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■女の子たちの成人式(7)

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(C)Eriko Kawaguchi 2011-02-01
 
やがて振袖ができてきた。桃香と一緒に取りに行く。桃香の振袖もその一週間前に仕上がりやはり千里とふたりで取りに行っていた。桃香も振袖は自分では着れないので、袖を通して適当に着て楽しんでいた。千里は受け取ったらその場で1度着付けしてもらい、記念写真を撮ることにした。たまたまその日は先客があり、着付け士の人の都合で少し待つことになったが、その待ち時間に自分も一緒に着れたらなあ、などと言っていたら、鈴木さんが「あら、お友達も振袖をお持ちになれば一緒に着付けしましょうか?」という。「ここで買った服ではないですけど」と言ったが鈴木さんは「誤魔化しておけば大丈夫です」などと言う。桃香は大急ぎで自宅に戻り、振袖のセットをと下着セットを持ってきた。ちょうど、千里の着付けが終わり、その美しい姿ができあがった所だった。「凄い。可愛い!きれい!」と桃香は歓声をあげ、デジカメで数枚写真を撮った。そして着付けルームに消えていく。20分後、桃香の振袖姿もできあがった。今度は千里が数枚写真を撮る。
 
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「お並びになってください。おふたりそろった所のお写真撮りますね」と鈴木さんが言い、カメラを操作してくれてふたり揃っての記念写真もできた。
「提携の写真館にお寄りいただければ、プロのカメラマンにも撮ってもらえますよ。料金3枚セットで2万円になりますが」というが、それは12月に入ってからにすることにした。その日はそのまま町を散歩することにした。
 
「これでふつうに町を歩いて遊んでたら、母ちゃんに叱られるな」と桃香は言う。「よごしたらどうする?と」と千里も笑って言った。
「そうそう。でも服は着てあげないと可哀想だわ」と桃香は言った。
「でもやはり成人式前に大きく汚したりしたら大変だよ」
「うんうん。とりあえず成人式前には、写真の前撮りする時だけ着ようか」
「そうだね。で、成人式終わったら、普通にこれ着て歌舞伎とかでも見に行ってみたいかな」「歌舞伎よりクラシックのコンサートとかのほうが」「それもいいね」
ふたりは成人式までは念のため大事にしておいて、終わったらたくさん着ようということで意見が一致した。
ふたりはその日はドーナツショップにより、桃香の母が見ていたら悲鳴をあげそうなチョコドーナツとコーヒーを頼んで、しばし友人の噂話などで盛り上がったあと、その日は桃香のアパートに帰り、そこでふたりとも振袖を脱いで、そのままその日は千里は泊まって行った。
 
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朱音はとりあえず部屋の畳の上にふたつの振袖を広げてため息をついた。
「捨てちゃうのは可哀想だよね。振袖だって、女の子に袖を通してもらいたいよね。しかし・・・・どうするか。2つ重ねて着たりはできないしなあ」
しばらく悩んでいた朱音は考えても仕方ないと、振袖2着をそのままにして飲みに行こうとしたが、少し思い直して、それをたたみ始めた・・・・が。
「ああん、たたみ方が分からないよお。変なたたみ方しちゃったら御免ね」
 
千里はそのビルの前を30分くらい行ったり来たりしていた。
思い切って「やっちゃおう」と思ってここまで来たものの、いざとなるとなかなか中に入る勇気が無かった。
千里は近くの別のビルの壁に身体をもたげて、大きく息をついた。
いろいろな思いが頭の中を駆け巡る。
「よし」
千里は目的のビルの中にしっかりした足取りで入って行った。
 
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桃香は優子から来たメールのタイトルだけ見てしぱらく悩んでいた。
「このサイズは異常だよなあ。添付ファイルも無いテキスト形式メールで100Kって・・・・・2000行はあるぞ。たぶん。何が書いてあるんだ?」
タイトルは「お願い。読んで。あなたの優子より」である。
やがて大きく息をすると、桃香はそのメールを読まずにゴミ箱に放り込んだ。
 
前撮りは12月15日にお願いすることにした。結局桃香の方の呉服屋さんの前撮りの権利は行使せず、千里の前撮りのほうに桃香が乗って、各々の単独の写真2枚ずつと、ふたりで並んだ写真1枚を撮ってもらうことにした。千里の着付け料は無料なので桃香の着付け料と写真代あわせて3万5千円ということだった。
 
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14日の火曜日のほうがふたりともバイトが休みになり都合が良かったのだが、火曜日は行きつけの美容室が休みという問題があった。髪のセットとメイクも前撮りのセットの中に入れると安く済むようであったが、髪はいつもお願いしている美容師さんにセットしてもらいたかったし、メイクは自分たちでしたかった。
 
当日は講義は自主休講することにした。午前中にふたりで美容室に行って髪をセットしてもらい、午後に指定の写真館に行った。着付け士の人も写真館で待機しているのであった。12月は前撮りする人が多いのでそういう態勢になっているようであった。
 
先に桃香が着付けしてもらい、スタジオで何枚か撮影する。桃香が着付けしてもらっている間に千里は自分で長襦袢まで別室で着ておいたので、あまり待ち時間無しで千里の着付けも終わり、撮影に入ることができた。それからふたり並んでのところを数枚撮影してもらった。
 
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撮影した写真を即モニターで確認する。各々単独のもの2枚ずつ、並んだもの1枚というオーダーだったので、ふたりで各々自分のと相手のを1枚ずつ選び並んだ写真はふたりで話し合って1枚選んだ。実際にはふたりとも「これ」と指さしたのが同じ写真であった。ふたりは思わず微笑んだ。
 
写真の仕上がりは成人式の後になるということであったが、データをUSBメモリでもらえたので、桃香のアパートに戻ってからパソコンで改めて見てみた。「千里、可愛い〜」「桃香も可愛い〜」とふたりで歓声を上げて写真に見入る。
「この写真館は当たりだね。成人式の写真って、先輩達のとか従姉のとか見るとほんとにひどいのが多いよ」
「うんうん。これはほんとにプロの写真。ふたりともちゃんと可愛く撮れてるもん」
「ちゃんと表情のいいところを狙って撮ってるね。この選んだ写真以外のものであの場で見たものも、けっこう良かったよ」
ふたりはしばらくお互いの写真を見ていたが、そのうち桃香がふたり並んだ写真を見て「並んで写ってると、結婚写真みたい」などと言い出した。
 
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「でも女同士で結婚できるんだっけ?」と千里はまじめに返事する。
「あれ?千里ちゃん、男の子じゃなかった?」「えー!?ボク女の子だよ。だから振袖着てるし」「そうだっけ?確認したいので裸になってみてください」
「寒いから嫌です」「でも女の子なら私の恋愛対象です。襲っちゃいます」
「抵抗します」「性欲ありますか?」「あります」「私に欲情しませんか?」
「時々します」「私が許可するから今日はやっちゃってもいいですよ」
「今は欲情してません」「しょうがないなあ。これでどうですか?」
桃香は服を脱いで、全裸になった。
 
「寒いよ。風邪引いちゃうよ」と千里は冷静に応じる。
「寒いから千里も裸になって、私をお布団の中に連れてって」と桃香は熱い視線で千里を見つめた。
「ごめん。ボクそれはしてあげられないんだ。桃香だから見せてあげる」
というと千里は服を脱いだ。
「え!?」
 
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桃香は目を疑った。
千里の胸は小さいものの微かに膨らんでいる。Aカップくらいありそうだ。更には股間には桃香が思ったものは存在せず、小さな丘と一条の縦筋が。
 
「千里、いつの間に手術しちゃったの?完全に女の子の身体じゃん」
 
「手術とかしてないよ。おっぱいはね、ヒアルロン酸注射。プチ整形というやつだけど、整形手術じゃなくてただの注射だから、何ヶ月かたつとヒアルロン酸が身体に吸収されて小さくなっちゃう。それと極端に大きなサイズにはできないから、今のボクにはこのくらいのサイズが限界。これだけ注射してもらうのにも15万掛かっちゃったけど」
「おちんちんは!?」
 
「タックしてるだけ」「タック?仮縫いってこと??」
「近くに寄ったり触ったりして観察することを許可する」
桃香はそばによって、よくよく観察した。「ん?」などと言いながら触ってみる。
 
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「凄い!なるほど。こうなってるのか。確かにこりゃ仮縫いだ。
おしっこもできるようにしてあるんだね」
「うんうん。これ最初考えた人は天才だと思う。アメリカではホントに医療用ホッチキスで縫っちゃう人もいたんだけど、日本ではボクがやってるように、接着剤でくっつけておくやり方が普及したんだ。一応女の子の股間に見えるでしょ。これお風呂に入っても取れないよ」
「へー、接着剤なのか。これなら女湯に入れるじゃん。でもたしかにこれじゃ男としてのHは不可能だよね」
 
「でもこれやってると、睾丸が体内に押しこまれてて高温になってるから機能障害が起きやすい。男性として生殖する気のある人は絶対やっちゃいけない。」
「そうか。男として生殖する気はないのか」
「できたら女として生殖したいけど、卵巣や子宮がないから出来ないけどね」
「私は卵巣と子宮あるけど、女として生殖できないかも。男との恋愛面倒くさいし。千里となら生殖できそうな気もしたんだけど」
 
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「ごめん。ボクは桃香とはお友達でいたいし、恋人にはなれない。恋愛的に女の子にほとんど興味無いんだ」
「うん。それは承知。私も男の子には恋愛的な興味無いし。でもだから千里と生殖したいと思ったのよね。私も千里と恋人になるつもりは無いよ。私も千里とはお友達のままでいたい」
「ちょっと待て?恋人にはならず生殖だけ??」
千里はストーブのスイッチを入れながら訊いた。
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