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■娘たちの1200(2)

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指輪の内側には刻印をしてもらうことにする。
 
「これと同様のバスケットボールの模様が刻印できませんか?と言い、千里は2年前に受け取ったアクアマリンの指輪の内側に刻印されているバスケットボールの模様を見せる。
 
「できますよ。よかったらこれを写真に撮らせて頂けませんか?」
「はい、どうぞ」
 
それで野沢さんは男性スタッフを連れてきて撮影させていた。
 
「デザインができた所で一度見てチェックして頂けますか?」
「はい。お願いします」
 
「言葉も刻印なさいますか?」
「はい。格好いいのを調べてメモしてきました」
 
と言って貴司が出した紙には
 
《a takashi ad chisato, semper amens》
 
と書かれている。aはラテン語のfrom, adはtoである。from takashi to chisatoということになる。a/adは分かったのだが、その先は千里には読めなかった。野沢さんがそれをメモしていたが、千里の後ろの子が注意した。それで千里は吹き出した。
 
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「どうかした?」
「それってさ“いつも馬鹿です”って意味だけど」
「え〜〜!?」
 
「多分、semper amemusじゃないかな」
と言って千里は貴司の出した紙の下の方に(恐らく)正しいと思われるスペルを書いた。
 
amor(愛する)という動詞の接続法現在・一人称複数で amemus になる。接続法はこの場合、意志を表す。つまり英語で言うと let's love という感じである。amensというのは形容詞で mad とか stupid という意味である。
 
「少しお待ち下さい。外国語に詳しい者を連れて参ります」
と言って野沢さんは、アメリカ人っぽいスタッフを連れてきた。
 
「上に書いてあるのは always stupid という意味。下のはalways we will loveという意味」
と彼は説明した。
 
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「千里が正解だ」
「気付いて良かったですね」
 
「よく、意味も分からず変な日本語の入れ墨入れてるアメリカ人いますけど、日本語分かる私たちからみると、笑うというより、気の毒に思ってしまう例もありますね」
とアメリカ人スタッフは言っていた。
 
「いや、stupidと刻印していたら、まさに気の毒に思われていた」
 
それで指輪の内側にはバスケットボールの模様と2人の名前、そして「いつも愛し合って行こう」という意味のラテン語 semper amemus を入れてもらうことにした。
 

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メインとなる石を選ぶことになる。
 
石の形は普通の正円(ラウンド)のブリリアントカットを希望する。婚約指輪では正円が多いが、ハート型のブリリアントカットというのも割と人気がある。他に楕円(オーバル)、梨型(ペア)、水雷型(マーキーズ Marquise)などもある。
 
200万円くらいの予算で、18金イエローゴールドのリング、刻印入りというのを前提とすると石は1.0-1.2カラットくらいになりますねと言われ、1.1ctの石を見せてもらうことにする。
 
「このあたりは如何でしょう?」
と言って持って来てもらったのは、1.1ct VVS 3EX H&C Eカラーと説明された。
 
ダイヤの石の“クラリティ”は上の方から FL/IF/VVS/VS/SI/I となっている。基本的に婚約指輪のような指輪にはSI以上、できたらVS以上の品質のものを使用する。FLはいわゆるフローレス。最高品質である。3EXというのはカットのグレード、研磨状態、対称性の3つの評価が全てExcellentであるという意味で、最高級の加工がされていることを示す。H&Cというのはその石をジェムスコープで見た時下(パビリオン)側から見ると8つのハート、上(テーブル)側から見ると8つの矢が見えることを表す。Hearts and Cupidsである。
 
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「僕にはよく分からないから千里が見てよ」
と貴司が言う。
 
本来は指輪自体は女が決め、石は男が決めるとされるのだが、貴司は早々にこちらに投げてきた。まあいいよね?私が決めても。
 
千里は貴司がもう少し予算を上げてもいいように言っていたなと思い
 
「これEカラーですよね。同じくらいのサイズでDカラーのあるかしら?」
と言ってみた。
 
「少しお待ちください」
 
ダイヤの色のランキングはDが最高品質でEはそれに次ぐ。実際D-Fは普通の人の目では見分けが付かない。一応色のランク自体はZまであるらしいが、普通はMくらいまでのを指輪に使用する。Iくらいまではほぼ無色に見える。
 
それで持って来てくれた石は 1.2ct IF 3EX H&C Dカラーである。さっきのより少し大きい。
 
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「きれいですね。それにこの石、暖かい感じ」
 
実はさっき見せてもらった石は色の問題もあるが、やや「寂しさ」の波動を感じたのである。
 
「お値段は少し張りますが、大丈夫ですか?」
「たぶん大丈夫」
 
貴司としては足りない場合は、受け取るまでに多分1〜2ヶ月かかるだろうから1月の給料で補えばいいと考えていた。
 

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それでこの石の指輪を買うことにする。
 
「お会計ですが、257万4720円になりますが、お支払いはどうなさいますか?」
 
あ、しまった。250万ちょっと越えちゃった、と千里は思った。
 
貴司は
「カードで」
と言ってS銀行のプライムゴールドVISAカードを出す。
 
貴司は最初普通のVISAカードを作っていたのだが、海外出張が多く、高額の決済が必要になることがあり、限度額オーバーで困っていた。それで昨年、プライムゴールド(30歳未満の人のためのゴールドカード)に切り替えたのである。
 
「お預かりします」
と言って、野沢さんはカードを部屋に備え付けのカード端末に通したのだが・・・・
 
「大変恐れ入ります。承認が下りないのですが」
と言われる。
 
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「あれ?何でだろう?」
と貴司。
 
千里の後ろで《たいちゃん》が指摘する。
 
「貴司、そのカードはゴールドだから200万円までしか使えないのでは?」
と千里は言った。
 
「え?これにも限度があるの?」
「ゴールドは概ね200万円までだよ。プラチナだと300万円以上の限度額が設定可能だけど」
と千里は《たいちゃん》の受け売りで言った。
 
「知らなかった!」
 
私も知らなかった!
 
「今残高があるのなら、振り込めばいいと思う。振り込みでもいいですよね?」
と千里は野沢さんに確認する。
 
「はい。口座番号をお伝えしましょうか?」
 
「それが色々資金移動しないと・・・」
と貴司は言っている。ひょっとしたら少し足りなかった?と千里は感じた。ごめーん!
 
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野沢さんの顔が曇っている。それで千里は言った。
 
「だったら、私のカードで一時的に払っておく?支払日までに現金でもらえばいいよ。長い付き合いだしさ」
と千里は言った。
 
「じゃ、そうしようかな。って千里のカードは?」
 
「このカードで」
と言って千里が出したカードを見て、一瞬野沢さんがピクッとした。
 
そしてこの後、お店側の対応がいやに丁寧になった!
 

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「お預かりします」
と言って、カードを端末に通す。
 
「暗証番号をお願いします」
「はいはい」
 
それで千里が暗証番号を0625と押して実行キーを押す。伝票が出てくるので、お客様控えをもらう。
 
「明細書を持って参りますので少々お待ち下さい」
と言って、野沢さんが席を立ったが、彼女が戻ってくる前に、若い女の子が入って来て、紅茶とお菓子を出す。
 
なんか最初に出てきた紅茶より美味しい!?
 
お菓子も何だか豪華である。これはきっと最上級のお客様向けの限定品なのではという気もした。
 
やがて野沢さんが戻って来て、ジュエリーの明細書を渡される。
 
納期は1ヶ月半程度で、できあがったらすぐ連絡するということであった。
 
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「だったら千里の誕生日に実物を填めることができたらいいかな」
「それで記念写真とか撮ってもいいね」
「お誕生日はいつですか?」
「3月3日なんですよ」
「それなら間に合うでしょうね」
 
と言いながら野沢さんは用紙の端に筆記体でDrei Maerzと走り書きした。ドイツ語で《3月3日》という意味である。絶対にそれに間に合わせろという指示を出すんだろうなと千里は思った。英語で書くとそれがこちらに分かるからドイツ語で書いたのだろう。どうも千里が見せたカードが効果を発揮している感じであった。
 
少しおしゃべりしている内に、店長さん、お店のデザイナーさんまで挨拶に来て名刺を出してくれる。
 
店長さんと結局30分くらい話してた!
 
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千里がバスケットボールの日本代表で昨年のアジア選手権にも出たし、アンダーエイジの時は世界選手権にも出ていると聞くと
 
「さすがですね! しっかりした体格をなさってますし」
などと店長さんは言う。
 
「私はガードだから、そんなに体格は無いんですよ。うちのチームのセンターをしている子は187cmくらい背丈がありますし」
と千里が言うと
 
「えっと、女性ですよね?」
と店長さんは確認していた。
 
「ええ、もちろん。女子バスケットですから」
「そうですよね!女子バスケットに男子が出たらたいへんですね!」
 
お店のCMとかにも出てもらえませんかね?などとも言われたが、その手の話はバスケ協会の方にと言って逃げておいた。
 
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結局、豪華なお昼御飯まで出てきて、13時すぎにやっと解放された!
 
結婚指輪も作らないかと言われたが、それは6月頃に作る予定と言っておいた。その時はぜひ当店でと言われたが、断る理由もないし、婚約指輪と同じお店で作るのもよい気がしたので
 
「ではその方向で考えておきます」
と言っておいた。
 

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ローキューツは昨日で敗戦したので6日の練習は休みになっていたのだが、千里は貴司を誘ってAUDIに乗って千城台の体育館に行き、一緒に練習をした。
 
「やはりこれがいちばん楽しい気がする」
「ディズニーランドとか行ってもいいけど、こちらの方が充実感があるよね」
 
2時間くらい練習した後で、マクドナルドで小腹を満たしてから、この日は朝の内に予約していた、ホテルオークラに行き、デラックス・ダブルの部屋に泊まった。記帳は千里が「細川貴司・細川千里」と書いた。それを見て貴司はドキドキしていた。
 
支払いは貴司のカードで払う。
千里はその貴司のカードの署名まで代筆した!
 
「お客様が貴司さまですか?」
「そうですよ。こちらが千里、私の妻です」
と千里が貴司の方に手をやって言うが、フロントマンは平然として
「そうでしたか。失礼しました」
と言っていた。
 
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練習で掻いた汗をシャワーで流した後、千里は
 
「指輪ありがとうね」
と言って、フェラチオをしてあげた。物凄く気持ち良さそうにしていた。
 
その後で夕食に行く。中華レストランに入って、バイキング!を頼む。
 
コース料理を頼むよりも、かえって色々なものが好きなだけ食べられて良い。特にふたりとも午後バスケをやって、その後マクドナルドで少し食べたものの、愛の営みまでして、かなりお腹が空いている。2人で多分通常の6〜7人分くらい食べた。
 
「さすがにお腹がいっぱいになった」
「今夜は私のヌードは見ないでね」
「了解〜。灯りを消していればいいんだよね?」
 

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翌1月7日は朝食を食べた後11時くらいまで部屋でのんびり(いちゃいちゃ)して過ごし、代々木体育館に向かって13:00からの女子準決勝を見る(オールジャパンのチケットは「女子準決勝」「男子準決勝」「女子決勝」などのような単位で発行されている)。
 
ローキューツでまとめて(友人・家族などのために多少の余裕を見て)チケットを買っているので麻依子や河合さんたちとも一緒である。この日の試合結果はこのようであった。
 
ビューティーM(W4)×51−68○Rインパルス(W5)
Bレインディア(W2)×67−82○Eウィッカ(W3)
 
ローキューツを倒したレッドインパルス、ジョイフルゴールドを倒したエレクトロウィッカが勝って決勝進出している。どちらも一昨日の抑えに抑えた試合の鬱憤を晴らすかのように10点以上の差を付けて相手を圧倒した。
 
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この日は試合に出た訳では無いので、みんなで一緒にモスバーガーでお茶を飲んだだけで解散した。
 
「麻依子はもう河合さんと一緒に暮らしてるんだっけ?」
「当然」
「だったら住所教えてよ」
「変わってないよ。大彦がうちに来たんだよ」
「なるほどー」
「婿入り婚かな?」
と国香が言うが
 
「大彦がお嫁さんで実は嫁入りだったりして」
と麻依子。
「あ、僕調理係。こないだは裸エプロンやらされた」
と大彦。
「今夜もやろう」
「いいけど」
と2人が大胆な告白(のろけ?)をしているので
 
「まあ仲良ければよいね」
と声が出る。
 
「千里たちはまだ一緒に暮らしてないの?」
「まあ大学卒業してからかな」
「ほほお」
「でも今夜までは一緒なんでしょ?」
「4日は会社があったから、僕が大阪で泊まりましたけど、それ以外はずっと一緒ですよ」
 
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「みんな彼氏がいていいなあ」
「私、彼女の方がいい。料理作ってもらって掃除してもらって」
「おお、そちらもいいなあ」
 

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