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■クロスロード3(8)

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朋子が運転する青葉たちが乗ったエスティマは、彪志親子のカムリと並んで一ノ関まで走った。
 
「青葉、向こうに乗った方が良かったんじゃないの?」
と美由紀に言われる。
 
「大丈夫だよ。この2日間にたくさんキスしてもらったから」
「おぉ」
「セックスもした?」
「さすがにしてないよ!」
 

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青葉たち5人は15:49の新幹線で高岡方面に向けて出発した。大宮・越後湯沢乗り換えで22:01高岡着の予定である。
 
新幹線の出発を彪志親子が見送ってくれた。美由紀が「彪志さんとキスしちゃいなよ」と唆したが、ふたりは握手だけして別れた。
 
「あ、これ先生たちの交通費と会葬御礼です」
と言って青葉が小坂先生・美由紀・日香理に封筒を渡す。
 
「でもお金足りた?凄い人数の人たちが集まってたから交通費も宿泊費もかなりの金額になったのでは?」
と小坂先生が心配する。
 
「私この春から震災で行方不明になった人たちの遺体探しの霊査を随分請け負って、かなり見つけ出していたんですよ。その御礼をたくさんもらっていたので、それで何とかまかなえると思います。それに実は香典でローズ+リリーのおふたりが合わせて100万円も包んでくれていたんです。びっくりしましたが、おかげで借金して調達した分は速攻で返済できそうです」
 
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青葉は高岡を出る前に現金を300万円用意してきていた。これに加えて桃香と千里が、現金が要るはずと言って200万円調達してきてくれていた。お金の出所を桃香は言わなかったがクレカのカードローンではと青葉は想像していた。しかしその合計500万の現金で、今回の斎場代・僧への謝礼・食事の費用・飲み物代・会葬御礼・交通費・宿泊費・レンタカー代・ガソリン代などは何とか払うことができていた。ただしクレカで決済したものもあったので最終的な費用は多分520-530万と青葉は見ていた。
 
「ああ、芸能界の結婚とか葬式の香典・祝儀ってなんか世間と桁が違うよね。大物同士だと3本だとか5本だとかいう話」
と美由紀が言う。
 
「3本?」
「1本が100万円」
「恐ろしい・・・・」
 
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香典袋は取り敢えず桃香が千葉に持ち帰り、金額のリストを作り報告してくれることになっているが、冬子たちの分まで入れて概算で200万円くらいではないかと桃香は言っていた。つまり桃香たちが用意してくれた現金の分を香典でちょうどまかなうことができる。
 
しかし青葉も桃香もこの時点では、舞花の香典袋にまさか恐ろしい金額の小切手が入っているとは思いも寄らなかったのである!
 

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一方の花巻組では、瞬嶽が乗り合わせた女子4人のアイドルのような感じになり、楽しい時間が過ぎていった。
 
「何、これ『かんジャニエイト』って読むんだ?『レムニスケート』でも『むげんだい』でもないんだ?」
「知らないと読めませんよね」
「お経より難しい」
 
「ふーん。AKB48って秋元康がやってるの?じゃおニャン子クラブの妹分みたいなものか?」
「師匠、おにゃん子をご存じで?」
「僕、『セーラー服を脱がさないで』とか歌ったよ」
「ぜひ聞かせて下さい!」
 
この4人はそれで瞬嶽が『セーラー服を脱がさないで』を歌うなどという類い稀なものを見ることになる。瞬嶽の歌は上手かった。そこでみんなで乗せて、AKB48の『Everyday、カチューシャ』の歌詞を教えて、これも歌ってもらった。
 
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更に舞花が持っていたローズ+リリーの『夏の日の想い出』のCDを見せると歌詞カードに指を当ててなぞっている。
 
「この『キュピパラ・ペポリカ』って何語?」
「誰も分からないみたいです」
「ソグド語かと思った」
「また新たな説が出た!」
 
その様子を見ていた真穂がふと言う。
 
「師匠、歌詞カードを指でたどっておられましたよね。ひょっとして目がご不自由などということは?」
 
「うん。僕は目が全然見えないよ」
「えーーー!?」
 
「そんな風に見えない」
「普通に歩いておられるし」
「私たちが差し出したものを迷わずふつうに手に取られるし」
「目が見えない状態で200年間くらい生きて来たから、そういうのは慣れたね」
「師匠、200歳ですか?」
 
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「どうだろう。自分でも途中で数え切れなくなった」
「いや、200歳もあり得る気がした」
「ネテロ会長並みだ」
 

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花巻組は15時頃花巻空港に着く。舞花がチェックインした上で空港内の喫茶店でお茶とお菓子を飲みながら、またたくさんおしゃべりをする。
 
「師匠、ケーキはお口に合いませんか?」
「ごめん。長年山奥で暮らしていたので地上のものが食べられなくなっているんだよ」
「紅茶とかはいけます?」
「うんうん。頂くよ」
 
「師匠、精進落としでも、仕出し弁当、お召し上がりになってませんでしたもんね」
と真穂が言った。
 
「山奥での食事というと、木の実とか山桃とか?」
「いや、師匠は猪くらい気合いで倒して食べておられるかも」
「ああ。山を降りる時に猪に遭遇したことはあるけど、僕が睨むとこそこそと逃げて行ったよ」
「すごーい!!」
「やはりネテロ会長級!」
 
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17:05の新千歳行きに乗る舞花を手荷物検査場のところで見送り、一行は新花巻駅に移動する。ここでレンタカーを返却した。
 
17:41の新幹線で真穂が盛岡に帰り、千里・桃香・瞬嶽は17:52の東京行き新幹線に乗った。
 
「村山君、頂いた導師御礼だけど、僕は現金と無縁の生活送っているから、これ川上に返してやってくれない?あの子いろいろお金が入り用のはず」
と瞬嶽が千里に封筒を返す。
 
「確かに山奥には三越もイオンもありませんからね。ではいったんお預かりします。状況次第では、震災の被災地に寄付とかにしてもいいですか?」
「うん、それでいい。高野山に戻る交通費だけ恵んで」
 
「千里、師匠を高野山まで送っていきなよ。あまり下界に降りてきておられないのなら、自動改札とかでも戸惑うんじゃないかな?」
と桃香が言う。
 
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「うん。そうする。じゃ、香典の整理は桃香頼む」
「OK」
「その整理する時にさ」
「うん」
「海藤天津子という名前の香典袋があると思うんだけど、それだけ分けておいてくれない?リストには名前を載せるけど、香典袋は青葉には送らないで」
と言って千里はその名前を書いた紙を桃香に渡す。
 
「了解。それは千里に渡せばいいのね」
「うん」
 
「例の虎少女か」
と瞬嶽が言う。
 
「そうです。彼女は青葉のことをライバルと言ってます」
「そういう存在がいるのはあの子にとっても良いことだ」
「はい」
 

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東京駅で千葉に戻る桃香と別れる。千里は瞬嶽を都内某所の駐車場に案内した。
 
「ほぉ。スバルの車だね」
「お目が不自由なのに、よく分かりますね」
「メーカーそれぞれの固有の波動があるよ」
「下界にはどのくらいの頻度で降りてこられているのですか?」
「2〜3年に一度じゃないかな。でもこれが多分最後という気がする。今回は若い女の子たちと楽しい時間が持てて良い思い出になった。冥土の土産にできるよ」
「まあお寺も男ばかりでしょうしね」
「ここ数年で話をした女というと、山園(菊枝)・川上(青葉)・藤原(直美)くらいだった」
 
「助手席でもいいですし、後部座席で寝ていかれてもいいですよ」
「助手席に乗ることにしよう。君の持つ気が美味しいから」
「少しくらいなら食べてもいいですよ。自分の気を食べられるの慣れてるから。夜のお相手が必要でしたら、応じてもいいですし」
「さすがに僕はもう100年くらい前に男を卒業したよ」
 
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「男を卒業なさったのなら、いっそ女になります?」
「近い内に人間を卒業することになりそうだから、今更股の形などどうでもいいな」
「師匠、トイレも不要な体質のご様子ですしね」
「うん。実際僕はもう半分以上死んでいるんだと思う」
 
それで瞬嶽をインプレッサ・スポーツワゴンの助手席に乗せ、千里は車を出した。首都高から東京ICを通って東名を走り、豊田JCTから伊勢湾岸道に入る。東名阪・名阪・西名阪・阪和と走って、和歌山まで行ってから国道24号で東に戻る。600kmほどの旅だが、千里は海老名SA・御在所SA・岸和田SAで休憩・睡眠を取らせてもらい、何度か短いトイレ休憩もした。
 
そして車を走らせている間、瞬嶽と千里はたくさんたくさんお話をした。また弟子たちに遺したいものがあると言われたので、ICレコーダーに3-4時間分録音した。
 
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「そうだ。私の後ろの子たちが師匠にぜひ龍笛をお聞かせしろというので」
と言って千里は御在所SAで休んだ時、龍笛を取り出して吹いた。例によって龍が集まってくるが、いつもより数が多い!
 
更に何だか天女みたいなのまで姿を見せる。明け方のSAでトイレ休憩などに車を降りて不思議な気配に天を眺める人が何人か見られた。
 
ちょうど日の出となる。明るい朝日に龍や天女の姿が少しずつ薄くなって消えていく。そして千里の龍笛も終わった。
 
「川上の龍笛とはまた違った趣があるな」
「私、あの子にはとうてい勝てません」
 
「それは考え方次第だと思うよ」
と瞬嶽は楽しそうに言った。
 

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「そうだ。クロスロードというのはどういう意味なの?」
と瞬嶽は名阪を走っている時に千里に尋ねた。
 
「私たちが出会った日、各々が全然違うルートであそこに集まっていたのですよね。青葉は高岡からバスを乗り継いで大船渡まで来ていた。私と桃香は釜石から南下してきて、和実と淳さんは気仙沼から北上し、あきらさんは一ノ関から回って来たし、冬子は盛岡・花巻から移動してきていた。みんな違う方面から違う所へ行く途中、あそこで偶然遭遇したんです。だから道が交わるところ」
 
「なるほど」
 
「そしてみんな人生を迷走しながら生きていたから。その迷走する人生が交わるところというのでクロスロードです」
 
「その出会いで、人生が変わったんじゃないの?」
 
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「そんな気もします」
 

インプレッサが高野山の★★院に到着したのは、25日のお昼頃であった。
 
瞬醒が迎えに出て来たが、千里を見るなり
「ね、君、うちの寺で修行する気無い?」
と言った。
 
「私、神社体質なんですよ。般若心経とか読んでも、それ祝詞だ!って言われます」
 
「へー、ちょっと唱えてみてよ」
「観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度一切苦厄」
とまで千里が唱えたところで
 
「ほんとに祝詞だ!」
と瞬醒は楽しそうに声を上げた。
 

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千里は帰り大阪にちょっと寄ってから、26日の夜、千葉に戻った。
 
「お疲れ様」
「そちらもお疲れ様」
「会計たいへんでしょ?」
「お金の計算が5万ほど合わない」
「仕方無いよ。あれだけいろいろなものが慌ただしく進行していたら」
 
「いや誰かが何かの費用を自分で出してこちらに申告してなかったりしたら悪いなと思ってさ」
「うん。でも考えても分からないよ」
「で、これ見て驚け」
 
と言って桃香は1枚の小切手を千里に見せた。
 
「20万円?」
と言って千里は目を細めてその額面を見た。
 
「これ舞花さんの香典袋に入っていたんだけどね。私も最初20万円かと思った。でもよくよく桁を数えてみろ」
 
千里は目をゴシゴシしてから小指を置いて桁を数えてみる。
 
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「うそ・・・・2000万円!?」
「やはり2000万円だよなあ」
 
「何かの間違いでは?0を1つか2つ多く打っちゃったとか?」
「念のため青葉から舞花さんに照会してもらったが、この金額で間違いないらしい」
「なんか金銭感覚が崩壊する」
 
「こういうのがあると、会計の計算をするのがあほらしくなってくるよ」
と桃香。
「冬子・政子からの香典が100万でぶっ飛んだのに、更に上があるとは」
と千里も呆れる。
 
「で舞花さんが言ってたらしい。青葉の性転換手術代に使ってもいいよって」
「なるほどー」
「青葉の性転換手術代を出しても充分あまるし、千里の手術代にも使わせてもらうか?」
 
「大丈夫だよ。私はもうその分貯金してたから」
「まあ、今回現金がいるだろうというので、その貯金を降ろしていったん青葉に渡したけど、香典できれいに戻ってきたからな」
 
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「でも葬儀費用で使った分を除いて、市に震災復興に使ってとかいって寄付してもいいんじゃない?」
 
「うん、青葉もそうさせてもらおうかと言っていたよ」
「震災の傷跡は大きいけど、早く正常化するといいね」
「ほんとだな」
 
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クロスロード3(8)

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