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■女たちの結婚事情(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2016-01-08/2020-04-08改/2021-02-14改
 
2018年8月23日(木)。
 
貴司の「3人目の妻」美映が豊中市内の産婦人科医院で子供を産んだ。貴司の「最初の妻」である千里はその日、天津子の師である羽衣に連れられてその病院を訪れ、出産の現場に立ち会った。
 
看護婦さんが貴司に
「産まれましたよ。女の子ですよ」
と言うので、千里は
「すごーい。貴司、今度は女の子のパパになったね」
と貴司に言って誕生を祝福した。
 
千里と貴司は赤ちゃんの誕生に感動して、ついキスをしてしまったが、そのことについては、お互い今のはうっかりであったことで合意し「なかったこと」にした。
 
羽衣はその生まれた子・緩菜(かんな)について
「これは千里ちゃんの子供なんだよ」
と言ったが、その時千里はその言葉の意味が分からなかった。
 
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2020年11月4日(水)。
 
美映は唐突に千里のマンションを訪れ「貴司を5000万円で買い取って欲しい」と言い、署名捺印済みの貴司と美映の離婚届、貴司の署名捺印だけされて妻の欄が空白の婚姻届を見せた。
 
千里はその「買い取り」に同意し、弁護士同席のもとで、今後同様の金銭は要求しないこと、貴司に干渉しないことを明記した念書を書いてもらった上で離婚届を役場に提出、その場で5000万円を美映の口座に振り込んだ。
 
なお貴司と美映の長女・緩菜は千里たちが育てることにし、緩菜の親権は貴司が持つということを離婚届に記載した。
 

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それで緩菜の服を浦和のマンションに運ぼうとしていたら貴司が帰宅する。しかし貴司はこの件を全く知らなかった。
 
「嘘!?僕って売られちゃったの?」
と貴司が呆然として言う。
「金銭トレードだな」
と桃香は言った。
 
貴司は美映のスマホに電話して激論するが最後は美映が勝手に切ってしまう。それで貴司ももう疲れた様子で
 
「うん、いいよ、もう離婚で」
と言った。
 

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取り敢えず疲れたね、ということでそのまま貴司のマンションでカレーを作って食べた。その時、緩菜の性別問題が出てきた。
 
「緩菜ちゃん、今日1日で早月や由美と随分仲良くなった。やはり女の子同士はすぐ仲良くなるんだね」
「本当の兄妹であるはずの京平の方が緩菜にはちょっと遠慮がちだったね。やはり男の子と女の子だと少し壁があるのかな」
「だけど、美映さんが美人だから、緩菜ちゃんも美人に育ちそうな感じ」
 
そんなことを千里と桃香が言っていたら
 
「ちょっと待って」
と貴司が言う。
 
「千里も桃香さんも勘違いしてる」
「ん?」
「緩菜は男の子なんだけど」
 
「何ですと〜〜〜〜!?」
 
「だって、男の子だったら、どうしてロングウェーブの髪で、スカート穿いてるのよ?」
と千里。
 
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「下着も全部女の子のだったけど」
と桃香。
 
「いや、本人がこういう格好が好きだから」
と貴司は言った。。
 

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その時千里はハッとして思い出した。
 
「でもでも、貴司。緩奈ちゃんが生まれた時、分娩室から出てきた看護婦さんが女の子でしたよ、と言ったじゃん」
と千里は当時のことを思い出して指摘する。
 
すると貴司が答える前に桃香から突っ込みが入る。
「千里君、どうして君は貴司さんの子供の出産の現場にいたのかね?」
「えーっと。なぜ居たのかなあ。私もよく分からない」
 
よく分からないのは本当のことなのだが(羽衣が自分に関する記憶を消してしまっているので、千里は羽衣に連れられて豊中市に行ったことを覚えていない)、桃香は当然こんな回答には納得しない。しかし貴司は緩菜の出生時のことについて説明したいと言った。
 
「でも子供に聞かせたくないんだよ」
 
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それで子供たちにはテーブルでそのままカレーとおやつを食べているように言い、大人3人で別室に入ってふすまを閉めて話した。
 
「緩菜は、生まれた時は一見女の子に見えたんだよ。ちんちんが見えなかったし」
「まさか半陰陽?」
 
「いや、半陰陽というほどでもない。あの子、停留睾丸だったんだよ」
「あぁぁ」
「おちんちんも凄く小さくて肌の中に埋もれていたんだ。それで最初、お股には何も無いように見えて、それで女の子かと思ったんだ」
 
「なるほど」
「でもよく見ると割れ目ちゃんも無い。それであれれ?ということになって先生がお股を触っていて、まず埋もれているおちんちんを発見した」
「ふむふむ」
 
「先生は更に体内に指を突っ込んで、あ、ちゃんと睾丸もありますよと」
「ほほぉ」
「それで男の子であることが確定」
「ちょっと残念だな」
「なんで〜? でもこのくらいの事例は40-50人に1人くらいあるらしいよ」
「へー。そんなに?」
 
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「停留睾丸はどうしてるの?」
 
「1歳の誕生日直前に手術して、陰嚢内に引き出して固定した。実は陰嚢も小さかったからよく伸びるように最初はシリコン製のおもりを一緒に入れてたんだよ。半年後、今年の2月にそれは再手術して除去したけど、半年間は陰嚢の中に左右2個ずつ玉があるかのような状態になってた」
 
「取る時に間違って本物の方を取ったりして」
「それ間違わないようにお医者さんも慎重に確認してから取り出していたよ」
 
「おちんちんは?」
「睾丸を外に引き出したら発達し始めて、ちゃんと見ただけで確認できるサイズになった。同じ年齢の他の男の子よりは小さくて実際問題として指でつかめないから、立っておしっこすることも難しいけど、ここまで発達したらマイクロペニスではないと先生は言っていた」
 
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「確かに初期段階ではそれ完全なマイクロペニスだったかも」
 
「でもそれって外に出した睾丸がちゃんと機能しているってことだね」
「だと思う」
 
「女の子の服を着せるようになった経緯は?」
 
「それがあの子、お腹の中に居た時のエコー写真ではちんちんが確認できなくて。そもそも睾丸がなかなか降りてこなかったせいだろうけど紅葉の形も見えたんだよね。それで女の子ですねと言われてたから、美映のやつ、女の子の服ばかり買い込んでいたんだよ」
 
「ふむふむ」
 
「それで最初の頃、女の子の服ばかり着せてた。それで周囲の人からも『可愛い女の子ですね』とか言われて『ええ。このまま美人に育ってくれればいいんですけど』とかやってたんだよ」
 
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「美映さん、女の子が欲しかったのかな?」
「そうかも知れないという気はする。それで結局その後もあいつ女の子の服ばかり買ってきて。髪型も女の子みたいにして」
 
「だいたい緩菜(かんな)って女の子名前なのでは?」
「そうだっけ? DOG in The パラレルワールドオーケストラの一ノ瀬緩菜って男じゃん」
と貴司。
 
「ごめん。知らん」
と千里・桃香。
 
「以前『。ルエカミ京東』(←右から読む)に居たんだけど」
「あ、そのバンドなら聞いたことある」
「思い出した。まるで女の子みたいに美しい人だよね?ヴィジュアル系の範疇を越えている美形さ」
「うん。男の子なのに凄い可愛い人だったね」
 
「つまり貴司の趣味か」
「えっと・・・」
 
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緩菜の性別問題については再度子供たちが寝てから話し合うことにした。
 

この日はそのまま浦和のマンションに戻って子供たちを寝かせることにした。それで千里と桃香が4人の子供を乗せてセレナでそちらに戻り、貴司には自分の車で移動してもらった。
 
ここで4人の子供の年齢はこうなっている。
 
篠田京平A♂ 2015.06.28生 5歳4月
高園早月B♀ 2017.05.10生 3歳5月
細川緩奈−? 2018.08.23生 2歳2月
川島由美O♀ 2019.01.04生 1歳10月
 
千里と桃香はこの子たちをどういう「部屋割り」で寝せるか、セレナの車内で話し合った。
 
普段、浦和のマンションはこのように使用している。
 
Room.1 千里
Room.2 彪志・京平
Room.3 桃香・早月・由美
 
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「男の子部屋と女の子部屋ということでいいと思うんだよ」
と千里は言う。
 
実際問題として、今「男の子部屋」は京平が彪志と2人で使っており、「女の子部屋」は早月と由美が使っていて、桃香がその2人に添い寝している。Room.1では千里が音楽制作をしているが、子供たちが寝静まった後、桃香がこちらに来て、愛の営みをすることもある。京平は最近ずっと彪志と寝ているが、青葉が来ている時は、千里と一緒にRoom.1で寝る。京平がRoom.1にいる時は当然Room.1での愛の営みはできない。
 
「貴司には台所に寝てもらってもいいと思う」
と千里が言う。
 
「まあ千里がそれでいいならいいかな」
と桃香は言ってから
「今夜については私は夜中席を外してるから、貴司君と一緒に寝ていいよと付け加えた。
 
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つまり季里子の所に行くのだろう。
「ヴィッツ使っていいよ」
「うん。借りてく」
 
「問題は緩菜だよね」
「女の子なら早月や由美たちと寝せればいいのだけど」
「男の子なら京平と同じ部屋に入れないといけない」
 
「うーん・・・・」
 

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それで千里たちは貴司が到着した後、貴司も入れて再度話し合った末に、本人に選ばせることにした。
 
「ねえ、緩菜ちゃん。緩奈ちゃんは男の子?女の子?」
と桃香は尋ねた。
 
「わたし、おんなのこ」
と緩菜は答えた。
 
「じゃ女の子ということで」
「部屋は女の子部屋で」
「早月、緩菜ちゃんを同じ部屋にしていい?」
「いいよー。かんなちゃんとなかよくなったよ」
 
まだ2歳だし、男女が混じってもあまり問題無いだろうということで緩菜は取り敢えず今夜は女の子部屋で寝せることにした。
 
桃香は早月たちを寝付かせてから、家を出てヴィッツで千葉に移動したようである。その後、彪志が帰宅するが、彪志も急な展開に驚いていた。つまり11/4の夜はこのように部屋割で寝た。
 
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Room.1 千里・貴司
Room.2 彪志・京平
Room.3 早月・由美・緩菜
 
桃香が今夜不在になることについては、千里と貴司が同じ屋根の下で愛の確認をしていたら、桃香はいたたまれないからと千里が説明すると納得していた。
 
「明日以降はどうなるんです?」
「まだ分からない」
 
実際、千里としても“まだ何か起きる”気がしていたのである。
 

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さて、美映はそもそも離婚するつもりで、こういう話を千里の所に持って来た訳で貴司ももう離婚でいいと言ったことから、ふたりの離婚は確定した。提出してしまった離婚届はそのままにして戸籍に反映されるのを待つことにする。しかし、貴司と千里の婚姻届については、翌日11月5日(木)の日中、桃香が戻ってきた所で再度協議した。彪志は仕事に行っている。
 
「桃香が認めてくれるなら、私は貴司と正式に婚姻したい」
と千里は正直に自分の気持ちを言った。
 
「僕は千里と結婚したい。こんなこと言ったら叱られるだろうけど、むろん阿倍子も美映も好きだったけど、千里のこともずっと思ってた。でも離婚してすぐは節操がないから半年くらい待たないか?」
と貴司は言った。
 
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前回貴司は阿倍子と離婚して半月で美映と結婚している。
 
「私は千里にまた男性と結婚されるのは嫌だ。信次さんとの交際期間・結婚してた時期も凄く辛かった。でも私には5000万円で千里を買い取ることができんから、どうしても千里が貴司さんと結婚するというのなら、私との関係も続けてくれるという条件で我慢する」
と桃香は言った。
 
3人は悩む。
 
「貴司、私が桃香ともセックスしてたら不愉快?」
と千里は尋ねた。
 
「僕がさんざん浮気したから今更千里のことは責められない。千里が他の男とセックスするのは僕も辛くて我慢できない気がするけど、桃香さんとならその場面を見なければ何とかなると思う」
と貴司。
 
「桃香は私が桃香ともセックスするなら、私が貴司とセックスしてても平気?桃香のあの子(季里子)との関係は認めてあげるよ」
と千里。
 
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「貴司さんとしている所を見なければ平気だと思う」
と桃香。
 
「桃香さんの他の女性との関係を認めるのなら、僕の浮気は?」
と貴司が訊くが
「そんなことしたら即去勢。ちんちんと睾丸は廃棄する。私別に貴司とレスビアンになってもいいよ」
「うむむ」
 
「じゃ私と桃香と貴司と3人で一緒に住んでいいよね?」
と千里は提案をした。
 
「やはりそうなるか」
と桃香。
 
「私と桃香の家、私と貴司の家、と2軒使う手もあると思う。イスラム教国で複数の奥さんを持っている男性は、ひとりの奥さんに1つずつ家をあてがって、本人は妻たちの家々を巡回するんだよ」
 
「それって平安時代の日本の通い婚と同じじゃん」
 
「たぶんそういうシステムが問題起きにくいんだと思うよ。でもうちの場合、子供たちがみんな仲良くなっちゃったじゃん。だから4人一緒に育てたい。もし桃香の家と貴司の家を設定して私が双方を訪問する場合は、京平・緩菜は貴司と一緒、早月・由美は桃香と一緒になると思うんだよね」
 
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「うん。それが自然だ」
 
「そうなると、京平はせっかく2人の妹のお兄ちゃんになれて喜んでいるのに寂しがると思う。だから子供たちは引き離したくないから、結果的には全員同居の方がいいと思う」
 
「そうだなあ。結局は子供たちの都合を優先してやらないとな」
「自分で言うのも何だけど、この子たちって4人とも既に今までも親の勝手でかなり翻弄されてるからさ」
「うん。それはちょっと悪いかなと思ったりすることもある」
 

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