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■娘たちの地雷復(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2018-11-04
 
龍虎は(多分)夢を見ていた。
 
「じゃ手術しますよ」
と言われ、手術着に着換えさせられる。あれ〜?ボク何の手術を受けるんだろうと思う。ストレッチャーで運ばれていき、手術台に乗せられる。無影灯がまぶしい。
 
「じゃ麻酔薬投入するよ」
と言われ、点滴に入眠薬が入れられたようである。意識を失っていきながら龍虎は小学1年生の時の大手術を思い出していた。そしたら唐突に川南さんの顔が浮かび
 
「龍虎、ちんちん取っちゃおうよ」
 
と言われ、え〜〜〜!?と思った。
 

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2013年の4月以降、千里は基本的にスペインで暮らしていたので、日本時間の午前10時(ESP 3:00AM)頃に起きて日中は主として作曲作業をし、日本時間の夜9時(ESP 14:00)頃から日本時間の午前4時(ESP 21:00)まで練習をする。そのあと帰宅して6時間ほど睡眠を取っていた。
 
練習 ESP 14:00-21:00 JPN 21:00-_4:00
睡眠 ESP 21:00-_3:00 JPN _4:00-10:00
作曲 ESP _3:00-14:00 JPN 10:00-21:00
 
それでつまり日本時間でいうと、10:00-21:00 くらいが自由のきく時間帯であり、その時間の多くはグラナダ市内のアパートに居るのだが、日本の葛西のマンションに来たり、時には気分転換で千葉の桃香のアパートに来ている場合もある。
 
この間に『ハートライダー』の撮影で放送局から頼まれて富士スピードウェイで2回、鈴鹿サーキットで1回、自分のインプレッサや放送局が調達したフェラーリを走らせたし、ラリーコースも2回走った。こういうお仕事は結構気分転換になった。
 
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貴司と阿倍子の結婚式の3日後、8月12日の午前中に、千里が千葉のアパートに居たら桃香が言った。
 
「千里ここしばらく何か暗い」
「そ、そう?」
「何かあったのか?」
「いや、別に何もないけど」
 
「大学も夏休みだし、しばらくうちの実家に来ないか?」
「えーっと」
 
千里は焦った。最近は時間の調整が難しく、頻繁に眷属に代役を頼んでいるのだが、高岡にいて眷属を使っていると、青葉に気付かれてしまう危険がある。
 
しかし千里は実際貴司を阿倍子と結婚させてしまったことを後悔していたし、桃香が心配してくれているのも分かるので、一緒に高岡に行くことにした。
 
新幹線・はくたかを乗り継いで高岡に行く。桃香の家に入ると、青葉は奈良に行っているということだった(回峰行をしていた)。
 
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高岡では「昨年の性転換手術の傷が完治していなくてまだ体力がない」と称して午前10時に起きて、夜9時に寝る生活をさせてもらった。実際には夜9時から午前4時まで《びゃくちゃん》に桃香の部屋で千里の代わりに寝ていてもらって、その間千里はスペインでバスケをしているのである。《びゃくちゃん》は“容赦無い”ので桃香が
 
「千里、今の手刀は死ぬかと思った」
などと言っていたりする。
 
「殺すつもりで打ったから。桃香よく生きてたね」
「勘弁して〜。ちんちんも切られたし」
「桃香もそろそろ性転換して女になるべき」
 

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青葉の方は16日までは奈良に居たのだが、17-18日は東京にまわってサックスのレッスンを受けたようである。それで18日の夜遅く帰ってきたのだが、何やら「呪いのヴァイオリン」なるものの処理を頼まれて20日にはまた東京に行ってきた。そして戻ってきたかと思うと、その依頼人が他にも様々な「呪いのグッズ」を持っていることが判明。その処分のため奈良に行ってくると言った。
 
さすがに桃香が停めた。
「青葉無茶苦茶。体力の限度を超えている」
 
それで奈良への移動には朋子のヴィッツを使い、青葉は後部座席で寝ていて千里と桃香がついていくことにした。むろん桃香としては自分と千里で交替で運転するつもりであった。
 
千里も正直貴司のことばかり考えていて、ボーっとしていたので、桃香から「運転代わってくれ」と言われて、初めてそのことに気がついた。
 
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日本の運転免許証をまだ返してもらっていない!!
 
その間のつなぎに、せめてスペインの国際運転免許証を発行してもらっておけばよかったのだが、1ヶ月くらい大丈夫だろうと思い何もしていなかった。それで今免許が無いのである。千里は何と言い訳しようかと思った。
 
「ごめーん。私、まだ体調が良くなくて、高速を運転する自信が無い」
と千里は言った。
 
それで青葉は性転換手術の傷の治り具合がよくなくて、体力に自信が無いのだろうと解釈したようであった。
 
結局、ヴィッツは桃香と青葉が交替で運転して★★院まで行ったのだが、桃香は無謀運転だし、青葉は無免許運転だしで大変だったようである。実際には、高岡を出発したのが夜9時頃で、ヴィッツに同乗したのは《びゃくちゃん》である。青葉は夜間でもあり、疲れているので代役には気付かなかった。
 
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しかし最後、高野山町から★★院までの山道は、千里(スペインから戻ってきたばかり)が
「ふたりとも疲れたでしょう」
 
と言って運転した。免許不携帯であるが、桃香に任せたら間違い無く崖から転落するし、青葉は多少仮眠はしているものの、搭載している呪いグッズが自分たちに影響を与えないよう結界の維持作業もずっとしていて疲労の限界を超えているようだったので、千里が運転するほか無かった。
 

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★★院から先は、同院の醒春さんという30代のお坊さんが呪いグッズを持ってくれて青葉と一緒に処分場に行ったようである。
 
無論桃香と千里は院の中で休んでいたが、桃香は
 
「山の中に投棄してくるのかね?たくさん捨てられる所ありそうだもんな」
などという。
 
「違うよ。この山の中に“この世では無い所”があるんだよ。そこに納めてくるんだよ」
と千里は説明した。
 
「この世でないってあの世?」
「ほとんどあの世だと思う。普通の人はそこに行ったら帰って来られない」
「青葉は大丈夫な訳?」
「あそこから帰って来られる人は日本全体で120人くらいらしい」
「ああ、わりと居るんだな。青葉はまあ霊能者として日本のトップ100くらいに入っているということか」
と桃香は言ったが、近くで話を聞いていた瞬醒が苦笑していた。
 
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今ここにそこから戻ってこられる人間が、青葉・千里・瞬醒と3人もいたのである。
 

青葉たちが戻ってきてから少し休憩した上で帰ろうか、と言っていたら、千里の携帯にメールが着信する。貴司からなので千里は桃香に見られないようにさっと開いて瞬間的に見たあと、次の瞬間削除した!
 
「何何?」
と桃香は言っているが
「DMだよ」
と言ってから千里はみんなから少し離れて貴司に電話する。
 
メールは《話が複雑なので電話で直接話したい》ということであった。
 
「どうかしたの?」
と千里が訊くと、貴司は
「実はヴァイオリンを引き取ってくれないかと思って」
ということであった。
 
どうも向こうは傍に阿倍子さんが居るようである。こちらも傍に桃香がいて聞き耳を立てている。それで千里は言葉を慎重に選びながら話した。
 
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「貴司、新婚旅行からはもう戻ったんだっけ?」
「国体チームの合同練習が12日(月)から設定されていたからさ。だから結婚式の後10-11日の土日2日間で行ってきた」
 
新婚旅行が1泊2日(初夜まで入れて2泊3日)というのは短い気もするが、元々貴司の予定が詰まっているところに無理矢理結婚式をねじ込んだのだから仕方ない。
 
「国体は惜しかったね」
「うん。これは全国大会行けるかなと思ったんだけどね〜」
 
国体の近畿ブロック予選は京都・兵庫・和歌山、大阪・奈良・滋賀の2組に別れて予選リーグを戦い、最後に双方の1位が対戦する方式で行われた。貴司たちの大阪代表は奈良・滋賀に勝って2勝で勝ち抜けたが、決勝で京都に70-66の4点差で敗れ、国体本戦の出場を逃したのである。
 
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「新婚旅行の行き先は?」
「新幹線で博多まで行って、11日は博多市内を見て、午後の新幹線で大阪に帰ってきた」
 
「のんびりとした旅だね。やはり新婚さんはホテルでたくさん時間を取らなくちゃね」
 
と千里は言っているが、もちろんイヤミである。実際問題としてせっかく九州まで行ったのなら、ハウステンボスとか阿蘇山とか見て帰ってくればいいのにと思っている。
 
「いや阿倍子の体力が無いから、長い距離の移動ができないし、日中の移動時間も短めなんだよ。博多まで行くのも、途中の岡山と山口でいったん降りて休憩しているし」
 
「そんなに彼女体力無いんだっけ?」
と千里はさすがに驚いて言った。
 
「それで頼みがあるんだけど」
と貴司は本題に入った。
 
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ヴァイオリンがマンションにあるのを見て、どのくらい弾くのか聴いてみたいと思っていたと阿倍子が言ったが、自分はもう長いこと弾いてないから、弾けないと答えたということ。そんなに長く弾いていなかったものがなぜほこりもかぶっていないのかと訊かれたので、そのヴァイオリンは最近まで千里が持っていたものだということを言ってしまったということ。
 
それで自分は寛容なつもりだけど、彼女からもらったものを家に置いておくのはさすがに嫌だと言われたということを貴司は語った。
 
千里は吹き出した。そんなの正直に言わなくても適当に誤魔化しておけばいいのに、と思うが、そういう嘘をつけないところが貴司のいい所かも知れないなと思う。
 
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千里は今奈良に来ているから、帰りに大阪に寄って回収していくよと言った。
 

それで千里が自分は大阪に寄って行くから、桃香も青葉も先に帰っててと言うと桃香が
 
「千里が大阪に寄るのなら、自分も同行する」
と言い出したのである。
 
桃香としてはかねてより千里がどうも大阪で彼氏と会っているようだと思っていたので、そいつを一目見てやろうという魂胆である。それで結局ヴィッツで大阪まで一緒に行き、青葉をサンダーバードに乗せて高岡に返し、桃香と千里のふたりで千里(せんり)のマンションまで行った。
 
阿倍子は千里が桃香と一緒に貴司の部屋に入って行くと、キッと千里を睨んだ。結納式の時に豪華なダイヤの指輪をつけていた女じゃん。こいつが貴司の元婚約者か?と考える。しかし千里はポーカーフェイスである。
 
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千里は桃香に
「中学のバスケ部の先輩なんだよ」
と説明した。
 
「へー。バスケットしてたんですか?」
と桃香が阿倍子に訊くので
 
「いえ、私はスポーツは何も・・・」
と阿倍子は戸惑うように答える。
 
「私の先輩は貴司さんの方だよ。奥さんが男子バスケ部に入る訳ない」
と千里。
 
「あ、そうか。時々、千里が元は男だったことを忘れてしまう」
と桃香が言うが、それで阿倍子はびっくりしたようにして
 
「うっそー!? あなた男性だったんですか?」
などと阿倍子。
 
「ええ。ですから私、高校時代はバスケのために髪は五分刈りにしてたんですよ」
と千里が言うと
「そういえば、そんな話は聞いていた」
と桃香も言った。
 
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「このヴァイオリンは、元々僕が小学生の頃に弾いていたものでさ、千里がヴァイオリン弾くのに楽器持ってないと言ってたから、自分はもう弾かないからあげるよと言ってあげたものなんだよね。でもその後、何度か色々な経緯で僕の所に来たり、千里の所に行ったりしていたんだけどね」
 
と貴司は説明する。
 
「だから、これは僕と千里の友情の印みたいなものかな。僕と千里の関係は基本的にはバスケの先輩・後輩の間柄だから。まあ千里が女になってしまったから、会って話したりしてると、たまに誤解する人もあるみたいだけどね」
 
と貴司は更に言った。
 
千里もその説明を追認した。これはこの後、わざわざ阿倍子に見られるように貴司の周囲に出没するための布石である。そのためあくまでふたりの関係を友人だと言っておくのである。
 
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しかし阿倍子はその言葉を信用していないようにも見えたし、桃香もそれを全く信用していないように見えた。ふたりとも千里と貴司がただの友だちだなんて全く信じていないし、阿倍子はそれに加えて千里が元男性だというのも信じていないようであった。
 

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千里は
「ちょっとトイレ貸して下さいね」
と言ってトイレに入ると《こうちゃん》に言った。
 
『貴司の男性器を返してやんなさい』
『バレてた?』
『気付いてたけど私もいい気味だと思って放置してた。でも京平を作るのに貴司の精液が必要なんだよ。だから取り敢えず仮釈放ということで』
『でもチンコ付いてたらきっと浮気するぜ』
『たくさん浮気すれば阿倍子さんに愛想尽かされると思う』
『なるほどー!』
『どうせ他の女とはセックスできないよね?』
『ああ。貴司のチンコは千里専用だから。切り取って箱に入れて千里が管理していてもいいくらい』
『私それ絶対紛失する』
『無くなったら諦めて女になってもらうということで』
 
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娘たちの地雷復(1)

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