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■女の子たちの成人式(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2011-01-31
 
翌週火曜日。通常の講義のあとゼミに参加し、そのあと学食で待ち合わせて桃香と一緒に町に出、あの呉服屋さんに行く。今日も千里はキュロットを穿いている。お店に入っていくと鈴木さんが「いらっしゃいませ。あらお友達ですか」と尋ねる。「ええ、今日は振袖を選ぼうと思って。でもひとりでは不安なので友人についてきてもらいました。とりあえず少し見せてください」と答える。「はい、では自由に見て下さいね」とにこやかに言う。
 
「ここの呉服屋さん、変わってるね。これだけ既製品を大量に展示して」
「ふつう違うの?」
「呉服屋さんって、何もディスプレイしてなかったりするよ。畳敷きで、お客の求めに応じていろいろ布地を出してきて見せてくれる。一部の反物を撞木(しゅもく)に掛けて展示してるけど、仕立て上がりの状態のものはせいぜい店頭に1〜2個飾ってるだけ。布地が傷みやすいからね。この呉服屋さんは洋服屋さんの感覚に近いね」
「へー。たぶんそちらの奥のスペースがそういう昔風の呉服屋さんのシステムかな。こないだ、あちらで京友禅の反物、見せてもらったよ」
「なるほど、店の奥がクチュール、手前がプレタというわけか」
「そうそう。こないだ目を付けたのはこれ」
といって千里は先日見てけっこう気に入った友禅風の反物を指さした。
「ああ、可愛い。けっこういいと思うよ、これ」
そこに鈴木さんが近づいてくる。
 
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「お客様、良ろしかったら奥のほうのシミュレーターで着付けした状態のところを見てみませんか?」「シミュレーター?」
「ええ。お客様の写真を撮らせていただきまして、その写真の上にパソコン上で着物を着せて、雰囲気を確認して頂くのです」「わあ、ハイテクなんだ!」
 
鈴木さんがカメラを出してくる。
「こちらで撮影します。両手を伸ばしたまま肩の高さまで上げてください。はい。そんな感じで。撮影します。。。。。。そのまま一回転して頂けますか?」
千里は何かおもはゆい感じがした。
 
「今見ておられました商品はこちらですね」
といって鈴木さんはマウス操作でさきほど見ていた友禅風の振袖を選択する。画面の中の千里がその振袖を着た。
「なんか恥ずかしい〜」と千里は真っ赤になる。
「CGで照れることないのに。やっぱりこれ可愛いよ。すみません、これいろいろな商品を着せてみれるんですよね?」
「ええ、お客様パソコンの操作に慣れておられましたら、ちょっと自由に操作してみられますか?
「いいんですか?」というと桃香は、マウスを受け取り、着物選択のボタンを押して、商品のリストを出して見る。
 
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「凄いたくさんありますね」
「はい。お店の展示スペースのほうに出しているのは30種類ほどですが、こちらの店の奥のほうに振袖の生地は150種類ほど用意しております。
それ以外にも、倉にあと600種類ほど、また商品として製作していないものでもお気に入りのものがございましたら、工房に発注して制作させることができます。多少のお時間はかかりますが」
「システムよくできてますね」
 
着物の選択は、価格帯・テーマ・色調などの条件を指定して検索するほか、工房やデザイナーの指定、また「優しい系」「キュート系」「派手系」「古典柄」
「未来風」などでの検索ができるようになっていた。千里には多分派手なのが似合いそうだし古典柄が好きそうだなと思い、そういう条件で検索する。
 
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着物の縮小画像が右側にリスト表示され、各々に価格と納期が表示される。桃香は価格表示モードを「フルセット価格」に切り替えた。ざっと見ているとだいたい仕立て上がりには2ヶ月ほど必要なようだ。所々『要工房発注』というマークの付いているものもある。これが未制作のものなのね、と桃香は判断した。マークの上にマウスオーバーすると制作に必要な期間が表示された。反物の制作は半年・1年と掛かるもよう。桃香は「工房発注品を含む」というチェックボックスを外した。
 
しかし私もこういう店で頼みたかったぞ、と桃香は思った。桃香が頼んだ振袖は反物の写真しか見てないので、実際に着てみてどんな感じになるかはバクチである。
 
千里は赤い浴衣が似合ってたし、さきほど見た友禅風のものもの赤系統だし、赤系統が無難かなと桃香は思い、その条件を指定、候補が30個ほどになった。ざっと見てみて自分の好みで、これは違うなと思うもののところで右クリックし、ポップアップから「候補から外す」を選択して消していく。最終的に5個の候補が残った。千里がお気に入りだと言ったものも候補に残っている。
「着せて比較する」のボタンを押した。
 
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「お客様、凄いですね。どうしてそんなに操作分かるんですか?」と鈴木さんが驚いている。「え?いろんなソフト扱ってると、けっこう類推ができますし」と桃香は答えた。本人は意識していないが、このあたりは理系女子の強みである。
 
画面の中で5人の千里が並び、それぞれ別の振袖を着ている。
「どう?千里」と言って桃香は画面の中の千里を全員ぐるっと回転させてみた。「これ、好みかも」と言って右から2番目のを千里は指さした。
単独表示のボタンを押すと、その千里だけが表示される。分解写真のボタンを押すと、いろいろな角度から見た様子が並べて画面に表示された。
 
「うんうん。いい感じよね」と桃香も言う。フルセット価格62万8千円で、今注文するとお仕立て上がりは11月20日予定となっている。
「これ店内在庫がありますよね。棚番号C6で」
「お客様、ほんとによくお分かりで」
鈴木さんは本気で感心している。そして奥のほうの箪笥から生地を出してきた。
「ちょっと肩に掛けてみられますか」
少しはにかんでいる千里を促して、鏡の前で生地を肩に掛けさせた。
 
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「これ好みです」と千里は嬉しそうに言った。
 
桃香は更にパソコンの操作を続けていた。この商品を選択した上で
「類似品検索」のボタンを押す。20個ほどの候補が表示される。その中の3つを選択した上で、「選択したものを比較」というボタンを押す。見比べてみるが、やはり今選んだもののほうがいいと桃香は判断した。しかしそんな操作をしていたことまでは言わずに桃香は単純に「うん、似合ってるよ、千里」と笑顔で言った。
 
千里はその振袖を買うことにした。支払いは現金で振り込むことにし、口座番号をきいて、その場で携帯から振り込み指示を掛けた。鈴木さんは即振り込んだというのに驚いていたが、すぐに入金を確認して、さっそくお仕立ての手配を掛けた。
「お仕立て上がりは11月5日金曜日になります」
「パソコンに表示されていたのより早いですね」
「あれは多少の余裕を見ておりますので。それに現金でお支払い頂きましたし」
と鈴木さんはにこやかに答えた。
 
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千里はその他に既製品の街着をひとつ、和服を着る練習用に買っておきたいと言った。店頭に並んでいる品の中から感じの良いのを選ぶ。19800円であった。千里が支払いをしようとしたら、桃香が「振袖買ったんだから少しサービスできません?」と言う。鈴木さんは「少々お待ちください」と言って奥の方で店長と相談していたが「それでは無料にさせて頂きます」と言った。「わあ、言ってみるもんだ」と桃香は嬉しそうに言った。「ありがとうございます」と千里も喜んで言った。
 
「でもやはり着付け教室とか通った方がいいのかな」
お店を出て近くのマクドナルドに入りバーガーを食べながら千里は桃香に相談する。
「うーんと。着付け教室、来るのみんな女性ばかりだよ。で着付けするのに下着姿になるからさ・・・・千里、豊胸手術とかはしてないよね?」
「あ、やばいか」
「男の人向けの着付け教室もあるけど、その場合は着付けるのは男物という」
「うーん。つまり自力で何とかするしかないか。ビデオとか見て頑張ってみよう」
「うちの母ちゃんなら、この手の着物でも着せつけれると思う。今度の連休に時間取れるなら、うちの実家に来る?」
「行く行く!少し勉強させてくださいませ。そうだ。着付けに必要な小道具が分からなくて。一応振袖用の小物セットは今日受け取ってきたけど、街着とはたぶん違うよね」
「うん。違うと思う。ちょっと電話してみよう」
桃香はその場で実家に電話して、和服の着付けの練習したい友人を連れていくから少し教えてやって欲しいと言って了承を得た。また着付けに必要なものを聞き、メモしようとしたが、よく分かってない人が買いに行っても間違ったの買うかもしれないからこちらで買っておくからサイズだけ教えてと言われた。千里から聞きだし身長169でB75W59H92と伝えると、背の高い子だねと驚かれた。肩幅を聞かれたのでその場で計って42cmと伝えると、肩幅も広いねと言われた。
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