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■娘たちの1200(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2018-04-28
 
第4試合では玲央美たちのジョイフルゴールドと花園亜津子などのエレクトロウィッカの試合が行われたが、この試合も千里たちの試合同様のロースコアの接戦となった。観客としては2試合続けてストレスの溜まる試合となったであろう。
 
エレクトロウィッカはステラストラダに在籍していたことのある母賀ローザをかなり評価していた。また亜津子や武藤博美が佐藤玲央美の凄さを知っている。馬田恵子も熊野サクラをかなり評価していた。メンバーの中には池谷初美や堀江希優を知っている人もあった。それでE女子高とのビデオを全員で鑑賞したが、
 
「ここはフラミンゴーズやステラ・ストラダより強いじゃん」
などという声まで出ていた。
 
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それで各々誰が誰に付くかという担当を決め、昨日は1日その練習をしていたのである。
 

その成果があって、エレクトロウィッカはジョイフルゴールドをかなり封じ込めた。昭子は亜津子にきれいに押さえられてしまったものの
 
「あんたフォームがきれいだね。さすが千里の弟子だね」
などと亜津子が試合中に彼女に声を掛け
「ありがとうございます。花園さんのフォームも美しいです」
などと昭子も答えて、2人は和気藹々と?試合をしていた。
 
亜津子は試合中に対戦相手とおしゃべりするのが好きなのである。
 
亜津子が敢えて昭子を停めずに撃たせて
「今のフォーム、左足が少し崩れてた」
などと注意して
「あ、それ感じました。次から気をつけます」
などと昭子も言ったりもしていた。
 
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「でもあんた男の娘だったんだって?」
「はい。高校時代は男子バスケット部と女子バスケット部の両方に所属していたんです。スポーツ保険二重払いしていたし、IDカードは男子のカードと女子のカードと両方持っていたし」
「凄いね」
 
昭子が男子と女子の登録カードを持っていたのは、女子のエンデバーに度々召集されていた一方で、試合には男子として出ていたためである。しかし女子のエンデバーに召集するというのは、将来は女子選手になってくれることを協会側も期待しているのでは?と薫は言っていた。
 
高校時代に男女双方の登録カードを持っていたのは昭子だけである。千里は2006年秋に女子のカードが発行された時点で男子のカードは回収されている。薫も2008年夏に男子のカードを返上して女子のカードをもらった。横田倫代は、昨年1月に性転換手術が終わった後、本人がもう男子の試合にはできたら出たくないというので男子のカードを返上して、代りに女子のカードを発行してもらっている(*1)。
 
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「でも高校3年のインターハイ道予選が終わった所で性転換手術を受けて女の子の身体になりました。去年の夏には戸籍も女性に変更したんですよ」
と昭子は説明する。
 
「おお、それは良かった。あんた可愛いからきっといい嫁さんになるよ」
と亜津子。
 
「ありがとうございます。結婚してくれる男性がいたらいいんですが」
 
「あんたいっそ戸籍の性別を直さなかったら、女の子であんたを嫁さんにしたいという人もあったかも」
 
「なんか、そういうことよく言われます」
「やはり」
 
実際昭子が戸籍の性別を女性に直したと聞いて「ああん。昭ちゃんと結婚できなくなった」と嘆いていた女子がKL銀行には随分居たのである。
 
(*1)倫代は本当は高3のインターハイ・ウィンターカップに男子として出場する権利もあったのだが、その権利を放棄した。実際協会側も女子の身体で男子の試合には出てもらいたくないようだった。千里の時にさんざんそれでトラブルが起きている。
 
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倫代のカードには2011年6月12日以降の都道府県予選、2012年6月12日以降の全国大会・国際大会に出場可という注意書きが入っている。それで実際彼女はインターハイ・国体・ウィンターカップの道予選には出場して活躍している。今年度の国体で旭川選抜が札幌選抜に勝てたのは、本戦には出られない彼女の貢献もあった。
 

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仲良く?試合をしていた亜津子と昭子に比べて、センター対決は厳しいものとなった。ジョイフルゴールド側はサクラとローザが交代で出てくるのだが、最初、元プロのローザに馬田恵子が、サクラには西根春子が付いていた。しかしサクラの予想を上回るパワーとスピードに春子が付いていけず、リバウンドも全部取られてしまうので、結局馬田が1人で双方の相手をすることになってしまった。
 
「ごめんなさい。この子にはかなわない」
と西根は音を上げていた。
 
馬田は日本代表の正センターだけあって、体格・ジャンプ力ともにあるし、スタミナも凄い。それで何とかサクラ・ローズの2人に対抗していた。
 

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佐藤玲央美の相手をしたのは河原恭子である。彼女は大阪E女学院出身で、インターハイやウィンターカップで直接対決はしていないものの札幌P高校の中心選手・玲央美を見ていて凄い選手だと思っていた。それで昨日は玲央美の高校時代のビデオなども再度見て研究していたのだが、現実の玲央美は高校時代からかなり進化していたし、ビデオでは分からなかった瞬発力やスピードを持っていた。
 
亜津子から「玲央美は分身の術を使うから気をつけて」と言われていたのだが、実際玲央美は自分の右側でドリブルしていたと思ったのがいつの間にか左側にいるし、攻撃の時、抜いた!と思ったら目の前に居たりして「うっそー!」と思う。
 
それでどうしても玲央美に勝てなかったものの、玲央美と相性の良い亜津子は昭子を押さえるのに回っているので自分が何とかしなければと頑張り、結局、研究の成果もあって玲央美の得点を恐らく2割は落とした。
 
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試合終了間際に昭子がスリーを入れたものの、それでも48-46で、エレクトロウィッカが辛勝した。
 
なお5日の試合結果は下記である。
 
神奈川J(関東)×−○ビューティーM(W4)
フラミンゴーズ(W6)×−○Bレインディア(W2)
ローキューツ(社2)×−○レッドインパルス(W5)
Jゴールド(社1)×−○Eウィッカ(W3)
 

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貴司は3日夜まで千里と一緒に過ごした後、4日朝の新幹線(東京6:00-8:25新大阪)で大阪に戻り会社に出るが、5-6日の木金は有休を取った。つまり1月9日成人の日まで5日間休むことになる(★はオールジャパンの試合がある日)。
 
___ 日中 夜間
1(祝)★移動 apart(桃香は移動中)
2(振)★観戦 apart(桃香は外泊)
3(火)★観戦 apart(桃香は外泊)
4(水)_勤務 大阪
5(木)★観戦 apart(桃香は夜勤)
6(金)デート ホテル
7(土)★観戦 apart(桃香は外泊)
8(日)★観戦
9(祝)
 
5日は朝の新幹線で東京に出てきて試合を観戦。試合終了後は、またスカートを穿かされて千葉市内の焼き鳥屋さんでの残念会に出た後、この夜は桃香が夜勤で不在なのでアパートに一緒に泊まっている。
 
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1月6日の朝、一緒の布団の中で起きた時、貴司は千里に言った。
 
「あらためて話があるんだけど」
「何だろう?」
 
「僕と結婚して欲しい。そして大学を卒業したら、大阪に来て一緒に暮らしてほしい」
 
「いいよ」
と千里は即答した。そしてふたりはキスした。
 

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それでこの日の午前中、ふたりは銀座のティファニーを訪れた。
 
「いらっしゃいませ」
と40歳くらいの女性スタッフが出てきていう。
 
「婚約指輪を見たいんだけど」
「はい。ご予約とかはありましたでしょうか?」
「あ、ごめん。予約してなかった」
と貴司が言うので
「今朝結婚することを決めたんです」
と千里が言うと
 
「おめでとうございます。ご予算はおいくらくらいですか?」
と女性は笑顔で言った。
 
「そうだなあ。200万くらいで」
「分かりました。ダイヤモンドですか?誕生石か何かですか?」
「ダイヤで」
「分かりました。どうぞ、こちらへ」
といわれて2人は店内の商談スペースに案内された。
 

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最初にお茶とお菓子が出てくる。
 
「なんか待遇がいいね」
「買う気で来てなかったら、ビビるね」
 
「でも200万と貴司が言った時、一瞬相手がギョッとした気がした」
「まあ、もう少し低い価格帯で選ぶ人が多いかもね」
「でも200万も大丈夫なの?」
「給料の3ヶ月分と言うしね」
「ふーん。今貴司は給料66万円くらいもらってるんだ?」
「もう少しある。だから、200万前後と提示しておいて最終的には250万くらいまではいいかな、と」
「ほほお」
 
さっき案内してくれた女性がカタログとリングゲージを持って入ってくる。彼女は野沢という名刺を出した。
 
「リングのデザインのお好みはございますか」
と言いながら野沢さんはカタログを広げる。
 
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「ソリテアがいいです」
と千里が言う。
 
ソリテア(ソリテールとも Solitaire)というのは石を1個だけセットするデザインである。婚約指輪にはソリテアのほかにメインの石の左右に小粒の石をセットするスリーストーン、指輪全体に小粒の石(しばしばメレmeleeと呼ばれるがmelee自体はmixという意味)を並べるエタニティなどがある。ただしエタニティという場合、メインの石があってリングに小粒の石が並ぶタイプを言うショップと、メインの石が無く小粒の石のみ並ぶタイプを言うショップもあり、後者ではメインの石もある物はパヴェ(pavee:敷石)と呼ぶ。
 
なおエタニティには指輪全体を小粒のダイヤが覆うタイプ(フルエタニティ)と上半分だけ覆うタイプ(ハーフエタニティ)がある。フルエタニティは豪華ではあるが、太ってサイズを直したいと思った時に直せないという問題がある。もっとも直しが困難なのは、メッセージを入れた指輪などもそうである。
 
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「石が1個のものですね」
「そうです」
「分かりました。カタログではこの付近ですね」
 
と言ってサンプルのデザインを見せてくれる。
 
「これはあくまでサンプルですので、デザイン自体のオーダーメイドも承っております。よかったらデザイナーを呼びましょうか?」
 
「いえ、こういう感じのシンプルなデザインの方がいいです」
と言って、千里は単純な形のものを指さす。
 

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だいたいデザインが固まった所で、それなら在庫のあるものでも行けるかもということになり、実物を持って来てくれることになる。それで指のサイズを計ってもらう。
 
「スポーツか何かなさってますか?」
と野沢さんが尋ねる。
 
「ええ。趣味でバスケットを」
などと千里が言うが
「いや、この子はバスケットの日本代表です」
と貴司が言う。
 
「それは凄いですね!」
と野沢さんは驚いていた。
 
「指が太いでしょう?」
と千里は言うが
「いえ、引き締まった指だなと思いました」
と野沢さんは言っている。
 
「でもサイズあります?」
「大丈夫ですよ。でもお客様の指は脂肪が少ないので、少し大きめがよさそうですね」
 
「ええ。スポーツで鍛えているから筋肉質なんですよ」
「先日拝見しましたヴァイオリニストさんの指が似た感じでした」
「ヴァイオリニストは指の筋肉が凄いですからね。私もヴァイオリンとかピアノとか弾くんですよ」
「いい趣味をお持ちですね!」
 
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リングゲージで計ると千里は22号(62.8mm)で合いそうだったのだが、余裕を見て24号(64.9mm)にした方がいいかも知れないと野沢さんは言った。
 
通常の女性のリングサイズは8-10号(48.2-50.3mm)らしい。大きなサイズはだいたい肥満体質の女性を想定しているが、千里の場合は身体が引き締まっているので、脂肪の多い人に比べて指側の「余裕」が無いのである。
 
「落ちそうな気がする時は指輪止めを使えばいいですよね?」
「はい、比較的大きなサイズの指輪を購入なさる方にはリングストッパーのご愛用者さんはけっこうおられるます。サイズの大きな方の中には日々の変動も大きいという方も多いので」
 
「なるほどですね」
 

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リングについては、最初プラチナを勧められたものの、自分たちがこれまで愛の証として金色の酸化発色ステンレスのリングを携帯に取り付けて持っていたことを説明し、ゴールドリングがいいと言った。
 
「なるほど、これはステンレスですか。ステンレスにしては美しいです」
と言って、野沢さんはふたりの携帯に取り付けられているリングを見て褒めていた。
 
金の純度としては18金にすることを決める。やはり24金(純金)は柔らかすぎて変形しやすいのが問題である。
 
色合いとしては現在使っているステンレスリングの色に近い、イエローゴールドを希望した。イエローゴールドは肌に優しく変色しにくいのがメリットである。(最近人気のピンクゴールドは変色しやすく、また硬くてサイズ直しが困難な問題がある。またホワイトゴールドは表面の白色メッキが剥げやすい)
 
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