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■娘たちの地雷復(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2018-11-05
 
9月29日(日).
 
龍虎たちの学校では学習発表会が行われた。クラスによっては合唱をしたり、ダンスなどを披露するクラスもあるのだが、龍虎が過去に所属したクラスはいつも劇を上演していた。
 
龍虎は2年生の時は『十二支の始まり』で、うさぎ3(各動物が2〜3人ずつ居る)だった。3年生の時は『わらしべ長者』のミカンと反物を交換する商人、そして4年生の時は白雪姫の鏡役の予定だったのが、白雪姫役の子(麻由美)が急病で休み、誰かセリフが入っていて、白雪姫の衣裳(麻由美はかなり身体が小さい)が入る子、ということで当日急遽、白雪姫の役をすることになった。近年流行の《戦う白雪姫》だったので、ひよわな麻由美より、多分男の子の龍虎がやる方がいい感じになるよ、と言われ、実際龍虎はかなり格好良い白雪姫を演じて、みんなから褒められた。
 
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そして昨年は『ピーターパン』をやるからあんた主役に立候補して、と先生から言われていたので立候補したら、演目が変更になっていて『サウンド・オブ・ミュージック』の主役マリアをする羽目になった(もっとも先生はウェンディーをやらせるつもりだった)。しかし歌唱力のある龍虎は堂々とした歌声で格好良くマリア役をやりとげた。
 

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そして今年はマルシャーク(1887-1964)作の『十二月(じゅうに・つき)』(別名『森は生きている』)をやることになった。6年1組は現在34人(M21F13)で、キャストはこのようになった。
 
♀(6) アーニャ、エレーナ、母、わがままな女王、家庭教師、黒子
♂(8) 大臣A、大臣B、チェス優勝者、死刑囚、老兵士、マローズ爺さん、東の王子、西の王子
♂♀(12) 1月〜12月の神様
♂(6) 近衛兵
♀(2) 女王のソリを引く犬(犬の頭のかぶりものをつける)
♂♀ 舞踏会の客(神様・犬の役の人が兼任)
 
ここでキャストは男14,女8,男女不問12となっており、実際には男21,女13人いるので、神様役は差し引き男7女5ということになった。
 
しかし配役表を見た増田先生は「神様役はちょうど男女6人ずつになったのね」と言った。
 
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ちなみに龍虎は4月の役である!
 
主な配役はこのようになっている。
 
アーニャ:麻由美、エレーナ:宏恵、母:麻耶
女王:佐苗、家庭教師:育江
大臣A:木下、大臣B:中井、チェス優勝者:立石、老兵士:内海、マローズ爺さん:藤島
東の王子:伊東、西の王子:西山
1月:金野、4月:龍虎、7月:彩佳、10月:真智
 
ちなみに東の王子と西の王子は、それぞれ名前に東・西が入っているからと言われて、伊東君と西山君に押しつけられた。
 
麻由美が主役のアーニャを演じるが、もし当日休んだりした時のためにセリフは家庭教師役の育江も覚えて、衣裳も各々用のサイズを用意し、万一の場合は代替できるようにすることにした。
 

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そして当日。。。。。
 
「え〜〜〜!?麻由美ちゃんも育江も休み〜〜〜!?」
 
麻由美は熱を出して寝込んでいるらしい。どうもこの子の発熱は精神的なものなのでは?という気もした。美人なので男子たちから推薦されて主役になったのだが、そもそも内気な子で、あまり友だちもおらず、いつも自分の机で詩集を読んでいるような子である。
 
「育江ちゃんは?」
「昨日、窓から飛び降りたら足首捻挫したらしくて。本人は出てきたいと言ってたんだけど、その状態で動いたら治るものも治らないから、今日はお休みして安静にしておいた方が良い、とお母さんに言ったの」
と増田先生は言っている。
 
「なぜ窓から飛び降りる?」
「帰った時、誰も家に居なくて、あの子、合い鍵がどこに行ったか分からなくなって窓から家の中に入ったらしいの」
 
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「窓に鍵が掛かってないというのは不用心だ」
「それで窓によじのぼったのはいいけど、部屋の中に飛び降りる時に、着地失敗したらしくて」
「あぁ・・・」
「物事は最後が肝心なのよね〜」
 

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「それで誰かアーニャを代わってもらえない?」
と増田先生が言う。
「家庭教師もですね」
「うん。でもアーニャは圧倒的にセリフが多いから」
 
「誰が覚えてる?」
と言ってお互いに顔を見合わせる。
 
彩佳が言った。
「龍は全部覚えてるよね?」
「あ、うん」
と龍虎は答える。
 
「この子は全員のセリフを覚えちゃうんですよね。それでひとりで全員の役をして練習している」
 
「だったら、田代さん、アーニャができる?」
と増田先生。
 
「分かりました。やります」
と龍虎は言った。
 
やはりこうなるのか、と龍虎もあきらめ顔である。
 
それで育江がやるはずだった家庭教師は西の王子役だった西山君が女装!してやることにし、龍虎がやるはずだった4月は7月役の彩佳、7月役は近衛兵役の細井君、西の王子はやはり近衛兵役の佐竹君が代替して、近衛兵は4人にする。
 
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全員急いで台本を読んでセリフを覚える。最初から全てのセリフを覚えている龍虎はいいとして、短時間でかなりのセリフを覚える必要がある西山君は大変である。
 
なお、衣裳は龍虎は麻由美と似たような体格なので彼女の衣裳が使える。家庭教師は、西山君はわりと細い体格なので、育江の衣裳が何とか入った。ついでにドレスを着て興奮していた(西山君も結構女装好き)。各月の神様の衣裳は普段着に1〜12の数字の入ったビブスを着けるだけなので問題無い。
 
ちなみに着換える時、教室の中央に移動式黒板が立ててあり、前半分で女子が、後ろ半分で男子が着換えている。西山君は家庭教師の衣裳を佐苗から渡され、後方の男子領域で着換えた。しかし龍虎は他の女子と一緒に前の方で着換えた!
 
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お芝居は照明を落として暗いステージの上でスポットライトをあびたアーニャ(龍虎)と老兵士(内海)の演技で始まる。アーニャはつぎはぎの目立つサラファンを着ている。
 
「君はこんな森の中で何をしているの?」
「薪になりそうな木の枝とかを探しています」
「こんな雪の中で?君ひとりで暮らしているの?」
「お母さんとお姉さんがいるけど、こういう仕事は私がやることになっているの」
「それは大変だね」
 
と言ってから老兵士は思い出したように言う。
 
「大晦日の晩からお正月の朝に掛けては、この森の奥に季節を司る1月から12月までの12人の神様たちが集まってパーティーをするという伝説があるんだよ。どんな楽しいパーティーなんだろうね。僕も1度見てみたい気がするよ」
 
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「へー。美味しいお料理とかあるといいなあ」
「僕は美味しいお酒があるといい」
 
その後、老兵士は木の枝を拾うのを少し手伝ってあげた。
 

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ふたりが退場した後、ステージの明かりが付く。玉座に女王(佐苗)が座っている。家庭教師(西山)の授業を受けている。
 
「それでは3×5はいくらでしょう」
「8」
「それは足し算の答えです。3×5は15です」
と家庭教師が言うと、女王はたちまち不機嫌になる。
 
「今度から3×5は8にしなさい。逆らうとお前、死刑にするよ」
「そんなこと言われても・・・」
 
そこに大臣A(木下)が若い男性(立石)を連れてくる。
 
「この者は年末のチェスの全国大会で優勝したのです。どうか陛下の祝福を」
「ほほお。褒めてつかわすぞ。名前は何だ?」
「マリエンコと申します」
「そうか。スダールカ・マリエンコ、そなたに勲章と金貨を与えるぞ」
と女王が言ったのに対して、本人は
 
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「ありがとうございます」
と言いながらも戸惑ったような顔をしている。
 
「どうかしたのか?」
と女王が言うと大臣Aが説明する。
 
「あ、いえ、今、陛下はこの者にスダールカ(英語のミスに相当する敬称 *1)とおっしゃいましたが、この者は男ですので、スダーリ(英語のミスター相当)の方がよいかと」
 
すると女王は不機嫌になる。
 
「私がスダールカと言ったのだから、スダールカで良い。お前は今日から女にする」
「え〜〜!?」
「だから今日以降女の服を着て、男と結婚するように」
「そんなあ」
 
「仕方ない。陛下がおっしゃるから、お前は今日から女になるように」
と大臣A。
 
それで真っ黒の黒子(くろこ)の衣裳を着けた桐絵がドレスを持ってくるので、マリエンコはその赤いドレスを着せられてしまった。
 
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「僕、男と結婚しないといけないんですか?」
「女ならば可愛い服も着られるし、兵隊にも行かなくてもいいから、よいかも知れんぞ。ちゃんと男と結婚できるようになる手術も受けさせてやるから」
「手術〜〜〜!?」
 
それで大臣Aはドレスを着た立石君を連れて下がる。
 

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ちなみに立石君は女顔で身体も小柄・華奢であり、また名前(柚季)が女子の名前にも見えるので、外見でも名前でもわりと女子に間違えられる。本人も結構女装が好きである。それで今回のシナリオで性別を間違えられる役には、彼しか居ない!というので、満場一致で彼がこの役に推薦された。
 
ちなみに立石君は『よく女の子と間違われる男の子』だが、龍虎の場合は『女の子にしか見えない』ので『男の子と間違われる?ことはまず無い』!
 

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(*1)ロシア語でのMrに相当する敬称はスダーリ(Сударь)、Mrsに相当するのがスダーリニャ(сударыня)、Missに相当するのがスダールカ(Сударка)であるが、元々が「ご主人様」とか「奥様」といった意味なのでロシア革命以降、階級的であるとして使用されなくなり、現在ロシア語にこの手の敬称は存在しない(外国文学の翻訳の際にのみ使用される)。現在ロシア人に敬意を持って呼びかける場合は、名前+父称を使う。例えば、アンナ・ニコライナ・イヴァノヴァさんには、アンナ・ニコライナと呼びかけるのが丁寧な呼びかけである。
 
なおロシア人の苗字は男女で、イヴァノフ・イヴァノヴァ、チャイコフスキー・チャイコフスカヤのように形が変わるのだが、−エンコで終わる苗字は男女が同型になる例外的な苗字である。それでマリエンコさんは男性でも女性でもマリエンコさんである。
 
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更に大臣Bが手首を縄でしばられた男を連れてきて言う。
 
「この男は主人から殺されそうになり、つい反撃して主人を殺してしまったのです。法律上は死刑にしなければなりませんが、長年主人から虐待されており、また他にも何人も酷いことをされていた使用人がいたのです。同情すべき所が多いのでお正月でもありますし、女王陛下の御慈悲で恩赦を与え、罪一等を減じて頂けませんでしょうか」
 
ところが女王は言う。
「おお。死刑か。私は死刑が見たい。その男を明日元日のお昼に処刑せよ。私も見学する」
 
「そこを何とかお慈悲を」
と大臣Bが言うが、
 
「文句があるなら、お前も死刑にするぞ」
と大臣Bに言うので、大臣Bはがっかりした様子で男を連れていく。
 
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このあたりは佐苗のわがままぶりの演技がなかなか素晴らしかった。この劇がうまく行くかどうかは、実は女王の演技が肝なのである。
 

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そして0時になり、クリスマスツリーが飾られた元旦の舞踏会が始まる。マローズ爺さん(藤島)が舞踏会の出席者にプレゼントを配る。
 
ちなみにマローズ爺さん(Дед мороз)というのは、西欧のサンタクロースに相当するものである。衣裳もそっくりである。正教の国ロシアでは12月25日ではなく1月1日にツリーを飾ってマローズ爺さんが贈り物をしてくれる。
 
東の王子(伊東)と西の王子(佐竹)が女王にプレゼントする。東の王子は素敵なルビーのネックレス、西の王子はスミレの花の絵が描かれた小箱をプレゼントした。するとその小箱が気に入った女王は唐突に言い出した。
 
「生のスミレの花が欲しい。ここに持って参れ」
「陛下、スミレの花は4月にならないと咲きません」
と大臣。
 
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「私が欲しいというのだから、持って来なさい。すぐに国中にお触れを出すように」
「こんな夜中にですか?」
「朝までにスミレの花を籠に摘んできた者にはこの小箱いっぱいの金貨を与える」
 

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この話をお触れで聞いたアーニャの母ライザ(麻耶)はアーニャ(龍虎)に森の中へスミレの花を摘みに行かせる。アーニャは途方に暮れて歩いていたが、老兵士から聞いた話を思い出し、森の奥へ歩いて行く。すると月の神様たちの集会場に辿り着く。
 
スミレを摘んでこないと家に入れてもらえないというアーニャに同情した月の神々は助けてあげることにする。
 
現在この森を管理している1月の神(金野)が途中の2月の神・3月の神の許可も得て、4月の神(彩佳)にその座を譲ると、付近にたくさんスミレの花が咲くので、アーニャは感謝してスミレの花を摘む。アーニャがお礼を言って帰ろうとしたら、
 
「この指輪を持って行きなさい。この指輪を使えばいつでも私たちを呼び出すことができる」
と4月がアーニャの指に指輪を填めてくれた。
「ありがとうございます」
 
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と言ってアーニャは指輪を着けて家に帰るが、真冬の森の中を長時間歩き回ったので、疲れている。
 
母とエレーナはスミレは私たちが城に持って行くからお前はここで待っていろと言う。そしてアーニャが指輪を着けているのに気付いたエレーナはその指輪を奪い取るが、自分の指には入らなかったので、ポケットに入れた。アーニャは疲労が激しいので倒れてしまう。それで母(麻耶)と姉のエレーナ(宏恵)はアーニャが摘んできたスミレの花籠を持ってお城に行く。
 

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娘たちの地雷復(5)

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