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■少女たちの基礎教育(6)

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宮司はある日、庭で小さな子供たちと遊んでいた小春を呼ぶと尋ねた。
 
「僕もこのお祭りは30年くらい前に1度手伝っただけでね。細かい所を覚えてないんだよ。深草さん、分からないかなあと思って」
 
この日の小春は女子大生くらいの身なりで、彼女が横座り気味に社務所の縁側に腰掛けるのを見て宮司はその色気にドキッとする。年甲斐も無く身体が反応してしまったのを焦って抑え込んだ。
 
「うーん。私もここは4年前からで祭りも2度しか見てないので、全部覚えているかは分かりませんけど」
 
と小春は言いつつも、宮司さんから訊かれたことについて、自分の記憶の範囲で答えていった。仕草などは実際にやってみせたりもした。
 
ふたりはこの日は遊んでいる子供たちを見守りながら会話していた。が、小春は実際かなり祭式の内容を覚えていた。特に沖合の船の上で唱える特別な祝詞や、神殿の前で祭主が行う、独特の仕草については、小春のおかげて、かなり記憶違いを修正できた。
 
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「ありがとう。助かるよ」
「いえ。少しでもお役に立てれば」
 
「深草さんはここにずっと居られるの?」
と宮司が何気なく訊くと、小春は考えるようにしてから言った。
 
「私はここにたぶんあと10年くらい居ると思います」
「10年したらまたどこか他の神社とかに行くの?」
 
すると小春は答えた。
「私はあと10年くらいしたら『次のステージに進むことになる』と言われています。この世界ではいったん死ぬことになると思います」
 
「それは・・・・」
 
「キツネの寿命って長くて10年なんですよ。まあ私は普通のキツネとは違うから、14-15年くらいは生きられるみたい。そして今度死んでから15年くらい中有の世界で休眠して、次は人間の男の子に生まれる予定と言われてます」
 
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「男の子になるんだ?」
 
「私、前世では人間の男の子だったらしいんですよ。当時のことは微かにしか覚えてないけど、悪いやつで何人も女の子を泣かせたみたいで。それでキツネの女になって修行し直しなさいと言われたみたい。でも女の子もやってみたら結構快適だから、次に人間に戻る時はいっそ女の子にしてくれって言っているんですけどね。簡単に予定は変えられないよ、なんて言われて、交渉中です」
 
「なるほどね〜。そちらの世界にもいろいろ事情があるんだね」
「でもホントに女の子はいいですよ。宮司さんも一度女の人になってみません?ブラジャーつけたりスカート穿くのも楽しいですよ」
 
「そういうのに関心が無いといえば嘘になるなあ」
と宮司さんは苦笑いして言う。
 
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「ぜひやってみましょう。私、数時間程度なら男を女に変えるくらいはできますよ。女湯にでも突撃できますよ」
 
「うーん・・・・。取り敢えず僕は男として結婚もして子供も作ったから男で満足してるけどね。まあ女房は先に逝ってしまったから文句言わないかも知れないけど、今更僕が女になったら、息子たちから義絶されそうだし、僕が女装して出歩いていたら、この町から追放されそうだよ」
 
「人間は性別変えるのたいへんみたいですね」
「まあ性別を変えられるようになったのが最近だから、まだ世間に受け入れられてないんじゃないかね」
 
と宮司さんが困ったような顔で言うのを小春は微笑んで聞いていた。
 

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7月15日(金)。ちょうど学校が夏休みに突入する直前、稲荷神社では3年ぶりの例祭が行われた。
 
この時期、留萌市内の大きな神社であるR神社やQ神社でも例祭が開かれ、そちらでは夜店もたくさん出ているのだが、こちらは小さな神社なのでその手のものは、タコヤキ屋さんとサーターアンダギー屋さんが1軒ずつ出ている程度である。他に神社と町内会の共同で豪華(?)景品付きのおみくじをやっていたが、これが結構お客が集まっていた。
 
また、市内3つの神社がほぼ同じ日程でお祭りをするので、観光客もR神社やQ神社のお祭りを見るついでに、こちらまでもちらほらと来ていたようである。
 
もっとも、留萌に7月に来る観光客は翌週の「るもい呑涛まつり」目当ての人が多い。青森のねぶたに似た「あんどん」が町内を練り歩く祭りである。
 
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例祭当日、千里はタマラや小春にマリカと一緒に、タマラの母に連れられて神社に行った。
 
「じゃお願いします。私は炊き出しの方をしてから、神社の方に入りますね」
と津気子はタマラの母に言った。
 
町内会の方で頼んだ9人の女の子と千里たちも合わせて14人が一緒に子供用の巫女衣装に着替える。
 
千里はこの日、4月に札幌に行った時に愛子から借りたまま返していなかった女の子下着を着けてきていた。
 
上着は普通のポロシャツとジーンズなのだが、服を脱げばふつうの女の子の下着姿である。他の女の子たちも下着姿になって着替えているが、むろん千里は全然気にしない。以前温泉に行った時は男の子下着をつけていて、それをタマラに指摘されたのだが、今日はみんなに溶け込むことができて安心であった。
 
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渡された、白い小袖を上に着、下には緋袴を着用する。最近では巫女さんの緋袴は行灯袴(スカート型)を使う神社が多いのだが、この神社では伝統的な馬乗袴(キュロット型というより最近の言葉でいうとガウチョパンツ!)を使用している。
 
「あれ〜、これってスカートじゃないんだね」
などと何人かの女の子が言っていた。千里もどうせならスカートがよかったのにとは思ったものの、シルエット的には十分スカートっぽいので、こういう服を着られて結構満足であった。
 

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舞自体は何度も練習しているのだが、今一度、小学生のお姉さん2人が指導して練習することになった。なお今日の小春は幼稚園生みたいな感じになっている。
 
舞は15人が扇の形になって舞う。一番前に1人、その後ろに2人、その後ろに4人、その後ろに8人という構成の予定だったのだが・・・
 
「ヒロミちゃん来てない?」
と指導していた小学4年生の乃愛が言う。
 
千里たちは顔を見合わせるが誰も知らないようである。それでその子が大人の巫女さん(といっても地元の女子高生)の梨花さんをつかまえて話をし、連絡を取ってもらった。
 
「あらぁ、風邪ですか?」
 
扇のトップに立って舞うことになっていた、幼稚園年長のヒロミちゃんが風邪を引いてしまい、今お母さんが病院に連れて行き、こちらにも連絡しなきゃと思っていた所らしい。
 
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梨花さんも一緒に控え室に行き、指導役の小学生2人と一緒に善後策を検討する。
 
「あのね、ヒロミちゃんがお休みなんだって。誰か代わりにいちばん前で舞ってくれないかな」
と梨花さんが子供たちに言う。
 
誰も返事をしない。
 
「ヒロミちゃんのすぐ後ろで舞っていたのは誰?」
と梨花さんは指導役の乃愛に訊く。
 
「サクラちゃんとカザミちゃんです」
「じゃサクラちゃんかカザミちゃん、前に立てないかな?」
と言うものの、ふたりともモジモジしている。梨花はその様子を見て、たぶん舞の仕草を完全に覚えてないんだなと思った。先頭で舞う子は、誰も見ずに舞わなければならないので、完璧に覚えている必要がある。
 
「ふたりとも、微妙に怪しい所が残ってたもんね」
と乃愛が言うと、梨花も頷いている。
 
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その時、タマラが言った。
「コハルはぜんぶおぼえてるよね?」
 
梨花が見ると、コハルと呼ばれたのは幼稚園年長くらいの子である。
「君、先頭で舞える?」
 
「私がしてもいいけど、私は実は座敷童(ざしきわらし)なんです。座敷童がそんな目立つ所に立ったらいけないから、代わりに千里がするといいよ」
 
「え?」
と千里が戸惑っているが、梨花はその千里を見て、この子霊感が強いじゃんと思った。だったら、この子に舞わせれば3年ぶりの例祭が物凄くうまく行きそうな気がした。それで言う。
 
「じゃ、ちさとちゃん、先頭に立ってくれる?」
「わたしがしていいのかなぁ」
「ちさとちゃん、舞は全部覚えてるでしょ?」
「うん」
「じゃ、やってみよう」
 
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千里は3列目の4人の中にいたのだが、フォーメーションを調整する。先頭に千里、その後ろにサクラとカザミ、その後ろに、千里と並んでいた3人に加えて、最後列に居たタマラを並べ、最後列が小春・マリカなど7人とする。1247のフォーメーションだ。
 
ここで梨花は小春を最後尾列の真ん中に置いた。実は舞の途中で全員が後ろを向く所があり、その部分は最後列の子たちが手本無しできちんと舞う必要がある。梨花はしっかりしてそうな小春がこの最後列に並んでいれば、安心だと思った。梨花はその後ろを向いて舞う時、小春に1歩踏み出して舞うように言った。すると最後尾に居る他の子にも小春の動きが見える。
 
それで舞わせてみると、ひじょうにうまく行った。
 
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「よし、これでやってみよう。じゃ出番まで休んでいてね」
 

例祭は早朝から始まっている。4:04の日出とともに御神輿を宮司と一緒に船に乗せて沖まで運び、沖合数kmの定置網を置いている所で神を迎える儀式をしてから、戻って来る。
 
そのあと神輿は町内を練り歩く。そして神社に戻って来たのが9時頃である。神輿を神殿に運び込んで神職が祝詞をあげ、高校生巫女の梨花さんと亜耶さんが舞を奉納する。議員さんの代理の人や町内会長さんなどが、玉串奉納をする。
 
そして10時頃、子供たちの巫女舞の出番である。
 
かなり待ちくたびれていた千里たちが神社の拝殿に出てきて、梨花さんの笛、亜耶さんの太鼓に合わせて舞い始める。
 
千里の母は炊き出しの方が終わって、デジカメを持ってこちらにやってきて境内で待機していた。お稚児さんが出てくるのは、この巫女舞の後なので、お隣の杉山さんの奥さんとふたりでおしゃべりなどしていたのだが、少女巫女たちが出てきたところで
 
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「あら、扇の要(かなめ)は千里ちゃんなのね?」
という杉山さんの声に、へ?と思って拝殿を見て驚愕する。
 
なんで千里が巫女衣装着てるの〜〜?しかもいちばん目立つ所にいるなんて!!!
 
武矢から言われて、稚児姿の千里を撮るつもりでいたのだが、さすがにこの巫女姿の千里を撮る訳にはいかない気がした。しかし、周囲の人たちがみんな写真を撮っている。それで津気子も「撮っても見せなきゃいいよね」と開き直り、千里の晴れ舞台を写真に収めた。
 

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しかし舞は物凄く神秘的な雰囲気であった。
 
最初はざわめいていた境内の氏子も観光客も、次第にその雰囲気に呑まれて無言になっていく。舞は静粛の中、美しく進んでいった。
 
やがて千里たちの舞がクライマックスに達した頃、海の方から強い風が吹いてくる。神殿に奉納された神輿の屋根に付いている風車がカラカラと音を立てて回った。一瞬、ざわめきが起きる。
 
これは実は物凄い吉兆なのである。
 
「でも千里ちゃん、凄く可愛いね」
とお隣の杉山さんが言うのを津気子は
「そうですね。私に似ず可愛いかも」
などと内心冷や汗を掻きながら答える。
 
前々から杉山さんはひょっとして千里のことを女の子と思ってないか?というのは感じていたのだが、今日の巫女舞を見た後では、むしろ男の子ですとは言えなくなってしまった気がした。
 
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千里たちの舞は10分ほど続く長いものであったが、14人の幼い巫女たちは一糸乱れずに美しく舞い終えることができた。終わってから神様に一礼、観客に一礼して下がる時、大きな拍手が送られていた。
 
その後は代わってお稚児さんの衣装を着けた小さな男の子が3人入って来て、この日獲れたお魚を奉納する儀式を始めた。
 

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子供たちの出番は午前中で終わり、午後からは神事はいったん休憩となる。津気子は控え室の方に行き、もう着替え終わった千里たちと会う。
 
「お疲れ様〜」
と声を掛けると、ヤヨイも寄ってきて
 
「オツカレー、リーダーのコがヤスンダので、チサトがカワリにリーダーしたよ」
と説明(?)してくれる。
 
「ああ、そういうことだったんですね」
「リーダーの子は全部覚えてないといけないんだけど、舞を完全に覚えていたのは、本来要(かなめ)を務める予定だったヒロミちゃん以外では、千里ちゃんだけだったんですよ」
と指導役の乃愛も言った。
 
「千里ちゃん、完璧に舞ってくれたので助かりました」
「そうね。この子、物覚えはいいみたいね」
と津気子も冷や汗を掻きながら言った。
 
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千里と手をつないで帰るが、津気子は
 
「でも頑張ったね」
と千里を褒めてあげた。
 
「えへへ。わたしもきょうはがんばったかなとおもう」
と千里もまだ高揚した気分の中で答えた。
 
午後から祭りは一時お休みに入り、今日だけ特別に用意した豪華景品付きおみくじを引く参拝客がぱらぱらと来る程度になる。そして日没(19:05)の後から今度は氏子さんたちによるお神楽などが奉納される。
 
武矢は16時頃帰って来た。豊漁だったようで機嫌が良い。
 
「千里どうだった?」
「うん。頑張ってたよ。でも私、見とれてて写真撮るの忘れちゃった」
「ありゃ、それは残念だったな」
 
「でも可愛かったよ」
「お前の息子だからな。じゃ飯食ったら、お神楽見に行こう」
「うん。千里はもう先に寝ててね」
「うん」
 
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なお、千里たちの舞の写真は翌日の新聞地域面にも掲載されていた。記事には市内に住んでいる外国人の子も参加、などと書いてあったので、タマラやマリカたちが参加していたのが、記者の興味を引いたのだろう。
 
むろん千里はその巫女の隊列の先頭に堂々と写っている。
 
津気子は夫の目に触れないように、新聞を早々に始末してしまった。ただし、千里が写っているその写真の所だけは切り抜いて、自分しか見ることのない、台所の引き出しの中にしまった。
 
「まあ実際、この子可愛いよね」
と津気子は独り言を言う。
 
「ごめんね〜。女の子に産んであげられなくて」
などとも小さい声でつぶやいた。
 

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千里たちの舞の成果か、この夏、武矢たちが拠点にしているS漁港では豊漁が続いた。それで村山家の家計も少しだけ持ち直し、来年から千里を幼稚園にやらないといけないのにどうしよう?と思っていた津気子も少しホッとすることができた。
 

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少女たちの基礎教育(6)

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