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■少女たちの基礎教育(8)

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千里はボウリングにも興味を持ったが、輪投げには異様に関心を示した。
 
千里が実際問題として輪投げの輪を百発百中させるので
 
「あんた、輪投げの天才だね!」
と津気子は実際驚いて言う。
 
「おしえてもらったー」
「誰に?」
「どこかのおねえさん」
「へー。それ輪投げの選手だったのかもねー」
 
と言ってから津気子は
「あんた、この距離から入るなら、少し遠くから投げて入るように練習すればいい」
とアドバイスする。
 
「うん」
と言って千里は最初1mくらいの距離から投げていたのを少しずつ遠くから投げて遊んでいたようである。
 

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11月下旬。タマラの一家がアメリカの父の実家に里帰りしてきたということで千里の家に3人で来て向こうのお土産をくれて少しおしゃべりしていた。
 
ところで津気子はあまり英語が得意ではないが、タマラの母・ヤヨイもあまり日本語が得意ではない。タマラの父・ピーターに至っては日本国籍まで取ったのに実は日本語がほとんどできない(よく帰化申請が通ったものである!)。
 
それで千里の日本語は津気子が英語に訳し、タマラやピーターの英語はヤヨイが訳すという形で会話は進行した。
 

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おやつを食べている間は子供たちもおとなと一緒に居たものの、おやつが尽きるとタマラが「なにかあそぼう」と言って千里とふたりで奥の部屋に行く。それでいつの間にか姿を現していた小春と3人で輪投げを始めた。
 
それでおとなたちは何気なく子供たちが遊ぶのを見ていたのだが、千里がほとんど外さずに輪をピンに入れるので
 
「She's so good at quoits!」
とピーターが言う。
 
津気子は she というのでタマラちゃんかコハルちゃんのことか?と思ったものの、すぐに千里のことだと気づく。あれ〜〜?タマラちゃんのお父さん、千里のこと女の子と思ってる??と思ったものの
 
「Chisato loves that game」
と言う。
 
「Then, let me make her a wooden quoits」
などとお父さんが言い出す。津気子はそんなわざわざとか断ろうと思ったものの、どうやったら断ればいいのか英語が分からないのでその日は曖昧に微笑んでいた。
 
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すると翌日またタマラを連れてきたお母さんが
 
「ムラヤマさん、これ私のハズバンドからのプレゼント」
と言って、細い板を十字に組み5本のピンを立てた輪投げ(輪は太いロープを丸くしたもの)を持ってきてくれた。
 
「わあ、Thank you very much!!」
 
「同じもの2作って、ひとつタマラに、ひとつ千里に」
「Wonderful. He works well!」
 
それで津気子はタマラのお母さんに御礼に冷凍していた鱒の切り身をあげると
 
「私もタマラもトラウト大好き」
と喜んでいた。
 

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12月22日(木)、来年入る予定の幼稚園でクリスマス会があるというので、入園予定者が招待された。千里もタマラもそこに入る予定なので、お出かけする。タマラは赤いドレスを着ていた。千里は青いトレーナーと下は黒いジーンズのロングパンツを穿いていた。
 
「チサトもドレスにすればいいのに」
と最近はだいぶ日本語が使えるようになってきたタマラが言う。
 
「わたしもスカートがいいといったけど、おとなのじじょうだって」
「オトナのジジョウって、わたしもきいたことある。おとなもタイヘンみたい」
「だねー」
 
この日は千里の母は漁協の用事で呼び出されてしまったのだが、ヤヨイが私が面倒見ますよというので、じゃお願いということで頼み、千里とタマラの2人がヤヨイに連れられてやってきた。
 
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幼稚園に着いて、まずは受付の所で名前を言うと、最初タマラに赤いリボンのついた「はやかわ」という名札、千里に青いリボンのついた「むらやま」という名札を先生は渡そうとしたが、本人を見て先生がピクッとする。
 
「あれ、むらやまさん、女の子?」
「エエ、コノコはオンナノコですよ」
「すみませーん。間違ってました。今作り直しますね」
と言って、先生は予備の赤いリボン付き名札に『むらやま』と書いて、千里に渡した。
 

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中に入っていき、飾られている大きなクリスマスツリーを見て「きれーい」などと言っていた時、千里たちは近くに、妙に違和感のある女の子(?)を見る。
 
「ね、ね、なまえなーに?わたしハヤカワ・タマラ」
「わたし、むらやま・ちさと」
とふたりが名乗ると彼女(?)は、
 
「ぼく、まりこ・ともすけ」
と名乗った。
 
彼女は「まりこ」と書かれた青いリボンの名札をつけている。
 
千里とタマラは顔を見合わせた。
 
「まりこちゃん? でも、にほんではなまえ・みょうじ、じゃなくて、みょうじをさきにいってなまえをあとでいうんだよ。ブラジルかどこかからきたの?」
 
「えっと、ぼく、にほんじん。みょうじがまりこで、なまえがともすけ」
 
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ふたりはまた顔を見合わせた。
 
「ともすけって、おとこのこみたいななまえだね」
「うん。ぼく、おとこだよ」
 
「え〜〜〜!?」
と千里もタマラも驚く。
 
「おとこのこなのに、なんでスカートはいてるの?」
「おとこのこがスカートはいたら、いけないのかなあ」
 
と彼が言うと
「ううん。そんなことないよ。おとこのこでもスカートはきたかったら、はいていいとおもうよ」
とタマラが言う。
 
「おねえちゃんが、スカートはいて、おともだちのところのクリスマスかいにいくといってたから、ぼくもスカートがいいといったら、おかあさん、おこったみたいで、かってにしなさいといわれた。どうしておこったんだろう」
 
「べつにおこることないよねー」
「うん。ともすけくん、スカートにあってるとおもうよ」
 
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とタマラも千里も言ってあげる。女の子は小さい頃から、おせじがうまいのである。
 
「おねえさんはしょうがくせい?」
「うん。しょうがく3ねんせい」
「おおきいね」
 
「こはるとどちらがおおきいかな」
と千里が言うと
「こはるって、ようちえんせいかとおもうと、こうこうせいくらいにみえることもあるよね」
とタマラは言っている。
 
「あれ、ふあんていなんだとかいってたよ。ふあんていってどういうことかな?」
「なんかむずかしそうだよね」
とふたりは言っている。
 

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そんな話をしていた時、幼稚園の先生がその付近にいる子に声を掛ける。
 
「ゲームをしますよ。いらっしゃーい」
「はーい」
 
と言って、千里もタマラも、スカート姿の鞠古君も一緒にそちらに行く。
 
「玉入れ競争をしますよぉ。男の子と女の子に別れようね。男の子はこちらで白い玉を入れます。女の子はこちらで赤い玉を入れます。勝った方には素敵な賞品が出ますよ」
 
と園長先生が言う。
 
それでタマラや千里は赤い玉が転がっている方のゴールのそばに行く。鞠古君は白い玉が転がっている方のゴールに行く。ところが鞠古君がスカートを穿いているので、先生から言われる。
 
「君、女の子は向こうのゴールだよ」
 
すると鞠古君は
「ぼく、おとこのこ」
と主張する。
 
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「男の子になりたい女の子なのかな?だったらいいよ。君はこちらで入れてね」
「うん」
 

「こちらが賞品ですよ」
と言って、先生は大きな箱と小さな箱が並んでいるのを見せる。
 
「勝ったチームには豪華な賞品が、負けたチームにも残念賞があるから頑張ってね」
と言う。
 
ゴールは女の子は力が弱いだろうということで、女の子用のゴールが少し低めにセットされている。先生が笛を吹き、玉入れが始まる。
 
すると輪投げで鍛えている千里やタマラがどんどん正確に玉を入れていく。それでまだ終わりの笛が鳴る前に、女の子のゴールの方は玉が無くなってしまった。慌てて先生が笛を吹いて終了とする。
 
それで両方のゴールに先生がついて「1」「2」と数えながら出して行くのだが、赤の方が多いのは明白である。結局赤は32個、白は20個と大差が付いていた。
 
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「じゃ2回戦行きます」
と言う。
 
本当は1回だけのつもりだったのだが、思わぬ結果になったので挽回のチャンスを与えようととっさに考えたのである。ついでに赤のゴールを調整して白のゴールと同じ高さにした。
 
それで2回戦を始めるものの、あっという間にまた赤の方は玉が無くなってしまう。笛を吹いて終了させたものの、園長先生は頭を抱えている。
 
実は男の子が勝つだろうと思い、大きな箱に男の子用の賞品、小さな箱に女の子用の賞品を入れておいたのである。
 
しかし仕方ない。数えてみると、赤は32個(全玉)、白は24個であった。
 

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「それでは勝った女の子チームには豪華な賞品をあげます。女の子の代表、そこにいる外人さんの女の子、いらっしゃい」
 
と言われて、私のことかなあ、という感じでタマラが出て行く。そして園長先生はタマラに小さな箱を渡した。タマラが喜んで持ってくる。
 
「負けた男の子チームにも残念賞をあげます。代表でそこの坊主頭の男の子、いらっしゃい」
 
それで出て行ったのが、後に千里たちとも仲良くなる田代君であった。園長先生は田代君に大きな箱を渡した。彼がそれを男子たちの所に持ってくる。
 
「せんせい、どうしてかったほうがちいさなはこなんですか?」
とひとりの女の子から質問が出る。
 
「皆さん、舌切り雀のお話は知らないかな?」
と園長先生が言うと
 
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「あぁ!!」
と声が出る。たいていの子が知っているようである。
 
「小さなつづらを持ち帰ったおじいさんは、金銀財宝、大きなつづらを持ち帰ったおばあさんは、へびやとかげが入っていたのよね。知らない子にはこのお話、あとでしてあげるね」
 
と園長先生は説明するが、結構冷や汗であった。
 

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箱を開けて見ると、タマラが持って来た小さな箱には、セーラームーンの様々なキャラクターのハンカチとか、個包装のクッキーなどが入っている。一方で田代君が持っていった大きな箱には、クレヨンしんちゃんや南国少年パプワくんなどのキャラクターのハンカチとか、個包装のキャンディなどが入っていたようである。
 
「これ、さいしょからこちらがおんなのこようだったのでは?」
と難しそうな顔をした女の子が言う。これが後に千里の親友となる蓮菜だった。
 
「きっと、おとなのじじょうなんだよ」
と千里が言うと
 
「よくあることだよねー」
と恵香も言っていた。
 
ちなみに、タマラはセーラージュピター、千里はセーラーマーズのハンカチを選んでいた。
 
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千里が明らかに女の子用と思われる赤いリボンの名札をつけ、セーラー戦士のハンカチを持ち帰ってきたのを見て、津気子は「うーん・・・」と腕を組んで悩んだ。
 
 
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