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■少女たちの基礎教育(3)

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少し時を戻して、1994年2月下旬。
 
その日、少女は母親に手をつながれて、小さな稲荷神社の境内を横切って家に帰る所であった。そこに最近近所に引っ越して来たアメリカ人の母娘が向こう側からやってきた。こちらの母親が軽く会釈をすると向こうも会釈し
 
「スミマセン、コノアタリで、ウシのニクカウの、ドコイキマスか?」
と片言の日本語で話しかけてきた。
 
それでこちらの母親が
「牛の肉だったら、駅前のスーパーでも売ってるけど、もし自動車をお持ちでしたらジャスコ(*3)まで行った方が安く買えるかも」
 
と言うものの、通じてないようなので英語で言い直す。
「You can buy beef at the supermarket near the Rumoi station, but if you have a automobile, you'd better go to Jusco on the outskirts」
 
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すると相手は頷いていたものの
「ジャ・・・?」
と固有名詞が聞き取れなかったようである。それで母親は自分の手帳におおまかな地図を書いて日本語と英語のミックスで説明しはじめた。
 

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(*3)ジャスコ留萌店は本当はこの物語の3年半後1997年8月にオープンしていますが、ここでは既にできていることにしています。
 

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母親同士が話している間、アメリカ人の女の子とこちらの女の子は見詰め合うと微笑む。彼女が数回ジャンプすると、こちらも同じようにジャンプした。それでふたりは視線で会話して母親たちから離れ、神社の拝殿近くまで小走りに移動する。
 
「I'm Tamara」
と外人の女の子が言うと
「わたし、ちさと」
とこちらの女の子も言った。
 
それでタマラとちさとは鬼ごっこでもするかのように拝殿のそばを走りあう。それで少し遊んでいたら、タマラが何かを見た。
 
「Big dog!」
 
ちさともタマラが指さす方を見たが、(彼女たちにとって)大きな犬がこちらに何かを狙うかのような雰囲気で足音も立てずに寄ってくる。
 
その犬が走り出したのでタマラが思わずちさとに抱きつく。しかし犬はタマラたちのそばを通り抜けると、拝殿の下に向かっていった。
 
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見ると拝殿の下に1匹の小さなキツネがうずくまっている。
 
「Oh, dear!」
とタマラが声をあげた時、ちさとはそばに落ちていた石を左手で拾うと、その犬めがけて投げた。
 
すると石が犬に当たり、犬は「キャン」と声をあげると、キツネとは違う方向に逃げて行った。
 

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ふたりが近寄る(*4)。
 
キツネは怪我でもしているのだろうか。動けないようだ。ちさとはそのキツネの後ろ足に触ると「ちんちんぷいぷい」と言いながら撫でてあげた。
 
「What magic?」
「いたいときにきく」
「Chin-chin Pui-pui?」
「そうそう」
 
するとちさとのおまじないが聞いたのか、キツネはそっとたちあがると、やや足を引きずりながら、拝殿の奥の方に歩いて行った。
 
「Recovered?」
「なおったかな?」
 
キツネは一度チラッとこちらを見るかのように振り向いた後、拝殿奥の林の中に消えて行った。
 

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(*4)野生動物に近寄るのは様々な危険がある。特に北海道ではキツネにエキノコックスが蔓延しているので、ひじょうにまずい。万一触ってしまった場合はよくよく手を洗い、経口感染が起きないようにすることが大事。
 

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「Chin-chin, that means boy's?」
「ボーイ?」
とちさとが訊くと、タマラがおまたの付近で指を立ててみせるので、ちさとも
「ああ!」
と言って理解した。
 
「Then pui-pui means girl's ?」
 
タマラは今度は自分のお股を指さす。
 
「わかんなーい」
 
それでタマラはお股の所に指を立てて「Willy」と言い、両手の人差し指を寝せた状態で合わせるようにして「Mary」と言った。それでちさとはWilly, Mary ということばの意味が何となく想像が付いた。
 
これは何とまあ、ちさとが覚えた最初の英語である!
 
「Boys have Willy, Girls have Mary」
とタマラが言うので、ちさとも何となく理解して頷く。
「We have Mary」
と更にタマラが言ったのに、ちさとは曖昧に微笑んだ。
 
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そこに母親たちが
「Tamara, we go」
「ちさと、行くよ」
 
と声を掛けたので、タマラとちさとは手を振って別れた。
 

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3月3日(木)。
 
村山家では(玲羅がいるので)おばあさん(津気子の母・紀子)が買ってくれた男女1対のひな人形を飾り、菱餅・雛あられ、白酒代わりのカルピス、そして散らし寿司なども用意して、ひな祭りをした。
 
3月3日は千里の誕生日でもあるので、それも兼ねてである。
 
それで母は先日少し親しくなったタマラの一家を招くことにした。もっともお父さんはお仕事で来られないということで、やってきたのはタマラとその母のヤヨイさんである。
 
ヤヨイ・タマラの母娘が来て、津気子と千里が迎えに出る。玄関を開けて、「どうぞどうぞ」といって2人をあげて津気子が2人を部屋に案内する。それで千里がドアを閉めようとした時、こちらをじっと見ている小学生くらいの女の子がいるのに気づいた。
 
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「どうぞ」
と千里が言うと、その子は
 
「わたしもいいの?」
と訊く。
 
「うん。おまつりだもん」
と千里は笑顔で言った。それでその子も家の中に入った。
 

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千里たちの父・武矢も船が出ていて今日は居ない。それで、居間のテーブルをヤヨイ・タマラ、千里が招き入れた子、千里、津気子と並んで囲った。
 
最初に誕生日の主役である千里のためにラウンドケーキを冷蔵庫から出してきて、ろうそくを3本立て火を付ける。千里が1本ずつ消していく。
 
「おめでとう」
と言って津気子が手を叩くので、それに合わせてヤヨイ・タマラたちも手を叩く。津気子は一応このパーティーは雛祭りと千里の誕生日を兼ねているというのを説明はしたのだが、日本語があやふやなヤヨイたちはそれをあまり認識していない。千里が雛祭りの主役で、日本では雛祭りにラウンドケーキを食べるのだと思い込んでいたふしもある。
 
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ケーキを切って取り分け、またジュースもコップに注ぐ。
 
「自己紹介、Introduce oneself」
と津気子が言うので、ひとりひとり名乗る。
 
「わたし、ヤヨイ。ハワイ生まれ」
「わたし、タマラ」
「わたし、小春(こはる)」
「わたし、ちさと」
「私は津気子(つきこ)。旭川生まれ」
 
なお雛祭りのほうの主役である玲羅はベビーベッドで熟睡中である。
 
さてこの時、小春が微妙な位置に座っていたため、ヤヨイは小春を千里の姉か何かだと思ったし、逆に津気子は小春をタマラの姉か何かと思った。それで本来関係無かったはずの子が1人紛れ込んでいることに、ヤヨイも津気子も気づかなかったのである。
 

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ヤヨイさんはハワイ生まれで、日系3世らしい。それでお父さんが日本風の名前を付けたという。もっともヤヨイさんは3月生まれではなく7月生まれである!何か日本っぽい名前とは思ったものの意味までは知らなかったのか。今日は来ていないタマラのお父さんは日本・メキシコ・アメリカ・ブラジルの4種ミックスらしい。それでタマラは両親の血筋にどちらも日本が入っているせいか、目鼻立ちは外人っぽいものの、髪は黒髪で瞳も黒い。
 
一家は日本に帰化しており、タマラは両親が帰化した後、根室で生まれたので生まれながらの日本人だ。名前も「珠良」と書くのが正式らしい。ただヤヨイさんはまだ何とか日本語が話せるものの、タマラはこの当時は日本語はほとんど話せなかった。
 
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散らし寿司を外人さんは食べられるかな?とも思い、津気子は場合によってはウィンナーか何かボイルするつもりでいたのだが、ヤヨイさんは日本生活がもう6年ということで「お魚大好き」ということ。タマラもお刺身などは食べ慣れているということで、普通に散らし寿司を食べていた。
 

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お寿司やおやつなどを食べながら1時間ほどおしゃべりした後、ヤヨイさんが「コノチカク、オンセンアリマスか?」と訊く。
 
「神居岩温泉なら近くですけど」
 
ヤヨイさんが行ってみたいというので出かけることにする。津気子はお隣の杉山さんに声を掛けて、玲羅を見ておいてもらえませんかと頼んだ。杉山家にも1歳の子供がおり、実は両家でお互いに子守を頼んで出かけたりしているのである。
 
それでヤヨイさんが自分の車・ヴィスタを持って来て、小雪の降る中、ヤヨイさんが運転席、津気子が助手席、子供3人が後部座席に乗って出発する。とりあえずチャイルドシートのことは考えないことにした。
 
それで津気子の案内で神居岩温泉まで行き、フロントでチケットを買おうとした時のことである。津気子と知り合いの係の人が
 
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「村山さん、旦那さんから連絡入っているよ」
と言う。
「あら」
「船が早く帰って来たんだって。飯食わせろと言っているらしい」
「あぁ・・・食べ物は冷蔵庫にあるもの適当に食べててくれればいいんだけどなあ」
などと津気子は嘆くように言うものの、帰らないと機嫌が悪くなりそうである。本来は明日4日の金曜日に帰港する予定だった。やはり海がかなりしけていたのだろう。
 
「仕方ないな」
と独り言のように言った後
 
「ヤヨイさん、私急用できたので、申し訳ないですが、先に帰ります」
と言う。
 
「アラ、タイヘンデスね」
 
その時、タマラが
「チサトたちは?」
と訊く。
 
すると津気子は、この人たちなら大丈夫かなと思い
 
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「じゃ、千里はヤヨイさん、お願いできませんか?」
と訊く。
「ウン。ダイジョウブデスヨ」
と彼女が言うので、津気子は
「じゃ温泉代はわたしがおごりますね」
と言って大人1人子供3人分の料金を受付で払い、また千里にジュース代と言って300円渡し、ひとりでタクシーを呼んで帰った。
 

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ところで今日、津気子としては千里はまだ小さいし女湯でもいいよね、と思っていた。
 
一方ヤヨイやタマラは千里が女の子だと思い込んでいる。千里はこの温泉に来たのは1年ぶりくらいであったが、前回来た時は
 
「可愛いお嬢さんですね」
と言われた上で、お股の所に少し変な物が付いているのを見られて
「あ、ごめん。坊やだったね」
「あら、ちんちん付いてたんだ?」
などと言われている。
 
千里は今回もまたあんなこと言われるのかなあというのと、もうひとつはここまでタマラには女の子と思ってもらっている感じなのに、男だということがバレてしまうのが気が重い感じだった。
 
『わたしおんなのこだったらよかったのにな』
と千里が心の中で思った時、小春が
『おちんちん、ちょっとかくしておく?』
と心の中に直接語りかけてきた。
 
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千里はこういう会話の仕方をしたのが初めてだったので「わっ」と思ったものの
 
『そんなことできるの?』
と心の中で尋ねる。すると小春は
『わたしをひなまつりによんでくれたおれいに』
と言ってニコッと笑うと千里のお股の所に手で触った。
 

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