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■クロスロード3(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2014-05-09
 
2011年7月21日。
 
震災で津波にさらわれ行方不明になっていた、青葉の実母(礼子)の遺体が見つかったという報を学校で大船渡の佐竹慶子から受けた時、青葉は、まず自分と一緒に住んでいて「お母ちゃん」と呼んでいる後見人の朋子に連絡し、それから「お姉ちゃん」と呼んでいる千葉の桃香と千里に連絡し、それから恋人の彪志や何人かの親友、震災で一緒に亡くなった実姉・未雨の同級生である鵜浦さん、また高知に住む姉弟子(実質的に青葉の指導者)の菊枝に連絡した。その後、慶子やメールをした友人などとやりとりをしていたら、突然和実から電話が着信した。
 
驚いて取ると
「何かあった?」
と訊かれた。
 
「あ、えっと・・・実はお母さんの遺体が見つかって」と青葉が言うと「ああ、お母さんの遺体だけまだ見つかってないと言ってたね」と和実は言う。
 
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「うん。それでずっと仮葬儀のままだった家族の本葬儀をまとめてしようかと」
「そうか。じゃ、こないだ集まった人たちに連絡していい?」
 
「うん。。。でも、何で『何かあった』かって思ったの?」
「直信が入ったような感覚があったよ」
「凄い霊感!」
「青葉の影響だよ」
 
和実は元々小さい頃から何度か幽霊を見たりしたこともあり、弱い霊感体質であったのだが、仙台で震災に遭遇し、走って津波から逃げて気がついたら自分の後ろには誰もいなかったなどという、ギリギリで助かる体験をした後、突然霊感が高まった。そして6月に青葉と遭遇したことで刺激されたようで、かなり高度の霊感体質というか、巫女体質になっていた。(この状態は震災一周忌の頃まで続いた)
 
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そういう訳で青葉の両親・祖父母・姉の葬儀のことは、和実から、冬子とあきらにも連絡され「クロスロード」のメンバーが三度(みたび)、集結することになったのであった。
 
和実から連絡を受けて、あきらはすぐに小夜子と共に葬儀にいくことを決めて青葉におよその到着時刻を連絡した。冬子は翌日発売する予定の新譜のキャンペーンで全国を駆け巡る予定ということで、22日は北海道から青森、23日は仙台・山形などを回る予定なので、ひょっとしたらその途中で顔を出せるかも知れないが分からないので、青葉には多忙で行けないと伝えておいてくれと言った。一応政子が2人を代表して葬儀に出席するということであった。
 
来てくれる人たちの送迎に関してまとめている内に青葉は悩む。
 
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「仙台空港が臨時運用中だから、遠くから来る人は花巻空港使う人が多いみたい」
と半ばひとりごとのように言ったら。
 
「花巻の方がそもそも大船渡に近いんじゃないの?」
と朋子が言う。
 
「そうなんだけど、仙台の方が便がたくさんあるという思い込みがあったんだよね。ところが仙台空港は7月25日定期運行再開なんだよ」
 
「だったら、仙台と花巻とで送迎する?」
「いや。待って。それなら新幹線で来てくれる人たちもいっそ花巻まで来てもらった方がいいかも」
 
「それは言えてるね」
「ちょっと時刻を再度調べてみよう」
と青葉は言ったが
 
「それ大変だから桃香にやらせよう」
と言って、朋子は桃香に電話して、こちらからFAXする旅程を花巻ベースで練り直してくれるように頼んだ。
 
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桃香からの返事は2時間後にあった。
「大変だったぞー。飛行機は旅行代理店でバイトしてる友だちに電話して、どれが本当に飛んでいるのか全部確認してもらった」
 
それで桃香が送ってくれた予定表を見ながら、今度は来てくれる人全員に電話して旅程の変更を頼む。この作業は、青葉・朋子・千里・桃香の4人で手分けして電話を掛けまくった。
 
最後の方、青葉と朋子から連絡の取れなかった何人かについて桃香たちにフォローを頼み、ふたりは21:40の高速バスに乗った。
 
翌日朝6:30に仙台に着く。さすがに長時間バスに揺られると身体が疲れているので駅近くでお茶を飲んで一休みする。桃香と千里が乗っている新幹線は8:30に仙台に到着するので、その列車に青葉たちも乗り込むことにする。お弁当を買ってから新幹線に乗り込み、車内で桃香たちと合流した。
 
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9:49に新花巻に到着。駅前のトヨレンでエスティマ・ハイブリッド(8人乗り)を2台、3日間ということで借りて、これで弔問客をピストン輸送することにした。
 

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最初に朋子が1台のエスティマに桃香・青葉を乗せて大船渡に向かい、千里がもう1台のエスティマで花巻空港に向う。ここで出雲から来る直美とその夫を待つ。
 
13:30に伊丹からの便が到着する。ふたりが荷物受取所から出てくると千里が近づいて行く。
 
「こんにちは。私、川上青葉の姉で、千里と申します。藤原民雄さん・直美さんですか?」
「はい、あなたのことは聞いてますよ。色々大変でしたね」
 
「お疲れ様でした。駐車場にご案内します」
 
千里はさりげなく直美が持っている荷物のひとつを持ってあげる。
 
「でも会ったことないのに、よく私たちのこと分かりましたね。写真とか見ました?」
「いえ。でも私、人を見つけるのとか、失せ物探しとか割と得意なんです」
「へー!」
 
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エスティマの後ろの座席に案内する。
 
「一応、お弁当とおにぎりは買っておきました。ホカ弁やコンビニおにぎりで申し訳ないのですが」
と言ってお弁当を勧める。
 
「もしかしたら禁忌があるかも知れないとは思ったのですが、食べられそうなのがあったら食べてください。お茶やコーヒーとかもたくさん買ってますからお好きなだけどうぞ」
 
「あ、今控えているものは特にないから大丈夫。トンカツ弁当もらっちゃおう」
「じゃ僕はチキン南蛮弁当で」
と言って1個ずつと取り敢えずお茶のペットボトルを1本ずつ取る。
 
車は空港を出て新花巻駅に向かう。
 
「出雲から大変でしたね。でも伊丹経由だったんですね。羽田経由かと思った」
「ああ。羽田から花巻までの便は飛んでないんですよ」
「あれ?そうでした?」
「震災後一時的に飛んでたんですけどね。復興してきたので運行終了しました」
「へー」
 
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「昔は定期便があったんですよ。でも東北新幹線ができたので、羽田−仙台、羽田−花巻ともに廃止されたんですよね」
と仕事で全国飛び回っているので交通に詳しい直美が言う。
 
「そうだったんですか!私の友人で羽田から三沢に飛ぼうとしてたら天候不順で仙台に降りちゃって、その後新幹線で移動したと言っていた人がいたので、てっきり羽田から仙台の便もあるのかと思ってました」
と千里。
 
「いや、そのお友だちは貴重な体験をしている」
「へー!」
 

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「ねぇ、訊いていい?」
と直美が言う。
 
「はい、なんでしょう?」
と千里。
 
「あなた確か、青葉ちゃんの新しいお姉さんの内、ビアンさんの方よね?」
と直美。
 
「違います。私はMTFの方です」
「えーー!?ごめんなさいね」
「どっちみちセクシャル・マイナリティですね」
と千里は笑いながら言う。
 
「でも声がふつうに女の人の声」
「ああ。これそのビアンのお姉さんに鍛えられました」
「凄い凄い」
 
「女性の声の出し方って、窓から声を出す感覚なんですよ。男性の声は玄関から出す感覚。だから誰でもちょっと心をシフトするだけで実は男の人でも女の声は出るし、女の人でも男の声は出るんですよね」
 
「うーん。何となく分かるけど、私はたぶんかなり練習しないと男の声は出せないよ」
「ええ。かなり練習させられました」
と言って千里は笑う。
 
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「誰でもちょっとだけなら異性の声が出るけど、安定して声を出すにはやはりその部分の筋肉を鍛える必要があるみたいです。女の声を出すのに使う筋肉と男の声を出すのに使う筋肉は違うんですよ。声出すって結構筋肉使う。以前精神的な失語症に陥った人と会ったことがありますが、その人も声失っていた間に声を出す筋肉が衰えてしまっていて、そのリハビリにけっこう掛かったと言っていました」
 
「ああ。声も出してないと筋肉が衰えるよね」
「ええ。歌手なんかもそうですね。練習している人としてない人の差は歴然としてます」
 
「言えてる、言えてる。かつては上手かったのに・・・という人いるもん」
「マドンナとかあの年齢であの声って凄いです」
「うん。マドンナは凄い」
「あの人、多分若い人の倍くらい歌ってますよ」
「かも知れないね」
 
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「でもあなたのチャクラは凄くきれいな女性型ね。MTFの人やFTMの人って結構男性型と女性型が入り乱れていることが多いのに。性転換手術は終わっているんだったっけ?」
 
「まだですよ。でも3日前に去勢しました」
「3日前!じゃ男性廃業したてのほやほや」
「そうですね。それで私が手術したというのを聞いて青葉が私の気の流れを女性型に変更してくれたんですよ」
 
「ああ、それで!しかし青葉ちゃん、美しい仕事するなあ。普通の女性のチャクラの流れと全く区別が付かないよ」
「そうですか?私、そういうの全然分からないから。でも凄く気分がいいなあとは思ってます」
「やはり睾丸があった頃はけっこうチャクラが乱れていたのかもね」
「そうかもです」
 
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「でもあなた少し霊感あるよね?」
「ええ。何度か友人から言われたことあります。私が物探し上手いのもそれがあるからじゃないかって、中学時代の霊感の強い友人が言ってました」
 
「幽霊とか見る?」
「その手のもの、見たこと無いんですよねー」
「いや、見えない方がいいんだけどね」
「青葉は何でも見えてしまうから、大変みたいです」
「うん。あの子は曾祖母さんが付いてたから、そのあたりのコントロールができるようになったんだけど、見えちゃう子で近くに力のある人がいなかった子は精神を病んでしまうと思う」
 
「しばしばあの傾向の子は短命みたいですね」
「うん。取られちゃうんだよ」
「取られるって・・・何にですか?」
「うーん。説明が難しいなあ」
 
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「青葉は自分では寿命は50歳くらいかもなんて言ってます。私はもっと長生きできると思うんですけどね」
と千里は言う。
 
「あの子、物凄く早熟だったからね。早く生きすぎてるんだよ。私が青葉ちゃんに初めて会ったのはあの子が小学3年生の時だったんたけど、その時既に大人と話しているような感覚だったもん」
 
「青葉は小学2年生の時に自分の感情に鍵を掛けたと言っていました。私があの子に避難所で会った時、その能面のような表情に戸惑ったのですが、新しい生活の中で徐々に表情が出て来ているようです」
 
「そうそう。あの能面のような表情で、更に大人びて見えてたのよ。でもこないだ会った時に凄く表情豊かになってたのでびっくりした」
と直美は言う。
 
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「あの子、自分という存在を滅却して、ただ霊能者としてだけこの5−6年生きてきていたみたいだから、普通の女の子に戻れたらいいなと私は思っています」
 
と千里が言うと、直美も全く同感だと言った。
 

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やがて新花巻駅に到着する。千里は美由紀たち3人が入口の所に立っているのを見て車を降り、近づいて行く。
 
「美由紀ちゃん、日香理ちゃん、お久しぶり〜」
と声を掛ける。
 
「あ、青葉のお姉さんでしたね?」
 
千里と美由紀・日香理は5月下旬、青葉の誕生日の時に会っている。そして千里はもうひとりの女性に向かって言う。
 
「こんにちは。川上青葉の姉の千里と申します。小坂巻子先生ですか?」
「ええ。お迎えありがとうございます」
 
「長旅お疲れ様でした。それにお待たせしてしまいまして」
「いえ長時間列車に揺られていたから、かえって足が地に着く所で少し休めてよかったです」
 
「ではまた車での移動で恐縮ですが、こちらへ」
と言って3人をエスティマに案内して、3列目に乗ってもらう。藤原夫妻は2列目に座っている。
 
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「冷めてしまったけど一応ホカ弁を買ってますし、おにぎりもありますし、お茶やコーヒー・コーラとかもありますので、もしよろしかったら」
と千里が言うと、
「頂きます」
と言って美由紀と日香理はお弁当とコーラ・コーヒーを取っている。小坂先生は「私はおにぎりでいい」と言って、2個ほどと烏龍茶を取っていた。
 
「まだ余ってるけど」
と美由紀が言うので
「余ったのも食べていいですよ」
と千里が答えると
「もらっちゃおう」
と言って、美由紀は焼肉弁当と唐揚げ弁当を美味しそうに食べていた。
 
「でも今から走る道、けっこう凄いですよね」
と日香理が心配そうに言うが
「カーブはゆっくり走るから大丈夫ですよ」
と千里は笑顔で答えた。
 
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