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■娘たちの1200(6)

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さて、網走まで行くのであれば、高速を使うか、せめて旭川方面から国道39号を走りたかったのだが、110ccでは高速を走れないし、雨宮先生からの依頼で、極めて難易度の高い日勝峠を越えてくれという指定なので、国道235号で日高富川まで行き、国道237号で内陸部に入っていく。案の定、路面は圧雪路である。これは普通のバイクではもう走行不能だ。スパイクタイヤだからこそ走ることができる。
 
千里は慎重に轍の上を走っていく。
 
当然後ろから来た車に煽られるが、長めの直線など、安全に譲れる場所で停止して追い越してもらう。それまではどんなにクラクション鳴らされようとも、罵声を浴びせられようともマイペースで走る。
 
死にたくないからね!
 
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せっかく結婚することになったのにエンゲージリングを指に通さないまま死んでたまるか、という気持ちである。
 
千里は本州では中性的なライダースーツを着ていたのだが、北海道では電熱部品まで搭載した防寒仕様の蛍光ピンクのライダースーツを着ている。しかもマイメロのシールまで背中に貼ってる!!
 
“女なら仕方無いか”と思ってもらうために女を主張しておくのである。相手が男なら喧嘩しようとする荒っぽいドライバーは全国的に存在する。
 

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R237/R274が交差する日高交差点まで来たのは7時半である。
 
『千里、チェーンを付けよう』
 
と《げんちゃん》から言われるのでバイクをいったん停めて《げんちゃん》に取り付けてもらう。このチェーンも特殊なもので実は郵便局バイク仕様の製品を特殊なルートで入手したものである。
 
それでここから国道274号を走る。いよいよ日勝峠越えである。
 
清水町まで約56kmの区間だが、千里はこの区間を慎重に2時間ちょっと掛けて走行した。朝早いので霧が出ていたが、千里には全部線形が見えているので問題無い。いわゆる「超感覚的知覚」に近いのだが、千里はそういう感覚を特別なものとは認識していない。普通の人にはなかなかきつい道である。
 
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実際霧のおかげで慎重走行の車が多く、あまり煽られずに済んだ。これは助かった。
 
「千マイルブルース」の主人公はここを6月の夜中に越えたようだが、雨が凄くて視界が利かず、偶然通りかかったトラックの後ろを走って何とか通過したと書いてあった(こういうのを「ペースカーになってもらう」というらしい)。確かに普通の人ならバイクの前照灯だけでは、とても道路の線形が分からないだろう。ここは傾斜も急だが、唐突に凄いカーブがあったりする。
 
今回は基本的に昼間だけ走ることにしているが、冬の夜間にここをバイクで越えようとしたら、簡単に死ねるかもとさすがの千里も思った。
 
『あ、次の待避帯でゆっくりバイクを停止させて』
と《げんちゃん》が言う。
 
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それでそこに入れて停止させる。待避帯は雪が積もっているので実はこれが結構怖い。
 
『チェーンが切れかかっている。もう取り外せ』
『分かった』
 
それでチェーンを取り外し(取り外すのは千里にもできる)、その後はスパイクタイヤだけの力で5-6km走り、清水町の市街地に到達した。
 

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清水町内のセイコーマートに寄って牛丼と唐揚げを食べる。やはり日勝峠越えは無茶苦茶体力を使った。更に給油後、そのまま国道274号を走る。清水町を出たのが10時頃である。鹿追町・士幌町には10kmほど直線を走り、右折してまた10kmほど直線を走るという部分がある。
 
眠くなる!!
 
それで途中で駐めてコーヒーを飲んだりする。缶コーヒーはたくさん持って来ている。
 
国道241号(足寄国道)を走って阿寒湖に抜ける。清水町から140kmを4時間半掛けて走っている。天気が良かったから良いが、天気が悪かったら、この倍くらい掛かってもおかしくない道だった。
 
夏に来たなら阿寒湖・摩周湖と観光したい所だが、できたら今日中に網走まで辿り着きたいと思っていた。
 
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こういう場所にもセイコーマートがあるので、助かった!と思いトイレを借りて肉まんを食べる。少し休んだだけで出発する。
 
国道241号の凄いカーブの連続を慎重に走り抜け、弟子屈町(てしかがちょう)まで来たのが既に17時である。もう太陽が沈んでしまった。
 
『千里、悪いことは言わん。ここで一泊しろ』
『分かった』
 
それで携帯電話を使って楽天トラベルにアクセスし、空いている宿を見つけて予約を入れた。そこに入って駐車場にSuper Cub MD90/110改を駐め、旅館の建物の中に入る。
 
この日の行程
 
苫小牧−日高交差点 91km
日高交差点−清水町 56km
清水町−阿寒湖 140km
阿寒湖−弟子屈町 38km
合計 325km
 

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千里がライダースーツで帳場に姿を現したので、旅館の人がびっくりしている。
 
「あんた、まさかバイク? 今何かバイクの音がしたような気がしたから」
「そうですけど」
 
「この道をバイクで走ってきたの?」
「はい。今朝苫小牧に着いて日勝峠を越えて、足寄国道を走ってきました」
「よく死ななかったね!」
「特殊なバイクなんですよ」
と千里が言うので、番頭さん(?)はわざわざ外に出て、バイクを見る。
 
「これ郵便配達のカブに似てる」
「それを110ccにボアアップして、スパイクタイヤを装備しました。でも日勝峠越えるのにはチェーン使いました」
 
「凄い!でも蛍光色なんだ!」
「吹雪や霧の中でも後続の車に、はねられないようにするためです」
「確かに追突されたら恐いよな!」
 
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旅館の人は、親切で料理も随分サービスしてもらった感じであった。冬場なので泊まり客は少ない。特にこの日は女子は1人だけだったので、のんびりと女湯を独占して疲れを癒やすことができた。(なお千里があがった後で、女性従業員さんたちが女湯は使ったようである)
 
『なんか浸かっているだけで疲れが取れていく感じ』
『まあ千里もよくやるよ』
と《いんちゃん》が言っていた。
 
『そういえば意識したことなかったけど、私が女湯に入ってる時、男の眷属たちはどうしてるんだっけ?』
『そりゃ廊下で待ってるよ。何かあったら駆けつけられるように』
『そうだったのか』
『勾陳なんかは初期の頃、傍に付いてたほうが良くないか?と言って白虎に玉を蹴られていた』
『ああ、あいつは一度去勢すべきかもね』
『千里の命令なら去勢してくるけど』
『取り敢えず100年くらいは執行猶予を』
『今頃、お股を押さえているな』
 
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《こうちゃん》はZZR-1400を本州内で走らせて遊んでいることであろう。彼には千里が大洗に到着する時刻までにバイクをフェリーターミナルまで持って来てくれることだけを命令している。
 

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千里が摩周湖は見ていないというと、旅館の人はぜひ見て行くといいですよと言ったので、翌14日の朝、日出(6:55)直後の摩周湖を、旅館の人の車に乗せてもらって!見に行った。
 
「美しい!」
と言って千里は見とれている。
 
「実は摩周湖は冬が一番美しいんです。これは写真に撮っておくべきですよ」
と旅館の人が言うので
 
「すみません。写真撮ってもらえませんか?私、カメラ音痴なんです」
と正直に告白!?する。
 
「それは大変ですね!」
 
それで早朝の摩周湖の写真、摩周湖をバックにして、バイクと千里の写真などを撮ってもらった。
 
「ありがとうございました!」
 
それで摩周湖から戻って、お土産に摩周羊羹などを買い、8:00に宿を出発した。
 
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国道391号を降りていき、原生花園(さすがに冬季は休園)で有名な小清水町に向かう。この道もけっこうな道ではあるが昨日走った阿寒湖から弟子屈町方面への国道241号に比べたら、とっても楽な道である。小清水町からは海沿いの国道244号を走って網走に到達する。
 
網走市内に到着したのは10時頃である。
 
《たいちゃん》が調べておいてくれた土産物店で網走刑務所製のニポポ人形を買う。この人形を持っている所、またバイクの上に置いている所を、また《びゃくちゃん》に記念写真に撮ってもらう。
 
基本的に記念写真は千里が写っているバージョンと写っていないバージョンを撮ってもらっている。公開するのは千里が写っていないものだけである。
 
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帰ることにする。
 
ザンギ丼を食べて一休みした後、道道104号を走り、緋牛内で国道39号に合流した後は、ひたすら39号を走る。途中でコンビニを見たのでトイレを借りてホットコーヒーを飲む。更に39号を西行する。
 
昨日は1日中晴れていたこともあり、道路自体は除雪されていた。夜中に少し雪が降っているがそれもこの時間帯にはもう除雪されている。時々走っている車が落としたものか雪がある場所もあるが、スパイクタイヤがあれば問題無い。やがて石北峠を登る。
 
四輪であればひとつ北側の旭川紋別道路(北見峠)を通ると楽なのだが、あいにく110ccのバイク(原付二種)では高速道路を走れないのである。するとこの石北峠を越えるのが「いちばんまとも」な道になる。
 
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石北峠を登り切ったのが14時頃であった。
 
「よし。降りよう」
 
スピードが出すぎないように慎重に降りていく。いったんスピードが付いてしまうと、グリップがあまり利かないので、ブレーキも利かず(利かせること自体が危険)、あの世との境界を走ることになりかねない。
 

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何とか層雲峡まで30分ちょっと掛けて降りていく。今回は積雪していなかったのでチェーンも使わなかった。
 
旭川まで来たのが16時半である。美輪子叔母の家に寄る。
 
美輪子叔母は昨年、市内に中古の一戸建てを800万円!で買って引っ越している。子供が生まれたことから、アパートが手狭に感じたのである。
 
叔母は在宅だった。
 
「ちょっと休ませて」
「あんたまさかバイクに乗ってるの?」
「うん」
「こんな時期にバイクなんかで走ったら死ぬよ」
「死なずに済むような特製バイクなんだよ。少し寝る。お休み」
といって仮眠させてもらった。
 

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起きたらもう19時である。
 
「きゃー!寝過ごした」
「あんた、もう泊まっていきなさい」
「そうする!」
 
それで千里は《こうちゃん》に向かって『帰りが1日遅れる』と連絡した。何か喜んでいた!?
 
この日の行程。
 
弟子屈(R391/244)網走 80km
網走市内______5km
網走(r104)北見市_ 43km
北見市(R39)石北峠_72km
石北峠(R39)層雲峡_20km
層雲峡(R39)旭川__68km
旭川市内______5km
合計 293km 道内累計 618km
 
やがて賢二さんも帰って来た。
 
「何か玄関横にバイクが駐めてあるけど」
「はい、私のです」
「まさかバイクで冬の道を走ったりしてないよね」
「走ってます。取り敢えず生きてます」
「どこ走った?」
 
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「苫小牧から日勝峠を越えて阿寒湖・摩周湖を見て網走まで。そして石北峠を越えて旭川まで来ました」
 
「よく生きてたね!」
「日勝峠を越えたと聞いて私もたまげた」
 
「このあと苫小牧まで行きますけど、その後、あのバイクをしばらくここに置かせてもらえませんか?苫小牧で友だちに託して軽トラでここまで運んでもらおうかと思っているんですよ」
 
「うん。軽トラで運ぶのが無難」
 

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それでその夜は泊めてもらった。
 
「いよいよ婚約指輪をもらったか!」
「まだ受け取ってない。今加工中なんだよ。受け取ったらおばちゃんにもお母ちゃんにも見せに来るよ」
「うん。楽しみにしてる」
「お父ちゃんとはたぶん一戦交えないといけない」
「頑張れ頑張れ」
 
結局9時には寝て朝までぐっすりと熟睡していた。翌日の午前中も由紀恵ちゃんと遊びながら、美輪子叔母とおしゃべりしていた。
 
早めのお昼までごちそうになって12時前に出発する。近くのGSで給油するが顔なじみなので
 
「千里ちゃん面白そうなバイクに乗ってるね!」
と驚かれて2〜3分おしゃべりするハメになる。
 
しかしここから先の道は除雪されているので問題無く走れる。スパイクタイヤがアスファルトに音を立てるのが申し訳無い気分になる。国道12号を走り岩見沢を2時頃通過。ここから国道234号を走る。交通量の多い36号よりは随分走りやすい。
 
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結局苫小牧西港に16時頃到着する。
 
この日の行程。
 
旭川(R12)岩見沢____96km
岩見沢(R234)苫小牧西港 76km
合計 172km 道内合計 790km
 
フェリーターミナルに到着した時のトリップメーターは790kmであった。
 
八戸で見たZZR-1400のトリップメーターが978kmだったので、ここまでの累計は1768km。既に1000マイル(1600km)を越えている!
 

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北海道の冬の厳しい道を網走までの往復790km走ってくれたバイクとお別れである。このバイクは冬の北海道専用仕様なので、関東に持ち帰ることはできない。記念写真を撮ってから《げんちゃん》に託す。彼に旭川まで運んでもらい、美輪子叔母の所に置かせてもらう。
 

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娘たちの1200(6)

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