■夏の日の想い出・ある所に(10)

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結局登山口から5時間ほど掛けて白山室堂に到達する。白山の3つの峰の中間点である。適宜水分・カロリー補給しながら登ったので、そんなに辛くはなかった。同行者の人たちも〒〒テレビの取材班もみんな元気だった。
 
修学旅行でも感じたのだが、女の子の身体って凄く“燃費”がいい気がした。男の子の時より身体が楽に動く。だから修学旅行の時はいちばん疲れたのが男の子の身体で歩いた初日だった。
 
山小屋で一休みしてから頂上付近の景色を見て回ったが、きれいな所だなと思った。山小屋は男女ミックスだが、何となく女性の多いエリアと男性の多いエリアに分かれていた。煌が男性の多いエリアに行って休もうとしたら、50歳くらいの男性から
「君、女の子はあのあたり(女性の多いエリア)に行って休んだほうがいい」
と言われた。
「ぼく男の子ですー」
「嘘?男の子なの?こんなに可愛いのに」
などと言われる。
「もったいない。女の子になりなよ」
「最近は女になる手術、受ける人多いよ」
 
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「こんな可愛い子がそばに居たら安眠できない」
などという声もあったが、結局立花笛吹先生から
「礼音ちゃん、こちらにおいで」
と呼ばれて、立花先生と水野さんの間で寝た。水野さんの隣が沢口さんである。
 

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ブラジャーは登山中だけスポーツブラをしておいて、室堂に着いたら普通のブラに交換した。ついでにアンダーシャツも交換した。そして翌日下山する時にまた新しいスポーツブラを着けた。確かにスポーツブラってしっかり押さえてくれるなと思った。オーリンもどうせならおっぱい自体無くしてくれたらいいのに!

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下山してから立花先生は言った。
「礼音ちゃん、登山中に着けてたスポーツブラはいいけど、山小屋で休憩中に着けてた普通のブラは小さすぎると思う」
「やはりそうですか?先週も友人に言われたんですよ」
 
先生はメジャーで測ってくれて
「この胸にはB70かC65が必要」
と言った。
「Cですか!?」
「直接買いに行くの恥ずかしかったらセシールとかの通販で買えばいいよ」
「あ、その手もありますね」
 
それで礼音はセシールでB70のブラを5枚頼んだ。
 

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新男子寮は7月28日(金)に竣工したので、礼音は30日には引っ越した。
 
引越は「引っ越します!」とフロント係の篠田さんに言うだけである。
 
すると3時間くらいキュアルームに居る間に(仕事に行ってても良い)業者さん?の手で旧寮の部屋の荷物は新寮に移動されているので、篠田さんに車で新寮に連れて行ってもらえば引っ越し完了である。新しい部屋には前の部屋とほぼ同じ配置で荷物が置かれていた。元の部屋にあったゴミまで同じ位置に移動されていたので呆れた!
 
旧寮に無かったもので追加されていたのが、姿見とドレッサーである。姿見はいいなと思った。ドレッサーはなんで?と思って篠田さんに訊いたら、
「中高生のうちはスッピンでもいいけど、おとなになるとお化粧して仕事場に行かないといけないからね。練習してるといいよ」
と言われた。中3以上の子の部屋には入れたらしい。タレントって、男の子でもお化粧が必要なんだっけ??
 
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旧寮では篠田姉妹や、寮母の娘さんの瀬那ちゃんが朝晩の御飯を持ってきてくれていたが、新しい寮は自動配送である。厨房から配送レーンに載せられて各部屋の前まで運ばれてきてオクラホマミキサーの音楽が鳴るので取ってくる。配送されてから10分経っても受け取らなかった場合は誰かが見に来る。
 
また朝は原則7時くらいに配送されるが(早出の時は言っておけば5時半くらいからなら対応可能)、夕食は帰宅してすぐに配送される。これは女子寮と同じ方式である。定時ではなく帰宅時に変更されたので、これまでできなかった鮮度を要求する物(お寿司など)もメニューに入ることになる。
 
手紙や宅配便などもこのレーンが使用される。
 

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煌は引っ越した直後くらいから、少しお腹が痛かった。何か変なもの食べたかなあ?などと思い、早めに寝たのだが、翌日になっても痛みが取れない。それで、胃薬でももらおうと思って、キュアルームに行ってみた。
 
誰も居なかったがフロントの所に座っていた笠間さんが入ってきた。
「まだ看護師さんはこちらに来てないよ。何か調子悪いの?」
「はい。お腹が痛くて」
「どのあたり?」
「この付近です。胃薬か何かもらえないかなと思って来たんですが」
「そこの痛みなら胃腸じゃないよ。生理だよ」
「生理〜!?」
 
ぼく生理あるの??
 
「ナプキンのストックある?」
「いえ」
「まだこちら充分な在庫用意してないのよね。取り敢えずこれ使って」
と言われて、“しあわせ素肌 通気超スリム多い昼用22.5cm 羽つき”というパッケージを渡された。それで彼は部屋に戻ると、ナプキンを1枚持ってトイレに入り、中でショーツに取り付けた。
 
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果たして翌日の朝、ナプキンは真っ赤に染まっていた。
(初潮おめでとう!)
 
彼はナプキンを交換した上で、お店の開く時間になってから百円ショップに行き、サニタリーボックスと、それにセットする黒いビニール袋を買ってきた。そして部屋のトイレに設置した。それとダイアリーの8月1日の所に赤いマーカーで印を付けておいた。
 

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その日オーリンは三国舜(横川光照)の部屋に出てくると言った。
「あれ〜?君誰?」
「それはこちらのセリフ」
「飛鳥ちゃんの部屋に出るつもりだったのに」
「飛鳥ちゃんは1階上だよ」
「ありがとう」
と言って姿を消した。
 
さすがのオーリンも三国舜を女の子に変えようとは思わないようだ。
 

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7月のビデオガールコンテストで5位に入賞した森中樹音君!は8月1日に東京に出て来て新男子寮に入居した。女子も含めて今回の新人で第1号である。
 
Tシャツに膝丈のスカートという格好で旅行鞄とヴァイオリンケースだけで出て来た森中君は、早幡そらとか川泉パフェに歓迎されて
「わぁ、ここ居心地良さそう!」
と思った。
 
寮長の花園裕紀は彼を見て、ただちに“精液保存”のため、病院に連れて行ってもらった。この子、精子が無くなるの時間の問題みたいだもん!きっと年明けくらいまでには無くなってる。
 

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ところで、5月5日にコロナ終息宣言が出て、寮生の親たちの面会が自由化されて、女子寮では5〜6月に多数の親たちが面会に来たが、男子寮はちょうど建て替えにぶつかるからということで、8月に面会に来る親が多かった。
 
煌の両親も8月7日(月)に会いに来た。両親は車で富山空港に出て、手配してもらったホンダジェットで熊谷に飛び、SCCの車で新男子寮にやってきた。
 
両親たちは新寮のエントランスを入り、フロントで部屋番号を聞いてエレベータで昇ってきたが、途中でセーラー服や高校女子制服を著た何人もの寮生たちを見た。
 
「大きなマンションに住んでるんだね」
「先月までは6階建ての所に住んでたんだけど、満杯になったから新しい寮を建てて、今引越期間中」
「タレントさん多いんだね」
「今100人くらいかな」
「凄いね」
「社員は関連会社まで入れると1000人越えるよ」
「大企業じゃん」
「年商は千億越えてるはず」
「凄い凄い」
「もっともその大半をアクアと常滑真音ちゃんが稼ぎ出してるんだけどね」
「ああ。アクアちゃんって可愛い女の子だよね」
 
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うーん。まあいいか。
 

「そういえば観音さんは何号室?」
「観音倭文ちゃんはここじゃないよ。彼女は足立区の女子寮に住んでる」
 
観音倭文(麻生ルミナ)は同じ市の出身である。ピアノ教室で一緒だったので小学生の頃から顔なじみだった。
 
「この寮とは別なの?」
「ここは男子寮だからね」
「でもロビーとか廊下に何人も女の子居たよ」
 
うーん。どう説明したらいいのか。
 
「まあいいや、あとでそちらに寄って行こ」
「面会許可は取ってる?」
「そんなの要るの?」
「特に家族以外との面会は厳しいよ」
「そうなんだ?」
「仕事の都合も付けないといけないし、コロナ感染対策もあるからね」
「お土産預かってきたのに」
「ぼくが後で寮長さんか誰かに渡しとくよ」
 
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「ところで、あんた女の子になる手術はもう終わったんだっけ?」
「そんな手術受けないよー」
「でも16歳になるまでには女の子にならないといけないんでしょ」
「そんなことないよー。男の子のままでいいよー」
「そうだったんだっけ?」
「なんのために女の子にならないといけないのさ」
「たってここ女の子専門の事務所なのでは」
「主として女の子を売り出すけど、例外的に男の子も扱うから」
「そうだったのか」
「でも毎日女性ホルモン飲んでるんだよね」
「そんなもの飲んでない!」
 
「でもどっちみち高校受験するまでには女の子になっておかないと高校に入れてもらえないでしょ」
「共学の高校に進学するから男の子のままで入れてくれるよー」
「そうなの?でもバストは最低Bカップ程度まで育てておかないといけないよね」
「そんな必要は無い」
 
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「でも取り敢えず夏休みの間に睾丸は除去してウァギナホールはあけておきなさいよ」
「いやだ」
 

8月19日(土)、煌はアクアの伴奏者の人たちと一緒に熊谷飛行場に行き、サイテーションジェットで福井県小浜市のミューズ飛行場に飛んだ。明日のアクアのライブで前座を務めるのである。
 
19日はラピスラズリが歌っている所を舞台袖から見学したが、凄い巨大なアリーナなので「こんな広い所で歌うのか」と武者震いした。
 

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