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■少女たちの基礎教育(2)

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しかしそれより真璃子はこの子供が凄まじいオーラを持っていることに気づいた。
 
この子末恐ろしいぞ。私に影が無いことに気づいたのも、その霊感ゆえだろう、と思う。しかし真璃子は同時にこの子このままでは「危険」だと思った。
 
こういう子は「あちら」に取り込まれやすいのである。それで真璃子は余計なお世話とは思ったのだが彼女にアドバイスした。
 
「君ね、例えばあそこの柱の陰にいる女の子見える?」
「うん。あそばないのかな」
 
とその子は「そちらを見ずに」答えた。それを見て真璃子はこの子は最低限の自分を守るすべを持っていることを認識する。
 
「でもそういうのいちいち見てたら疲れるでしょ?」
「みちゃいけないっていわれた」
「だれに?」
「おばあさん」
 
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ああ、この子のおばあさんがきっと「見える人」なんだなと真璃子は思う。そのおばあさんに色々教えられているのか?その人からの遺伝もあるのだろう。霊感は遺伝的なものが大きい。
 
「うん。だから普段は見ないようにするといいんだよ」
「どうすればいいの?」
 
「このあたりを閉じる感覚なんだけど、分かるかな」
と言って真璃子はその子のある部分を指で触った。するとその子のオーラが嘘のように小さくなった。
 
と思ったのだが、真璃子はそれが「小さくなったように装っただけ」であることに気づいた。この状態では恐らく「並みの霊能者」や「並みの霊」にはこの子のオーラは普通の少し霊感のある人程度にしか見えないだろう。
 
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すげー、この子。
 
「あ、みえなくなった」
柱の陰にいる子の姿がちさとには見えなくなったのである。
 
「じゃ開けてごらん」
と真璃子が言うと、オーラが元のように巨大になる。
「みえるようになった」
 
「うん。それで普段は閉じておいて、使う時だけ開ければいいんだよ」
「つかうとき?」
「なんか危ないなと思った時とか、何か変な感じがした時だよ」
「ふーん。やってみる」
「うん」
 

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真璃子が立ち去った後もしばらく千里は輪投げをしていたが、さっきから柱の影でずっとこちらを見ている女の子が気になる。どうしてあの子、見えたり見えなかったりするのかなあと思ったものの、とうとうその子に声を掛けた。
 
「きょうこちゃん、あそぼうよ」
 
するとその子はおそるおそる近づいてきた。
 
「わなげしよう」
と言って千里は微笑んでその子に輪を渡した。
 
「うん、でもでもどうしてわたしのなまえ、わかったの?」
と言ってその子も輪を取ると投げるが入らない。
 
「なまえはみればわかるよ。わたしは、ちさと」
と言って千里が投げるとまた入る。
 
「すごいね。でもちさとちゃん、じょうずだね!」
「きょうこちゃんも、たくさんすると、はいるよ」
 
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と千里は言って微笑んだ。
 
ふたりは30分くらい輪投げで遊んでいたが、やがて千里の母がやってきた。幼い玲羅をだっこ紐で抱いている。玲羅は寝ているようだ。
 
「お待たせ。ごめんね、長く待たせちゃって」
「ううん。このことあそんでたから」
 
「あら、あなたはお母さんは?」
と津気子は、きょうこに語りかける。何だか影の薄い子だなと津気子は思った。
 
「わたしのおかあさんもおとうさんも、しんじゃったの」
「あら、悪いこと訊いたね。じゃ、おばあちゃんか誰かと来たの?」
 
「えっと・・・」
ときょうこはどう答えていいか分からない様子。
 
その時千里は
「きっと、おかあさんもおとうさんもてんごくでまってるよ」
と言って上を指さした。
 
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するときょうこも上を見上げる。
「あ、おかあさん、いた」
「そこにいくといいよ」
 
「うん。そうする。ありがとう」
 
そう言うと、きょうこの姿はすっと消えた。
 
津気子が目をぱちくりする。
 
「今、ここに女の子がいなかった?」
「いたけど、いまかえったんだよ」
 
と言って千里は上を向いてバイバイするように手を振った。
 
ちなみにこの程度のことは千里にとっては「日常」なので、特に何も不思議なこととは感じていなかった。
 

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「そうそう。あんたの着替え買ってきたよ。あちらで着替えて、その服は愛子ちゃんに返さないとね」
 
千里たちは札幌に優芽子(津気子の姉)の所に遊びに来ていて、道路を歩いている時に通り掛かったダンプがはねた泥を千里がまともにかぶってしまった。それで愛子(優芽子の娘・千里の従姉)の服を借りていたのである。
 
津気子は千里を連れてショッピングセンター内の多目的トイレに連れて行く。それでとりあえずブラウスとキュロットを脱がせる。その下には女の子シャツと女の子パンティを穿いている。これも愛子からの借り物なのだが、これは取り敢えずそのままでもいいかと思った。
 
そして津気子が買ってきた服を着せたのだが・・・
 
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「あ、これスカートだ。わたし、スカートすきー」
と千里が言う。
 
「あれ〜〜!?なんで私、スカート買っちゃったんだろう?」
と津気子はマジで悩む。
 
ショートパンツを選んでいたはずが、たまたま同じ並びにスカートも架かっていたのだろうか?千里は体型的にボーイズの服が入らないので、いつもガールズの服を買っている。ガールズのコーナーなので、パンツとスカートがもしかしたら混在して架かっていたのかもと思う。
 
「交換してもらってこようかな」
「わたし、このスカートすきだから、きていたい」
 
「うーん・・・まあいいか」
と津気子は妥協した。夫に訊かれたら、緊急事態で愛子ちゃんの服を借りて着せてきたといえばいいしと思った。
 
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一方の真璃子はショッピングセンターで下着、普段着の上下数枚、それに礼服とパンプス、旅行用バッグを買うといったん予約していたホテルに入り、一息ついていたが、ふとバッシュが欲しいなと思い立った。
 
今回は日本にはピンポイント往復に近いのでどこかで汗を流したりする訳ではないもののバッシュやボールが無いと何だか不安なのである。それでお茶を飲んで一息ついた後で、ホテルのフロントに電話してスポーツ用品店の場所を訊き、地下鉄で出かけていった。
 
どれにしようかなあと思って見ていた時、近くで子供がダダをこねている声を聞く。見ると4〜5歳くらいの男の子である。
 
「ボールほしい〜!」
と言って床に寝そべり手足をバタバタさせている。
 
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母親らしき人が起こそうとするものの抵抗が強い。2〜3歳ならどうにかなるだろうが、このくらい大きくなると結構力が強いので子供が本気になっていると親にもどうにもならない。
 
すると父親が言った。
「アツ、だったらこのボールをここからあそこに置いてあるバスケットのゴールに入れることができるか?1発で入れられたら買ってやる」
 
すると「アツ」と呼ばれた男の子は立ち上がった。父親からボールを受け取る。あのボールを買ってと言っているのだろうか。しかしお前ら、それ商品じゃないのか〜〜!?と思ったものの、真璃子はこの子に味方してやりたくなった。
 
私って今霊体だよね?たぶんあの子に憑依できるよね?
 

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それで男の子がボールを持った所に、真璃子は「入り込んだ」。男の子が「あれ?」という顔をするが構わず真璃子は彼の身体を勝手に動かしてゴールを狙う。距離は7mくらいある。日本リーグ(*2)レベルのバスケ選手でもなかなか入らない距離である。しかし真璃子は膝を曲げて慎重に狙いを定めると、膝を伸ばしてジャンプし、ボールが最も遠距離まで飛ぶ50度くらいの角度でボールを離した。こうすると力があまり必要ないので、この子の身体にも負担を掛けない。
 
ボールはバックボードにも当たらず、きれいにゴールに飛び込んだ。
 
「うっそー!?」
と母親が声をあげている。
 
真璃子はすっと男の子の身体から離れ、さっきまで自分がいた位置に戻る。今一時的に真璃子が姿を消していたことは、たぶん誰も気づかない。
 
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父親も驚いているようだったが言った。
 
「アツ、お前凄いな。今ボールを撃つ時のフォームも凄くきれいだったぞ。お前才能あるかも。だったら、そのボールとあのゴールと両方買ってやるよ」
 
「やったぁ!」
と男の子は喜んでいる。母親の方は「え〜?」という感じで不快そうな顔をしているものの父親はむしろはしゃいでいた。
 
真璃子はひょっとしたらこの子、将来バスケット選手になるかもね、などと思いながら、バッシュ選びに戻った。
 

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(*2)日本のバスケットのトップリーグは1997年まで「日本リーグ」の名前であった。最初はバスケ協会が直接運営していたものの1995年に運営団体のJBLが結成された後、1998年から女子は「バスケットボール女子日本リーグ機構(WJBL)」に移管され「Wリーグ」の愛称になっている。
 
男子は2001年にJBLスーパーリーグが発足するも運営方針の対立から一部のチームが脱退して2005年にbjリーグを結成。残留組は2007年に新JBLを作る。その後2013年に両者を統合するためNBLを作ったがbj側が1チームも参加しないという異常事態となり、結局2014年FIBAから制裁を食らうはめになる。2016年JPBL(愛称Bリーグ)でやっと統合されることになった。
 

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真璃子がその夜、ホテルの部屋でくつろいでいると「お電話です」とフロントから連絡があり、外線とつながる。
 
(この時代はまだ携帯電話はほとんど使われていない。携帯電話が広まるのはPHSと普及型の携帯電話端末が発売された1995年の後半頃からである)
 
「あ、真璃子ちゃん?」
と電話の向こうの声は明日結婚式をあげる旧友である。
 
「あ、隆子ちゃん、おめでとう。いよいよ明日だね」
と真璃子は笑顔で答えた。
 
「良かったぁ!生きてたのね」
「え?」
「あ、知らない?今朝飛行機事故があって大勢人が亡くなったのよ。生存者はわずか7名だって」
 
真璃子は驚いた。あの状況で生存者がいたというのが信じられなかった。よほど運の強い人なのだろう。しかし生き残っても恐らく何ヶ月も入院するはめになるんだろうなと真璃子は思った。
 
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「へー、知らなかった」
「その死亡者のリストにタナカ・マリコってあったから、まさか真璃子ちゃんじゃないかと思って。真璃子ちゃん生きてるよね?」
 
田中は夫の苗字である。真璃子は現在法的には田中真璃子なのだが、バスケット選手としては藍川真璃子で国際的に名前が通っているのでふだん藍川真璃子の名前で活動している。バスケット協会の登録も藍川真璃子のままである(結婚した時に面倒なので氏名変更の手続きをしなかっただけであるが)。
 
しかしやはり私死んだのか・・・とあらためて思う。
 
「あまり生きてる自信無いかも」
と真璃子は正直に言う。
「死んでたらごめん」
 
「もう!冗談がきついんだから。良かったぁ。私の結婚式に来るのに飛行機に乗って、それで死なれたら私、真璃子ちゃんの家族に顔向けできないし」
 
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いや〜、済みません。それで死にました!
 
「それは私、家族とかいないから大丈夫かな。うちの両親も旦那の両親も死んでるし、兄弟とかも居ないし」
 
実際私の遺体って引き取る人居ないよなあ。さすがに「本人です」と言って引き取りに行くこともできないし。
 
「おじさんとかおばさんとかは?」
「いるけど、ほとんど縁が切れてるよ」
「へー。どこかに隠し子とかは?」
「うーん。作ってみたかったなあ」
「今から産めばいいんだよ」
「それは自信無い」
「私も妊娠中なんだよ」
「おぉ、それはダブルでおめでとう」
「真璃子ちゃん、私より2つも若いんだもん。まだまだ行けるよ」
 
あはは、でもさすがに幽霊じゃ子供産めないんじゃないかなあ、と真璃子は冷や汗を掻きながら思った。
 
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「あ、そうそう。私、結婚式の招待状、うっかり台湾に忘れてきちゃって」
「うん。それは受付の所で言ってもらえばいいよ。ちゃんと席は用意しておくから。御祝儀を忘れてなければ問題無し」
 
「あ、それも忘れてきたかも」
「え〜!?」
 
実際には招待状も10万円入れていた祝儀袋も飛行機と一緒に燃えてしまっている。あれ直前にお金は入れれば良かったなあなどと思ったりする。今回の事故ではあれこれ大損害だなと真璃子は思う(自分が死んだことは別として!?)
 
「冗談冗談。大した金額じゃないけど、ちゃんと渡すから」
「ありがとう。あとで台湾からの交通費は渡すね」
「うん。ありがとう」
 
隆子との電話を切った後、台湾の代表チームの関係者からも電話が入った。やはり飛行機事故の死亡者リストに「タナカ・マリコ」という名前があったのを見て驚いて電話して来たようであった。彼ともしばらく話したが、どうやら真璃子が生きているようだと分かり(本当は死んでいるのだけど)、安心していたようであった。
 
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少女たちの基礎教育(2)

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