入っている。
 
『Tu es bell - 君は美しい』には昨年のツアーの時にパリで撮影した映像を使い、若い男女がシャンゼリゼ通りやセーヌ川の船の上でデートしている場面も入っている。パリ在住の日本人の役者さんに出演してもらい、FMIのフランス支社に依頼して撮影してもらったものである。この女優さんがマジで美人で、「この人の名前教えて下さい」という問い合わせがかなり来たようである。
 
このPVの最後にはマリがわざわざピンクの鐘を手に持って「テュ・エ・ベル」と言っている映像が入っている。
 
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おかげで「これ bell は belle の間違いじゃないんですか?」という質問は全く来なかった!
 
最後に『風神雷神』は実際に現代の日本画家が描いた風神雷神の絵を許可を得て撮影させてもらったものから始まり、その後全編CGで作られている。例のブタ君のストリップを制作した会社に依頼して作ってもらったものだが、これは実は記者会見の前日にやっとできあがったものをそのまま初公開した。風神・雷神が天空を駆け、太陽と競争したり、女の火神に見とれて落っこちそうになったり、といった様子が描かれている。途中、虹の上にマリとケイが座って歌っている所も出てくる。最後は風神と雷神が協力してハートの軌跡を描く図で可愛くまとめられている。
 
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「え〜〜!? 北川さん子宮癌が見つかったんですか?」
 
私はその日氷川さんからその話を聞いて驚いた。
 
「ごくごく初期段階だったらしいです。普通なら見過ごしそう所をたまたま、その日、医大の先生が巡回してきていて、何気なく人間ドックの検査結果表を見ていて『おい、これ』と言って取り上げたらしいんですよ」
 
「わあ」
「数値自体はぎりぎり正常値の範囲だったらしいです。でも医大の先生は問診票の内容とかとも総合して見て、癌の可能性があるとおっしゃって。それで呼び出して精密検査したら、間違い無く初期の癌だということで」
 
「それ手術とかするんですか?」
 
「光線力学療法というのをするらしいです。光に反応する物質を注射で体内に入れてターゲットの所に付着させ、そこにレーザー光線を照射して焼き切るんだそうです。身体を切ったりしなくていいし確実に病変部だけを潰せるから負担が小さいらしいんですよね」
 
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「医学も進歩してますね」
 
と言いながら、それって青葉がやっている霊的な治療法を科学の力で実行するようなものかもと私は思った。
 
「ただ、これをやった後は、光過敏症になるので1ヶ月くらい真っ暗な部屋で過ごして、その後少しずつ部屋を明るくしていくということで半年くらい入院する必要があるんですよ」
 
「暗闇の中でずっと過ごさないといけないって、そういう昔話があるよね」
とマリが言う。
 
「『森の牝鹿』とか『太陽の娘』とかだね。日本の『鉢担ぎ姫』も類話という気がするよ」
と私は答える。
 
「じゃ暗闇の中で過ごした昔話の娘みたいに奏絵ちゃんもいい彼氏が見つかるといいね」
「確かにこういうお仕事していると恋愛とかしてる時間も無いしね」
 
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「でも手術しなくて済むのなら、そのくらいは良いでしょう。そもそも北川さん働き過ぎだもん。ここらで少し休んだ方がいいですよ」
と私は氷川さんに言った。
 
「私もそう思います。ただ残された私たちが大変で」
 
「あぁ・・・・」
 
「取り敢えず北川が担当していた140人ほどのアーティストを、20-30人ずつ、私と富永(AYA担当)、福本(XANFUSなど担当)、竹岡(槇原愛など担当)、八雲(丸山アイや夏樹了子など担当)の5人の女性担当でいったん分担し、その後少しずつ適当な人に引き継ぐことにしました」
 
「大変ですね。140人もいたんですか!」
「よくこれだけの人数をひとりでカバーしていたものですけどね」
 
「八雲さんって女性だったっけ?」
とマリが尋ねるが
 
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「戸籍上は男性ですけどね」
と氷川さん。
「まあ中身はほとんど女性ですよね」
と私も言う。
 
「ね、ね、それ詳しく教えて」
とマリは言うが
 
「個人情報だから教えられません」
と私は通告した。
 

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「しかし今回ローズ+リリーは、やりましたね」
と氷川さんはニコニコである。
 
「僅差でしたけどね」
と私は答える。
 
27日に発売されたCDのセールス速報値が発表されたのだが、1位がローズ+リリー『ちゃんぽん』で124万枚、2位がアクアの『眠る少年』で123万枚であった。1万枚はまさに僅差で統計的には有意差が無い。事実上同点のようなもので、本当はどちらがたくさん売れたのかは誰にも分からないが、アクアはこれでデビュー以来の連続初登場1位の記録が4枚で途切れてしまった。TKRの三田原課長が悔しがっていたらしい。
 
巷には
「やはり『眠る少年』だから負けたんだよ。『眠る少女』だったら勝てたのに」
などという声も出ていた。
 
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実を言うと歌詞を書いたマリは『眠る少女』というタイトルで最初書いていて、青葉もそれに曲を付けたのだが、アクアが「嫌です」と拒否したのでマリがぶつぶつ言いながら「少女」を「少年」に書き直した経緯があった。ネットのそういう声を見て
 
「だから私が最初書いた通りにしとけばよかったのに」
などとマリは言っていた。
 
なお3位はラビット4の86万枚でラビット4の人気が急上昇しているのも分かる。先週は3万枚のローズクォーツがトップだったのに今週は86万枚売っても3位ということで、「順位」というのは難しい。
 
なお前回ローズ+リリーやラビット4に負けたキャッツファイブは連休明けの5月11日に3枚目のCDを出す予定である。今の所強力なライバルは無いので恐らく1位を取れるであろう。本当は向こうもゴールデンウィーク前に出したかったようだが売上枚数よりランキング1位を取る方向に行ったようだ。
 
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「私も三田原さんには、こちらは全然気にしてませんからと言ったんですよ」
とコスモス社長は言っていた。
 
「連続ミリオンの方が大きいもん。私だって初登場1位なら5回くらい取りましたけど、私のCDで5万枚以上売れた作品なんて1つもないから」
などとも言っている。
 
「まあ1位を取りたければ競争相手の少ない週に発売すればいいんだけどね」
と私も言う。
 
「その点、ローズクォーツとかは下手でしたね」
「うん。私が在籍していた当時も大物が発売される日にばかり出していたんだよ」
 
「やはり10代がターゲットのアイドルは初動が凄まじいんですよ。今自分が人を売り出す立場になって、あらためて認識してますね」
とコスモスは感慨深げに言った。
 
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4月29日からローズ+リリーの今年のツアーが始まった。今回は11ヶ所である。だいたいアリーナクラスが多い。
 
4.29(祝) 那覇マリンセンター  
4.30(土) 福岡マリンアリーナ  
5.01(日) 広島レッドアリーナ  
5.03(祝) 札幌スポーツパーク  
5.04(祝) 宮城ハイパーアリーナ  
5.05(祝) 金沢スポーツセンター  
5.08(日) 幕張サブアリーナ  
5.14(土) 神戸ポートラントホール 
5.15(日) 愛知スポーツセンター  
5.21(土) 大阪ユーホール  
5.22(日) 大宮アリーナ  
 
一方アクアもゴールデンウィークにはツアーをやっている。そちらはドームである。
 
4.29 札幌ドーム 4.30 京阪ドーム 5.01 博多ドーム 5.03-05 関東ドーム3日間
 
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公演数こそ少ないものの動員数ではローズ+リリーの倍近い。
 
今年のゴールデンウィークは、みんなアクアの日程を見てそれと地区がぶつからないように会場を選定したようである。アクアにぶつけてしまうと来てくれる人が宿泊場所を確保できないのである。
 
なおアクアの福岡公演が5月1日になったのは3-4日は博多どんたくがあり、例年凄まじい人出があるので、さすがにそれは避けたからである。しかし1日のアクアのライブを見てそのまま3-4日の博多どんたくを見るという人たちもかなりあったようである。
 

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大宮アリーナは実は2月15日から5月15日まで改装のため休業に入っていた。その休業明けを使わせてもらうことになっていた。首都圏のもうひとつの大会場である横浜エリーナは1月12日から6月30日まで半年間休業で、今関東圏は大会場の休業が相次いでおりライブ会場不足が起きている。
 
この会場不足は2020年の東京五輪頃まで続きそうで、それで私や千里が中心になって建設を進めることになった深川アリーナも期待されているのである。完成は年末頃の予定だが、既に完成後にそこでライブをさせて欲しいという照会がかなり来ている。
 
なお、こけら落としはローズ+リリーで使わせてもらう予定である。
 

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