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■女の子たちの成人式(8)

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「うんうん」
「セフレですか〜?」「セックス目的じゃなくて生殖目的」
「でも生殖するにはセックス・・・・あ、そもそもボク、セックスとかできないかも。タックを外しても。女の子を抱いても多分性的に興奮しないから」
「そっかー。でも射精はできるのよね?」「一応今の所は」
「じゃ、人工授精という手もあるね。千里、精子ちょうだいよ」
「えー!?」
「そう遠くない内に千里去勢しちゃうのかもしれないけど、取っちゃう前に精子バンクか何かに預けてくれない?それ私があとで使いたいから。私もよく考えたら卒業までは妊娠できないや」
「うーん。結局父親になるのか」
 
「セックスして妊娠させるわけじゃないからいいじゃん?化学合成とかで精子作れたら便利だけどそれはできないし、男の人から精子もらうのも抵抗あるけど、千里は半ば女の子だから千里の精子ならいいかなと。あ、私ひとりで育てるし、養育費とか請求したりはしないし、千里は他の男の人と結婚していいよ」
「ボク、男の人と結婚するのだろうか・・・・」
「私がその子の父親が千里だということ、誰にも言わずにおけば、千里が性別を変更するのに何も問題ないよ。性別を女にすれば男の人と結婚できる。あ、その時その人との赤ちゃん欲しかったら、私が卵子あげるね」
「・・・それいいかも。ボクが桃香に精子あげる代わりに桃香から卵子をもらえばいいのか。でも結婚とか面倒くさそう。それと精子預かってくれる所ってどこにあるんだろ」
「医学部の友達に聞いてみるよ。確か保管料は年間5万くらいと聞いた気がする」
「でもそれって本来不妊治療とかの目的では?あと癌の治療受ける前とか」
「そのあたりはコネと誤魔化しで」
 
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「でも今日は千里が確かに女の子であることを裸を見て確認したから満足」
「じゃ寝ようか?裸のままでもいいよ。何もできないけど」
「・・・・確かに男としてはHできないけど、それ女役ならいけるよね」
「え?え?」
「でも今日はいいわ。そのうち寝込みを襲っちゃおう」
「怖いなあ。やはり今日は布団を少し離して寝ようかな」
最近はよく千里が泊まるので布団は2組用意してあった。ふたりは冗談でひとつの布団でじゃれあって寝ることもあったが、普段はお互い眠くなったら勝手に寝るというルールだったので、各々の布団で寝ていたが、桃香の希望でふたつの布団は5cm離してあった。この5cmという距離が千里の妥協の産物だった。
 
「成人式の日に・・・」
「え?」
「成人式の記念に、Hするカップルってよくいるじゃん。千里、成人式の日にやらせてよ?」
「男の発想だ、桃香って」「あはは」
「でもそういうことするカップルって、ふだんも普通にしているのでは?」
「確かにそうだ」
「あと振袖脱いじゃうともう着れないよね」
「帰りは洋服だね」
 
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クリスマスイブは恋人のいる子はそれぞれの相手と一緒に過ごしているようだったが相手のいない子はいない子だけで集まり、クリスマス女子会となった。桃香と千里もその会に出席した。「あれ、桃香と千里はふたりで熱い夜を過ごすのかと」
などと朱音が言う。「えー、別に私たちはそんな関係じゃないよ」と桃香は答えた。「ま、シングルベル女子会もあまりメンツが少ないと寂しいけどね」いつも集まるのは7人だが、最近恋人ができた友紀に、前から彼氏と付き合っていた玲奈と美緒の2人も来てないので、今日のメンツは4人である。
 
「桃香と千里が『恋人クリスマス』になって来なかったら生物科のグループと合同女子会にしようかとも言ってたんだよね」と言っているうちにその生物科の子から電話が掛かってきて、向こうはバイトで来れない子も出て2人になってしまったので合流していいかということだった。歓迎して結局6人でのクリスマス会となった。「あれ、千里しばらく見ないうちに随分女度が上がってる」と生物科の香奈が言う。「鍛えてるからね」と桃香が言った。「え?何?桃香、千里を調教してるの?」
「うんうん。女として調教」千里も笑って「はい、調教されてます」と答えた。
 
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その夜は千里が桃香のアパートに泊まることになっていたが、ワインの飲み過ぎて酔いつぶれた朱音もタクシーでいっしょに連れてきて布団をひとつ敷いて寝かせた。布団はふたつあるので、ひとつに朱音を寝せて、もう一つの布団で桃香と千里が寝ようと算段していた。ふたりで協力して夜食用にクッキーを作り、オーブンで焼き上がった頃に、朱音が起きた。
「あれ、ここどこ?」
「桃香の家だよ」
「ああ、もしかしてカップルの愛の巣にお邪魔しちゃった。ごめん。せっかくのクリスマスイブなのに」
「ほんとに私たちそんな関係じゃないから気にしないで。朱音も遅くなった時とか自由に泊まってよ。私でも千里でもここの鍵持ってるから」
「わあ、鍵持ってる関係なんだ」
「いや、それは単なる便宜上の問題だから。クッキー良かったら食べて」
「ありがとう」
といって朱音は寝ぼけまなこでクッキーをつまむ。
「でも私、ホモ・レズ・オカマ・オナベ、理解あるつもりだから大丈夫だよ」
「ボクはオカマで桃香はレズだけど、ボクたちはほんとただの友達だから。今夜も一緒に夜通しレポート書こうと、予め資料をここに持ち込んでたし」
本当は資料はこちらにしかないのであった。
「怪しいな〜。そうだ千里」
 
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「なに?」
「正直に答えろ。千里、おっぱいあるだろ?」
「あ、分かった?ヒアルロン酸注射だよ」
「ああ」「知ってる?」「知ってる。私もやろうかと思ったことあるから」
「え?朱音知ってたんだ。私は全然知らなかった」
「そりゃ、桃香みたいにもともと胸大きかったらね。でもあの注射、一時的に大きくするだけで、何ヶ月かたったら元に戻っちゃうよ。シリコン入れたらいいのに」「まだそこまで気持ちが固まってなくて」「ふーん。正直でよろしい」
「理解してくれてありがと」
 
「正直ついでにもうひとつ答えなさい」「ん?」
「ふたりは実際どこまでやったのさ?C?C++?C寸前?Bダッシュ?」
「なにそのC++とかBダッシュって?」「C++は遺伝が発生する状態。BダッシュはBから微分デルタだけ進んだもの」
「意味が分からない。朱音だから言うけど、裸で抱き合ったことはある。でも性欲とかの目的でしたんじゃないからノーカウントだよ」と千里。
「ほんとにほんとに恋人じゃないの?」
「うん。朱音にまで嘘つかないよ。ボクは女の子に興味無いし、桃香は男の子に興味ないから、恋愛が成立しえないんだよ」
 
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「それだけどさ、それって千里が男の子であった場合でしょ?千里が女の子になっちゃうと桃香には理想の相手になるし、そうなると桃香は男役として千里に攻勢掛けだして、千里も男役の桃香になら惚れる可能性がある」
「うーん。理系ならではの鋭い推理」
「これは美緒の推理なのさ」
「でもそういう事態にはなってないよ。たぶん」と千里が困ったように答える。すると桃香が「先生、質問です」と言った。「何だね、桃香くん」
「千里を何度か誘惑してみたのですが、このお嬢さん、なかなか言うことを聞いてくれません。どうしたら口説き落とせるでしょう?」
 
「なるほど。時間の問題か」といって朱音は笑った
「で、千里、ここにどのくらい入り浸ってるの?」
「週に3〜4日かな」「おお、既に半同棲」
「あはは。でもここ千里の荷物増えたね。いっそ向こうは解約してこちらでルームシェアしようかね」
「おお、同棲の相談か」
 
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「そうだ、成人式はふたりとも振袖?」「うん」「うん」
「あ、やはり千里は振袖なんだ!もし背広とか着てきたらみんなで寄ってたかって脱がせて振袖かドレス着せよう、なんて妄想してたんだけどな」
「あはは。それはよくある萌え小説の展開」「でもおっぱい大きくしたんじゃ背広着れないね」「そもそも背広なんてボク持ってないよ」
「むしろ桃香のほうが振袖って意外だ。桃香こそ背広ではないかと」
「うーん。私も自分がFTMではと思った時期もあるんだけど、やはり私はただのレズのようだ」「そうかそうか。でもやはりおふたりさんお似合いだよ」
 
「朱音も振袖?」「それがさあ・・・・」「何かあったの?」
「私は一応自分で振袖買ったんだ。安物だけど。でも母ちゃんも勝手に買って送ってきてさ。その件で大喧嘩したからもう送ってきたの捨てちゃおうかとも思ったんだけど」「もったいない」「だよね。着られもせずに捨てられては振袖も可哀想だし」「両方着てあげるしかないんじゃない?」「やはりそうか」
 
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「前撮りの写真、両方で撮って、本番は自分の好きな方を着ればいいよ」
「だね〜。ああ、よけいなお金が掛かる」「着付け代も掛かるもんね」「うん」
 
年末は桃香は帰省して2日の地元での成人式に出ることにしていたが、千里は帰省したくなかった。かなり女っぽくなってしまった自分をあまり親に見られたくない気がした。そこで忙しいから帰れないと連絡しようかとも思ったのだが、桃香から諭された。「男の子でいられる最後のお正月になるかもしれないから、まだ一応男の子である状況をご両親に見せてきなさいよ」と。
 
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