広告:まりあ†ほりっく 第5巻 [DVD]
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■少女たちの晩餐(8)

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翌日10月14日(祝).
 
飛行機を避けて鉄道で帰る希望、希望の母、松下先生は、ホテルで朝食も取らずに朝から旅行会社が手配してくれたハイヤーで東京駅に向かった。それ以外の子と先生・保護者は朝食のバイキングを食べた後、10時にホテルの玄関ロビーに集合ということだった。
 
津久美は買っておきたいものがあったので、先生に外出してもいいかと尋ねた。すると、誰かおとなの人に付き添ってもらってと言われた。東京で迷子にでもなられては困る。すると先生と同じ席で朝食をとっていた穂花の母が
「だったら私が付き合ってあげるよ」
と言った。
 
それで津久美は穂花の母に付き添ってもらい、出掛けることにした。
 
「何か急に必要になったの?」
「実は急に生理が来ちゃって。まだ来る時期じゃなかったから、2個しか持ってきてなかったから」
「ああ、こういう旅行とかの時は急に来ることがあるのよ」
と穂花の母が言っているので、津久美は、穂花さんのお母さんは私の性別のこと聞いてないみたいと思った。穂花さんのお母さんと聞いた時、実は津久美は、元々他の学年で私のことをあまり知らない可能性があること、そして穂花さんの性格から、他人のことをあまりしゃべらない人だろうという気がした。それで実際知らなかったようである。
 
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ナプキンを2枚しか持って来てないのは事実だが、生理が来た訳ではない。でもいつ来てもおかしくないので1パック持っておきたかったのである。その時、地元で買っていると同級生に見られて変に思われるかもと思い、遠征中に確保しておきたかった。
 

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コンビニに行こうかといってホテルを出たのだが、途中、早朝から営業しているドラッグストアがあった。
 
「すごい。ここ24時間営業なんだ。ここ入ろうか」
「はい」
 
それで一緒に中に入り、お店のお姉さんに生理用品の売場を尋ね、そちらに行く。
 
「普段何使ってるの?」
「えーっと」
 
どれにしようかな?と思って見ていたが、
「あ、あったあった」
と、まるでいつも買っているかのような言い方をして、エフティ資生堂のセンターイン(*10)の、ふつうの日用をかごに入れた。むろん本当は生理用品を自分で買うのは初めてである。
 
生理用品入れに入っている2枚のナプキンの内、1枚は旭川の街を歩いていたら青いサンバイザーをつけて白いシャツに青いミニスカートを穿いたお姉さんが配っていたのを受け取ったもの、1枚はこないだ夢に出て来て「声変わりしないようにしてあげようか」と言ったセクシーなお姉さんがくれたものである。
 
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「念のためパンティライナーも買っておこうかな」
と言って、やはりFT資生堂のパンティライナーもかごに入れる。
 
(*10)この頃はセンターインはFT資生堂(資生堂の子会社)から販売されていた。2006年5月31日にユニチャームに移管され、資生堂は生理用品から撤退した。
 

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「更についでにおやつ買ってっちゃおう」
「あ、私も買っていこう」
と穂花のお母さんも言い、別のかごを取ってチョコの大袋とかを入れていた。津久美もキットカットの大袋と明治ミルクチョコの26枚入りボックスをかごに入れた・・・が
「これ私が払ってあげるよ。おごり」
と言って、穂花のお母さんおやつを自分のかごに移した。
「すみませーん」
 
レジでは生理用品なのでレジのお姉さんは、黒いビニール袋に入れてからレジ袋に入れてくれた。こういうことをしてくれることは知ってはいたが、実際に自分で買物をしてこうしてもらったのは初めてだ。津久美は“おとなになった”気分だった。
 
レジを出た所で、穂花のお母さんは津久美が選んだおやつをこらのレジ袋に入れてくれた。
 
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「ありがとうございます。付き添ってもらったのに、おごってもらって」
「だってあんたお小遣いそんなにないだろうに、急に生理来てお金使って大変だったでしょ?」
「実はそうなんですけどね」
「こういうのは、おとなにおごらせておきなさい。あんたがおとなになって子供産んだら、その子供のおともだちとかに親切にしてあげるといいよ」
「はい!」
 
私・・・赤ちゃん産めるかも知れないなあ。もしかしたら。
 

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千里や津久美たちN小の児童や保護者の大半は、10時にホテル玄関に集合。点呼を取って全員いることを確認し、旅行会社のバスで羽田空港に向かった。チェックインは旅行会社でまとめてやってくれていたので、荷物を預け、手荷物検査場を通って中に入る。飛行機行きのバスが出るところまで行く。これが11時すぎだった。11時半頃お弁当が配られ、みんなでおしゃべりしながら食べた。その後トイレに行ってくるが、津久美は“生理は来てない”ものの、新しいナプキンをショーツに取り付けた。
 
そんなに遠くない内に、これ本当に使うことになるかなあ、などと夢見た。
 
このナプキンは以前から持ち歩いていたものではなく、今朝新しく買ったものである。生理用品入れの中に新しいナプキン2枚と、パンティライナー2枚を入れておいた。これは今朝買物に行ってホテルに戻った後、部屋に戻る前にホテルのロビーのトイレで入れておいたものである。生理用品とか持ってる所同室の子に見られたら何か言われそうな気がした(要するに恥ずかしがっている)。
 
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12時半近くになって、搭乗案内が始まり、ひとりずつチケットを持ってゲートを通る。そしてバスで飛行機の駐機している所まで行き、タラップを昇って機内に入った。帰りも行きと同じエアバスA300てあった。
 
HND 13:15 (JAS195 A300)14:50 AKJ 15:20 (バス) 17:10 留萌N小
 
なお小町は髪留めに擬態させて千里が髪に付けて行った。
 
「タダ乗りだ」
と蓮菜が言っていたが!
 
津久美は機内でキットカットの大袋を開けたが、あっという間に無くなる。それで旭川から留萌へのバスで開けようと思っていてミルクチョコのボックスも開けて、これも一瞬で無くなった!
 
旭川空港からは旅行会社が手配してくれたバスで留萌のN小まで戻り、そこからは保護者の車で帰宅した。千里と美那は蓮菜の母の車で送ってもらった。
 
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一方新幹線での移動になった、希望たちはこのような連絡で戻った。
 
東京7:40(やまびこ3)10:09盛岡10:19(はつかり5)14:38函館15:04(スーパー北斗13)18:18札幌18:30(ライラック19)19:40深川20:07- 21:02留萌
 
実はこの当時、東京から留萌まで鉄道で1日の内に帰られる唯一の連絡である。この当時、東北新幹線はまだ盛岡までしかできておらず、八戸開業はこの年の12月1日である。
 
留萌駅には連絡を受けて桜井先生が迎えに来てくれていて、希望本人を自宅に投下した上で、希望の母と松下先生を学校まで連れていった。それで2人は学校に駐めていた各々の車で帰宅した。
 

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七五三に関する、小中学生の作業は18時で終わり、各自着替えて自宅に戻る。一応この後は、小春と、鈴恵・弓恵・守恵の三姉妹でお客さんがあったら対応する。
 
沙苗は友人達に乗せられて、スカートを穿いたまま神社を出て帰宅した。
 
「ただいまあ」
「お帰りって、あんたまさかスカートで帰って来たの?」
と母が訊く。
「そうだげど。ぼくがスカート穿いてるのなんて、いつものことじゃん」
「でもその格好で外を出歩くのは・・・」
「友だちはみんなぼくの実体知ってるから平気だよ」
 
「でもお父さん、今お風呂入ってるから、あがる前に着替えなさい」
「はーい」
と沙苗は気のない返事をして自分の部屋に戻り、ズボンに穿き換えた。でもパンティーはそのまま女の子用を穿いたままにした。
 
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「千里とか勇気あるよなあ。よくスカートで学校に来てるし。でもなんであいつまだ声変わり来ないんだろう?まさか睾丸取っちゃったりしてないよね?」
 

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沙苗はその日夢を見た。夢の中では自分が誰かに拉致されて、手術台に乗せられ、有無を言わさず女の子に改造する手術を受けさせられた。
 
夢の中では
「これで君は中学ではセーラー服を着られるよ」
と言われたが、目が覚めてから沙苗は
「本当にセーラー服着たいなあ」
と呟いた。でも親にセーラー服着たいと言う勇気がない。
 
それにそんなこと言っても父親に殴られるかも。
 
千里はどうするんだろう?あの子は本当にセーラー服着そうな気がする。鞠古君はセーラー服用意するかも知れないけど、あいつの場合はそれ着ていても全てジョークとして許してもらえそう。自分は彼みたいにジョークとして女装する勇気もない・・・・
 
でもこの2日間に巫女体験は楽しかったなあと沙苗は思った。
 
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津久美は梨志(りこ)のお母さんの車に同乗して自宅まで送ってもらい帰宅した。梨志のお母さんによくよく御礼を言って降りる。玄関のドアを自分が持っている鍵で開けて中に入り
「ただいま」
と言った。
 
「お帰り、どうだった?」
と母、2人の兄・陽太(ひなた)と進武(すすむ)から訊かれる。
 
「銀賞だったよ。準優勝」
「おお、上出来、上出来」
「去年も銀賞だったっけ?」
「うん。だから2年連続の銀賞」
「じゃ来年はぜひ金賞を」
「そういうの意識すると自滅しやすいから、またゼロから始めるつもりで頑張ろうと先生たちは言っていた」
「その方がいいかもね」
 
「ソプラノソロは歌えたの?」
「部長の穂花さんが喉を痛めて歌えなかったんだよ。でも私も突然声変わりが来ちゃって、ソプラノのいちばん高い所の声が出なくて」
 
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「それはよくない。お前は速攻で去勢すべき」
と進武兄は言っている。
 
「うん。それで私も即去勢しちゃったから、アルトの声は出て、代わりにアルトソロを歌ったよ」
 
「へー、それは凄い」
「ああ、去勢したんだ?」
「だからお父さんごめーん。私、お婿さんには行けなくなった」
「まあお前はお婿さんには行かないだろうな」
「俺たちが嫁もらうから、それは心配するな」
 
「代わりに私、誰かのお嫁さんになって子供産むからよろしく」
「ああ、それは楽しみだ」
とビールを片手にテレビを見ていた父は言った。
 

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「ごはん食べた?」
と母が訊く。
「まだ」
「じゃ、御飯食べてからお風呂入るといいよ」
「そうする」
 
それで母が作っていた肉ジャガで御飯を食べてから、津久美は洗濯物を洗濯機に入れる。歯磨きした後、自分の部屋から着替えのショーツとキャミソールにキティちゃんのパジャマを持って来て、トイレに行って来てから、お風呂に入った。
 
髪を洗い、コンディショナーを掛けたまま、胸・腕・お腹を洗ってから、あの付近を指で優しく洗う。
 
「私、ちゃんと正直に言ったよね?」
と自問自答した。
 
「だけど夢の中でお兄ちゃんたちがお姉ちゃんになってたのは今思い返すと面白すぎる」
などと津久美は思う。陽太は野球部員、進武は柔道部員で、2人ともおよそ女装が似合いそうにないけど、夢の中ではわりと可愛い少女になっていた。
 
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足まで洗い、足の指の間もきれいに洗ってからコンディショナーを流し、顔も洗った。浴槽に入って身体を温める。浴槽の中であの付近を触るが、そこを開けると浴槽中のお湯が入ってよくない気がしたので、開けないように我慢した。
 
「これの開け閉めのコントロール、練習しなくちゃ」
などと思う。
 
「でもタマタマが無くなっているの、早速梨志たちに見られちゃったからなあ」
と津久美は昨日の朝の出来事を思い起こしていた。
 

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梨志(りこ)たちは
「睾丸はとっくに除去していたと思ったのに」
「私たちで去勢してあげようか」
などと言って、ナイフ片手に(危険物の持ち込み反対!)津久美のパジャマのズボンとパンティを無理矢理脱がせて、そこを見てしまった。
 
「いつ取っちゃったの?」
と訊かれた。
 
津久美は“本当に無くなっている”のに驚きながら
「みんなに迷惑掛けちゃったから、昨夜手術受けてきた」
と答えた。
 
「じゃこれで津久美は本当に私たちの仲間だね」
「うん、よろしくね」
「でも手術代高くなかった?」
「うーん。9000円かな」
「9000円でタマタマ取ってもらえるんだ!?」
「3割負担だからね」
 

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浴槽から上がってから全身にシャワーを掛ける。ここであそこも開いてきれいに洗った。上がってから身体を拭いて、パンティを穿くが、この感触はいいなと思った。タマタマが無いとぶらぶらする感覚が無くて落ち着く。
 
キャミソールを着てからパジャマの上下を着る。髪は濡れているのでタオルを巻いた。
 
そしてお風呂から上がると
「おやすみなさーい」
と言って、自分の部屋に入る。
 
布団の中であの付近に触り、またドキドキした。
 
「蓮菜さんから即去勢しなさいって言われたけど、ほんとに去勢されちゃったぁ」
などとも思う。
 
夢なら醒めませんように、と津久美は祈った。
 
昨夜見た“夢”を思い出しながら、津久美は眠りに落ちていった。
 
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きーちゃんは呟いていた。
 
「あの子があまりに可愛いから、ついよけいなことまでしちゃった。しかしあんな大物さんから女性器セットを頂くとは。あんな大物さんが関わって来たんだから、あそこまでして良かったんだよね?ね?」
 
と自己弁護する。
 
「生殖器はあの子の親族の女性のものだから、この女性器で妊娠してもあまり大きな問題は無いって言ってたけど、神様たちは臓器バンクでも持ってるのかね〜」
 
「本人はかなり驚いていたけど、きっと新しい身体でうまくやっていけるよね?おそらく2〜3ヶ月以内には生理始まるだろうけど、あの子ならちゃんと対処できるだろうし。1年半後にはセーラー服着ることになるのかな」
 
きーちゃんは、まだ千里が男の娘だ(った)ということに気付いていない(賀壽子は一瞬で気付いたが多分青葉をいつも見ているから)。
 
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10月15日(火).
 
連休明けの15日には朝の全体集会で合唱サークルの全国準優勝が報告され、部長の穂花が賞状を全校児童に披露。拍手が起きた。
 
なお、2年連続準優勝を機に「合唱サークル」から「合唱部」に昇格させてはという意見もあったものの“サークル”とすることで、他の部に入っている子が兼部しやすい(元々そのためサークルにした)というのもあり、結局サー久ルのまま活動を続けることになった。だから練習もこれまで通り昼休み中心である。でも児童会のクラブ部長会議には、これまでオブザーバー出席だったのを正会員として出席することになった(議事の投票権も与えられる)。つまり部ではないが限りなく部に近い扱いになる。児童会からの支援費もこれまでの3倍くらいもらえる(どっちみち大した金額ではないが)。
 
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火曜日の夕方は、校長先生が合唱サークルの児童たち(+馬原先生・松下先生・教頭先生)を個人的に招いて、お祝いのパーティーが開かれた。留萌市内の洋食屋さんを貸し切って「好きなだけ食べてね」と言い、歓声があがっていた。でも映子は美都が付いていて、度をすぎて食べないよう監視していた!
 
 
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少女たちの晩餐(8)

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