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■女たちの結婚事情(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2016-01-09/2020-04-08改
 
転居先に関しては浦和市内で4LDK2Sという物件が見つかった。
 
「築10年という割にはあまり傷んでない感じ」
「メンテが良かったんだろうね」
 
「1階にLDKと和室+S、2階に洋室3つとSか」
「洗面所・浴室は1階。トイレは1階と2階にひとつずつか」
「トイレが結果的に2個あるのはいいね。7人で住む訳だから朝はけっこうトイレ戦争になる可能性がある」
 
「2階にも小さなキッチンがあるんだ?」
「元々は2世帯住宅として建てたものみたいね。最初は2階にも浴室があったのを潰してクローゼットにしたみたい。それで換気扇がある」

 
「2階の洋室は6畳×2+8畳。この8畳をパーティションで3分割して女の子部屋にしようよ」
「その東隣の6畳が男の子部屋かな」
「じゃ貴司もその部屋で」
 
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「結局僕と京平が相部屋か」
「パーティションで切ってもいいし」
 
「2階のもうひとつの6畳(南側)を私と千里の愛の部屋、1階の和室を彪志君の部屋にすればいいと思う」
と桃香。
 
「その方がいいと思う。彪志君は夜遅く呼び出されることもあるから、1階の方が都合がいいと思う」
と千里。
 
「クローゼットも居室として使えるよね?」
「うん。問題無いと思う。必要なら窓を作ってもいいし」
 
「京平の幼稚園はどうする?」
「車で送迎すればいいよ」
 
「通勤も便利だよ。ここ産業道路に近いから車での移動が便利」
 
「いや貴司は鍛錬のため練習場所までジョギングすべき」
「それはジョギングではなくマラソンだと思う」
と貴司は反論する。。
 
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「だいたいさいたま市内の朝夕の渋滞は深刻だから車が動かないよ」
「自転車とかは?」
と桃香が言うが
「トレーニング、トレーニング」
と千里は言っている。
 
「いやでも、川口市の今のマンションよりかなり便利だと思うよ」
と貴司は取り敢えず朝の通勤手段については触れずに言った。
 

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3人は家のあちこちを見て回った末、外に出て待機してくれていた不動産会社の人に
「ではここに決めます」
と言った。
 
事務所に戻って手続きをする。
 
販売価格は土地込みで約7000万円であった。
 
「お支払いはどうなさいますか? もし頭金を1000万円ほど入れて頂きましたら毎月16万円、ボーナス月40万円の30年ローンくらいになりますが」
 
と不動産屋さんが言う。
 
「7000万円なら現金で払いますよ」
と千里。
 
「何〜〜〜!?」
と桃香が声をあげた。
 
「千里、貴司君を買い取る時に5000万円ギリギリあるかな、とか言ってなかった?」
「うん。あの時は普通預金にちょうどそのくらいの残高があったんだよ」
 
「普通預金以外にならもっとある訳?」
「内緒。桃香目の前にお金があったら全部使っちゃうもん」
「うん。私はそれが欠点なんだ。じゃ千里の資産がいくらあるかについては突っ込まないことにする」
「無尽蔵にあるわけじゃないから、あまり勝手な期待はしないでよね」
「うん。私は日々の御飯が食べられたらいい」
 
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貴司は半ば呆然としていた。
 
それで不動産屋さんは売買契約書を作ってくれて、指定金額を千里がその場で振り込んだ。
 
「確かに頂きました」
 

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12月13日(日)友引。
 
貴司の妹・理歌が結婚式を挙げた。ただしどこかに集まるわけではなく、今どき“流行”の、Zoomを利用したネット結婚式である。
 
結婚相手は大学生時代以来の恋人で、ふたりも随分長い交際の上での結婚となった。千里は貴司と一緒に、兄夫婦としてこれに(リアルで)出席する。
 
この結婚式のリアル出席者:
新郎新婦 坂口栄吾・細川理歌
新郎側:父・母・妹2人の4人
新婦側:父・母・貴司&千里・美姫の5人
 
合計11人+神職さんである(巫女さんはビデオ出演)。全員前日に千里が調達してきた簡易検査キットでコロナ陰性であることを確認している。実は新婦本人も含めた新婦側の6人、それに結婚式への出席は控えたものの現地までは来ている淑子はワクチンも接種している。
 
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マスク着用(三三九度の時だけ新郎新婦はマスクを外す)、祝詞はテープで奏上し、ビデオの巫女舞を上映する。式場は窓を開け、席の間隔は充分離し、式中は全員無言での参加となった。親族堅めの盃は形だけとし、実際にお酒は注がず、飲む真似だけした。
 

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実は理歌からは最初「細川貴司・美映」宛の招待状が届いていて、貴司はこれに“出席”の返事を出しておいた。しかし美映との離婚で美映の分の出席は取り消され、代わりに千里が貴司の妻として出ることになった。一応この時点では細川貴司の婚約者・村山千里の名義である。
 
「まあここだけの話、出さない訳にはいかないから招待状出したけど、美映さんを兄嫁として招待したくなかったから直前に千里姉さんを招待することができるようになって、嬉しかった」
などと理歌は言っていた。
 
千里はこの結婚式・祝賀会には貴司から改めて填めてもらったエンゲージリングを左手薬指に付けて出席する。実際には2016年11月以来ずっと千里が保有していたのだが。
 
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式・祝賀会に出るのは千里と貴司だけなのだが、4人の子供の世話係として桃香、また、この機会に貴司や千里の両親に挨拶をしたいということで、富山県から桃香の母・朋子も出てくることになった。結局“千里の友人”所有のプライベート・ジェットで全員北海道に渡ることになった。なお、朋子・青葉も既にワクチンを接種している。
 
千里たちも朋子も前日12月12日に旭川入りしたので、貴司の両親に挨拶する。
 
「私まだ事態がよく分かってないのですが、ともかくもそちらのお嬢さんはご結婚おめでとうございます」
と言って御祝儀袋を渡した。
 
「あ、すみません。こちらがご挨拶に行かなければならなかったのに」
と貴司の父は言うが
 
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「いえ、お父さん、貴司さんと桃香が結婚する訳ではないですから、特にあらたまった挨拶は不要ですよ」
と千里がコメントする。
 
「そうなるんだっけ?」
と朋子。
 
「そのあたりが実はよく分かってない」
と貴司の父。
 
せっかく遠い所から来てもらったし、祝賀会にも出席しませんか?と貴司の母が誘う。最初はそんなのに着て出る服も無いのでと朋子は言っていたが、祝賀会はネットでやるから服は関係無いと保志絵が言うので、朋子もホテルの部屋から参加することになった。
 

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連れていった4人の子供(全員ワクチン接種済)を淑子も
「みんな可愛いね」
と言って喜び、頭を撫でている。
 
「みんな千里ちゃんの子供だっけ?」
「全員、私の遺伝子上の子供か法的な子供です」
「なんかよく分からないけど、みんな私の曾孫だと思ってもいい?」
「いいですよー」
 
淑子は自分の曾孫の京平だけでなく、緩菜・早月・由美とも遊んであげて
「この子たち4人の子供が結婚するまで頑張らなきゃ」
などと言っていた。
 
そして4人の曾孫に囲まれて記念写真を撮っていた。
 
千里は一度小歌もここに連れてきたいなと思った。ただあの子を連れてくるには“面倒な人”との話し合いが必要である。
 

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緩菜が女の子の服を着ているのを見て、保志絵は千里に尋ねた。
 
「結局、緩菜は女の子として育てる訳ね?」
「本人がそれを望んでいるから。実際医者にも診せたんですけど、あの子完璧に女の子として発達しているんですよ」
 
(取り敢えず肉体的にも完全に女の子であることは黙っておく)
 
「まあ可愛いからいいよね」
「ええ。髪も短く切るのを嫌がるから、ああやって長いまま。でも自然にカールしてるんですよね」
「ああ、パーマ掛けてるんじゃないのね?」
「天然なんですよ。栗色の髪も染めている訳じゃなくて天然で」
 
「そのカールしてるのと茶色いのを除くと、ほんと雰囲気が千里ちゃんに似てるよね」
「ええ。私の娘ですから」
 
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理歌の結婚式は旭川Q神社で行われた。千里が奉職していたのはもう12年前なので人はかなり入れ替わっているものの、斎藤巫女長はそのままだったし、他にも千里を覚えてくれていた人が結構いた。副巫女長は、以前稚内Q神社にいた麻里子さんという人で、実は千里と一緒に新人巫女研修に参加した人であった。彼女も千里を覚えていた。
 
「久しぶり〜」
「元気してた?」
 
「千里ちゃんはもう巫女してないの?」
「越谷市のF神社の副巫女長。名前だけだけど」
 
「おお、やはり千里ちゃんはずっと巫女続けると思ったよ。今日の結婚式は巫女さん抜きだけど、巫女さん入れるなら、千里ちゃんにしてもらいたかった」
 
「私、新婦の兄嫁だから」
「いつ結婚したの?」
「籍だけは近いうちに入れるけど今はまだ法的には婚約者かな」
「ああ。式はコロナが落ち着いてからするんだ?」
「そういう人たち多いよね。それもあるけど夏までは忙しいんだよ」
「へー。でも子供は大きいのに」
「まあ子供製造は先行して」
「ふむふむ。でもこの子、和風美人だね」
 
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今日は緩菜は長い髪をそのまま垂らして和服を着せている。
 
「ロングヘアが好きみたいなんだよね〜」
「千里ちゃんも長い髪は昔のままだね」
「この髪が私のシンボルマークになってる感じ。髪をあげてまとめてると私と認識してもらえないみたい」
「ありがち、ありがち。でもこの子、ほんとに雰囲気が千里ちゃんに似てる」
 
「でももっと大きい子もいたね」
「まあ以前も結婚していたからね」
 
「へ?」
「元々彼と結婚していたんだけど、その後各々別の人と結婚してて、8年ぶりの元サヤ婚」
「それは凄い」
 

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祝賀会は旭川市内のホテルに移動しておこなう。今年はネット祝賀会も随分行われているのでホテル側もしっかり設備を整備している。祝賀会会場に入るのは、新郎新婦のみで、2人はたくさん話したりするので食事はしない。
 
設置されているカメラ内蔵パソコンに向かって並んで座っているだけである。パソコンの操作も新郎がする。操作方法は事前に説明書を渡されているので、彼氏は前日に充分練習していた。会社の仕事もテレワーク・ネット会議なので、操作としては特に問題ないようだった。
 
控室で休んでいたら保志絵さんが来て言う。
 
「ね、ね、千里ちゃんとこの娘さんの誰か、理歌のウェディングドレスの裾を持つ役をしてもらえない?」
 
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「じゃ緩菜がいいかな。貴司さんの一応娘だから」
「了解。じゃ衣装持ってくるから」
 
それで保志絵さんが衣装を着せてくれたが、その時、保志絵さんは、さり気なく緩菜のお股に触っていた。千里はそれを見て楽しい気分になった。後から「緩菜ちゃん、もうおちんちんは取っちゃったの?」と訊かれた。
 
取ったというより消滅しちゃったんだけどね〜。
 

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緩菜は新婦とお揃いのデザインの可愛いドレスを着て、しっかりとトレーンベアラーの役を果たした。この子は笑顔をしている時が多いので、この役には最適だったようである。早月はわりと難しい顔をしていることが多い。
 
今回の祝賀会では千里は貴司とふたりで電子会議出席者に直信で挨拶をして回った。各々の出席者で数分間にわたってメッセージのやりとりをすることもあった(各出席者は実際には各自の自宅にいる)。結果的にはふたりの北海道でのお披露目という感じにもなる。貴司の親族の中には以前から千里が貴司の妻として行動していた時期を覚えている人が多く
 
「出席者表見たけど、なんで千里ちゃんの苗字が村山になってるの?」
などと随分尋ねられた。
 
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「すみませーん。元鞘婚です」
「え?一度別れてて、また結婚するんだ?」
とみんな驚いていた。
 
「なんか別れている間に子供が4人になりました」
「それ各々別の人との子?」
「いや、それが経緯が複雑すぎて、どう説明したらいいのやら」
「4人とも苗字がバラバラだし」
「なんでまた?」
「正直な所、私もよく分かりませんけど、取り敢えず長男は、貴司の種で私が産みました」
「ああ、一番上がそれだとまとまりやすいかもね」
 
なお、阿倍子も美映も結婚していた時期、一度も北海道の地を踏まなかったらしい。保志絵さんが2人を嫁と認めていなかった問題もあるが、阿倍子の場合は身体が弱くて大旅行ができなかったのもある。美映は最初から問題外である。むろん京平は千里が連れて何度も北海道にきて、淑子ともたくさん遊んでいる。緩菜は今回が初めての淑子との対面だった。
 
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「一応籍は年明けたら入れますけど、再々婚でもあるので御祝儀は不要ですので。結婚式自体もオリンピックの後にする予定だし、コロナが落ち着いていてもネット結婚式にするつもりですし」
と言うと
 
「いや、そもそも前回はいつの間にか結婚していたから御祝儀をあげそこなった。祝電も送りたいから入籍する日を連絡してよ」
などと言われた。
 

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女たちの結婚事情(5)

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