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■クロスロード3(4)

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その人たちもお店に連れ込み、一息ついてもらってから出発する。
 
淳が助手席に乗り、2列目にあきら・小夜子・和実と乗り、3列目に山川さん・中村さん・村元さんが乗ってエスティマは出発した。
 
取り敢えず車内で座ったまま自己紹介する。
 
「一ノ関に住んでおります鈴江文月です」
 
「東京に住んでおります月山淳です」
「同じく月山和実です」
「埼玉に住んでおります浜田あきらです」
「同じく浜田小夜子です」
 
「静岡の山川春玄(しゅんげん)です」
「東京の中村晃湖(あきこ)です」
「栃木の村元桜花(おうか)です」
 
「中村さんも村元さんも山川さんも、霊能者の方ですよね?」
と和実が訊く。
 
「ええ、そうですよ」
と優しそうな雰囲気の中村さんが答えた。
 
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「あなたも、けっこう霊感が強いわね」
「いえ、御三方の前では私はアリみたいなものです」
と和実は答える。
 
「そのパワーの差が分かるというのは、君の霊感がそれなりに強い証拠だよ」
と山川さんが言った。
 

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「だけど、和実さんも淳さんもあきらさんも、凄くパス度が高いですね。女じゃないなんて思う人、まずいないでしょう?」
と中村さん。
 
「え?淳さんとあきらさんは男性だけど、和実さんは天然女性でしょ?」
と山川さん。
 
「私もそう思ったけど・・・」
と村元さん。
 
「中村さんが正解です。私、まだ男の身体ですよ」
と和実。
「えー?だって波動が女性なのに!」
と山川さんと村元さん。
 
「青葉にも、『よくよく注意してみないと女にしか見えない』って言われました」
 
「うん。こういうの見慣れてないと分からない。私、過去に5人性転換した人のヒーリングしたことあるから。でも私、和実さんは性転換済みと思ってたけど、まだ手術してないのね?」
 
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「ええ。去勢もしてません」
「あり得ない。。。。去勢もしてない身体でこんな波動が成立してるなんて」
と山川さん。
「すごくレアだよね。この子。こんな凄い子は青葉ちゃん以外見たことない」
と中村さんは言う。
「青葉ちゃんは例外中の例外と思ってたけど、こんな子がいるんだね!」
と村元さん。
 
「あの・・・・月山さん御姉妹、浜田さん御姉妹、男の方だったんですか?全然気付かなかった」
と運転している彪志の母。
 
「いえ、小夜子さんは生まれながらの女性ですよ。そもそも妊娠中だし」
と中村さん。
「あ、そうですよね!びっくりした」
 
「妊娠8ヶ月くらい?」と山川さん。
「9ヶ月です。9月10日が予定日です」と小夜子。
「わあ、大事にしてくださいね」
 
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「それにどちらも御姉妹じゃなくて御夫婦ですよね?」
と中村さんは言う。
 
「はい、そうです。話がややこしくなりそうなので、鈴江さんから姉妹ですかと言われてもそのままにしておきました」
と和実が言う。
 
「えーーー!?」
と彪志の母はまた叫んでいる。
 
「ちょっと待って。あれ?姉妹じゃなくて夫婦で、女に見えるけど男で、あれ?あれ?あれ?じゃ男同士の姉妹?じゃなかった。夫婦ということは?あれれ?」
 
「鈴江さん、あまり深く考えずに運転に集中して」
と助手席に乗っている淳が言う。
 
「そうします!私もう分かりません!!!」
と彪志の母は言った。
 

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時計を戻して9:15。千里の乗った新幹線が新花巻駅に到着する。千里は列車を降りると、駅前のレンタカー屋さんに入り、エスティマ・ハイブリッドを1台半日ということで借り出した。
 
それで予約を入れていたお弁当屋さんに寄ってお弁当・お茶などを受け取り、それから花巻空港に移動する。駐車場に駐めて空港のビルの中に入る。到着予定表を見ていたら、伊丹からの便は20分ほど遅れると出ている。そこで千里はそのまま2階のレストランに行くと、まっすぐに窓際のテーブルに座っているブラックフォーマルを着た女子大生の所に行く。
 
「こんにちは。私、川上青葉の姉で千里と申します。越智舞花さんですか?」
と声を掛けた。
 
「こんにちは。越智です。お話は聞いてますよ。大変でしたね。取り敢えず座りません?」
 
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というので、千里はコーヒーをオーダーして舞花の向いに座る。
 
「でも今まだ飛行機が暫定運用中だから、朝早い出発になっちゃいましたよね」
「ええ。でも私、兄に起こしてもらって。兄に車で新千歳まで送ってもらったので、空港に着くまで寝てました」
 
「ああ、それがいいですね」
 

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それでしばらく話していたら、
 
「千里さん、イントネーションが。もしかして北海道のご出身?」
と訊かれる。
 
「ええ。留萌出身で、旭川の高校を出ました」
と千里が答える。
 
「わあ。私の知っている所かな?」
「旭川N高校というのですが」
「テニスとかバスケとか強い所だ」
「そのバスケ部でした。越智さんは札幌のL女子高ですか?」
 
そこは札幌でいちばんのお嬢様学校である。越智さんほどの子なら多分そこだろうと見当を付けて千里は訊いてみた。
 
「ええ、そうです。今は同系列のL女子大に通ってます。あ、舞花でいいですよ」
 
「分かりました。でもうちのバスケ部は舞花さんとこの姉妹校の旭川L女子高にたくさん苦しめられましたよ」
 
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「そうそう。うちの学校のバスケ部、旭川は強豪なんですよね。札幌は弱小だけど。あれ?千里さん今大学何年生?」
「3年生です」
 
「私より1つ上か。だったら、N高校はインターハイ行ってますよね?」
「ええ。2年の時と3年の時に行きました」
「すっごーい。ベンチ入りできました?」
「ええ。何とかベンチの端に入れてもらいました。いい想い出です」
 
「それだけでも違いますよね〜。私は中学高校で卓球やってたんですけどね。私が在籍していた6年間に一度も団体戦で勝ったことがなかったです」
 
「ああ。うちの妹も卓球部でしたが、いつも地区大会の1〜2回戦で負けてましたね」
 
「そういう所多いよね〜。でもおかげでのんびりとした部活動でしたよ。千里さんは大変だったでしょう。練習も厳しかったのでは?」
 
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「うちは進学校だから、部活の練習時間が制限されていたんですよね。ただしバスケ部、ソフトテニス部、野球部、スキー部だけは特例で他の部より1時間長く練習できてたんです。とはいっても他の強い学校よりは随分練習時間短かったと思います。それより遠征が多かったから、それで体力使った気もします」
 
「それって体力もお金も消耗しますよね」
「ですです」
 

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やがて千里がこの空港でお迎えするもう1組が乗った飛行機が着陸するので、舞花と千里はレストランを出て到着ロビーに行った。
 
そして降りてくる客を待ちながらまだおしゃべりする。ふたりは主として高校生活のことを話していた。
 
「でもN高校も元々女子高だったから、結構女子高的な伝統が残ってませんでした?」
と舞花。
 
「ああ。卒業生の組織はOB会じゃなくてOG会と呼ばれてましたし、毎年生徒会長もだいたい女子がなってました。別に男子がやってもいいはずなのですが、少なくとも私がいた3年間はずっと女子で、副会長が男子でした。校歌も元々『乙女たち』となっていた歌詞を共学になった時に『若人たち』と改変したものの、清くとか純真とか、男子が歌うの少し恥ずかしいと言うような単語が残ってました」
と千里。
 
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「それは結構恥ずかしいかも」
「生徒数も女子が多かったですしね。寮も女子寮は2つあるけど男子寮は1つだけだったし」
と千里。
 
「千里さんも寮ですか?」
「いえ、私は叔母の所に下宿してたんですよ」
「叔母さんだと寮より門限に厳しかったりして」
 
「21時以降は特別な用事がない限り外出禁止でした。寮の子は門限22時だけど3回門限破りすると親が呼び出されるから、遅くなるとオーバーフェンスして、ロープをつたって壁をよじ登ったりしてたみたい」
 
「それは逆に凄い!忍者になれますよ」
 

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ふたりがおしゃべりしながら待っている内、手荷物受取所のゲートから、テレビの心霊番組でおなじみの竹田宗聖さんが年齢が読みにくい感じの女性と一緒に出てくる。千里は近づいて声を掛ける。
 
「こんにちは。川上青葉の姉で千里と申します。竹田宗聖さんと渡辺佐知子さんでいらっしゃいますね?」
 
「ええ、そうです。お出迎えありがとうございます。あなたと桃香さんのことは青葉ちゃんから聞いてました」
と竹田さんが言う。
 
「では車の方にご案内します。新花巻駅で2人キャッチしますので」
 
そう言って、千里は舞花と一緒に竹田と渡辺を案内して駐車場に行った。舞花が助手席に乗り、竹田と渡辺が2列目に乗る。
 
新花巻駅で、千里は「みなさん車内で少しお待ち頂けますか?」と言ったのだが竹田が「外の空気は吸いたい」と言って一緒に降りたので、結局4人で駅の建物に向かった。
 
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「この時期、エアコン付けなきゃ車内に居るのは辛いけど、アイドリングするのは非国民だから」
などと竹田さんは言う。
 
「熱中症で死ぬよりはマシだと思いますが、できるだけアイドリングはしたくないですね」
と千里も答える。
 

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4人が駅の入口まで行くと、そこにしゃがみ込んでいた、制服を来た女子高生がこちらを見て立ち上がり、笑顔で手を振った。
 
「お待たせ〜。来てくれてありがとう、天津子ちゃん」
 
「千里さんがあのオカマ野郎のお姉さんになったなんて知った時は、うっそーと思いましたよ。でもあいつがくたばる前には絶対倒したいから、家族の葬儀くらい来てやるかと思って来たよ」
 
「私も、青葉が天津子ちゃんの常々言ってたライバルだと知った時はびっくりしたよ」
と千里は言う。
 
「でも震災であいつに死なれていたら勝ち逃げされてる所だったからな。取り敢えず生き残ったのはよしとするよ」
と天津子は言う。
 
天津子は震災のニュースを聞くとすぐに東北に入った。青葉が生きているというのは彼女の勘で分かったらしい。そして救援に行くトラックに同乗させてもらって大船渡に入り、避難所を歩いて回って青葉の居た避難所に至る。そこで避難所から出た人のリストに青葉の名前を見つけ、その連絡先として千里の名前があったのを見てぶっ飛んだという。
 
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「最初同姓同名かと思ったけど、携帯の番号が確かに千里さんの番号だったからね」
 
彼女は青葉が佐賀の祖父の所に行ったと千里から聞くと、わざわざ佐賀まで行った。ところがそこで青葉の祖母から《彼》(天津子は青葉を「彼」とか「オカマ野郎」などとよく呼ぶ。ちなみに天津子は千里とは5年ほどの付き合いだが千里がMTFであることには気付いていない)を最初に保護した女子大生の所に身を寄せたことを聞くと千葉まで戻ってきたものの、そこで千里から今度は青葉が富山に行ったことを聞くと富山まで行く。
 
ところがゴールデンウィークに青葉は岩手・高知・千葉と飛んで回ったので、天津子が青葉に会うことができたのは、連休が終わった後になったのであった。青葉が3.11から5月上旬まで2ヶ月間日本各地を流浪していた時期、天津子も青葉を追いかけて全国駆け巡ったのである。
 
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今回の葬儀で青葉は天津子には連絡を取らなかったのだが、何かあったことを感じた天津子が千里に連絡してきて、それで来てくれることになった。
 
「まあ葬儀だし、香典は出すけどさ。私が手書きした香典の封筒があいつの手に残らないように、千里さん処分してくれない?」
「うん。任せて」
 
自分の名前を手書きした紙は、他人が呪いを掛けたいと思ったら最適の呪具になってしまう。むろん青葉がそんなものを利用するような子ではないことは天津子も分かってはいるが、いつでも利用できるものがあるというのはお互い気持ちがよいものではない。
 

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「ここで迎えるのは2人だっけ?」
と舞花が千里に訊く。
 
「そうそう。もう1人いるはずなんだけど、どこにいるのかな?」
 
と言って千里はそのもう1人である政子(マリ)にメールする。
 
すると
「ごめーん。寝過ごした。東京を8:12の新幹線に乗った」
というお返事である。
 
「ああ。遅れたんですね。立って待っているのも何ですし、どこかでお茶でも飲みましょう」
と言って千里はその場にいる4人を構内のカフェに案内した。
 
その時になって初めて天津子は近くに居た竹田さんと渡辺さんに気付く。
 
「わっ!竹田宗聖さんに渡辺佐知子さん!?」
と言って驚いたような顔をする。
 
「こんにちは」と竹田さん。
「こんにちは」
と言って天津子も大きく頭を下げて挨拶する。
 
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「君、凄い眷属連れてるね」
と竹田さんが言う。
 
「あ、見た目は怖いかも知れないですけど、私の言うことを忠実に守りますし、決して乱暴はさせませんので、ご安心ください」
と天津子。
 
「その虎ちゃん、見た時は一瞬ぎゃっと思ったけど、確かによく調教されてるみたい」
と渡辺さんも言う。
 
「虎?」
と話の見えない舞花が訊く。
 
「うん。天津子ちゃんは眷属に虎を連れてるんだよ。普通の人には見えない」
と千里が説明する。
 
 
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