広告:まりあ†ほりっく 第1巻 [DVD]
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■夏の日の想い出・若葉の頃(7)

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「すみません。すぐあがります。向こう側に行きます」
 
「まあまあ。夜中だし誰も来ないから大丈夫だよ。それにこのカムイワッカのお湯ってアクアにぴったしかも。ワッカってね、アイヌの言葉で水を意味するんだよ」
 
「へー!」
「アクア、あるいはアカ(閼伽)とひょっとしたら同語源かもね」
「確かに似てますね」
 
「稚内(わっかない)というのも、水の流れる川という意味だよ」
「なるほどー」
 
「でもドーム公演初日どうだった?」
「あ、何とか頑張れたかな」
「うん。最後まで声量が落ちなかったし、音程も不安定にはならなかったね。と音痴の私が言っても仕方ないけど」
 
などという感じで、結局龍虎はコスモス社長とその場で15分くらい会話した上で
 
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「やはり向こうに行きます」
と言ってあがった。
 
「別に女湯でもいいのに」
とコスモス社長が言うのが、後ろ髪を引かれる思い(?)だった。
 

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身体を拭いて、ブラとパンティを身につけ、シャツを着て、ポロシャツとスカートを穿き、カムイワッカのお湯を出て、反対側のニタイノンノの湯に入る。
 
ノンノって雑誌の名前みたい、などと思う。
 
ここでまたポロシャツとスカートを脱ぎ、シャツを脱いでブラとパンティも脱ぐ。身体はさっき洗ってしまったのでシャンプーセットは置いたままタオルだけ持って中に入る。洗い場で一応軽く身体を洗うというよりお湯で濡らしてから、湯船に入る。
 
ふーっと息をつく。
 
ボク・・・そういえば男湯に入ったの、いつ以来だっけ?
 
と考えてみたものの、分からない気がした。
 
小学校の修学旅行ではうまく彩佳たちに乗せられて女湯に入っちゃったからなあ。4年生の時に沖縄旅行に行った時は、部屋付きのお風呂だったし。2年生の時、田代のお父さん・お母さんたちと一緒に「家族になった記念に」と言って行った草津温泉では「家族が別れて入るのは寂しいよ」とかいって家族風呂を借りて入った。
 
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その前、小学1年生の時に支香おばちゃんに連れられて行った常磐ハワイでは「まだ今年くらいまではいいよ」と言われて、支香おばちゃんと一緒に女湯に入っている。
 
それ以前・・・・志水のおばちゃんたちと暮らしていた時代にも温泉に行った記憶はあるものの、男湯に入ったか女湯に入ったかよく覚えていない。微かに記憶があるのは、
 
「あの男の子、格好良いね」
「ちょっと香取慎吾に似てない?」
「私が独身なら結婚したいくらい」
 
などという会話が近くで交わされたのを覚えているくらいである。その時、香取慎吾って誰だろうと思った記憶がある。
 
ここで謎なのが、男性を話題にして「格好良い」とか「結婚したい」と言っていたのは女性ではないかと思えること。だったら、自分は女湯にいたのかも知れないが、しかし女湯に香取慎吾似の格好いい男性がいるはずがないのであって、この会話の記憶は実は龍虎にとって、物凄い謎なのである。
 
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でもひょっとしたら、これってボク男湯初体験かも、と思うと何だか凄く不思議な気分になった。
 
ボク・・・こうやって少しずつ男になっていくのかなあ。
 
今ならまだ女の子にもなれる気がするから、ちょっと惜しい気もするけど、やはりボクは男に生まれたんだもん。男にならないといけないんだよね?と考えるが、それも凄く悲しい気がしてきた。
 
男になったら、やはりスカートとか穿いちゃいけないのかなあ。ブラとかも着けちゃいけないのかなあ。でもブラは快適だし、スカートも楽なのに。
 
やはりボク男になるのに抵抗感がある気がする。
 
といって女になりたい訳では無いというのは自分の中で一応決着をつけているつもりである。
 
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取り敢えず、ボク、恋愛対象は女の子だ(と思う)し。
 

その時、近くで小さな水音がして、初めて龍虎は近くに他の客がいたことに気づく。
 
きゃっ。
 
全然気づかなかった!
 
と思ってそちらを見たら、何だか見たような人物である。
 
「あれ、アクアちゃんだ。おはようございまーす」
「おはようございます、丸山アイさん。あ、えっと。。。。」
 
「私は明日札幌公演で今日は前泊なんだけどさ。札幌周辺が全くホテル取れなくて。仕方ないからここまで離れた所に宿を取ったんだよね」
 
「すみません。私のライブに来るお客さんでいっぱいになっちゃったみたいで」
 
「聞いた。でも偉いね、アクア。今日はちゃんと男湯に入っているのね?」
「ボク男ですから。でも・・・なんで丸山アイさんは男湯に入っているんですか?」
 
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「だって私男だもん。男湯に入らなくちゃ」
 
「うっそ〜〜!? アイさん、女の人じゃなかったんですか?」
「男だけど」
 
「だって、こないだは女湯にいたじゃないですか?」
「うん。私、女湯に入るのが趣味なのよね〜」
 
「え〜〜〜!?」
 
実際今日のアイは男声で話しているのである。
 

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「今夜も女湯に入ろうと思ったらさ、先客がいるみたいだから自粛して男湯に入った」
 
「でもでもアイさんって、こないだおっぱいありませんでした?」
と言って龍虎はアイの身体を見ようとするが、この温泉の湯は濁り湯なので、首まで浸かっていると胸は見えない。
 
「女湯に入る時はおっぱい付けて、男湯に入る時はちんちん付けるんだよ」
「じゃ、アイさん、おっぱいもおちんちんも無いんですか?」
 
「プレス機を持っているんだよ。女体の型に入ってプレスすると女の形になって男体の型に入ってプレスすると男の形になるんだ。便利だよ」
 
「そんな無茶な。クッキー生地じゃあるまいし」
 
「ふっふっふ。今夜は馬脚を現さないうちに退散しよう。じゃね」
と言ってアイは湯から上がった。
 
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龍虎はアイの身体を見ようとしたものの、アイは巧みに身体をタオルで隠していて、おっぱいがあるかどうか、おちんちんがあるかどうかはよく分からなかった。
 
ただ、おちんちんがあれば、歩いている時に股間に見えそうなのに、それが見えないので、実はおちんちんは無いのではという気もした。
 

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アイがあがってしまった後は、龍虎はひとりになったので湯船の中でぼーっとしていた。そのうち少し眠くなってきた気がしたのであがることにする。実際には女湯の方でも十分暖まっていたので、わざわざ男湯にまで入る必要は無かったのだが、一応ちゃんと男湯に入りましたよという実績を作っておきたかったのである。
 
脱衣場に出ると、アイが女物の浴衣を着て髪はポニーテイルにし、何かドリンクを飲みながらスマホ片手に涼んでいた。そのアイの様子が物凄く色っぽいと龍虎は思った。ふつうこの姿を見て男と思えという方が無理だ。女の人にしか見えない(*1). やはりこの人、男だっての嘘なのではという気がした。男にこんな色気あるか??
 

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(*1)龍虎は自分もそうみんなから言われていることを認識していない。
 

「けっこう長く入ってたね」
「少しうとうととしたので、あがることにしました」
 
「でもあんた、ちんちん無いじゃん」
「隠しているだけです」
「よくそれで男湯に入るなあ」
とアイは言っている。
 
そして龍虎が服を着ていると
 
「ああ下着は女物なのね」
などと言われる。
「実は旅の荷物をお母さんにまとめてもらったら、お母さんが女物の下着ばかり入れてたんです」
「親切なお母さんだ」
 
そして全部服を着ると
 
「あんたスカート穿いて男湯に来たの?」
とアイがまた呆れたように言う。
 
「まずかったかなあ」
 
実は母が入れてくれた着替えが全てスカートでズボンが入っていなかったのである。ちなみにステージ衣装は今回は前半が男性用ビジネススーツ、後半はサッカー選手のような感じの服であった。
 
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「まあ深夜だからいいけどね」
「ですよね?」
 

「でもこのドリンク美味しい。アクアも飲まない?おごってあげるよ」
と言ってアイは自販機に小銭を入れてドリンクを買い、アクアに渡してくれる。
 
「ありがとうございます」
と言って受け取り、ふたを開けて飲む。何だかお薬みたいな味がする。栄養ドリンクなのかなあと龍虎は思う。
 
「ちょっと薬っぽいけど美味しいですね。何ていうドリンクですか?」
「そこに書いてある通り」
 
龍虎はドリンクのラベルを見るが読めない!?
 
「これ何語ですか〜?」
「タイ語。オイストロミンって書いてある。これね。疲れている時に飲むと疲労回復に効果があるんだよ」
 
「へー。確かになんか活力が湧く気がします」
「成分がいいからね」
 
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龍虎は突然不安になった。
 
「それって、覚醒剤みたいなのは入ってないですよね?」
「まさか。そんなの飲んだら身体がぼろぼろになっちゃうよ。あんたみたいな子にはその手の誘惑も多いかも知れないけど気をつけなさい」
 
「はい」
 
「このドリンクの主成分はエチニルエストラジオールだよ。それとプエラリア・ミリフィカとヨーグルトのミックス」
「何でしたっけ?」
「まあ俗に言う卵胞ホルモン、女性ホルモンの一種ね」
 
「え〜〜〜〜〜〜!?」
 
「まあアクアは普段から女性ホルモン飲んでいるだろうけど、女性ホルモンって身体に入れると元気になると思わない?」
 
「そんなの飲んでません」
「注射してるんだっけ?」
「してません」
「貼り薬か塗り薬?」
「そんなのもしてません」
 
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「じゃ、どうやって女性ホルモン取ってるのさ?」
「そんなの取ってませんよ〜」
 
「じゃ去勢しちゃったんだっけ?」
「しません。ボク、別に女の子になりたくはないです」
 
「僕の前で今更な嘘つかなくてもいいのに。女性ホルモン取ってない中学3年生がその体型で声変わりも来てないってのはあり得ない」
とアイから言われてドキッとする。
 
実はアクアは青葉のセッションで体内をホルモンニュートラルに近い状態にしてもらっているので、実際問題として女性ホルモンを日常摂取しているのとそう変わらない状態にはある。
 

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「でも自販機に女性ホルモンのドリンクとか売ってるんですか?」
 
「それは自販機の取口に最初から私が入れておいたんだよ。実際に自販機のボタン押して出てきたのはこちら」
 
と言ってアイは取口からオロナミンCを取り出してみせる。
 
「うっそ−!?」
「これ、よくある手口だから騙されないように」
 
「アイさんに騙されました!」
「まあちょっとした親切かな」
 
「えーん。また女性ホルモン飲んじゃった」
「ああ、やはり時々飲んでるんだ?」
「こないだも知り合いのお姉さんに、うまく騙されて女性ホルモンの錠剤を飲まされちゃったんですよ」
 
実を言うと、川南にはこれまであの手この手で5回も女性ホルモン剤を飲まされたり注射されたり、塗り薬を塗られたりしている。
 
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「ああ。アクアが男性を廃業することになるのは時間の問題だな」
と言ってアイは笑っていた。
 

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■夏の日の想い出・若葉の頃(7)

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