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■夏の日の想い出・若葉の頃(6)

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またもやアンコールの拍手が来る。
 
私とマリの2人だけで出て行く。
 
「本当にアンコールありがとうございます」
拍手が来るのを心地よく受け止める。
 
「それでは本当に最後の曲です。『あの夏の日』」
 
スタッフがグランドピアノをステージ中央まで押して来てくれる。私はそこに座って『ブラームスのワルツ』から借用した前奏を弾き始める。マリはいつものように私の左側に立つ。
 
そしてふたりで歌い出す。
 
あの伊豆のキャンプ場での出来事はまるで昨日のようだ。私は目に涙を浮かべながら、この曲は弾きつつ歌って行った。
 
やがて終曲。
 
割れるような拍手の中、私とマリはステージ最前面に立ち改めて深いお辞儀をする。そして私の左手とマリの右手を繋いだまま、私の右手とマリの左手を斜め上にあげて、会場の拍手を受け止めた。
 
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再度一緒にお辞儀をしている間に幕が降りた。
 

打ち上げは宿泊しているホテルのプライベートキッチンを使って行ったが、《謎の男の娘》さんは、ひとりで食事したいということだったので、風花が食事を用意してもらっていた重箱に詰め、飲み物と一緒に渡していた。
 
「あのマスクしたままは食べられないよね?」
「飲み物はストローを無理矢理下の方から挿入して飲んでいたね」
「本当は誰なんだろう?」
 
「おそらく何かの分野で名の売れている人なんだろうね」
「バスケ関係かな?」
「あるいはそうかもと思った」
「多分、本来契約とかの関係で、他で報酬をもらったりしてはいけないんじゃないの? 今回もギャラは要らないというのを、VISAの商品券だけ押しつけたから」
 
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「千里さん自身だったりして」
「まさか!」
「千里は今東京の合宿所でオリンピックの合宿中だから、ここに居られる訳が無い」
と私は言うが
 
「いや、醍醐さんにしても、ケイさんにしても、神出鬼没で物理的に移動不可能な場所によく出現しますから」
などと氷川さんは言っていた。
 

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私たちが那覇公演をした4月29日、アクアは札幌で3万人の観衆を前にドーム公演をしていた。公演は途中で退場を願うほど興奮する客が出る中3時間近くアクアが熱唱して無事終了。アクアとマネージャーの鱒渕水帆さん、秋風コスモス社長、レコード会社の三田村彬子課長、鮫川さん、それに今回のツアーで自ら付き人・雑用係を買って出た西湖の6人は他のスタッフとは別れて車(鮫川さんの運転するエスティマ)で北方へ30分ほど走り、奈井江町にある小さな温泉宿に入った。
 
札幌近郊だとアクアのファンと一緒になり、サービス精神旺盛のアクアが振り回されて疲れが取れないという事態になるのを避けるため、大きく離れたのである。ここまで来ることは少数の人しか知らない。
 
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6人でのんびりと打ち上げをやる。女性と未成年だけなのでアルコールも無しで、美味しい料理(アクアの希望でジンギスカンにした)を食べながら烏龍茶などを飲みつつ1時間半ほどおしゃべりする。
 
もっともアクアの素性を知らないっぽい旅館の仲居さんは
「女だけの旅もいいですよね〜」
などと言っていた。
 
実は戸籍上の性別でいうと男3人・女3人なのだが!
 
(三田原さんは奥さんとの結婚維持のため戸籍の性別を変更していない)
 

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「でも葉月(西湖)ちゃんに来てもらって良かったですよ」
と鱒渕さんが言う。
 
「はい。ボクも同世代の西湖ちゃんがそばにいると結構心強いです」
とアクア本人も言っている。
 
他は三田原さんは40代、鮫川さんは28歳、鱒渕さんが21歳、コスモスが24歳である。西湖はアクアの1つ下の中学2年生である。
 
「アクアさんは凄いです。舞台袖でステージ見てて、もうボーっとしてました」
と西湖。
 
「確かに同世代・同性の人が1人いると、随分違いますよね」
とレコード会社の鮫川さんが言う。
 
「やはり男と女では細かい所で分からない所があるし」
と鮫川さんは言うが
 
「むしろアクアは男の子の感性が分かってない気がする」
とコスモスは鋭い指摘をする。
 
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「うんうん。それは私も思った」
と三田原課長も苦しそうに頷きながら言った。
 
「そもそもアクアって、立っておしっこしてないでしょ?」
などとコスモスは言う。
 
「え〜?何で知ってるんですか?」
「ほほぉ」
 
「だって、そもそも立っておしっこができるような服を着ているの見たことない」
「ちょっとぉ、社長、酔ってません?」
「ああ、私はぶどうジュースで酔えるんだよ」
 
コスモスはさっきから富良野産のぶどうジュースを飲んでいる。
 
「確かにスカートでは立っておしっこできないよね。汁が垂れちゃうから」
と三田原さん。
 
このあたりは「女装経験者」でないと分からない微妙な部分である。
 
「ボク、そんなにスカート穿いてませんよー」
と言いつつ、今アクアはスカート姿である。全く説得力が無い。
 
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「いやアクアちゃんの普段着ってむしろスカートが多い気がします」
と鱒淵さん。
 
「でしょ? 雑誌のインタビューくらいだと、そういう格好で受けてたりするもんね」
 
「えーっと、実は普段着に男物がなかなか見つからなくて」
「アクアが性転換しますと発表してもたぶん誰も驚かない」
「別にボク女の子にはなりたくないですー」
 

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ライブが終わったのが18時半で、温泉にたどり着いたのが19時半。それから1時間ほど休憩したあと打ち上げをして、部屋に戻ったのが22時である。
 
龍虎(アクア)は旅疲れとライブの疲れがあって、部屋に入るとそのまま眠ってしまった。23時頃、西湖が「お風呂に行かれました?良かったら一緒に行きません?」と言いに来たのだが、龍虎は夢うつつで
 
「ごめーん、眠いから寝てる。先に入ってて」
と言って、ひたすら寝ていた。
 
寝ている間に夢を見ている。
 
どこかでベッドに寝ていたら白衣を着た女の人が龍虎のスカートをめくり、パンティを下げて、あの付近をいじり始める。何されるんだろうとドキドキしている。
 
「じゃ今から手術します」
と言われる。え?何の手術なの?と思っている内に無影灯が点くのを見る。ジーという音がしている。肉が焼けるような臭いがする。あ、どこか切られてるのかなあと思う。
 
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龍虎は小学1年生の時に3時間に及ぶ大手術を受けたことがある。あの時、川南さんに、おちんちん切られちゃうぞと随分脅されたなあ、などと当時のことを懐かしく思う。
 
でもおちんちん切られちゃってたら切られちゃってた時だよなあ、というのも最近龍虎は思うのである。
 
ボク・・・別に女の子でもやっていける気がする。積極的に女の子になりたいわけではないけど。
 
などと手術されながら思っていたら
 
「手術終わったよ」
という声が聞こえる。
 
「ありがとうございます」
と答える。
 
「これで君はもう立派な女性だよ」
とお医者さんが言った。
 
え?え?え?
 
「立って鏡に映してごらん」
と言われるので、龍虎はベッドから起き上がるとそばにある白雪姫にでも出てきそうな姿見に自分を映してみた。
 
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きゃー。
 
でもきれい!
 
龍虎は姿見に映る自分の姿に見とれていた。
 
おっぱいが凄く大きくなっている。ああ、このくらいおっぱいあるといいよね。そして・・・・お股の所には見慣れたものが無くなっていて、1本縦の筋が映っていた。
 
「良かったね。これで安心してお嫁さんに行けるね」
とそばで声を掛けてくれたのは、千里さんである。
 
「私は小学4年の時に手術して女の子になったんだよ。龍ちゃんも、もっと早く手術しておけばよかったのに」
 
「そうかなあ・・・」
「アクアが本当の女の子になりましたと発表したら、人気沸騰しちゃうかもね」
「そうですか?」
 
などと会話しつつ、女の子のおしっこの仕方を覚えなきゃなあ、と思った所で目が覚めた。
 
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時計を見ると2時である。
 
「あ、お風呂入っておかなくちゃ」
と思う。
 
起き上がって、アクアは着ていたネグリジェ(ファンからの贈り物で凄く可愛い)を脱ぐと、ポロシャツを着て、スカートを穿いた。タオルとシャンプーセットを持ってお風呂に行く。
 
唐突にさっき見た夢が思い出されてドキドキする。
 
ボク・・・ほんとに性転換手術しちゃうことになったらどうしよう?
 
などと考えてしまう。自分では女の子になるつもりは無いと思ってはいるけど、取り敢えず去勢しとこうか、とか、性転換手術受けたいんでしょ?とか言う人が随分いるので、何だかふらふらと手術を受けてしまいそうで、自分が怖い。
 
夢の最後に姿見で見た自分の「女の子ヌード」を思い出してしまう。
 
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おちんちん取っちゃう勇気は無いけど、おっぱいくらいは大きくしてもいいかなあ・・・
 
などと思っている内に、大浴場に到着する。左手にニタイノンノの湯、右手にカムイワッカの湯とある。
 
どっちだっけ!?
 
記憶をたどると「女湯はニタイノンノの湯です」と案内された気がする。旅館の人は一行が全員女性と思い込んでいたようなので、女湯だけを案内したのである。そういえば、休憩時間の内に鱒淵さんがお風呂に入ってきていて、
 
「何とかノンノの湯って、森の中の温泉って感じの演出がしてあって、いい雰囲気でしたよ」
と言っていた気がする。
 
だったら、ボクもニタイノンノの湯に入ればいいよね、と一瞬思ってから、
 
ダメ〜〜〜!
 
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ボクは男の子だから、男湯に入らなくちゃと思い直す。
 
ちょっと女湯に入りたい気もするけどね。深夜だし誰も居ないだろうし、いいんじゃないかなあ、とは思うものの、こないだ女湯で丸山アイさんに遭遇して注意されたしとも思う。ツアー中に痴漢で逮捕されたりしたら、大変だ。ツアーは中止になって、何十億円という損害賠償請求されたりして。
 
そんなの払いきれないし!
 

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ということで、自粛して男湯のはずのカムイワッカの湯の方に行く。
 
脱衣籠を取ってポロシャツとスカートを脱ぎ、シャツを脱ぎ、愛用のプリりのブラを外す。ライブ中に着けていたものは汗だらけになったので、これは終了後に着替えて着けたものである。そしてそのブラとセットのパンティも脱ぐ。
 
男湯でこんな服を脱いでいるのを見られたら騒ぎになるということは龍虎は何も考えていない!
 
タオルとシャンプーセットを持ち、脱衣場から浴室に移動する。
 
誰も・・・居ないかな?
 
それで洗い場で身体を洗い、髪も洗う。コンディショナーを掛けている間にあの付近とかも洗う。足の指の間とかも洗う。それからコンディショナーを洗い流し、身体全体を洗い流した上で、湯船に浸かった。
 
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ああ、でも疲れたなあと思う。
 
途中に休憩コーナーをはさんで3時間の歌唱はほんっとにエネルギーを使う。体力をつけるために、龍虎は3月頃から毎日早朝6km走っていたのである。
 
さて、明日、というか今日は午前中に大阪に飛んで京阪ドームだ・・・と思っていたとき
 
「あれ?」
という女性の声を聞く。
 
へ?なんで男湯に女の人がいるの?と思ってそちらを見ると、コスモス社長である。
 
「社長!?なんでここにいるんですか?」
「それはこちらが聞きたい。アクア、女湯に入るんだっけ?」
「え?ここ男湯じゃないんですか?」
 
「12時までは男湯だったけど、日付が変わってから女湯になったんだよ。ここの温泉は両方の湯を楽しめるように夜中の12時を境に男湯と女湯が毎日変わるようになっている。だから泊まった日に片方に入って、翌日起きてからもう片方に入るということで、性転換しなくても両方に入れるようになっているんだよね」
 
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「知らなかった!」
「旅館の人説明してたけど、聞いてなかったのね」
 
「すみません!間違いです」
「まあ女湯でアクア見ても誰も驚かないかもね。女の子にしか見えないから。むしろ男湯に入ると騒ぎになる気がする」
 
などとコスモス社長は笑っている。その社長のバストが凄く大きいのをまともに見てしまって、いいなあ、あのくらいバストがあったらなどと思ったりしていた。
 
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■夏の日の想い出・若葉の頃(6)

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