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■少女たちの基礎教育(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2016-06-05
 
それで千里は人形を握りしめたまま小春と一緒に神社の境内に入る。その時、境内に入ったとたん、黒い雰囲気が周囲に満ちたのを感じた。
 
何これ〜?
 
昼間ここで遊んでいる時はこんなものを感じたことは無かった。
 
お百度を踏んでいる神崎さんはなぜか小春と千里には気づかないようである。小春は千里と一緒に神殿にあがり、奥に進んだ。
 
先日見た、大きな犬が神殿の奥から出てきた。
 
これが狼なの〜!?
 
「手を握ろう」
と小春が言うので千里は小春の右手と千里の左手で手を握り合った。
 
狼が近寄ってくる。何だか凄い怖い感じで吠える。
 
飛びかかってくる!
 
と思ったら千里と小春の周囲に緑色の小さな火の玉のようなものが生まれ、それが狼にぶつかった。
 
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狼は倒れた。
 

狼はピクリとも動かない。
 
千里が小春に訊く。
 
「しんだの?」
「うん」
 
「わたしがころしちゃった?」
「私と一緒に2人でだけどね」
「わたし、わるいことした?」
 
「千里、基本的に殺すことはよくない。でも殺さなければいけないこともある。ひとつは食べるため。千里、お魚とか鶏とか食べるのに殺すでしょ?」
「そうだねー。おさかなさんにはわるいけど、おさかなおいしいもん」
 
「それと何かから守るため。自分や自分の親しい人に危害を加えるものには対抗しなければならない。正当防衛と言うんだよ」
「せいとうぼうえい?」
「うん。こいつはここ2年ほどの間にこの周囲のお年寄りを8人も取り殺しているんだよ。だから退治したの」
 
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「わるいやつならしかたないね。セーラームーンも、ようまたおすもん」
「そうだね。私たちはセーラーこはると、セーラーちさとだよ」
 
ふたりがそんなことを言っていたら、そこに上品な感じのおばあさんがやってきた。もっとも「おばあさんが来た」と千里は感じたものの、実際にはその人の姿は視覚的には見えていなかった。
 
『大神さま、これでここに入れますか?』
と小春が尋ねる。
 
『ありがとう。私たちは直接はこの手のものと戦えないから。助かった。ここ2年ほど入れなくて困っていたのよ』
とそのおばあさんは言う。
 
『まあそれで私が呼ばれて来たのですが、不覚を取ってしまって。あの少年もたぶんこいつに操られていたんですよ。でもこの子に助けられました』
 
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『ありがとう、あなたの名前は?』
『ちさとです。このはなしかた、むずかしい』
と千里は心の中で思念する。
 
『十分上手ですよ。この小春とこれで会話する練習をなさい。するともっとうまくなるから。小春、この子に付いてあげるといい』
とおばあさんは言った。
 
『はい、そうします。私が《今の段階》にいる間は。この子面白そうだし』
と小春が答える。
 
『あら、あなた寿命が』
『大神さま。この子の寿命を延ばしてあげられませんか?』
『そうだね。助けてもらったお礼に、今の倍にしてあげるよ』
『ありがとうございます』
と千里は言ったものの《じゅみょう》って何だろうと思っている。
 
『それと、あなた変な物見やすいでしょ?』
『みえないですけど、なにかいるなとおもうことはよくあります』
『その時にね。その変な物の方を見ないようにした方がいい。こちらが見ると向こうも気づいて、あなたに害をなすかも知れないから』
 
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『わかりました。きにしなければいいんですね』
『そうそう。こちらが気づかないふりをしていれば向こうも何もしないから』
『はい』
 
『それと大神様。今お百度を踏んでいる神崎さんの方を助けてあげられませんか?』
と小春が言う。
 
『分かった。何とかしよう。**龍王を呼んで、船を守らせよう』
 

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千里はふと目が覚めた。
 
もう朝であった。小鳥が鳴いている。
 
あれ〜?今の夢だったのかな?と思ったものの、自分が手のひらの中に何か握りしめていることに気づく。手を開いてみると、ヤヨイに買ってもらった寅の人形だった。それと反対側の手にも何かある。それを見ると、可愛いキタキツネの髪留めだった。
 
ああ、髪留めって使いたいなと思ってたのよね〜。
 
そう思って千里はその髪留めを自分の髪につけた。
 
千里の家は2DKで千里は奥の六畳の部屋に寝ている。もっとも部屋の半分は事実上物置と化している。両親は表の四畳半の部屋で寝ていて、間にはふすまがある。そのふすまの向こうで電話が掛かってきた音がする。台所で朝ご飯を作っていたふうの母が歩き寄って出る。
 
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「タケちゃん、漁協から」
と言われて父が起きて電話を替わる。
 
「見つかりましたか! 全員無事?良かった!!」
と父は言っている。
 
それで電話を切ってから母が訊く。
 
「見つかったの?」
「うん。エンジンの故障で、通信機器も水没して何とか排水はしたものの動かなくて、連絡ができなかったらしい。明け方、海上保安庁の船が見つけて、乗組員は全員海上保安庁の船に移った上で、船も曳航して戻ってきていると」
 
「良かったわねえ」
 
その会話を聞いて千里はふすまのこちら側で微笑んだ。
 

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翌日の地元の新聞には漁船遭難と無事保護のニュースの下の方に、小さな記事で留萌の神社境内で絶滅したと思われていたニホンオオカミの死体が見つかり、何かに撃たれたような痕があったことから、地元でしばしば空気銃で動物を撃っていた外国人の少年が、警察に拘束され、取り調べを受けているという記事が載っていた。
 

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4月。その神社にやっと宮司さんが来ることになり、地元の住人が何人か出て社務所兼宮司さんの住居の窓ガラスの割れているのを交換したり、畳換えや障子・ふすまの張り替えなどをして宮司さんを迎え入れた。
 
ある日、千里がタマラ、小春、それに近所に住む数人の外国人の子供たちと鬼ごっこをして遊んでいたら、その近くに年代物のカローラが駐まり、中から65-66歳くらいの神職の衣装を着た男性が降りてくる。
 
「君たちだけで遊んでるの? お母さんとかは居ないの?」
と男性が声を掛ける。
 
その時、小春が神職に言った。
 
「この子たち、みんな両親が共働きなんです。それで私や千里たちが一緒に遊んでいるんです。普段は千里やタマラのお母さんが付いていてくれるのですが、今日はたまたま居なくて」
 
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すると神職は
「分かった。じゃ気をつけてね。何かあったら僕に言ってね。中に居るから」
と優しく言ってから、ハッとしたように言った。
 
「あなたはどなたですか?」
 
「深草小春と申します。実は使い走りのキタキツネです。宮司さん、ようこそいらっしゃいました」
と小春は微笑んで挨拶した。
 

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夏、神社では宮司が来たことから、3年ぶりにお祭りが行われることになった。昨年と一昨年は、町ではやりたかったものの、宮司さんが居なくてはできないので、見送っていたのである。
 
町の代表数人と宮司さんとで、祭りの進行について打ち合わせる。宮司さんは今回は旭川のA神社から転任してきたのだが、若い頃に増毛町の稲荷神社で奉仕していたこともあり、このお祭りの手伝いをしたことがあった。しかし細かい所までは覚えていなかったので、町の人たちと色々話し合って細かい点を詰めていった。町の人たちも曖昧な所は「まあ適当でいいでしょう」ということになってしまった。
 
「巫女舞をする女の子たちをできたら10人くらいお願いしたいですね」
「小学校にあがる前の子がいいですよね? ちょっと知り合い何人かに声を掛けてみましょう」
 
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お祭りの準備か進んでいく中、千里や小春たちはいつものように神社の境内で近所の外国人の女の子たちと、鬼ごっこや「だるまさんがころんだ」(あるいはそのアメリカ版の「Red light Green light(赤信号・青信号)」に陣取りごっこなどをして遊んでいた。
 
3年ぶりに使う神輿が少し傷んでいるのを修理しながら、なにげなく彼女たちの遊びを見ていた宮司は思いつく。
 
「ね、ね、君たちも巫女舞をしない?」
 
千里たちは顔を見合わせる。
 
「この町は結構外国人の船員さんとかも多いじゃん。だったら、そういう子たちにも参加してもらった方がいいかなとふと思ったんだよ」
と宮司は説明する。
 
「でもこの子たち、カトリックとか、クェーカーとか、オーソドックスとか、ムスリムとか、パールシーとかもいますけど」
と小春が言う。
 
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「ああ・・・でもお祭りだから、それぞれの宗旨に反しないなら参加してもらえるといいけど」
と宮司さんは言う。
 
「ワタシ、おもしろそうだからしたい」
とタマラが言う。
 
すると今日子供たちの監督をしていたヤヨイも
「うん。OKOK。うちのカミサマはカンヨウだから」
と笑顔で言っている。
 
「チサトもするよね?」
とタマラが言うと
「ワタシしてもいいのかなあ」
と千里は、母が何か言わないかと少し心配している。
 
「チサト、あんたキリスト教でもイスラム教でもないんだからしなさいよ」
と小春は言う。
「そうだね。アーメンとかいわないし」
とチサト。
 
その千里を見て宮司がふと
 
「君、前から思ってたけど、少し霊感があるよね。ぜひ参加して欲しいなあ」
と言うと
「じゃ、するー」
と千里も答えた。
 
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「小春もする?」
と千里が訊くと
「うん。私もしようかな」
と小春も答えた。
 
結局このグループからは、千里・タマラ・小春の他に、ヒンズー教徒のマリカ、ロシア人(正教徒)のソフィアが参加することになった。千里の母はヤヨイから
「お祭りの手伝いしてくれって宮司さんから頼まれて、タマラやチサトが参加することにした」と聞き、まあお祭りの手伝いならいいのではと思ったが、まさか巫女さんとは思ってもいなかった。
 
実際千里の父は、千里が神社の例祭の手伝いをするというと
「お稚児さんでもするのかな。俺はその日、まだ漁に出ているけど、写真撮っといてくれ」
と津気子に言っていた。沖合漁業の船の多くは金曜日の夕方戻るので、武矢たちは夜祭りを見に行く予定である。
 
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